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創作(詩)

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息吹(詩)【275字】

朝、吐く息が白くなってきた 暖かい空気が流れ出ては、見る間に消えてなくなってしまう 吐く息に込められた熱 それは外気に触れるとたちまち冷え切ってしまう ただ一瞬だけ存在を示して消えていく 息を吐くたびに姿をあらわす陽炎 何度繰り返したところで捉えることはできない 渇きが癒されることはない 私はそれを捉えようと思ったことすらないのだ 冷え切った外気のなかでは白く 温かな室内では見ることのできない熱 掌で覆ってみれば肌で感じることができる 束の間の戯れ なんとなく息を吐きた

焰(詩)【132字】

暖めたいのか 焼き尽くしたいのか それすらわからない 虚なゆらめき 手を伸ばして届かないならそれでいい すべては幻想なのだから 此処にあるのは暗闇だけ 溶け落ちて氷となった滴 感情の残滓 償いはできない 燃え拡がる未来 手遅れな今 過去は死んだ 安らかな眠りは、永遠に失われた (125文字)