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詩「或る文」

いかがお過ごしですか
まう最後にお会ひしてから随分と経つやうです
何時からか貴方の微笑みは寂しいものとなり
最終的に私が貴方から一つの安らぎを剥奪したと気がついたあの日
さういふ地獄もあるものだなと
愛染明王の御前にぬかづきたい心地でした
現在の私は貴方の面影を私の中に探しながら
自らが作つた現実と対峙するといふ矛盾を生きてゐます
確かなことは私にやり直したい過去はありません
そして過ぎ去りつつある春の尻尾を掴んでやろうといふ画策もありません
近頃の私はただ思い出してゐるのです
貴方への敬意を忘れたばかばかしい日々を
この間H駅に向かって雨の中歩いてゐました
貴方の気配が満ちてゐました
いつか短い間貴方と雨宿りをしましたね
私も私なりに苦しかつたです
そんなことを思い出すと私はまた貴方にお会ひしたくなりました
できることならお互ひ本当の笑顔で
そんな夢はいつ叶うのでせう
長々と書いてしまひました
どうかお元気でいらしてください
さやうなら

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