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詩「春一番」

いつかあなたの背中を撫でた
春一番が今日も吹く
スタインウェイの音の粒立ちは
水面の煌めきの真似事をしていた
蝋梅の香りと蝶道の交わるところに
わたくしたちはいるのです

風ってとてもおそろしい
トタン屋根を剥がして
銀河の目玉へ巻き上げるのだから
髭を蓄えたおじさんが
ずっとわたくしを見ているから
わたくしも見返してやるの

いつかあなたの背中を撫でた
春一番が今宵も吹く
夜よ更けよもっと更けよ
日乗の端に目眩くほどの愛を
孤独の河に飛び込んだ人へ祝福を
美しい日々に確かな祝杯を



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