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詩 「名前」

その濃紺の小春日は
わたしの背中を静かに焼いた
幾度となくあなたのお名前を
心のうちで呼んでみては
わたしは冷却を試みる
それが熱を高めることを知らずに

枯葉の道の清い風
人肌の揚げパンはざらついて輝く
あなたはわたしの名前を
その声で呼んでくださった
その刹那、そのとこしえ
わたしはわたしの名前をすきになった

夜雨とまじわる木犀の香り
わたしの名前を確かに呼んだ
あなたの手より与えられる
ビニール傘の映す闇
ばさっとさせば導かれ
また心のうちであなたのお名前を叫ぶ

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