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詩「浮き草」

鱗のかがやき散り散りと舞う
心居直れば浮き草のわたし
ひっそりゆらぎをいだきつつ
あの人から湧く水の清さを
しんしんと身に染めている
あの人から注ぐ陽光の碧色を
さんさんといのちで喰んでいる
浮き草はそうやって息している

激しい水流は孤独を踊らせる
あの人の姿も見えなくなるが
水はひそかに透光をたもつ
誰をも受けつけぬ冬の河は
恋を磨れば固くなり
愛を包めば柔くなる
もしまたあの人にあえるのなら。
浮き草はそうやってゆれる

風雨ももはや慶ばしく
遠くのあの人を祝福している
水面をなぜる磁気嵐のにおいは
浮き草の細胞をやさしく整えた
流れるところまで流れついたら
つぎのいのちのはじまるころ
あの人の道端に根をはって
一瞥の慈愛に咲って呼応したい

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