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誠歓誠喜 vs踏み台 1-0

 ボールが動かない時間が長くなる想定内の展開の中、セットプレーで仕留められることなく1ポイントを得た前節。勝ちたかったと思うのは間違いないが、リスクを冒して崩れるのではなく、あくまで基本の姿勢は維持した。そこから前にどれだけ出れていけるかは、今後のウチの積み上げ次第。

 負けなしのまま迎える北関東ダービー。4月の対戦時は先制こそされたが、焦れずに押し込んでの逆転勝ち。意気揚々とした黄色い方々が蚊の鳴くような声でブーイングしていた。
 前節の相手とタイプは似ている。中盤でコントロールして重心を押し上げたいらしいが、結局前線に収めさせて直線的に突っ込む。システム的なミスマッチでWBがフリーになることもあるが、そこからのチャンスは限られる。怪我人だとかミッドウィークに天皇杯とかで、今節に向けて懸念材料(言い訳の材料)は沢山あるが、ダービーだと盲目的に突っ込んでくるだろう。

 SBで上手く相手WBの背中を取れれば前進はできる。中途半端なロストをすると相手に圧される可能性はあるが、いなして局面をひっくり返せれば、あとはウチのやりたいようにやるだけ。


メンバー

 ウチは前節から1枚変更。山中→杉本。前節途中出場でウチでスタートを切った竜士が移籍後初スタメン。ベンチには頼れる漢畑尾が帰ってきた。

 対する相手は勝利した甲府戦から2枚変更。西谷→高萩、小堀→根本。西谷は大事なダービー戦なのに出停。ミッドウィークに福岡と120分戦って玉砕したが、多くの選手がそれなりのプレー時間をこなしており、コンディション面は不安が大きい。

前半

 ウチはいつものように気負わず試合に入ったが、相手はウチを踏み台にすべく目の色を変えたのかのようにフルスロットルで入る。想定内ではあるが、それでもウチは繋げにくくはなった。ゴールキック時も3枚を捕まえに来る気概を見せ、重心を高める。

 7分、最初に形を作ったのはアウェイ側。ウチが自陣でパスを繋ぎ、城和から中塩に入ってボールを晒したところで黒﨑がクラッシュ。ボールがこぼれると山田がワンタッチで黒﨑の前のスペースに流す。黒﨑は深くまで抉ってクロスを入れるも、櫛引がパンチング。セカンドを山田が振り抜くも、城和がブロック。

 10分にも相手にチャンス。相手最終ラインでのビルドアップで福島にボールが入ったタイミングで竜士がスイッチを入れる。そこから黒﨑に流されたところも竜士が二度追い、黒﨑は一度福島に戻す。福島は少し持ち出してウチの陣内に入ると、大島に楔を刺す。ライン間で上手くボールを引き出した大島は黒﨑に落とし、黒﨑がアーリーを上げる。対角線のボールにファーで福森が頭で折り返す。佐藤亮の頭を超えたところで山田がボールキープし、バイタル手前のスペースに転がす。そこに後ろから走り込んだ佐藤祥がコントロールし、右足でミドル。外側を巻くようなイメージで放たれたシュートは、櫛引がセーブ。
 大島が風間と中塩の重心を取ることで浮いた。WB→WBは相手の狙い通りの形だし、福森に繋がったところで深さを作り、佐藤祥が入り込むスペースを生んだ。

 15分過ぎからは、幾分相手のプレスも自制。判断せずに目の前に突っ込むのではなく、ウチが背中を向けてボールが後ろに戻ったタイミングで引き金を引いて圧力を掛ける。また、ウチのディフェンシブサードでは寄せずにリトリートし、CMFに入ったところから出てくる。

 ウチもプレスの強度に自信を持っているらしい相手に対して、臆することなく後ろから繋いでいった。当然リスクは大きく、何度か引っ掛かってショートカウンターになったり、蹴り捨てるしかできなかったりという状況には陥った。
 というのも、ある程度捕まる覚悟でビルドアップしていたように映った。酒井・城和・中塩の3枚が横幅を狭くしたうえで平行になってボールを回す。当然相手は刈り取ればチャンスだと意気込んで喰い付いてくるが、安易に蹴るのではなく、相手の出方を窺うように敢えてCMFに付けるシーンや櫛引まで戻すシーンがあった。
 数試合前までは長倉が落ちて自分で何とかしていった左サイドに関しては、平松が同様のタスクを担う。勿論、特徴の異なる選手だが、平松も持ち前の身体の強さで確実にポイントを作る。加えて、相手を背負いながら前を向いて、そこから相手を剥がすドリブルも見せる。スピードタイプではなく、重戦車のように迫力ある突破。それにしても、あれだけ足元で失わないというのはポジティブな発見。

 相手は噛み合わせを考え、やはりWBにボールを付けながらの前進を目論む。特に右サイド、ウチにとっての左サイドは常に黒﨑がフリーのような状態。ただし、そんな簡単にウチがやられるはずもない。竜士が福島と黒﨑の2枚とも担当して牽制。黒﨑にボールが渡ると竜士が猛然とプレスを掛けて自由を与えない。逆サイドにボールがある時は常に黒﨑がフリーにこそなったが、そこを通すパスが出てこないし、それほどの脅威にならず。
 根本を頂点にして、大島と山田がシャドーのように振る舞うのも捕まえにくくなってしていたが、徐々にマークの受け渡しもスムーズになる。CBがそのままマーカーについていくことで、簡単な縦パスを入れられないようにする。あとは、ウチがCBが横幅をコンパクトに保っている分、真ん中を通すパスを使いにくく、外回りのボールが横行。ボールを持つことを怖がる相手にボールを保持させ、時計の針を進ませた。

 ウチはなかなか攻撃の糸口を掴めずにいたが、竜士の存在が大きかった。自らスピードで仕掛け、ボールを前に運んだ。狭いスペースも何のその、タッチライン際や数枚に囲まれてもロストしない。段々とキレも増し、ワンフェイクで相手を剥がしてサイドを抉れるようになる。

 立ち上がりに相手の圧力に押されて耐える時間もあったが、スコアレスを維持したまま前半を終える。

後半

 相手の出方を探ることに45分を割き、それによって得たウィークを突くべくピッチに入っていた選手たちだが、すぐに試合を動かす。

 キックオフの流れで左に平松ではなく杉本が顔を出してボールを受け、そのまま前進。高萩の前に上手く身体を入れてファウルを誘う。
 左サイドでのFK。亮からの絶妙なボールを酒井が折り返し、そこに平松が飛び込む。デザイン通りの崩しでネットを揺らした。
 亮が蹴る前に、梨誉・酒井・城和は相手のラインから少し距離を取って構え、ニアの平松、ファーの中塩の2枚がラインに入った。佐藤の左足から見事なボールが繰り出されると、中塩は中に入らず留まり、ラインから離れていた3枚が入れ替わるようにPA内に走り込んだ。この時点で相手はニア側3枚がボールウォッチャーになる。酒井が落下点に入って競り勝ったところで大勢は決していたが、そこから上手く時間差で折り返しに反応した平松の嗅覚は流石。相手のセットプレー対応を手玉に取るような形で先制に成功。

 後半のどこかで仕掛けなればならない想定だったが、2プレー目でゴールを奪うことができ、試合を楽に進められるようになった。
 相手がリトリートの色を強めてきたので、ウチは無理して差し込むことはせず、後ろでテンポアップのタイミングを計る。ただ、相手の1stラインが高めに設定しているのに対し、2列目以降が重めに構えているので、1stラインを越せれば自由にボールを動かせた。特に、エドのIH化と杉本のWBのような動きに対して相手WBが深追いできていないのが目立った。なので、ウチはサイドに起点を作り、杉本が仕掛けるも良し、CMFとトライアングル作って逆に展開するも良し、縦も横も効果的に使う。

 57分、ウチの狙いとする攻撃。自陣浅い位置で城和がボールを持ち、相手が喰い付いたタイミングでエドへ。エドは相手を剥がそうとするも突かれてしまうが、こぼれ球を拾った酒井はシンプルに前にフィード。PA角に落ちたボールに対して亮が猛然とプレスを掛けて大森の自由を奪う。苦し紛れの縦パスを出したが、これをエドがスライディングしてカット。そのボールをアマが回収。アマ→平松→竜士と左に推移すると、中塩のオーバーラップを囮に竜士が仕掛ける。竜士はPA角でダイアゴナルに動いてきた平松に付けると、リターンを受けるべくスプリント。平松は相手を背負いながらタメを作り、アマに落とす。アマはワンタッチでファーに柔らかいボールを送ると、大森の頭を超えたところで亮がダイレクトで中に折り返す。利き足ではない右足でのパスは効果的だったが、杉本は間に合わずクリアされた。
 ゲーゲンプレスの如く、コーナーに蹴り出してそこに圧力を掛けるようにして奪った。奪回した後のポジトラも早く、尚且つノッキングせずに全員が連動して動いた。最後仕留められれば文句なかったとはいえ、観ていて楽しい攻撃だった。

 64分、高萩→安田、大島→小堀の2枚替え。天皇杯で疲弊している分、途中出場でもフレッシュとはいえないコンディションだった。

 71分、ウチはエド→北川、亮→内田の2枚替え。北川と杉本がWB、中盤をトレスにした5-3-2の形。これによって相手のWBに対して明確にWBが1枚付くとともに、CMFのうち1枚がサンドするべくサポート。その場で窒息させてボールを後ろに戻させた。
 また、ビルドアップ時も中盤の底に風間が位置しているが、相手が風間を一切捕まえることができず、より楽に前進させることが可能となった。

 相手側のコメントを見ると、前線とそれ以外の選手で意識が共有できていなかったようだ。留まることに耐えられず前線だけがお気持ちでプレスを敢行して空転。当然ライン間は広がるし、間延びしているのでウチは余裕を持ってボールを動かす。

 81分、竜士→山中、梨誉→シラの交替。竜士とは異なる推進力を持つタイプを投入し、相手WBの背後のスペースの活用を試みる。
 さらに、84分には平松→畑尾でクローズの作業。山中がRWB、中塩がLWB。

 最後はイスマイラ目掛けた神風特攻を仕掛けてきたが、ロングフィードの精度が伴わず、ほとんどイスマイラに渡らず。ウチがコーナーキープで時間を消費している際には痺れを切らしたイスマイラが下がってきてしまい、守備陣が前に残るよう指示するが伝わらず、チームとしてギクシャクしているのが見て取れた。

 後半開始早々の平松のゴールを守り抜き、北関東ダービー優勝を決める。

雑感

 ダービーは内容より結果とは思うが、内容でも相手をほとんど寄せ付けず。チームとしての成熟度の違いを見せ、必然のシーズンダブル。

 守備は立ち上がりにトライ&エラーの過程で相手にチャンスを与えたが、終わってみればクリーンシート。もともと非保持時には相手の脅威はなかったし、ネガトラのところでチャンスを作られた。時間経過とともに相手に対してアジャストし、後半はほぼ何もなく終えた。事故を狙う相手を尻目に、万全の対策でシャットアウトしたのは気持ち良い。

 オフェンスは、竜士の個の突破がフィーチャーされるのは間違いないが、そこへのボールの届け方や、スペースの作り方をチーム全体で共有できた。取説を読んで特性を理解していく状況だが、ここから益々フィットしていくと思うと楽しみ。
 また、平松のIHタスクも問題なくこなしていたし、結果も付いてきた。誰かが欠けたとしても、崩れずに戦えている。

 これで2年ぶりの北関東ダービー制覇。相手のチーム状況を考えると、勝たなければならない試合だったが、そういう相手から取りこぼさずに確実に叩かないと上との差は詰まらない。
 次節は鬼門ユアスタ。今節とはチームのクオリティは数段違うが、やるべきことは一緒。自分たちの武器を磨き、杜の都に勝利の草津節を響かせろ。

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