回転之力 vs鹿児島 1-1

 今まで苦しみながらも改善してきたものがようやく開花し、4ゴールで長いトンネルを抜けた前節。サイドの幅の取り方でボールを前に運び、相手のマークのミスマッチを誘発してゴール前で決定的な仕事をした。長らく地道に取り組んできたことが1つ結果に出た。精神的にも1勝の価値は大きい。

 前節の良い流れを継続するためにも勝利を目指して乗り込む今節の相手は鹿児島。開幕戦では相手の中盤のクオリティを見せられた。
 3部で積み上げたものを披露すべく大島氏の下でスタートした今シーズンはウチとの開幕戦でポイントを得ると、その後は徳島や千葉に勝利するなど順調にポイントを積んでいくように思えた。しかし、4月以降はなかなか結果が出ず、5月が終了する時点で監督交代を決断。浅野氏を招聘し、6月は山形や大分に勝利したが、現在2連敗中。
 新指揮官になっても基本のフォーメーションは変わらず。藤村と山口のCHがゲームメイクするのは今までと同様で、1列前で鈴木がボールを引き出す。兎にも角にも真ん中の3枚に自由を与えてしまうと一気に鹿児島の時間が増える。

 たらればは意味を成さないものの、開幕戦で3ポイントを取れなかったことが歯車が狂う一因になったとは思う。山口と藤村に同サイドに寄られて数的優位作られて鹿児島の右サイドで悠々と突破されて行かれた。前回対戦した時から時間が空いてどちらも指揮官もチーム状況も当然ながら変わった。愛媛戦に勝利したからといって満足することはないし、もっと勝点を積まなければ残留など見えてこない。ボールを持ちたがる相手だからこそ、基準点をブラさずにチャレンジするとともに、前節同様に一刺しで前に出たい。


メンバー

 ウチは前節から1枚変更。佐川→河田。今節から出場可能な河田がいきなりスタメンに。

 対する鹿児島は3枚変更。野嶽→渡邉、戸根→井林、山口→中原。山口が累積警告により出場停止。開幕戦で効いていた渡邉も9試合ぶりにスタメンに入った。

前半

 天候はあまり良くないが、KO時点では降っていない様子。ホームチームのキックオフで試合が始まる。ただ、開始直後からかなり雨脚は強まっていった。

 鹿児島は後ろで繋いでウチの重心を上げさせておいて、その裏で勝負しようという長いボールを落としてくる傾向。ウチは菊地の所を出口にして左サイドで前進を試みる。

 15分、ウチの最初の決定機。ハーフウェー付近でで中塩がスローインを河田に入れる。河田は競り勝って1つ内側に落とすと、梨誉がボールを流しながら前を向き、PA手前で右足を強振。これは岡本にブロックされるが、こぼれ球が佐藤の足元に飛んでいく。ボールが脚に当たったところ上手く前に跳ねて佐藤自身もフリーで抜け出す。しかす、左足アウトで放ったシュートはミートしきれずに泉森の正面に飛んでいった。

 鹿児島は藤本が前から掴みに来るものの、それ以外はやや自重気味で、ウチは比較的ビルドアップをさせてはもらえた。ただ、一度CHに当ててCBに戻したボールに対しては鹿児島もスイッチ入れて嵌めに来る。そのタイミングでは右のエドは単騎で前を向くし、左の菊地は梨誉の前のスペースに転がして打開しようとする。
 一方で、非保持時の部分でウチも整理しきれていない場面もあった。河田にまだ落とし込めていないのは承知の上での起用だが、1stプレスが掛からずに簡単にライン間で田中や鈴木にボールを渡されているのは怖さがあった。撤退してしまえば3ラインがコンパクトに整うので守りやすいが、ボールホルダーへのチャレンジが曖昧なのが故に結果として相手にスペースを与えて使われてしまう。

 27分、鹿児島がゴールに近付く。自陣でボールを動かして河田をサイドに寄せ、空いた中央のスペースを中原が使ってハーフウェーを越えて運ぶ。ウチはチャレンジせずにブロックを敷こうとするが、中原は左サイドの外山へ対角のパス。外山は右足に持ち変えてインスイングのボールを供給。これに菊地の背後から鈴木が飛び込んだが、菊地も身体をぴったり寄せて自由にさせなかったので、シュートは枠に飛ばない。

 30分も鹿児島がチャンスを作る。ウチのクリアを岡本が回収して中原に付ける。中原のアーリークロスに鈴木が反応するも中塩が身体を当てて対応。そのこぼれを田中が拾い、一度縦に仕掛けてから藤村に一度落として自らはサイドに開いて再度ボールをもらう。藤村がハーフスペースを抜け出していったが田中はそこを使わずに左足でクロス。このクロスに対してもエドが跳ね返し、アマも弾き出そうとしたがバウンドが合わずに距離を稼げない。再びボールを持った田中は中原に落とすと、中原はDFの頭を越すボールをファーに送り、そこに走り込んできた外山が左足で合わせたがシュートは枠の上。
 粘り強く対応はできているが、苦しい局面でクリアしきれないと受けの時間が長引く。

 36分、ウチの決定機。自陣でボールを動かして1stプレスを突破し、アマが中央でフリーでボールを運ぶ。アマ→中塩→風間→城和で一度やり直し、城和からパスを受けた中塩が左大外で走り出した菊地に縦を入れる。菊地は1stタッチでボールの勢いを上手くコントロールし、切れ味鋭い切り返しでマーカーの渡邊を剥がしてカットインし、右でアピールしていたフリーの佐藤へラストパス。このままシュートチャンスと思いきや、その手前で河田が被ってしまう。トラップでやや体勢が難しくなった河田は強引に右足で狙いに行ったが枠を捉えられず。
 自陣からのボールの動かし方もバイタルでの仕掛け方も完璧だったが、最後の仕上げが上手くいかなかった。原則の部分はこれから落とし込む。

 ウチは河田の高さを活かしたいという意識もあり、多少距離があっても競らせようとはした。が、その手前で引っかかることが多い。ちゃんと競ると50:50のボールをマイボールで収めてくれるので効果も大きいが、そのやり方一辺倒だと守りやすい。高さで分があるという意識が強いあまり勿体ないタイミングでクロスを上げることもあった。

 お互いにネットを揺らすことなく前半を終える。

後半

 後半に際しての選手交代は両チームともになし。後半に入ると一段と雨が強く打ち付けていた。

 49分、ウチのチャンス。自陣で大畑がボールを突くと、そのクリアボールを河田が上手く収めてアマに落とす。アマはそのまま斜め左へと運び、左に走っていた菊地へ。菊地はPA角から左足でファーにクロス。これを佐藤が折り返すが河田には合わず。流れたボールに梨誉が先に反応して落とし、アマがシュートを打とうとしたが上手く当たらず。
 奪ってからそのままポジトラで上回ったし、左からの展開も良かったが、仕留めたかった。

 鹿児島は引き続き裏を目掛けたボールでウチの守備陣を背走させようとする。角度を付けてサイドから逆のSH目掛けてくることが多い。特に左の外山が起点になっており、中原と入れ替わるように内側に入ってボールに触りながら大きな展開を探る。

 57分、ウチは河田→佐川、風間→瀬畠の2枚替え。河田はターゲットになる働きは果たしていたが、フィットするのはまだこれから。

 ウチはロングボールに対して中塩と菊地が冷静に対処していた。1つ収められると全体が押し戻されてしまうが、しっかり弾き返せていたのは大きい。左のハイボールの処理はウィークとして狙われている感がこれまでもあったが、エラーなく処理できると流れは引き寄せられる。また、鹿児島が対角のボールを使う分、ウチが弾き返した後のセカンドボールの回収にあまり人数を割くことができず、ウチが拾ってマイボールで落ち着けた。

 70分、鹿児島は中原→五領、藤本→五領の2枚替え。これに伴って田中が1つ後ろに下がった。

 75分、ウチは梨誉→樺山。樺山はそのままシャドーに入る。

 76分、樺山が左サイドを仕掛けて得たCK。佐藤のアウトスイングのボールに城和の後ろで大畑が合わせたが、シュートはクロスバーを叩く。
 ニアの1番手前に佐川が突っ込み、さらには城和と中塩もニア側に寄っていき、その後ろで大畑が走って合わせる見事な動きだったが、仕留められず。

 78分、鹿児島は圓道→武、渡邉→戸根の2枚替え。

 80分、左サイドで佐藤が抜け出した後に上手く身体を入れて深い位置でFKを得る。佐藤のクロスはクリアされるが、セカンドボールを樺山が右足でボレー。これはミートせずに左に転がっていくものの上手く城和に繋がり、最後は城和が右足でボレーを狙うもバーの上。鹿児島のDFが1枚残っていてオフサイドがなかったように見えただけに、決めたかった。

 81分、アマ→竜士、中塩→細貝でウチは5枚のカードを使い切る。菊地がCBに落ち、エドがLWB、佐藤がRWBになる。竜士は左のシャドー。

 終盤になると鹿児島が最終ラインからウチのWBの背後のスペースに狙うボールを多用。サイドでファイナルサードまで持っていかれるものの、WBやシャドーの懸命のプレスバックで中に入る前にある程度蓋をした。

 しかし、90分に試合を動かされる。ウチが敵陣右サイドのスローインですぐにボールを入れ、瀬畠から中央の佐川にボールが収まろうとしたところを五領に身体を寄せられてロストし、鈴木が右サイドのスペースに有田を走らせる。城和が縦のコースを切りながらディレイさせていたが、有田はカットインして左足を振る。これがブロックに入った菊地に当たってディフレクトしてゴールに吸い込まれた。これは櫛引も見送るしかない。
 五領と武がスプリントしてきた分、菊地と大畑が中のケアも頭に入れなければならず、難しい対応を迫られた。菊地は懸命に戻っていったが報われず。良く戻っていたのだが、有田が左に持ち変えたタイミングで1歩でも間合い詰めて寄せられれば結果は違っていたかもしれない。ただ、この失点に関しては責められない。

 1ポイントでも積まないと苦しい状況下で、90分に先制点を許す。この時点で正直見ているのが辛くなった。1勝しただけで何かが根本的に解決したわけではないと思い知らされたし、結局大きくは変わらないのかと諦めかけた。
 しかし、ピッチ上では選手達が最後までゴールを目指し続ける。

 失点直後のキックオフから城和を上げて前の枚数を増やしてのパワープレー。敵陣でボールを動かし続け、佐藤→樺山→瀬畠→菊地と右から左にボールが推移し、菊地は左大外に張る竜士へ。竜士は足裏でボールを触りながら緩急を付けてマーカーを剥がし、左足で鋭いクロス。これに中央で佐川がヘディングで合わせたが、下がりながらの難しい体勢でのシュートは抑えられずに枠を越える。

 90+3分、鹿児島は田中→千布で時間を使う。

 90+6分、ハーフウェーからのFK。佐藤が長いボールを入れると、PA角で競る佐川の頭を越えて城和に届く。城和は右足でのトラップがやや大きくなったが、左足を振り抜く。強烈なシュートだったものの、左ポストの外側を叩いてこれも決まらない。

 90+1分、自陣でファウルを受けた大畑がすぐに前線にボールを送る。これは鹿児島に跳ね返されたものの、セカンドを回収した菊地が左のエドへ。エドは外から内側にボールを運び、佐川に斜めの楔を入れる。右に佐藤がフリーで走っていたが、佐川は右足での1stタッチで前を向くと、左足アウトのボールタッチで寄せてきた2人を剥がし、そのまま左足を振る。低い弾道の威力十分のミドルはネットに突き刺さり、土壇場で劇的なイコアライザーが生まれた。
 リスタートから全員がゴールを目指して動いた結果。いつ笛が吹かれてもおかしくないラストプレーだったが、大畑が躊躇せずに前に蹴り、こぼれを拾った菊地もすぐに前のエドに送った。城和が最前線に立つことで相手のマークがぼやけ、佐川がライン間で浮いてフリーになる。外を使う選択肢もあった中で、自ら仕掛けて決め切ったみごとなゴール。

 ゴールが決まった後にすぐに樺山がボールを拾っていったが、そこからプレーが再開されることはなく、1-1で終了。

雑感

 試合内容や順位表を考えても勝たなければならない試合だったと言うべきなのは間違いない。ただ、こういう最後の最後でポイントを拾うようなしぶとさが見られた。少しでもポイントを拾っていかなければ先がない。

 相手にほとんど決定機を作らせずに対処できていただけに、失点時の一発に泣いた。大きな展開1つで局面をひっくり返されたのは割り切る。前半はまたプレスの空転が少し見られたが、1stプレスの部分は河田含めて再考しなければならぬ。
 バイタルまで到達して決定的な形も何度か作るまでにはなった。決めるべきシーンを決めれば愛媛戦のように勝利に結びつくし、優位に試合を進める。菊地の上がりが上手くチャンスに繋げられてはいる。シャドーもニアゾーンを取るなど狙いは見える。

 ここで中断期間に入り、次節は8月に入ってから。少しずつ状態が上向いてきているからこそ、この中断期間の使い方は重要。新加入組が多くいるし、もう一度戦い方を整理するのはマスト。
 クラブとしても集客面で勝負を掛ける再開明け初戦、ここを取って勢いをつけたいところ。

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