難攻不落 vs大分 0-1

 トランジションで上回れ、終始熊本に前向きのプレーをさせてしまい敗れた前節。前線4枚の配置で幅を広く使われ、選手間の距離が広がり、チャレンジ&カバーが機能しなくなっていた。サイドに1枚張らせ、あとは狭く保っているので、ロストしたら一気に囲みに来たのだが、あの殺気立った感じは東北の某チームに通ずるものがある。

 1つ結果が欲しい状況で迎えるは大分。この流れで戦いたくはない相手。ポジショナルプレーという文化が根付いたクラブ。前任者の片野坂氏の功績は大きい。昨シーズンは勝点を積めずに降格となってしまったが、天皇杯では準決勝で川崎との死闘を制し、決勝まで進んだ。決勝でも土壇場で一度は追いつくなど、勝負強さを発揮。天皇杯準優勝という結果を置き土産に、片野坂氏はG大阪へ。
 今シーズンからは下平氏が指揮を執る。元々は柏の育成組織で監督を務め、クラセン優勝やプレミアEAST昇格即優勝などに導いた。その後は柏のトップチームでも監督となり、2017シーズンは手塚康平、中山雄太、中谷進之介、中村航輔、中川寛人らユース時代の教え子達が中心となったチームでJ1で4位に入った。翌2018シーズンはACLとリーグのどちらも結果が伴わず途中解任(その後の柏の崩壊ぶりを見ると、解任の判断も微妙ではあった)。2019シーズンからはフリエの監督に就任し、J1昇格へと導いた。あのクラブはピッチの外で色々とありそうだし、指揮するのも一筋縄ではなく、昨シーズンは途中解任。
 片野坂氏とタイプは違えど、ボールを大事にする点では変わらない。HCもポジショナル志向の岩瀬氏を据え、構造を練っている。ただ、いくら同じ志向を持っているとしても、原則を落とし込むには多少の時間を要するのは仕方ない。開幕戦がCOVID-19のアクシデントで中止になるなど、スタートダッシュできる状態にすらならなかったのも響いた。勝てない時期もあったが、徐々に白星先行。しかし、ここ6試合勝利がなく、この試合は是が非でも取りたいはず。

メンバー

 ウチは前節から2枚変更。稔也→岩上、天笠→山根。岩上と内田のいつもの組み合わせに戻し、風間はRSHに。川上と北川が久しぶりにメンバー入り。

 対する大分も引き分けた秋田戦から2枚変更。上夷→松本、野村→渡邉。

前半

 試合の入り方は前節と比べ物にならないほど良かった。岩上と内田に加えてサイドに風間がいることで、足元に繋ぐシーンと逆サイドに展開するシーンの使い分けができていた。大分は開始直後からウチの小島をポイントにしてロングボールを入れ、それに呼応するように全体が押し上がった。

 17分、相手と駆け引きしながらビルドアップ。畑尾に入ったタイミングで相手のプレスが緩く、畑尾は右サイドへフィード。右の角で小島がボールを受けると、そのままゴールに向かっていく。クライフターンで松本をかわしてPA内に侵入。左足でシュートを放つも、高木がファインセーブ。意図してたか定かではないが、こぼれ球を詰めさせないように、誰もいない方向に弾いていた。

 20分にも形を作る。自陣右サイド、小島のスローインから。ボールは風間の頭上を越え、相手に跳ね返されるがこぼれ球を岩上が競り勝つ。岩上のヘディングしたボールを受けた風間はワンタッチで相手ラインの裏へ。そのアバウトなボールはペレイラにクリアされる。しかし、セカンドを岩上が拾い、ワンタッチでKJへ。斜めの動きで右サイドに流れたKJは、中央へ早いグラウンダーのパスを選択。平松に通れば決定機だが、伊東が間一髪で先にボールに触れて、シュートまでいけなかった。

 ウチが相手エンドに攻め込む時間が多かったが、先制したのは大分である。22分、大分左サイドで松本から藤本に楔が入る。藤本は深く抉る姿勢を見せながら、松本にリターン。松本も縦への意識を持っていたため、小島・風間・岩上の3枚が寄せに行く。しかし、松本は切り返し&急加速で剥がし、弓場へ落とす。弓場は三竿とのワンツーでタイミングを窺い、アーリーを上げる。クロスは岩上に当たってディフレクトすると、城和の後ろに渡邉が走り込んでプッシュ。
 岩上の寄せがわずかに遅れたこと、オーバースピンがかかって城和の頭を超えたこと、渡邉がフリーでCB間に入っていったこと、いくつもの重なりがあっての失点となった。不運で片付けることもできるが、こういうアンラッキーを跳ね返せるようになりたい。

 先制したことで、大分もある程度落ち着いてボールを動かす。井上と藤本の両WGがサイドに張って幅を取りつつ、ハーフスペースで渡邉がボールを引き出して前進するので対応しにくい。そこに伊東・松本のSBがインナーラップしながら絡むから、ボールサイドに人が足りなくなりがち。
 あとは大分の左サイドで作って、詰まったらサイドチェンジで山中の裏を狙ってきた。身体の向きを変える必要があるし、身長的にも難しいシチュエーションだったが、ほぼ頭を越されることなく対応していた。

 ウチとしても、相手が人数をかけて仕掛けてくる分、奪った後にKJにボールを付け、ポジトラで殴ろうとはしたが、大分も要所は締めていたので、決定機とまでは至らない。

 悪い内容ではなかったものの、この試合でもビハインドで前半を終える。

後半

 後半も立ち上がりは、両サイドに振りながらビルドアップができており、入り方は良かった。

 49分、畑尾が井上とサムエルの間を通して内田へ。自陣ゴール方向を向いていた内田は左方向からのプレスを察知すると、敢えてトラップせずボールを流し、上手く入れ替わる。ボールの勢いのまま敵陣に侵入し、左の山根へ。山根はフリエ戦をイメージしたであろうグラウンダーのクロスを入れたが、高木に処理されてしまう。

 69分にもチャンスを作る。平松とKJと風間が連動して高木と弓場にプレッシャーをかけ、高木に大きく蹴らせると、小島が前に出てインターセプト。風間にボールを渡し、小島は出た勢いそのままにスプリント。風間→KJ→小島と繋がって右サイド深く抉ると、マイナスのクロス。ボールの飛ぶ先に内田が走り込んでいたが、ファーストタッチが大きくなりシュートを打てず。
 ボール奪取からの流れは理想的だし、小島のクロスも軌道・スピード・コースすべてがパーフェクトだった。CHである内田がPA内に入っていたからこそチャンスになった。やや中に入り過ぎて、身体を開きながら右足でコントロールしようとした分、ボールの勢いを殺し切れなかった。

 78分は大分の決定機。自陣のビルドアップに対して呉屋がプレスバックしてボール奪取。そのまま自分でPA内まで持ち込みニアを狙ったが、櫛引が最後まで我慢してセーブ。

 その後も北川と高木を入れたり、川上をターゲットとして前線に残したり、何とか先ずは1点を目指して戦ったが、その1点が遠く3連敗。

雑感

 こういう試合で徐々に勝点を取れるようにしたい。

 ディフェンスに関しては先述のとおり、両WGが張る&渡邉が浮くなど難しい要素は多かったが、最少失点で何とかまとめた。失点時はアクシデンタルなものと多少割り切りたい。勿論、クロスに至るまでのシーンで止めるポイントはいくつかあったし、防ぐこともできたかもしれない。とはいえ、試合を通して見れば崩された場面もさほど多くない。守備強度を継続していきたい。

 攻撃は、HTの指示で出ていたように、「もう1つ剥がす判断」が求められる。町田戦でも感じたが、抉らずにアーリー気味で上げて相手に引っ掛かる場面が散見される。当然、アーリーでゴールまで結びつくこともあるので一概には言えないが、相手にも高速ニアクロスがバレてきおり、次の手が必要。縦への姿勢を見せなければ、相手に与える脅威も変わる。恐らく、「剥がす判断」はビルドアップ時にも該当すると思われ、持ち上がる局面と早めに叩く場面の判断をハッキリさせたい。

 これで3連敗となったが、ここ3試合こぼれ球が悉く相手ボールになっていた。失点も含めて、なかなか流れが来ない。自分たちの流れになるように目の前のことをこなさなければならない。
 まずは、ミッドウィークの天皇杯。ここをきっかけにチームとしての更なる上積みをしたい。

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