心機一転 vs東京V 2-2

 前節は自滅に近い形で失点し、殴り返すこともできず惨敗。3連敗となったタイミングで遂にクラブ史上初のシーズン途中での監督解任を決断。個人的には奥野さんともっと戦いたかった思いは強くあるが、クラブの決断を受け入れるしかない。即座の結果を求められる状況下では、プライオリティは変わってくる。
 後任は内部昇格で久藤さんに決定。往々にして内部昇格が横行するこの国の一般的な監督人事は疑問に思うが、現状を知っているという点を考えると、短時間でチームを立て直すことに懸けているのだろう。久藤さんは2019シーズンに福岡でシーズン途中から指揮を執り、残留に導いた経験を持つ。当時のチームを観た記憶があるが、原則を徹底した印象があり、いかに凪の時間を多くするかを求めていた。城後やセランテスなどを中心にチームが結束したおり、堅さは保たれていたと思う。
 久藤さん就任して2日後に行われた天皇杯3回戦。2回戦で瓦斯を喰った順天堂大学との対戦は、やりにくさしかなかった。立ち上がりは攻勢をかけたものの徐々にトーンダウンし、先制を許す。後半にもCKから追加点を献上し、引き立て役を全うするかに思われた。しかし、そこから脈略なく2ゴールを奪って追いつき、最後は高木がBS劇場を仕上げた。あのまま負けていたら心が折れたが、何とか勝ったことで、帰りに大雨で濡れたことも、試合中に近くの席のノーマスクで叫ぶ輩に中指を立てられたことも報われた感じはする。

 ミッドウィークに試合を行い、尚且つ120分戦ったというダメージを抱えて挑む相手は東京V。前半戦は稔也で先制したものの、前半終了間際に相手に流れをプレゼントして逆転負け。
 序盤戦こそ不安定な戦いをしていたヴェルディだが、新潟戦の7失点で目が覚めたらしく、徐々に状態が上げてきた。6月は無傷の4連勝(5月末からのトータルで5連勝)を飾り、永井監督は月間優秀監督に選ばれた。が、7月頭の盗人戦で痛恨の取りこぼし。その結果、今日の試合前にサポーターによるお気持ち弾幕が出る事態になったっぽい。下位相手に続けて取りこぼすわけにはいかないはず。

 監督交代後のリーグ初戦。結果を出したい。

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 ウチは前節から3枚変更。有給の広大に代わり内田がCB。右サイドには翔大が入る。昇偉→ジャス、久保田→勇利也。ベンチにはミツが久々、小島もリーグ戦では11月以来の復帰。

 対するヴェルディは前節から変更なし。上位に食らいつくためにも、後半戦初戦は勢いをつけたい。

前半

 凪。大分凪。ヴェルディが山下に裏走らせてくることは覚悟していたが、上手く対応して事故を起こさせない。体感的には2:8くらいで支配されていたが、焦れずに固める。

 17分、右サイドでジャスのスローイン。ジャス→高木→ジャスとボールを回し、中央の岩上へ。プレッシャーが来ないことを察した岩上はボールを運び相手を食いつかせる。その後、絶妙な浮き球でラインの後ろにボールを供給すると、レーン移動でフリーになった勇利也が抜け出す。しかし、バウントが合わず。

 やばいシーンも作らせず、内容が乏しいなりにやり過ごしていた。そのままいければ良かったが、そう上手い話はなかった。29分、ヴェルディ陣内でのビルドアップ。左の山口を片上げし、3バックの形だったが、右の福村がボールを持った場面でボニが同じラインまでポジションを上げ、これにより大前がボニを捕まえる必要が生じた。すると、縦のギャップが生まれると共にウチのFWの間が空き、若狭から弘堅へのパスが繋がってしまう。弘堅は落ち着いて前を向き、丁寧なフィード。ジャスの体の向きに対し死角になっていたところから小池がアタックしてボールを拾い、すぐに佐藤優平にスイッチする。オーバーラップした山口をケアしてラインが下がったことを見るや、佐藤は山口を囮にクロスを上げる。畑尾の視野から消える動きをした端戸が奥行きを使って点で合わせて先制。綺麗。ウチの対応は惜しかったが、これは相手を褒め、ある程度割り切るしかない。

 先制されたものの、ウチの戦い方は変えず。多少懐までプレスにいく姿勢は見せたが、ボールを奪おうとするほどの圧力はかけなかった。

 天皇杯含めて直近3試合連続の0-1で折り返す。

後半

 後半になると、明らかにウチはスイッチを入れた。右サイドの裏を翔大と高木がどんどん狙い、ジャスが援護射撃を試みる場面が多くなる。

 51分、ジャスと翔大のワンツーからジャスがワンタッチで右サイドのスペースへ。高木が体を上手く入れ替えて駆け上がるとクライフターン。クロスはクリアされるも岩上が回収し、左の大前へパス。さらに大外の勇利也に渡りクロスを上げると、ファーで翔大が折り返す。それを受けた高木が打とうとするもファーストタッチが乱れてDFにブロックされる。再度大前が拾って岩上に渡すと、切り返して左足でシュート。相手をかわすイメージは昨季の松本戦を彷彿とさせたが、軸足が滑ってシュートは枠に行かず。

 54分、自陣から翔大が運んで岩上へ。岩上は一気にスプリントした稔也へ渡す。稔也はルックアップして勇利也のポジションを確認する。稔也と対峙する福村が勇利也を警戒して間合いを詰めずにいると、稔也は右アウトで中へ。そこに走り込んだ岩上が合わせて試合を振り出しに戻す。佐藤優平の背後のスペースは空く傾向があるというヴェルディサポのツイートを度々見ていたが、納得した。にしても見事な流れで決め切れた。

 さらに60分、左サイドでボールを繋いでクロス。跳ね返されたボールを岩上がギリギリで刈り取り、弾んだボールを内田が何とかジャスに繋ぐ。相手のスライドが追い付かず、フリーのジャスはアーリーを選択。それに合わせたのは高木。天皇杯で点を取って肩の荷が下りた高木がリーグ戦でも結果を残した。高木と勇利也がファーの深い位置を取れてるのは素晴らしい。加えて、練習からずっとあの位置から上げる練習していたジャスのアーリーがゴールに結びついて嬉しい。

 勢いに乗って逆転できたことで、チーム全体が元気になった。プレスの出足が良くなり、ポジティブトランジションでも相手を上回っていた。

 とはいえ、勢いだけでは誤魔化しきれないのも仕方がない。77分、福村から小池へのフィード。ミツがディレイさせていたが、稔也と岩上の2人とも最終ラインに入り、石浦のケアに回ってしまう。それにより弘堅がフリーになり、ボールを受けると右足一閃。芯を捉えたボールは無回転となり、不規則な変化を起こす。これには慶記も反応しきれず、ゴールに吸い込まれる。あのシュートは防ぎようがないし、弘堅に時間とスペースを与えるとああなる。

 その後も、お互いに惜しいような場面は何度か訪れたが決定機までは行かず。特にウチはミッドウィークに120分戦った影響が顕著に表れ、トランジションができず、ボロボロだったがよく耐えた。新監督リーグ初陣は2-2で終えた。

雑感

 まだ1試合だけでは判断できない部分は多々あるが、どん底からは抜け出せたのかもしれない。

 守備時の過失はほぼない。リードしている場面で最終ラインに吸収されてプレスにいけない悪癖は今に始まったことではないが、日程感覚考えると致し方ない面はある。理論に基づいて攻めてくる相手に対し、中を締める、とにかく固める、陣形が整ってから圧をかけるという意識の共有が見られた。今までは、中途半端なタイミングでプレスを掛け、自分たちで穴を作っていたことも多かったので、奪回を志向しないのは納得。
 あとは、翔大が右サイドにいてくれているメリットは大きい。プレスバックもするし、前でターゲットにもなるし、献身性に救われている。

 2点とも見事な崩し。前監督が求めていたサイドの攻撃から2点生まれたのは、複雑な思いもあるものの、積み上げていたものがようやく実っているのかもしれない。
 高木の取説の解読もようやく完了した感。本人も気負わず余裕を持ってプレーできている様子が随所から伝わってきたが、周りも活かし方を心得てきた。無理に背負わせるんじゃなくて、どんどん裏抜けさせりゃいいんじゃね?ってボールが増えてる。
 それができるのも、やっぱり翔大がサイドで1つポイントを作ってくれるから。昨シーズン開幕前、KJとのインスタライブで翔大がケインを参考にしていると発言していたが、今日のプレーはまさにケインだった。ゴールデンシューズを度々獲得し、9番の役割をクローズアップされることが多いが、モウリーニョ体制ではサイドで起点になることが増えた。ケインがサイドに開いてポイントを作り、逆で走るソンフンミンに展開する形は十八番だが、1列下がることでマークが曖昧になり、自由度が増し、10番の働きもできる。昨シーズンのホーム甲府戦の大前に出したスルーパスまでのプレーもケインっぽさがあったが、今日も特徴を存分に発揮されていた。欲を言えば9番の仕事も見てみたいが、今のポジション的には贅沢だし、そもそも8番の仕事もやってる感じもする。今後も、右でポイントを作ってくれるとチームとして有り難い。高木と翔大、北川と翔大の同時起用が見れるのも楽しみ。

 監督交代ブーストなど存在しないのが通説だが、1つの転換点になるのは事実。堅実に勝点を積み、最低限の目標は達成するのみ。

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