戒驕戒躁 vsいわき 1-2

 前半は相手にペースを握られながらも後半開始早々に一刺し、その後もいくつかピンチを招くも耐え抜き、ウノゼロで勝ち切った大宮戦。今季4勝の中で最も苦しんだ内容だったが、それでも3ポイントを積めるのは勢いか実力か。いずれにしても、現時点では大崩れせずにまとめられている。

 3連戦を連勝で締めくくるべく乗る込む今節の相手はいわき。公式戦初対戦である。県リーグから全カテゴリを制覇し、7年でJ2までたどり着いた。ここまでの急激なステップアップはウチの黎明期と通ずるものがあるが、クラブとしての体制は比べられないほど整備されている。90分倒れないというコンセプトを明確に打ち出し、それを体現している。
 J3初年度を優勝し、1年で駆け上がってきた。J3昇格時から指揮を執る村主氏2年目のシーズン。相馬政権時の町田でコーチを務めていたということが良く分かる横圧縮。同一サイドで圧力を掛けて奪い、そのまま狭いスペースで打開できる。町田戦でもプレッシャーをモノともせず短いパス数本で局面を変えて前進していた。筋トレやサプリ摂取などでアスリート能力のベースを高めた上で、コンセプトを徹底した戦い方はJ2でも遜色なく通用する。それだけで勝ち抜けるまで現時点では至っていないが、ここから更に飛躍する可能性は十分ある。

 ウチもやるべきことを実直にやり続け、ここまで勝点を積んできた。ただ、勢いで誤魔化せないとすると今節のような気はする。フットボールの本質で勝負できる好ゲームになるだろう。逆にここを乗り越えられれば、いよいよ上を見ることができる。

メンバー

 ウチは前節からノーチェンジ。3連戦を全て同じメンバーで戦うことに。疲労の蓄積は間違いなくあるが、メンタル的な充実度でカバーできるか。

 対するいわきは、敗れた前節金沢戦から3枚変更。辻岡→河村、永井→鏑木、坂元→有田。

前半

 いわきのキックオフで始まったが、最初のプレーでウチは平松と長倉がスプリントしてプレスを掛ける。インテンシティ高い相手に対して向かっていく姿勢を打ち出し、結構ハイプレス気味で試合に入る。

 しかし、いきなり相手にいなされての失点。6分、いわきが最終ラインでボールを回す。一度右に流してから再び左に戻し、ウチがスライドを要する状況を作る。遠藤のフィードは岡本が身体の向きのフェイクで回収し、さらに即時奪回の谷村のプレスの矢印を折って岡本は前進。そこから長倉に付けようとしたが、強風に押し戻されてややショートして山下が回収。山下は左の河村に渡し、河村から斜めのボールが入ったがアマがカット。しかし、山下が再度奪い、こぼれを鏑木がコントロール。佐藤が何とか掻っ攫ったものの山下がワンタッチで宮本へ。宮本→加瀬→石田と繋がり、石田がそのままレーンを横切るドリブル。ウチのCBを釣り出したところで谷村にスルーパス。谷村は落ち着いてコントロールし、中央にプレゼント。そこに走った有田がプッシュしていわきが先制。
 ただただいわきの上手さが出た。加瀬や石田が中央にいる時点でウチは対応しにくい。ボールの落ち着かない状況下で山下が宮本の足元に付けてリズムを作ったのが大きかった。

 失点直後もいわきの勢いに呑み込まれそうになり、ビルドアップのエラーからあわやのシーンもあったが、そう簡単には割らせず。
 徐々に落ち着きを取り戻すと、少しずつ立ち位置に変化を加える。手始めは中塩が純粋な4バックのLSBとしての立ち振る舞いをし、エドとの関係性で前にポジションを取る。また、風間が畑尾-中塩間に立って補完することもあり、ビルドアップの安定感は増す。加えて、中盤で相手を背負う状態で受けることの多かった風間がプレスを回避し、フリーでフィードを蹴れるのもメリット。そして、最終ラインに喰い付かせてからSBの裏にシンプルに落とすことで活路を見出す。SBがウチのWBを捕まえに来るからこそ、局面をひっくり返してSHやFWでボールを収めた。

 とはいえ、なかなかチャンスまでは持っていけず、そうするとやはり下で繋ぐ上での必要コストを払うこととなる。33分、中塩がハーフウェー手前で畑尾に戻そうと背を向けたところを加瀬がロックオン。ボールを奪ってそのままトップスピードで前進。やや右に流れてドリブルして畑尾を釣らせ、それによってできたパスコースを使って谷村に通す。谷村は右足で外から巻くイメージのシュートを放つ。失点を覚悟したが、ボールは僅かに左に逸れた。
 ビルドアップをする以上こういったロストは織り込み済みだし、そこに槍玉を挙げても仕方がない。2人で完結させられたのは少し頂けないが、最後のシュートシーンではアマまで帰ってきて何とか圧力を掛けた。

 何とも消化不良感を抱える中、更なる追い打ちとなるアクシデント。40分、至近距離で蹴られたボールが振り向きざまのエドの頭に直撃。視野外から飛んできたため力を入れて構えることもできず、カウンターで入ってしまい、脳震盪。続行不可となり、山中と交代。脳震盪は大事に至らなかったとしても、プロトコルに則って活動する必要がある。まずはエドの軽傷を祈るばかり。

 45+2分もいわきの決定機。いわきが敵陣に押し込み左サイドでのスローイン。河村がシンプルに有田に放る。有田は胸で落とすと、鏑木がワンタッチでクロス。ゴールエリア手前で谷村が受けて前を向く。角度がなくシュートコースは切られていたが、谷村はタメを作ってから1つ後ろに浮き球のラストパス。これを起点となった鏑木が走り込んでボレー。完全に崩されたが、このシュートも僅かに右へ流れていった。
 スローイン1つでフィニッシュまで完結させられるんだと感心するばかりだが、鏑木のパス後の動き出しに誰も付いていけておらず、やはりコンディション的に厳しいのではないかと推測される。後手後手の対応が続き、易々とPA内への侵入を許してしまった。時間が時間だけに、スローインに至る前のプレー含め、ハッキリさせたかったところ。

 内容は芳しくないが、最少得点差で前半を折り返す。

後半

 風上に立つ後半、仕切り直していきたかったが、またも開始早々に出鼻を挫かれる。

 49分、ウチの陣内深くでのいわき左サイドからのスローイン。河村から鏑木の足元にボールが入ると、鏑木→山下→谷村のパスワークでラインブレイク。この谷村のクロスは酒井がカットしたが再びいわきのスローイン。河村が今度は山下に出し、中央のレーンの宮本が同じ高さで受ける。山下はターンしながらコースを窺った後、山下にリターン。山下は一度遠藤に戻すと、その遠藤がワンタッチで谷村にドンピシャのパス。谷村は深く抉ってマイナスの鋭いクロス。これを有田が飛び込んで押し込み、追加点。
 同じサイドで完結させた見事な攻撃。多分、山下と宮本のところでもう少し限定掛けられれば良かったんだろうけど、なんせ同一サイドに飽和ギリギリまで人がいるからこそ、ウチがボールへチャレンジするために走る距離が長くなった(=それだけ相手がノープレッシャーでボールを扱う時間が長くなる)。SB-CB間をブレイクされるのは辛いものがあるが、ここもコンディション面を言い訳にしたくなってしまう。珍しく岡本がボールウォッチしてしまったが、やはり一度ボールが下がったことで全体として止まった印象は受ける。

 点差を2点に広げられたことで、53分、ウチは流れを変えるために3枚替え。佐藤→北川、アマ→内田、平松→川本。前線の動き出しを軽くし、鋭さを出したい。

 すると、直後に1つ形を作る。55分、敵陣深い位置でのスローイン。山中から中塩にスローワーをスイッチし、山中が素早く受けてリターン。中塩は一度内田に下げて作り直す。内田→酒井→風間→中塩→内田と少ないタッチでリズムを作り、内田が左足で縦を刺す。これは相手にカットされたが山中と北川が寄せてすぐに奪い返す。そのこぼれを長倉が拾い、左の川本へ。PA角で受けた川本は細かなステップで正対する相手を剥がし、中央の北川に送る。北川のシュートはゴール前を固めたいわきの守備陣に弾かれる。こぼれをさらに北川が打つが、ゴールまでは届かず、最終的に高木和に収められる。
 前半は少なかったタッチ数の少ない攻撃と、奪われた後の1stディフェンスから攻め切った。ここにきて本来の鋭さが戻ってきている。

 61分にもチャンスを迎える。自陣に入ったところで山中が積極的なボールアタックを見せて奪うと、スイッチするようにして長倉がボールを持ち、見事に相手を躱して敵陣に侵入。もう1枚来たところで外側の山中へ。山中は無理に打開するのではなく、タイミングを図り真横の長倉に渡す。長倉はワンタッチで中央の北川に流すと、北川は1stタッチで相手の逆を取り、左に持ち変えて強烈なミドル。これは高木和に弾かれたがこぼれを風間が確保し、岡本へ落とす。岡本はワンタッチでクロスを上げたが、惜しくも合わなかった。
 高い位置でボールハントしてから一気にパワーを使ってシュートまでの流れ。縦に速くしようとすると却って相手の思う壺だし、平行のパスは効果的。どちらかというと相手のベクトルは縦方向に向く分、ウチは横を意識させられれば、結果として縦も空いてくる。

 64分、遂に1点を返す。ゴールキックの流れで自陣PA内の中塩から左ワイドに張った内田の足元に通す。内田は斜め前方のスペースにボールを供給し、そこに川本が落ちてくる。そこから先が繋がらず一度跳ね返されたが、セカンドを拾って次のフェーズへ。中塩→内田→長倉→風間とワンタッチで狭いスペースを抜けると、風間は右の岡本へボールを解放。岡本はスピードを維持しながらマーカーの加瀬の前に入るコース取りをしてドリブル。アタッキングサードに入るところで上手くターンして風間に落とす。右外を酒井が回っていたが、風間はそこを囮にしてアーリークロスを入れる。これに長倉がダイビングヘッドで合わせた。
 左で作って右で前進するところも良かったし、やはり風間がプレッシャーに晒されずにボールを蹴れるシチュエーションを作れるかは重要。そして、ボディコンタクトがありながらも、その反動を上手く利用して決め切った長倉のセンスはずば抜けている。

 76分にもゴールに近付く。内田が相手の1stプレス隊の脇に移動して畑尾からボールを引き出し、ワンタッチで外の中塩へ。中塩から山中に縦が入ったところで倒されてFKを得る。そのFKも内田が中塩に付けて素早くはじめ、中塩が山中に再び楔を通して1stラインを突破。山中はタッチライン際でワンタッチで縦にボールを流し、そこに北川が走る。北川は相手のプレスが緩いことを察知して中を向き、PAのスペースにボールを流す。そこに急加速した山中が入ってきた。高木和が果敢に飛び出してきたが、触られる前にコースを変えて中にボールを送る。最後は川本が押し込もうとするが、相手の寄せに遭って枠に飛ばせなかった。
 相手のインテンシティが時間経過とともに落ちてきたのはあるが、内田の投入によって選手間の距離がより改善され、プレスを直に受けることが減った。そして、山中の所で緩急を生み出せるので、チームとしての意思統一がしやすい。決めきれればベストだが、ゴールの可能性は上がっている。

 しかしながら、最も求めていた次の1点に手が届かない。最後は城和を入れて畑尾を前線のターゲットにするファイヤーアタックを試みるもゴールを割ることはできず。

 3連戦の2戦目は1-2で敗れ、連勝は4でストップ。

雑感

 戦前に予想していた通りの展開となったが、一矢報いたことをポジティブに捉えたい。

 守備は久々の複数失点。どちらも立ち上がりに仕留められたが、やはり全体的に動きの重さはあった。それに加えてフィジカルコンタクトを厭わない相手だったため、球際での消耗も激しい。
 同一サイドでの相手の攻撃に対し、ウチも中盤4枚の横スライド+逆大外捨てで試合中で修正した点は収穫と言える(疲弊は大きいけど)。70分以降はほとんど相手の守りの意思が強まったとはいえ、ほぼ攻めさせずに試合を進められたことからも、試合を通してのプランニングは遂行していたとは思う。立ち上がりの失点で難しくなったが、大きく崩れてはいない。

 攻撃時は相手のプレスのベクトルを正面から受けてしまった印象が前半はある。これは風下に立った影響はあるが、距離感がいつもよりも遠くなってしまい、パスのテンポが上がってこなかった。風間が3CBの脇で受けるようになったり、内田も同様のポジショニングで中継役となったり、距離感を修正することでSBが高い位置を取って押し込めるようになった。そして、やはりテンポアップして狭いスペースでもロストしないようになると、本来の攻略法であるサイドチェンジも効果が出てくる。追いつくところまではいけなかったが、試合中の修正であと一歩のところまで到達したのはプラスとなるはず。

 色々と影響を受ける要因はあったが、それでも結局は自分たちがやるべきことをできたかに帰結する。それは、結果が出たとしても出ていなかったとしても一緒。確かに、ここで1つ流れは途切れるかもしれないが、ここまで積んできた17ポイントが減っていくわけではない。全てを否定する必要は絶対にないし、この1敗をどう活かすかを考えずに目先で評価する価値もない。
 切り替えて、また積み上げていくのみ。

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