因果応報 vs緑色 1-0

 90分のマネジメントの大切さを思い知らされた山形戦。アクシデントはあったものの89分間はプラン通りで塩試合を演じていただけに、あの1プレーが悔やまれる。欲張らずに1ポイントずつ積んでいくしか道がないと再認識。中原と山田康太は勿論だが、半田陸は今シーズン対戦した中でもベストなSBじゃないだろうか。サイズもあるし、あの攻撃のセンスは非凡。今週U-22日本代表としてアジアカップ予選に出ていたのも納得なポテンシャルだし、個人昇格待ったなし。

 で、流れが良いとは言えない中で迎えるクズ緑戦。文字通りの天王山。このチームのリスペクトすべき要素なんか全くない。
 ほぼほぼ試合も見てないからチームスタイルも良く分からないが、夏場に監督交代を行い、最近は支配率を高めているんだとか。前節岡山戦では59.4%の支配率を記録していて怖さはある。因みに、結果は3-0で岡山の完勝。
 データを確認すると、ウチ以上に点が取れない&守れない。左サイドに特徴を持っており、ドリブルでの指標が高い。水戸から強奪した外山が効いているのは明白。クロスからの失点に滅法弱いというデータもあり、かつてのチームとはイメージが異なる。
 リーグの中でも目立つデータとなるのは警告と退場、これは従来通りの印象。あとは、被シュートの成功率がが高い。つまり、シュートを数打たれれば、それだけ緑色のチームの失点確率が高まる。

 アウェイ席が完売しようが関係ない。順位相応の戦いをして、下のチームを叩いて蹴落とせ。

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 ウチは前節から3枚変更。藤井→ミツ、内田→中山、北川→翔大。ミツも中山も久々のスタメン。

 対するアウェイチームは6枚変更。村山→圍、大野→宮部、橋内→星、佐藤→表原、平川→安東、外山→小手川。まさかの外山がメンバー外。瓦斯U-23の時に対戦して手こずった記憶のある平川もメンバー外。

前半

 予想に反して緑が立ち上がりからボールを放棄し、ウチがボールを握る展開が続いた。ボール保持するほど結果が伴わないきらいがあるので、立ち上がりの評価はしにくかった。

 4分、CKから緑色のチームに決定機。小手川はショートを選択して表原へ。再び小手川にリターンされると、今度は下川まで下げて角度を変える。下川の低い軌道のクロスに常田が合わせる。ボールは勢いよく枠内に飛んでいたが、慶記が落ち着いてパンチング。

 相手が極限までリトリートしていた分、ウチはハーフウェーまでは造作なく前進が可能。敵陣に入ると多少プレッシャーはかかるが、ボールを誘導するポイント設定がなされていないことから、ウチはある程度自由に前進できた。ただ、中途半端なパスを掻っ攫われてピンチになる場面は何度かあった。とはいえ、逸る気持ちをコントロールできずにシュートを急ぐことが多く、決定機はそこまでない。

 この試合は、珍しく意図的に翔大が左側に流れていて、ミツ・中山・KJ・翔大の関係性で左サイドを攻略することが多かった。4人でのレーンの使い分けが見事で、レーン被りすることなく斜めのパスで翔大が抜け出すorミツがオーバーラップって形を作った。

 それが実ったのが31分。相手のゴールキックのこぼれ球を回収。例によって相手は帰陣し、1トップの伊藤は不貞腐れてボールに寄せず、大武が自由を得る。大武にスペースを与えれば正確なフィードで打開することなど、山口戦を見れば分かるだろう。今日は左サイドで張っていたKJへと対角線のフィード。KJは中にカットインし宮部と表原を釣る。そもそもWBの表原ではなく宮部がKJに相対している時点でバランスは狂っていたが、表原がそのカバーで最終ラインに戻ってスペースをケアしろというのも酷。狙い通りにKJは2人を手玉に取って翔大のランニングに合わせた縦パスを刺す。翔大は星との競走になったが、先に足を出して優位に立つと、後手を踏んだ星が無謀ともいえるスライディングを敢行。翔大が倒されてのPKゲット。星はそれまでも何度か早いタイミングでスライディングして対応するシーンがあったが、リーチがある分それを活かそうという意識が強いのだろう。そういった傾向を上手く翔大が察知し、大仕事をした。
 キッカーは大前。まったく心配せずに見てられる。見事にGKが跳ぶのを嘲笑うかのように逆側にボールを転がし、先制に成功。

 先制したことで、ウチとすればあとは60分弱塩を撒いて終わらせることが唯一のタスク。多少相手のテンポが上がるかと思えば、相変わらずの各駅停車。どっちが勝っているのか分からない。

 44分、ウチに決定機。ビルドアップで揺さぶりながら相手の陣形を徐々に崩す。左で構築してから一度岩上に戻し、一気に小島まで大きな展開。小島は稔也に落とすと、稔也は2枚を引き付けて小島にリターン。そのボールを小島がワンタッチで翔大に叩く。翔大は相手を背負いながらキープしている中、小島はPAに走り込むと見せておいて急な方向転換で下川を置き去りにして一気にフリーに。至極のフリーランで抜け出して翔大からのパスを受けると、またもやワンタッチで見事なコースへのクロス。大前のシュートは、DFのスライディングが視界に入ったことが影響して枠を捉えられなかったが、理想的な崩しを見せた。

 追加点は奪えなかったものの必要だった先制点を奪い、優位な状態で折り返す。

後半

 相手が前半同様のスローテンポのまま終止するとは思っていなかったが、後半開始から鈴木→セルジーニョ、星→野々村のテコ入れ。セルジーニョは怪我明けのスクランブル、星は懲罰とも取れる交代。

 劣勢のチームが状況を改善するためには、立ち位置を変える、若しくは人を変えることが手段としてあるが、相手は人を変えることを選択。しかし、例え構成要素が変わったとて、そもそものコンセプトが崩壊していれば意味がない。パスのテンポが一向に上がらず、しかも精度が伴わないため、度々稔也やKJが引っ掛けてショートカウンターで殴る機会を作る。

 それでも51分、この試合最大のピンチを迎える。セルジーニョのインスイングのCK。相変わらずニアを狙われ、常田がフリーでヘッド。ボールは慶記の脇を抜けて確実にゴールへ。しかし、ラインぎりぎりで小島が決死のクリア。京都戦に続き絶体絶命の場面をライン上で救う。前半からショートを多用してきたことで、そこへの警戒を強めていたことと、宮部が翔大の前を横切って稔也の近くに走ったことでスペースが生まれ、上手くそのポケットを常田に侵入させてしまった。ゾーンディフェンスの脆弱性がこの試合でも露呈されたてしまったものの、最後の最後で踏みとどまった。

 56分、下川のアバウトなボールを小島がインターセプトしたことからのショートカウンター。岩上が素早くターンして大前に楔を入れる。大前→翔大→大前でテンポを早めると、大外の稔也へ。稔也を緩急を付けてマーカーを慌てさせ、小島のオーバーラップを囮にカットインし、PA角の翔大へ。翔大はDFに倒されるも直ぐに立ち上がりプレー続行。左足のシュートは相手のブロックに遭うが、倒されて審判へアピールするのではなく果敢に前進するボールへの執着心は圧巻。

 63分、セルジーニョが中盤の底にまで落ちてゲームメイク。ハーフスペースの河合へのパスを通す。河合はレーンを横切り、左サイドの下川へ。下川は小島を剥がして左足でクロス。ボールはファーに流れ、表原が反応するが、少し前に入りすぎて止まった分、スタンディングでのヘッドとなり宇宙開発。少し危険な形だったが、小島が突破されたのはこのシーンくらいだった。

 66分、ピンチを凌いだウチも動く。攻守で奮闘していた翔大を下げて内田を投入。2点目を狙いに行くよりも、リスクを避けてこのまま試合を終わらせるという意志が明確になった交代。さらに、人だけでなく立ち位置も変える。4-1-4-1で内田と中山がCH、その後ろに岩上を据える形。岩上はフリーでボールを捌けるとともに、守備時にはセルジーニョ番としての役割も担う。内田がピッチに入ってすぐに稔也に駆け寄って指示を出していた。身振りを見ると、SHが攻撃にそのままサイドを駆け上がり、上下動を止めないでほしいという内容だったと窺える。

 この交代がウチのリードを盤石なものにした。稔也とKJが相手WBをそのまま捕まえればいいというようにマークがはっきりしたので、サイドで深くまで侵入されることがなく、苦し紛れのアーリークロスが増え、そのボールがラインを割ることがほとんどだった。
 また、セルジーニョが自分で何とかしようという思いが強いあまり、ピッチの随所に顔を出してボールを運んだ。効果的な動きとは言えなかったが、ボールに触れる機会が多ければ多いほど事故の確率も高くなる。なので、バイタルでセルジーニョがボールを持った際には岩上が捕まえて潰すことで危険を除去。結局セルジーニョは時間が経つにつれてサイドでしかボールを持てなくなった。あれが許されるチームコンセプトも問題だし、それに対してピッチ内でのアクションが皆無なのも末期。

 78分には稔也を下げてシラを入れる。ここ数試合のシラの起用はビハインドでの攻撃的な切り札だったが、この試合ではファーストプレスをかける役割。1発目のアタックの勢いもあったが、それでかわされるのではなく粘り強く寄せ続け、コースを限定させた。今後、出場時間が増えることも期待できる働き。

 最後は中山→広大、大前→北川の交代で5-4-1に変更。後ろの枚数を増やし、前線でもポイントを作る完璧な一手で試合を締める。

雑感

 絶対に落とせない天王山を制し、光が見えてきた。

 得点こそPKの1点のみだったが、先制したことで無理に攻める必要がなくなったことも考慮すべきである。ミツ・KJ・翔大がJ2の舞台でサイドを突破していく姿は感動的だった。それぞれのゾーン・タスクが棲み分けられていて、淀みなくボールも選手も動いた。右サイドも、小島と稔也の連動性が増していて、相手に脅威を与えている。
 その両サイドを繋ぐ役割をセンターラインの選手が担ってくれているのも心強い。大武、岩上のロングフィードは勿論、中山と畑尾のテンポを上げるパス、相手の嫌なポジションを取り続ける大前。状況によってキックを使い分ける慶記を含めた全選手が効いていた。

 守備は申し分ない。セットプレーでのピンチはあったが、流れの中で崩されるシーンは見られなかった。シュートこそ相手が上回ったものの、ほとんどがエリア外からのシュート。しっかりとブロックを敷いて中央を固めたからこそ、打つ手なしでのHail Maryなクロス・シュートが横行した。
 特に4-5-1になってからの2ラインは横から見ていると本当に綺麗だった。縦関係・横関係を維持しながら、嵌めようとした際には一気にプレスを掛けて奪い切った。

 プラン通りの戦いで得た6ポイントマッチでの勝利。最後まで耐えきれない試合が続いたが、ようやく1つ報われた。戦い方は間違っていない。あとはどこまで徹底できるかにかかってくる。

 残り6試合で4ポイント積めば残留も見えてくる。次節の長崎アウェイは鬼門中の鬼門。長崎の地から勝点を持ち帰るのは簡単なことではないが、相模原との直接対決に向けて良い流れを作っていきたいところ。

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