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光焔万丈 vs甲府 3-0

 攻守にわたり相手を寄せ付けず、盤石の展開で勝利した前節。ボールを持てる状況で、空いているスペースを着実に突いて前進していった。勝ち切れない試合が続いていたが、ようやく長いトンネルを抜け出す勝利となった。

 1つ目に見える結果を得て、また上を目指して臨む今節の相手は甲府。天皇杯のディフェンディングチャンピオンであり、これからACLを控える。
 篠田氏のもと、4-2-3-1を基本として戦うチームは序盤からコンスタントに勝点を重ねる。ウタカと三平のパワーと、長谷川・宮崎などの2列目の機動力が相俟って大量得点をする試合が目立つ。また、4バックながら、中盤1枚下りての可変の形も見せる。となると、数年間積み重ねてきたWB大外張らせてのハーフスペースでぶん殴る攻撃が猛威を振るう。一方で、自陣に引き込んでから前線の火力をフル活用してカウンターで仕留める試合も多い。直近では秋田に5発、前節の藤枝にも4発で快勝。また、ミッドウィークには天皇杯で2巡目まで続いたPK戦の末、鹿を撃破。
 怪我人等もありながら、チームのクオリティは落ちない。後ろも簡単にゴールを許していないし、兎に角ハードワークできる選手たちが揃う。120分戦ってからの中3日でコンディション面での不安はあるが、J1チームを撃破した勢いそのままに試合に入る可能性は高い。

 前回対戦時は後半開始早々に三平に仕留められたが、長倉の脈略のない一撃と、岡本のJ初ゴールで逆転した。今週、岡本の負傷リリースがあったが、誰かが欠けようと、ウチの戦い方は変わらない。どちらもボールを持つことを厭わないチームではある。ハーフスペース使われて前進されたとしても、前回同様にバイタルを締めて対応しつつ、ボールを握った際には横幅を上手く使ってゴールまで結び付けたい。

メンバー

 ウチは前節から1枚変更。酒井→アマ。酒井が有給なので、勇利也がCBに入り、中盤はアマが4試合ぶりにスタメン。久々に細貝がメンバー入り。

 対する甲府も勝利した秋田戦から1枚変更。佐藤→林田。天皇杯ではターンオーバーをしていたが、途中出場組も120分+PKで想定以上に出場時間が長い。その部分がどのように影響を及ぼすのか。

前半

 コイントスで勝った甲府がキックオフを選び、城和はエンドチェンジを申し出。微風ながら風上で試合をスタートさせる形となる。

 立ち上がりはかなり抑えめ。甲府は燃料が足りなくなる可能性も考量して前からは行かず、様子見で構える。ウチもボール持てる時間が長くなるのは悪い話ではないので、城和を中心に左右で出口を探る。甲府のSHの位置取りがウチの佐藤・長倉のIHを意識してのものだったため、思っていた以上にウチが外幅を使える。それもかなり高い位置まで出ていくので、一遍に幅と深さを作ることができた。

 9分、そのサイドでポイントを作っていきなり先制に成功する。左サイドでボールを回し、甲府がプレスのスイッチが入ったところで、中塩から城和へ1つ飛ばしたパスが繋がる。ウタカが勇利也に喰い付いたことで、このパスで1stラインを突破。城和→エド→佐藤→エドと右サイドで前進していく。佐藤がエドをオーバーラップし、そこにジェトゥリオが釣られていったので、エドは内側にボールを持ちだし、左斜め後方のアマに落とす。1stタッチで左足を振りやすい位置にボールを置くと、そこから左足を振り抜く。強烈なインパクトで放たれたミドルはニアを射抜いてネットに突き刺さる。アマの今シーズン初ゴールで先制。
 風間とアマが同じ高さでボールを持ち、そこに鳥海と長谷川が限定を掛けようとしたが、ウチは5枚でボールを動かすのに対して甲府はウタカ・長谷川・鳥海の3枚で対応しなければならない。この場面ではウタカが勇利也を消しに行ったことで、城和がボールを引き出して、逆サイドに振ることができた。また、ジェトゥリオの守備対応が上手いとは言えず、須貝との受け渡しが中途半端。そこを突いてエドが内側に入っていけたし、品田がフォローしようにもエドへのアプローチの距離が遠く、効果的ではない。品田まで引き付けた時点で、アマへのお膳立ては済んだ。左足で引っ掛けるようにストレートの弾道で突き刺すのは見事。開幕当初から思い切って足を振ることを指揮官から求められていた背番号38が、遂に結果を出した。有給消化後もすぐにスタメンに戻れはしなかったが、4試合ぶりのスタメンで一発回答。

 思いがけず早い時間帯に先制したことで、ウチは勢いを加速。前に矢印を向けたプレーの選択が攻守において増える。ただ、甲府も1失点で動じることはないし、むしろウチが前に来ることを逆手に取って引っ繰り返すこともできる。

 16分、甲府にビッグチャンス。甲府がゴールキックで近場に付けて最終ラインで回す。ウチが一度撤退していたので、やや出足が遅れると、関口から品田に楔が入る。フリーの品田は前を向くと、ウチの最終ラインの頭を越す柔らかいフィード。そこにウタカが抜け出し、飛び出してきた櫛引より先にボールに触って躱す。あとはゴールに流し込むだけだったが、やや重心が外に流れてバランスを崩すとボールが軸足に当たってしまい、シュートは右に逸れていく。
 プレーのスタート・楔が入った後・抜け出し。それぞれの部分で隙が生まれた。シュートが外れた瞬間に、指揮官から梨誉やCBに指摘が入っていた。先制して余裕を持つことと緩めることは全く別物であり、あくまでも自分たちのタスクはやり続けないと綻びは生まれる。

 続く20分も甲府のチャンス。品田がバイタル手前でミドルを打ったところで梨誉がアフターを取られてのFK。品田の右足から放たれたシュートは、ボールスピードを伴って右隅に飛んでいたが、櫛引がスーパーセーブ。今日も今日とて神が降臨した。

 ウォーターブレイク辺りからは、甲府が効果的にボールを動かす。前回対戦時は林田がサリーダしていたが、この試合ではそこまで低くは立ち回らず。その分、品田が蓮川の脇に落ちてボールを受けて自ら前進させる作業を担った。また、中央で林田がボールを持つ場面では鳥海と品田がIHのように振る舞っていた。ウチの可変する部分に人を配置してマーカーをぼかすってのは時々見受けられる事象。特に、鳥海がかなり内側まで入ってきており、大外を関口が活用する意図は見られた。左も須貝が品田との相互関係によってアタッキングサードまで出ていくようになる。ただ、ジェトゥリオと長谷川がやや行方不明。前者は須貝が外側にいるので1つ内側のレーンにポジショニングするも、クリエイティビティにやや欠ける。後者は鳥海とプレーエリアが被ってしまい、前向きにボールを持って仕掛ける場面が限られた。

 36分、ウタカのシュートシチュエーション。前述のように品田がウチの1stライン脇でボールを引き出すようにしてプレスの矢印を弱める。品田が林田に渡すと、長谷川への縦パスでウチの1stラインをブレイク。長谷川→品田→長谷川→須貝と連動した動きでトライアングルを形成して左に展開すると、須貝はアーリー気味のクロス。これはニアでエドに引っ掛かるが、セカンドをウタカが右サイドPA角付近で拾う。ウタカ→関口→鳥海→ウタカと美しい崩しでバイタルに侵入すると、ウタカは左足でシュート。これがブロックに行ったアマの脚に当たってディフレクトする。タイミングが外れて櫛引も見送るしかなかったが、ボールはゴールの上に飛んでいく。
 さらにその流れの左サイドのCK。品田のインスイングのボールにファーで井上がフリーで合わせたが、櫛引が何とか触れた後にバーに直撃して跳ね返る。中央でウタカと蓮川が漂いつつ、ゾーンの外側から井上が走り込んだ。水戸戦でも同様の狙いでやられているが、ゾーンで対応する以上は脆弱性も織り込み済み。といえども、なるべくクリーンに当てられる状況は多く作らせたくはない。

 紙一重のピンチは多かったが、押し込まれているわけではなく、しっかり陣地は回復できている。最少得点差ながらリードを保って折り返す。

後半

 後半開始から甲府はジェトゥリオ→武富。前半のジェトゥリオの立ち位置を考えれば、武富の方がボールを引き出せるし、須貝のスペースを消すこともない。ただ、天皇杯ではスタメンで75分間出場しており、どこまで疲労回復しているかは懸念事項。

 後半の立ち上がりも落ち着いた入り。ウチは大きく変える必要はなく、IHに楔を刺しながらサイドを進む意向。
 甲府は修正としてCBの左右を逆にしてきた。ハイボールの処理に長ける井上を梨誉に当てる。蓮川は長倉番を務めるが、多少スペースを空けても深追いして起点を作らせないような姿勢。ただ、ウチとすると大外で山中が勝負できるスペースが広がるので、悪い話ではない。

 54分、三度ウタカのシュートチャンス。ウチが自陣にリトリートしてブロックを敷く中、林田が梨誉と山中の中間点でボールを受けると、CHの間を割る楔を武富に刺す。武富はワンタッチで品田に落とすと、すかさず品田がワンタッチでウタカへ。ウタカは完璧なコントロールオリエンタードでゴール方向を向き、左足でシュート。強烈なシュートだったが、ウチの選手数人に当たるピンボール状態になって勢いが削がれ、櫛引が処理。身体のどの部位に当たったかは分からないが、映像でのチェックを求めるのであれば、VARが入るカテゴリに行くしかない。

 ウチが一時的に2ラインを敷く選択を明確にしたので、甲府は当然ながら重心が上がる。最終ラインがウチの陣内にまで入り、パスを回す。しかしながら、スピードアップするタイミングがなかなかない。アタッキングサードに近付くにつれてウチは人数掛けて圧縮するので、酸素濃度が低くなって作り直す選択が増える。ボールが下がった瞬間はウチがプレスで押し返すスイッチが入るので、一気に押し上げて陣形を整える。ボールは握られるが、それほどストレスは感じずに対処。

 61分、甲府は関口→小林、鳥海→三平の2枚替え。須貝をRSBに回して小林をLSBに。また、2列目を右から武富・三平・長谷川の並びにする。アタッキングサードでややノッキングしていたので、三平でボールを早めに引き出したいといったところか。あとは右からの攻撃に偏りがちだったため、小林で左の推進力を高める。

 選手交代によって攻勢を強めたいといった甲府の思惑だったが、直後にウチが粉砕する。櫛引含めた最終ラインのビルドアップにウタカと三平の2枚がアプローチしてきたが、櫛引が冷静に風間に縦パスを通す。品田が連動して風間を捕まえに来たが出足が鈍く、風間はワンタッチで前方に送る。前で張っていた梨誉が落ちてきて井上を背負い、尚且つ林田に寄せられながらも左でフリーの長倉に繋ぐ。ポケットで自由を得た長倉はスピードを上げて前進。長倉の前方には青いユニの選手が3枚なのに対し、ウチは佐藤・エド・梨誉・山中の4枚が走り込んでおり、数的優位。どこを選択してもチャンスに結びつきそうだが、長倉は敢えて一番パスコースの狭い右大外の佐藤を選択。佐藤は小林との駆け引きをしながらカットインしていき、左足を振る機会を窺う。ただ、小林も相当左足を警戒して寄せてきており、武富も加勢してコースを消してきたため、佐藤はシュートをキャンセルして左のヒールでボールを後方に残す。そのボールをフリーの風間が右足でシュート。強烈なシュートは河田にとってブラインド気味になって対応が難しく、弾くのが精一杯。こぼれ球は須貝と蓮川が確保するかに思えたが、山中がすぐに反応してプレッシャーをかけると、エドが回収できた。エドは自ら前を向こうと考えた刹那、PA手前でボールを要求する佐藤を視界に捉える。優しい落としを受けた佐藤は、左足一閃。鋭いシュートはDFに少し当たってもボールスピードは落ちずホップしていき、ネットに突き刺さった。欲しかった時間帯にゴールを渇望していた選手が試合を動かした。
 櫛引の縦パスでスイッチを入れ、そこからポジトラで圧倒。長倉があそこでオープンな山中ではなく、佐藤を選択したのはなかなかできることではない(ゴールに結びついたからこそ評価される結果論かもしれないが)。相手は後ろ向きの撤退するしかない状況だったので、佐藤に渡れば時間的優位を得られるのは間違いなかったが、簡単に出せるパスではない。そこからの佐藤と風間、エドと佐藤の阿吽の呼吸も良い。日頃の練習から作ってきた形であることが分かる。

 ウチは2点目を取ったタイミングで2枚替え。殊勲の佐藤はお役御免となり北川とチェンジ。この試合でも走り回った梨誉に代わり平松が投入される。退いた2人はベンチに戻ってきても大変ご満悦な様子。ここ最近は自身へのフラストレーションを何とか押し殺して引き上げていた佐藤だったが、ようやくゴールが生まれてウキウキだったのが見ている側にも伝わってきた。 

甲府とすると、もう1度パワーを掛けようとしたところでの2失点目はあまりにも重かった。中3日での疲労も色濃くなり、フィジカル・メンタルの両面でダメージが表面化。林田→佐藤、品田→宮崎といった交代でボールを動かそうとはするが、時間経過とともに明らかにプレー強度が落ちていく。
 そうなると、ウチがボールを引っ掛ける位置も高くなる。アタッキングサードに入る手前で長倉や北川がマイボールにして時間を作る展開が増える。また、マイボールになって長倉に入ったところで蓮川がタイトにチェックしたが、意に介さずキープするので、それによって空いたスペースを山中や平松が斜めの動きで上手く活用。須貝や蓮川にネガトラで長い距離を走らせた。

 ウチも風間→内田、エド→田頭、山中→シラといった交代で強度を維持。水漏れを起こさずに対応しつつ、最後まで縦への鋭さは失わなかった。

 すると、90分間ハードワークしたことが報われる。90+6分、粘り強い対応で相手の攻撃を凌いでのゴールキック。ラインアップして陣形をコンパクトにすべく城和と勇利也が声を張る。櫛引のフルスイングのキックは敵陣中央に飛んでいく。落下地点に入った長倉が井上に競り勝つと、そのボールが平松に繋がる。平松は須貝に寄せられながらもキープしてPAまで持ち込むと、右の足裏でボールをその場に置いて走り抜ける。平松からのプレゼントを受けた長倉は落ち着いて右足で巻くように流し込んでとどめを刺す。
 櫛引のゴールキックで陣地を回復する手は今までも見せていたが、遂にゴールに直結した。長倉も身長で上回る相手に対して先に飛んでマイボールにした。このヘディングを見ると、ウチを足掛かりにして育っていった2人の26番と重なる部分はある。長倉が勝った後の平松のボールの運び方も見事。身体を上手く相手に当てながら斜めに持ち出して、長倉の走り込むコースを作った。それとともに、平松の外側で内田が左を駆け上がっていった。しっかりPAにまでCMFが入ることで相手は対応が難しくなるし、最後の局面も内田が走っていたことで井上が釣られて、長倉へのアプローチが遅れた。そうした全員の頑張りが作用して奪ったダメ押しのゴール。

 自分たちの狙い通りにボールを動かし続け、3-0で終了。

雑感

 暑さもあり難しいコンディションのアウェイゲーム、自分たちより順位が上の相手に対して今季最大の3点差をつけての勝利。

 ディフェンスでは、今シーズン全試合に出場していた酒井を出場停止で欠いたが、城和と勇利也のコンビで守り切った。1stプレスから連動して追い込むことで相手のチャンスの芽を摘みつつ、リードを広げてからはどっしり構えてブロックを敷き、危険なエリアに相手を入れなかった。2つの守り方を併用し、0に抑えたのはチームにとっても収穫。櫛引は今節も流石の活躍でゴールに鍵を掛けた。勇利也は直近2試合より1列後ろでの出場ながら全く問題なし、充実していることが分かる。そして何より城和の頼もしさたるや。今シーズンはなかなか出場機会に恵まれなかったが、ようやく得たチャンスを逃さない。安定感は抜群だし、試合に出場できていなかった期間も間違いなく力を伸ばしており、それを試合で表現している。また、左腕にキャプテンマークを巻く姿も違和感は一切ない。ウチの選手が削られた際のレフェリーとの対話や終盤にゴル裏を煽る姿は凛々しく、自らがチームを支えるんだという責任感が行動に結びついている。

 オフェンスでも、今シーズン最多タイの3ゴールを決めた。早い時間帯に先制したことでコントロールしやすくなったが、3つとも狙い通りのゴール。どんな形で決めても1点は1点だが、スクランブルではなく、自分たちで主体的にボールを動かして相手を崩した。暑い時期だけに、すべて縦に速く仕掛けるのではなく、ポジトラで殴る場面とゆっくりボールを動かして前進する場面を使い分けられたのも良かった。エド・山中のWBと佐藤・長倉のIHで上手くレーンを意識してボールを前に運べるのは明らかな強み。そこをポイントにすることでCMFが絡んでいけるし、梨誉のダイアゴナルも効く。

 甲府とのコンディション面の差は明らかにあった。60分過ぎからガクッと落ちてきて、身体が重そうだった。仮に試合間隔が同じであれば、これほどの差は付かなかったかもしれないし、そもそもウチが勝てた保証はない。ただ、幸先よく先制し、ピンチを耐えながら追加点を奪い、試合をクローズして最後にもう一押し。理想的な展開で勝ち切ったのはチームにとって明確な成功体験だし、大きな自信となる。

 これで再びPO圏内との勝点差を3にした。ここからもそう簡単に勝てる試合は1つもない。が、自分たちが90分全うすれば、この試合のように結果を得る力があることも示した。またここから上を見据えて取り組んでいこう。

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