日進月歩 vs仙台 0-0

 この時期恒例の強風に見舞われる中、難敵金沢と引き分けた前節。開幕2戦連続のクリーンシートなんて誰が予想していたか(得点数には触れないお約束)。正直オフェンスは発展途上だったけど、正しいポジショニングができれば点を取られない=負けないということを地で行くスタイル。

 3戦連続クリーンシートをかけて挑む相手は仙台。お久しぶりの杜の都。2009年以来の対戦となるが、6分け12敗という清々しいくらいの相性の悪さ。当然アウェイでも勝ったことないけど、ユアスタでは勝ったことある不思議な状態(伝説の2004年天皇杯5回戦vs横浜FMの2-1Vゴール勝ち、会場名は七北田公園仙台スタジアム)。対戦経験のある選手もいないだろうと思いきや、富田晋伍はまだバリバリ働けるし、梁勇基は今シーズンから仙台に帰ってきた。広大も2009年は仙台の選手としてウチと対戦。そういった時代の変遷を知るのもいとおかし。
 なかなか厳しい状況でJ2にいらっしゃった仙台は、まだまだチームを構築している段階。昨シーズン最終盤から指揮を執る原崎氏の下、ポジショナルな要素を落とし込んでいる。そもそも渡邉晋氏が苦しい台所事情の中で先進的なサッカーを志向しつつ終盤はリアリストに徹して毎年残留するラインにはまとめていたのに、ナベシンを切って何を思ったか全く異なるサッカーを志す木山氏を連れてきたのが闇が深い。木山氏も手腕のある指揮官であるが、あまりにもチーム編成との乖離があり低迷。でもって、近年世界中で横行する「時を戻そう」というトレンドに乗って手倉森氏が監督に就任という他人事ながら悍ましい流れ。それだけ迷走すれば降格も止む無し。
 チームを刷新するタイミングを逃し続けていた中、ようやく変革に着手(したと思われる)。前節は劇的な展開で水戸相手に今シーズン初勝利。開幕2試合を終えて、各方面から「何か仕込んでいる」という声が聞こえるが、果たして何を狙っているかはまだベールに包まれている。試合前のフラッシュインタビューでの大槻監督の「仙台はまだよく分からない」というコメントも半分本音ではないだろうか。遠藤康が右サイドからふらつくのと、吉野が随所に顔を出すのが印象的だが、どうやって最後の形に持ち込むかはこれから。今節その形が完成しないことを祈る。

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 ウチは開幕2戦のスタメンから1枚変更。稔也ではなく風間が初スタメン。ベンチには北川と天笠が今シーズン初めて入った。仙台への凱旋の意味も込めて広大が帯同しているというリリースがあったが、シラのトラブルで急遽エントリー変更。広大も今シーズン初のメンバー入りとなった。小島と広大、大槻さんも古巣との対戦。

 対する仙台は勝利した水戸戦から2枚変更。加藤→真瀬、氣田→遠藤。氣田はベンチにもいなかった。なかなか対戦する側が一筋縄にはいかなそうなメンバーが揃う。

前半

 ウチがボールを握る時間は少ないだろうという大方の予想通り、立ち上がりから仙台が保持する局面が多かった。だが、要所を締めて攻撃に転じる場面も作る。

 5分、仙台最終ライン平岡が縦パスを入れたところから。富樫がボールを収めようとしたタイミングで城和が厳しくチェックして前を向かせない。後ろに追いやられた富樫から名倉がスイッチしてボールを運ぶも、戻ってきた小島の素晴らしいプレスでボールを奪取。平岡がパスを出す場面では1つ前の内田をケアしていたが、すぐに切り替えてボールアタックした小島の素晴らしい働き。小島が奪ったボールのこぼれを細貝が拾うと、縦(深堀)へパスを出すフェイクを入れて、すぐに斜め右の風間へ。風間は敵陣で持ち上がると、アタッキングサード手前で逆サイドのKJへ渡す。アウトスピンのボールだったため、わずかにKJが勢いを殺してコントロール必要があり、それによってDFが戻ってきて対応されてしまった。それでも一連の流れは見事。その後は止めにチェックに行ったミツがあっさり遠藤に剥がされて怖かったが、落ち着いて対応した。

 11分、仙台に決定機。岩上の蹴り捨てたボールを平岡がワンタッチで富田へ。ワンタッチで渡されたことで空間的余裕を得た富田は前を向いて遠藤へパス。サイドから1つ中のレーンに入ってきた遠藤に対し、そのままミツが捕まえに行くが、見事な体の使い方でボールを失わない。そのまま前を向き岩上も躱すと、一気にスピードアップ。ボールを受けようとした富樫を囮にして左サイドへ。右に動き直した富樫と中央の中山、大外には名倉もいる4対3の状況。バイタルに侵入させるまいとボールホルダーにアタックしようと城和が身体の向きを変えたタイミングで、遠藤は中山へのスルーパスを選択。城和の背後を取って抜け出した中山はPA内の左深くから左足を振り抜くが、櫛引が左足に当てて防ぐ。中山が上手く抜け出したかに見えたが、パスコースをウチが上手く切っていたことで若干ボールが流れて角度がなくなったこと、小島が必死のスプリントでプレッシャーを与えたことにより、中山にとっては多少難しいシュートとなった。ピンチだったが、櫛引だけでなくチーム全体で守り切ったシーン。

 最初の山場を越えたことで流れを持ってきたいウチが次にゴールに迫ったのは19分。クリアを小島が回収して畑尾へ。畑尾→城和→畑尾→細貝→ミツ→畑尾と繋いで相手の重心を押し上げさせると、畑尾は富田が岩上に喰い付いてできたスペースに入ってきていた風間に縦パスを刺す。風間→KJ→山根と左に展開されると、山根はカットインして右足を振る。上手くミートしきれずGKに難なく処理されたが、ミツがビルドアップに参加した場面ではすぐ前で幅を取っていた山根が縦パスが入るや否や一気に駆け上がってシュートまで持っていけたのはポジティブな印象。

 21分、再び仙台がチャンスを迎える。右サイドからのCK、遠藤からのボールはニアで跳ね返すが、ボールは遠藤の元へ。胸で落として左足で柔らかいボールを供給すると、細貝の前に入ってフリーになった平岡が合わせる。失点してもおかしくない場面だが、シュートは枠に飛ばず。

 ピンチをまたも切り抜けたウチとしては試合を落ち着かせたいところだったが、25分にアクシデント。仙台右サイドで遠藤が前を向いた遠藤に対し、細貝が深いスライディング。ボールにチャレンジする極めてクリーンなタックルだったが、アタックした左足がそのままピッチに食い込んでしまう。身体の勢いに対して左足が残ったことで自らの体重が掛かって、恐らく捻ったか。自分自身で歩くことすらままならず負傷交代。稔也が入って風間がCHに。開幕から好パフォーマンスを続けていた細貝の交代は痛手であり、この試合のプランも変更を余儀なくされる。ただ、ピッチを退く際に付き添った畑尾、それに気付いてすぐに駆け寄った広大、こうした動きがすぐにできる選手の存在は心強い。

 なかなか自分たちの流れに持っていけない時間が続いたが、31分にカウンターからチャンスを創出。仙台の右サイドでのスローインから崩そうとするも、押し上げてきた吉野にボールが入ったポイントで風間が背後からチェイスしてボールを奪う。そのボールがKJに渡ると、すぐに深堀の前のスペースに刺す。深堀は勢いに乗ってバイタルに侵入すると身体を開いてボールを晒し、対峙するDFに右サイドの稔也を意識させる。最後は右足で引っ掛けるようにして急加速して左足でシュート。利き足ではなかった分、厳しいコースを狙いすぎて右に逸れたが、ポジトラの鋭さを仙台に知らしめた。

 ボールを持たれ(持たせ)ながらも、徐々に適応してきたウチの前半最大のチャンスは44分。吉野から真ん中を割るパスが中山に通ろうという既の所でミツが足を伸ばしてカット。それが上手い具合に山根に飛んでくると、ワンタッチでKJに叩く。山根が手数掛けなかったことでKJには十分すぎる時間とスペースが与えられ、当然迷うことなく前進。すると、パスを出した山根が懸命に走ってKJを追い越して大外のレーンで受け、アタッキングサード手前まで前進する。山根が減速するタイミングでKJはわざと隣のレーンに移動して吉野を引き付ける。その動きを見た山根はKJに預けてスプリント。山根の意図を汲み取ったKJはワントラップでわずかなタメを作り、山根が若狭から離れる時間を確保してから山根へリターン。PA内に侵入した山根はワンタッチでクロス。ニアの深堀、真ん中の稔也には合わなかったが、その後ろから絶妙なタイミングで小島が入ってきた。フリーでボールを受けることができたが、思ったよりもボールスピードがあってバウンドを合わせ切らず、胸でのコントロールが浮いてしまいタイムロス。GKが距離を詰める時間ができてしまいコースがなくなり、シュートは宇宙開発となってしまった。KJと山根の関係性は試合を重ねる毎に良くなっていくが、最後の局面で逆サイドの稔也と小島まで絡めたこのシーンは希望に満ちている。

 前半ATに遠藤にシュートまで持っていかれる場面もあったが、コースを切って冷静に対応するなど、悲壮感漂うことなく前半を終える。

後半

 「焦れるな」、「慌てるな」という指示を受けて臨んだ後半。変わらず仙台保持の展開は続く。

 49分、吉野から左の内田へのフィードを小島がカット。この場面でもワンタッチで稔也が深堀の前のスペースにボールを入れる。深堀は右サイドを進み、吉野をいなす。稔也が真っすぐ走り抜けて富田を引き付けると、そのスペースを風間が活用。風間→KJ→山根へとつながり、山根のクロスに最後は深堀。左足のシュートはミートせず。KJがPA角でボールを持つことで、3枚(富田、若狭、真瀬)が釣られて大外の山根がクロスを上げる時間を作った。起点になった深堀がフィニッシュまで来ていた良い形。

 ボールを持つもなかなかバイタルに侵入できない仙台。58分、CBの隣に落ちてきた富田からサイドで幅を取っていた遠藤へ。遠藤は縦に付けると、富樫が小島の裏を取って受ける。が、その次の手がなかった富樫は身体の向きを変えて吉野に渡す。吉野は浮き球というアイデアを見せて再度富樫に繋げるも、富樫の左足でのシュートは可能性のないものだった。

 次に形を作ったのはウチ。64分、稔也と岩上が内田のところに連動して寄せに行ってミスを誘い、小島が回収。小島→城和→風間→小島とつながってサイドに幅ができると、小島は縦のスペースに稔也を走らせる。ライン際でボールを残した稔也はそのままPAの深い位置まで持っていく。深堀がニアに走って若狭を引き連れると、稔也はファーへのクロス。真瀬の頭を超えたボールはドンピシャで山根の元へ。来たと思ったが、左足では合わせるのが精一杯だった。

 J2下位チーム相手に取りこぼせない仙台は内田→福森でテコ入れ。さらには、富田→梁、名倉→加藤で勝とうという姿勢を明確に。ウチも売り切れ気味だった深堀・ミツを下げて平松、川上を入れる定石のカードを切る。

 平松、川上が入ったあたりから、明らかにウチはシステムを変えた。5バックと聞き、最初は岩上がサリーダしっぱなしの形かと思いきや、右から城和・畑尾・小島の3CB、RWB川上、LWB山根という新たな守り方を見せる。試合後の監督コメントでは遠藤の捕まえ方を考えてのシステム変更だったと明かしているが、これが機能した。全てのレーンに人を配置しているからハーフスペースという存在が有耶無耶になってしまうのと、山根の気が利くプレーで刈り取るシーンが何回かあった。こんな良い選手が出場機会を得られないなんて、前所属チームはさぞ上位に躍進しておられるのでしょう。

 5バックによって守備時の更なる安定性を手に入れたウチの決定機は87分。平岡に対して平松が距離感の良いチェックをすると、平岡がプレッシャーをもろに受けてパスミスし、稔也がカット。これは平岡が辛うじて回収するが、すかさず平松がチェックして平岡をなぎ倒すとそのまま突き進む。左にKJ・風間・稔也と駆け上がっていたが、PAに入るところでボールが足に付かず減速。後ろを向いて風間に渡すと、風間は狭いパスコースを通して稔也へ。得意の時間に突入していた稔也だが、ボールを捏ねすぎてシュートするタイミングを逸してしまい、ようやく打ったシュートもブロックに遭う。川上が回収して風間につなぎ、風間は質の高いクロスを入れるも真瀬がクリア。今度は小島が回収して山根へ。山根→KJ→山根のワンツーで真瀬を振り回してフリーでクロスを上げる。ファーで川上が合わせたが、当たる位置がよろしくなくシュートではなくクリアになってしまい、結局仙台が掻き出す。

 その流れのCK。岩上のインスイングのボールに合わせたのは畑尾。ニアに入ると見せかけて動き直してマーカーの平岡を振り切っていたが、最後のシュートは枠に飛ばせなかった。ドンピシャだったが、平岡の右手が畑尾の顔の前に出てきたので視界に入ったのではないか。当然畑尾は悔しがっていたが、それでもすぐにダッシュで最終ラインに戻る姿は頼もしい。トランジションの鬼。
 と、ここまでが試合見てての感想だが、試合後何度か見直すと平岡の右手はボールに当たっていないのかという疑念。畑尾の身体の向きとシュートの飛ぶ方向が不思議なような…。仮に当たっていなくても、あそこで手を出すのはボールアクションではないような…。この辺の疑問を解消するには、自分たちでカテゴリー上げて映像チェックできる状態にしなければならない。死角だったしピッチレベルで見えにくかったため、取られなくても納得。

 こうなってくれば、ある程度割り切って1ポイントも視野入れ始めたウチの最後の山場は90+2分。仙台右サイドで幅を取った真瀬から遠藤にボールに入ったところをウチが潰すも、吉野が回収。浮き球で真瀬に渡すと、真瀬が小島を背負ってキープ。その真瀬から遠藤がボールを受けると左足で流し込むようにシュート。PAへの侵入のされ方はとてもよろしくなかったが、シュートコースに畑尾が入ってブロック。もし畑尾に当たらなくてもGK櫛引に加えて城和と川上がカバーに入っていたので、そう簡単には決まらなかったはず。

 両チームとも最後の局面でゴールネットを揺らせず、0-0のまま終了。

雑感

 仙台戦初勝利とはいかなかったものの、確かな手応えを得た。

 開幕3試合連続クリーンシートとなると、後ろの堅さは本物だろう。遠藤康はかなり厄介な選手だったし、実際序盤は好きなようにプレーさせていたが、徐々にボールに触れる機会を減らしていった。これは推測でしかないが、当初のプランであれば細貝を遠藤の所に当てて山根とペアで狙いつつ、サンドして奪ったらそのまま山根で殴ろうという考えていたのではないか。しかし、細貝の負傷交代でプランが狂う。それでも、岩上と風間の組み合わせでバランスを取った。山根の働きぶりには今日も頭が上がらない(ボール奪取4回)。

 良い守備ができれば、良い攻撃に繋がるという指揮官の言葉通り、今日の決定機はどれもボールを奪ってからすぐに仕掛けていったシーンだった。相手の縦パスが入ったところでスイッチを入れることは共通認識として浸透しているが、そこから拾ったボールはワンタッチで前に渡すこともかなり意識づけられている様子。その役割をこなすのが上手いからこそ山根や風間、稔也が重宝される。浮き球でも難なく体をひねって繋ぐ技術は流石。
 あとは最後の仕留める部分となるが、そこは水物。決めきれなきゃ目を向けられてしまうのはオフェンスの選手の宿命だが、機能していないということは一切ない。深堀は今日も懸命にボールを引き出すし、並外れたスピードを持っているからこそシュートまで持っていけている。平松に関しても、最後の場面が取り沙汰されるが、元々は平松の献身的なプレスとボディバランスがあったからこそゴール前まで行けた。その過程をすっ飛ばして結果だけフォーカスするのは些か強引ではないか。ウイイレなら操作者の技術不足が全責任を負うから、結果だけ切り取るのも納得するが…。

 3試合で5ポイント拾っているのは、十分評価できる。ここから上位戦線に食い込むなら今日のような展開で勝ち切ることが求められるのだろう。しかし、こないだまで血で血を洗う残留争いに苛まれていたチームがそう易々と劇的に改善できない。一歩ずつ堅実に課題をクリアしていった先に次なるステップが見えるはず。
 次の東京Vも難しい相手であることに間違いないが、この3試合で得た小さくない収穫を活かし、立ち向かいたいところ。

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