疲労困憊 vs甲府 0-1

 相手の地力を見せつけられながらも、試合を進める中で上手く修正して応戦し、タイスコアまで持っていった前節。劣勢を跳ね返すことができたことは良かったし、やはり縦への速さはゴールに結びつくと再認識。0を1にすることができたので、1を3にできるかが次のステップになる。

 タフな戦いから中2日で臨むのは甲府。昨シーズンは容赦なくやられまくった。アウェイでは6-2とただただ殴られ、リベンジを期したホームでも0-3と一蹴された。アウェイ時は泉澤に全く対応できなかった印象も根強いが、2試合とも伊藤氏の完成度の高い3バックに対して嵌めるポイントを見つけることができずにズルズル失点を重ねた。
 伊藤氏が磐田に引き抜かれ、後任には吉田達磨氏が再登板。ポゼッション志向が極めて強く、トップ昇格選手を頻繁に輩出し、昨シーズンの最優秀育成クラブにも選ばれた柏のアカデミーの礎を築いた。「柏ユース=ボールを保持する攻撃的なサッカー」というイメージを定着させ、工藤壮人、酒井宏樹、中山雄太らを発掘・育成するなど、ユース年代では成功を収めた一方、トップカテゴリーでは思うように結果を残せていない。第1次ネルシーニョ体制終了後の2015年、トップとアカデミーのシームレス化を図った柏の監督に就任し、ACLではベスト8まで進出したもののリーグ戦は苦戦し、2年契約1年目での退任となった。翌2016年は新潟の監督に就任するも、成績が振るわず解任。2017年からは甲府で指揮を執るも、初年度はJ2降格、2年目はJ2でも苦戦して解任となっている。近年はシンガポール代表監督を務めていたが、今シーズンから甲府に帰ってきた。やっているサッカー自体はロマンがあるのだが、あくまでロマンであり、如何にして現実と折り合いをつけていくのかが難しい。また、各所で指摘されているのは、育成年代とトップチームとの落とし込みの難易度の違いである。長期的に見られる下部組織と違い、トップカテゴリーでは目に見える結果が求められるため、戦術の落とし込みや、個々の選手へのケアがより難しくなる。これはウチの大槻氏の浦和時代も同様だったのではないかと推察されるが、結果を先に強く求められるチーム状態だとやりにくさは当然あるだろう。理想と現実の狭間で各指揮官は頭を悩ませている。
 今シーズンの甲府の戦い方に目を向けると、昨シーズンまでの3バックを踏襲。吉田氏はこれまで4-3-3のシステムを採用することが多かったので、少し意外だった。どの選手も足元の技術は確かに持っており、厄介。前線のウィリアンリラもハードワークするし、長谷川・鳥海・宮崎といった活きのいい選手たちが縦への意識を強く持って仕掛けてくるのは対処しにくい。システム的にハーフスペースを作りやすいので、その部分で吉田氏のアイデアが活きてくる。序盤こそ苦戦したが、ある程度落とし込みが進んでからは好調。WBとシャドーを捕まえにくいのはどのチームは感じているはずだ。

 5連戦の4戦目でだいぶ疲れも溜まってきており、尚且つ気温の上がりやすい甲府でのデーゲーム。両チームとも条件は同じだが、先制して優位に試合を進めたい。

メンバー

 ウチは前節から5枚変更。広大→城和、山根→天笠、山中→奥村、彰人→稔也、北川→KJ。有給だった城和が復帰。相手との噛み合わせを考えてか、スタートから3-4-2-1の形。

 対する甲府は敗れた水戸戦から4枚変更。林田→石川、松本→山田、荒木→小林、飯島→鳥海。2019シーズン共に戦った小泉がメンバー入り。前育選手権制覇時のエース飯島もベンチから。

前半

 連戦中ということもあり、両チーム極めて穏便な立ち上がり。ウチはKJと天笠の関係性でゲームを構築しようとすると、甲府も鳥海・関口・石川で上手くボールを引き出して前を向くので、同サイドでボールが行き交う展開。

 その中で、ウチは高い位置から圧力を掛けてゴールを目指す。14分、ハーフウェーでKJからのパスが天笠に通らず浦上が回収。すかさずそこに平松が寄せ、天笠も須貝へのパスコースを牽制。浦上は河田へ戻すことを選択すると、河田の縦パスを狙って稔也がスピードアップ。ボールは河田から野澤、須貝と渡って再び河田の元へ。楔を受けようと山田と石川の両CHが顔を出し、そこに河田からパスが出るが奥村が読んでいてインターセプト。そのボールに稔也が飛び込むが、ホイッスルが吹かれる。奥村の所でファウルの判定。スロー映像で見る限りボールにアタックしているように思えるが、後ろからのタックルに捉えられたのと、転び方が上手かった。
 ゴールまでは結びつかなかったが、この場面以外でも連動したプレスで相手を追い込むことは多かった。どちらもホームフォーメーションは一緒なので、個々を捕まえられれば追い込むことはできる(当然、逆も然りでウチも嵌められる)。

 その後は、どちらも攻め手に欠ける。局面を変えるようなパスが出ないので短いパスが多くなるのは仕方ない。26度の暑さではなかなか動き出しも乏しく、パス回しにもテンポが生まれない。
 ベンチからも動き出しの部分の指摘はあり、特に畑尾がボールを持った際に平松・稔也が背後を意識した動き出しをすることを求めていた。30分過ぎからは背後を取る動きが徐々に見られたが、なかなかタイミングが合わず展開が進まない。

 45分、リラに対して内田と天笠がサンドして高い位置でボールを奪う。天笠→奥村→稔也と繋がる。稔也が長谷川を剥がそうとして引っ掛かり、浦上がクリアするも、奥村が回収。奥村は稔也に渡すと、稔也は甲府の選手を4枚引き付けて右サイドのスペースにボールを送る。そこに走り込んだ小島がPA角から右足を振る。しかし、腰が回り過ぎてしまい枠の左に飛んでいく。

 45+2分、敵陣左サイドでのスローイン。長い助走を取った岩上はロングスローを入れずに深い位置にポジショニングしたKJへ。KJはタメを作って甲府DF陣の視線を集め、岩上にリターン。岩上のインスイングのクロスは跳ね返されるも、セカンドを城和が拾って頭で小島へ渡す。小島は城和にリターンして縦にスプリント。小島のスプリントにより城和への甲府のプレスがやや削がれ、城和はワンタッチでアーリークロス。PA内で平松とKJの頭上を越え、フリーで天笠が受ける。浮き球を上手くコントロールしたが、シュートコースがなく、ファーに放ったシュートは河田の手中に収まる。

 時間経過とともにやや優勢に試合を進めながら、0-0で折り返す。

後半

 後半開始から両チーム選手を入れ替える。甲府は関口→荒木。ウチは2枚替え、稔也→深堀、天笠→山根。深堀でより背後の意識をというのは最近の定石。山根は鳥海と関口を見ながら、ボール奪取時にそのまま前に運ぶ役割を担う。

 後半最初にチャンスを作ったのは甲府。48分、自陣で小林がパスカットし、野澤・山田と渡って再度小林へ。ウチの押し上げがなされておらず、小林はルックアップして左足でリラに楔を刺す。リラには城和がチェックし、その際に手にボールが当たったがプレーオン。石川がワンタッチで左サイドの長谷川へ。城和がリラを見ていたため、長谷川の前にはスペースが広がる。長谷川はそのままPA付近までボールを運ぶと、ハーフスペースを小林がランニング。小林が長谷川を追い越したことで、長谷川はカットインするタイミングを得た。シュートを打つ体勢を取りながら、右足だけを開いてフリーの鳥海へ。鳥海はグラウンダーの鋭いシュートを放つが、櫛引が落ち着いてシュートストップ。

 56分にも甲府に決定機。甲府が全体的にボールサイドに圧力を掛け、櫛引にロングキックを蹴らせて回収。最終ラインと主に右サイドで回しながら陣形を整え、長谷川が左で1列落ちてボールを引き出す。そのまま前進し、サイドに張っていた小林へ。小林はワンタッチでクロスを入れると、ボールは鳥海の上を越えて荒木の足元へ。荒木は胸でコントロールし、左足で狙いすますが枠を捉え切れない。

 ウチの方が疲労が色濃く表れていた。90分ずっと深くまで押し込むことは現実的ではなく、メリハリを付けながら行く場面とステイする場面を判断する。しかし、後半開始から重心がだいぶ後ろ寄りになっており、甲府のビルドアップを簡単に許していた。ゴール前には鍵をかけていて失点こそしなかったが、なかなか自分たちの流れが来ない。

 60分過ぎから両チームとも選手交代が活発になる。甲府はリラ→三平、鳥海→宮崎。ウチも奥村→中山、平松→彰人。どちらも攻撃的なカードを切って、均衡を破ろうとする。
 特に、宮崎は昨シーズンも散々やられたが、鳥海とは違うタイプで自らも持っていける。長谷川と宮崎という推進力を持つ選手が2人いるとウチとしては守りにくくなる。

 79分、甲府の左からのCK。長谷川のインスイングのボールに三平が合わせてネットを揺らす。三平は櫛引の前に立ち、ボールが入ってくるタイミングでニアストーンのKJ・山根の後ろのスポットに入り、下がりながらのヘディング、見事だった。
 が、シュート時の宮崎の立ち位置がボールに関与していたとしてオフサイドで取り消し。櫛引のアピールを見ると、視界が遮られるor弾けないって状態になっていたと思われる。ただオフェンス側からすれば、あれでオフサイドとなるのは少々厳しく、抗議したくなる気持ちもとても良く分かる。
 いずれにしても、崖っぷちで何とか生き残った。ショック療法として、これを機にもう一度締めることができれば良い。

 しかし、現実は甘くない。83分、甲府右サイドでのスローインから後ろで作り直して左の小林へ展開。小林はレーン移動してきた宮崎に縦パス。受けた宮崎は、中に仕掛ける意思を見せながらゴールラインと逆方向にボールを運ぶ。それを見た小林がオーバーラップし、宮崎のヒールパスを受ける。小林は左足でワンタッチで中に入れると、最後は三平がドンピシャのヘッド。今度こそ正真正銘のゴールで甲府が先制。
 最初小林にボールが渡った際に小島がチェックにいったことで、次の宮崎に城和が付いていく形となり、1つずつズレてクロスをフリーで上げさせてしまった。3CBの距離間が広がってしまったためスライドが中途半端になり、CB間に入った三平に上手くギャップを使われた。それぞれの場面でハッキリさせる必要があったが、試合時間を考えるといっぱいいっぱいだったのかもしれない。

 その後も何とか同点に向けて攻め込もうとするも、攻撃の糸口は最後の最後まで見つからず。そのまま試合は終了する。

雑感

 90分通して、なかなか自分たちの時間はなかったが、こういう試合でも1ポイントでも拾えるかが大事になってくるのだろう。

 守備時は、時間経過とともに重心が珍しく後ろに下がってしまった。HTに大槻氏から「コンパクトに保とう」という指示が出ていたが、ラインを高く設定できず、どうしても全体的に重くなっていった。立ち上がりは押し上げができて上手く引っ掛けられたが、徐々に甲府が鳥海と長谷川の顔出しを有効活用してきて網を潜り抜けられた。シャドーが落ちた際の対応はフリエ戦でも手を焼いていたが、深追いしたくないのでどうしてもフリーになるタイミングが発生してしまう。受け渡しを十分に行うことと、エリアごとにカバーする範囲を明確にすることが必要。
 失点シーンはデジャブ感がとてもあるが、今のウチから点を取りたければクロスを入れて如何にミスマッチを作ることが第一。スライド時に時々エラーが起きていることが段々とバレてきてしまっている。要修正。

 オフェンスでは、そもそもシュートまで至る場面が少なかった。ミラーゲーム気味になり、相手に構えられた状態ではスペースを見つけることが難しい。いつものようにKJのIH化によって選手同士の距離感は一定に保たれているが、バイタルでの形が乏しい。
 試合後の大槻氏のコメントでは「天笠の左足の1つ先」について触れられていたが、左からニアへの速いクロスは甲府にも相当警戒されいた。サイドの深い位置までボールを運んだ際の次の選択肢を作っていきたい。自ら1枚剥がして中に侵入するのか、角度を変えるのか。その辺りの選択肢が増えると、元々高精度の低空高速クロスも益々活きてくるだろう。

 5連戦のうち4戦を終えて積み上げた勝点は僅か1。心なしかいつも通りのザスパだという雰囲気にもなってしまっている(そんなもの知らんこっちゃないが)。内容を把握せず結果のみを追い求めれば、確かに現状は良い状態とは言えないのかもしれない。
 しかし、その状況を変えるのも自分たち次第。俄かに聞こえてくる雑音を気にすることなく、自分たちの進むべき道を進み続けるのみ。

 連戦ではなかなか修正点の共有もできないと思うが、次戦を終えれば少し時間に余裕も生まれる。次の徳島戦も簡単な試合にはならないが、今できるベストを尽くして良い形で連戦を締めたい。

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