粒粒辛苦 vs山形 1-0

 チャレンジする姿勢を崩さなかったものの、それでも尚相手に上回れて敗れた大分戦。試合中の修正によって応戦していたが、2失点が最後まで響いた。低空飛行は続く。

 そろそろ自暴自棄になりかねない状況とはいえ、戦いは休むことなくやってくる。今節の相手は山形。開幕戦で対戦した際はウチのトランジションによって優位性をもたらし、見事撃破。思えば開幕戦の勝利によってスタートダッシュできたわけだが、遠い昔のように感じる。その後、天皇杯でも対戦したが、チーム全体のポテンシャルが十分に発揮されての勝利。ここまで2勝を手にしている。
 モフ将政権2年目となる今季は、出鼻こそくじいたものの徐々に回復。4月から5月にかけて9試合無敗を記録するなど、一気に順位を押し上げた。しかし、その後は隣に土を付けられるなど急降下。前節の秋田戦が実に8試合ぶりの勝利だった。デラトーレ(往年の西武の助っ人っぽい)やチアゴアウベス、などのFWがいるものの、イマイチ波に乗り切れず、加えて藤本がACL+半月板損傷でシーズンアウトとなったことから、夏のマーケットでディサロをレンタルで獲得。さらには、昨シーズンに続いて樺山も獲得。停滞気味の前線にテコ入れを行い、巻き返しを図る。

 どの相手でも先ずは自分たちがやるべきことをやることが必要。とはいえ、もう1度山形戦をきっかけに上昇したいという願望もある。

メンバー

 ウチは前節から5枚変更。川上→岡本、勇利也→小島、アマ→岩上、KJ→山根、北川→平松。岡本は遂にリーグ初スタメン。ベンチメンバーは6人となっている。COVID-19アクシデントのリリースがあった通り、起用できない選手もいる。

 対する山形は8試合ぶりの勝利となった前節秋田戦から3枚変更。木村→野田、小西→南、山田康太→チアゴアウベス。前節移籍後初出場となったディサロがこの試合でもスタメン。樺山もベンチ入り。前節スタメンだった木村は瓦斯の台所事情が厳しくレンタルバックすることに。山田康太がベンチスタートなのは疲労考慮の上か。

前半

 山形のキックオフでスタートしたゲームだが、最初のワンプレーでウチの決意表明がなされる。最終ラインまで下げられたボールに対して平松・彰人・山根が猛然とプレス。それに呼応するように全体が限定していき、パスミスを誘った。畑尾がサムズアップしていたように、チームとして狙っていたと推測されるが、受け身にならずに前で捕まえようとする意図は伝わった。

 ま、万事思惑通りに事が進むわけはなく、12分にピンチを迎える。山形のパスミスを岩上がカットするもスリップ。チアゴが回収して右サイドに流れていた藤田へ預ける。藤田→半田→藤田→チアゴと外回りでボールが推移。チアゴは独特のボールタッチで小島との間にスペースを得ると強引にクロス。小島に当たって回転が不規則となってドライブしたクロスボールは城和の頭上を越える。そこに待ち構えていたディサロが頭で合わせるも、シュートはポストを強打。後輩のミスを見逃さなかったが、レレマスク発動とはならず。
 クロス対応は通年の課題といえど、そこまでの過程はチアゴの個人技に依る部分も大きい。半田と藤田を並ばせればボールは必然的に動くし、そこに限定掛けるのは厳しい。とはいえ、ここで万が一失点していたら試合展開が間違いなく変わっていたし、取り敢えずポストを拝んでおこう。

 山形の攻撃はSHのチアゴと加藤が大外で張ってウチのSBを釣り出し、SBがガンガンインナーラップしていくのが基本形。あとは南と藤田が縦関係になってボールを引き出したり、そこに國分が絡んで3人目の動きしたりで結構簡単に前進する。基本的なメカニズムは開幕時から変わらず(もっと言えば昨シーズンから継続)。
 対するウチの対応も開幕戦同様。2トップ横並びで相手CHをサンドして中締め。加えて、細貝が國分番を務めており、楔で打開されそうな局面を悉く潰した。そして、トップがスイッチ入れると連動して全体押し上げ、ウチのCHが元々のマーカー捨てて1つ前のラインの選手を捕まえていた。これができるのも、ウチのラインが高く設定されていてコンパクトな陣形が保たれていた。コンパクトとなればラインを超すようなボールを蹴ってスピードで千切ろうとするのが常套手段だが、ウチの対策はSBの守備専従。小島のディフェンス能力はもはや言わずもがな、岡本くんにしても関根レベルのドリブルならば封殺できるほどのポテンシャルはある。彼らがオーバーラップしてスペースを与えることを嫌い、4枚の綺麗なラインを形成して高い位置を取らなかった。攻撃時は基本的に前の4枚で何とかしてもらう。理にかなった策により、ディサロのシーン以外でバタつく場面は少ない。

 すると22分、國分に縦パスが入ったところを死角から細貝が華麗なスティール。ルーズボールを彰人が拾って平松へ。山根がダイアゴナルランで相手を引っ張ると、空いたスペースを利用して平松はシュート。低い弾道のボールは後藤に防がれる。ただ、高い位置で奪い、そのまま時間を掛けずにシュートまで持っていけた良い形。
 それによって得たCK。風間の速いボールをニアで彰人が逸らすと、ファーの小島の元へ。小島は落ち着いて胸でコントロールし、上手く身体を寝かしながらバウンドさせることなく右足でボレー。天井に突き刺して12試合ぶりの先制点を挙げる。やっとセットプレーからゴールが生まれたこともめでたいし、慌てずにコントロールして枠に飛ばした小島は流石。

 得点直後はセーフティにプレーすることが求められる。仮にすぐに返されると一気に流れを渡す。そういう意味でも31分のプレーは分岐点だった。山形が左で仕掛けようとするも作り直して右へ展開。山﨑が顔を出してきたチアゴに当てると、チアゴはワンタッチで藤田に落とす。藤田も左足ワンタッチで山根と小島の間のスペースにボールを供給。駆け上がった半田がクロスを上げると小島がブロック。しかし、再度半田が拾ってマイナスに鋭いグラウンダーのクロス。そこに後ろから走り込んでフリーの國分がヒールで合わせたが、惜しくも枠を逸れる。完璧な決定機。
 この場面ではややスライドしきれず、藤田のマークが浮き気味だったことで打開された。にしても藤田のパスセンスと半田のオーバーラップのタイミングの良さはいつ見ても敵ながらほれぼれする。

 速報値ではボール支配率が73%-27%で実況が滅多に見ないと言っていたが、ウチは前節も同様の数値を叩き出していたので平常運転。32分過ぎ、大槻氏からは「テンポ上げなくて良いよ、テンポ上げない。自分たちのリズムでやれ、自分たちの」という声が飛んでおり、相手のアップテンポに触発されずにコントロールするような意思統一が図られていた。

 35分、山﨑からサイドに張ったチアゴへの1つ飛ばした長いパスが通る。チアゴがディサロに渡そうとしたパスは合わないが藤田がフォロー。そのままPA手前まで進んだ藤田はファーサイドの深い位置に柔らかいボールを供給。そこに走った加藤が折り返し、最後は國分がプッシュ。ネットが揺れたが、加藤のポジションがオフサイドとなり、事なきを得る。
 山﨑からのパスを通されるとどうしてもウチは長い距離帰らなきゃいけなくなるし、ディサロ・藤田と前を向いて仕掛けてくる選手に対してアタックに行きにくい。網に引っ掛けられないときの撤退はキツイものがあるが、ここをサボらずにできるかが失点減には不可欠。

 圧倒的にボールを握られパスも回されたが、それでも要所は抑えてリードを保って後半に向かう。因みに、リードで折り返すのは琉球戦以来18試合ぶり。

後半

 後半最初の形を作ったのはウチだった。50分、細貝→岩上→平松とテンポ良く繋がると、右の風間へ渡す。すると、前半は自重していた岡本がここだとばかりに思い切りよくオーバーラップ。絶妙なタイミングで風間からボールを受けると、マイナスのボールを供給。PA角付近で岩上が走り込んで合わせたが、ボールはコンバージョンキックの如く。とはいえ、岡本の素晴らしい攻撃参加で山形に対してジャブを打つ。

 55分、山形はチアゴに替えて山田康太を投入。國分を右に配置し、山形の王子様が中央でタクトを握る。

 相手の陣形を窺いながらも、ウチは60分に決定機。山形陣内でウチがボールを落ち着かせ、右の風間が時間を掛けてキープ。2枚に囲まれてロストするも、川合に対して風間がすかさずチェイス。川合は野田に渡すが、そこにも平松が蓋をしてコースを切る。完全に詰みの状態を生み出し、風間がパスカット。こぼれを拾った平松は、マイナスのクロス。ニアで彰人がシュートするもミートせずファーに流れる。そのボールに山根が反応して右足を振り抜くが、ボールは明後日の方向に飛んでいく。これには大槻氏も吠える。
 風間がサイドで時間を作れることも大きいのと、失っても平松と連動して即時奪回できたのは良かった。PA内の精度については、日々鍛錬あるのみ。

 63分、大槻氏から城和への檄が飛ぶ。体力的に厳しいアピールをしていたことを察知した指揮官は「アピールせずやれ、絶対やめるな」と激励。時間帯的にもキツイとは思うが、ここを乗り越えないと3ポイントは見えてこない。

 66分、山形が2枚替え。ディサロ→デラトーレ、加藤→樺山。
 下がる2選手には序盤こそ形を作られたが、時間経過とともにウチも対応できるように。特にディサロに渡る前のパスを遮断していたが故、ディサロが後半は立ち位置が落ちて再度の選手と同じ高さに立ちフォローする場面が多かった。その動きも効果はあるが、ディサロが落ちることで頂点を取る選手がいなくなった。その辺りは徐々に落とし込んでいくところだろう。
 ウチも同じタイミングで力を出し尽くした風間に替えて奥村を投入。

 交代で入ったパワーのあるトップとドリブルに特徴のあるサイドアタッカー。当然警戒は必要。68分、樺山と岡本が初めて対峙。裏抜けのボールは岡本がバックヘッドで対処。その後、ボールを処理しようと樺山がゴールに背を向けた場面ではすかさず詰めて前を向かせない。それでも樺山が強引気味にターンすると、岡本は身体を離して対応。樺山のステップオーバー系のフェイクにも踊らされることなく間合いを上手く詰め、最後はボールを突いてカット。とてもルーキーとは思えない完璧な対応。

 山形に握られながらも集中力を切らさず立ち向かい、綻びなく時計の針を進める。

 それでも78分、山形が崩しに掛かる。右サイドで藤田と國分がパス交換しながらタイミングを窺い、一度作り直すことを選択。大分ウチはリトリート気味でボールホルダーに対してアプローチしなかった。すると、川合から藤田に斜めのパスが入って1stラインをブレイク。藤田はターンしてもう1つ縦を付けようとしたが、畑尾が流石の読みでカット。それでもセカンドを拾った南が針の穴を通すような楔を山田康太に。少しズレたがウチの選手に当たった跳ね返りを山田が拾う。2回のシュートフェイントを挟み、サイドへ流す。そこに半田が駆け上がりクロス。鋭い良いクロスだったが、相手に通る前に小島がブロック。やはり10番にスペースを与えると怖い。

 84分、山形にビッグチャンス。最終ラインで野田がボールを回収してすぐ縦パス。顔を出してコースを作っていた山田はボールを受けると、右大外の國分へ。國分にボールが出たタイミングで半田はハーフスペースを走っており、当然國分はワンタッチで半田に繋ぐ。半田は今までのように鋭いボールを選択すると思いきや、近くの藤田にラストパス。藤田はコースを狙ってシュートを放つが、わずかながら枠を外れる。
 個で打開できる選手たちが共通認識を持つことほど怖いものはないが、山田・半田・國分の3人は上手さが光る。ただ、そういった長い距離のボールの動きにも振り回されず、最後に遮断できた。

 その後、87分に山田が藤田とのワンツーで抜け出しクロスを上げ、デラトーレがニアで合わせるも枠を外れる。90+5分にも山田が右サイドで上げたクロスに藤田が飛び込むも、シュートは櫛引の手中に収まる。

 最後まで虎の子の1点を守り抜き、遂に念願の勝点3を得た。ホイッスルが鳴った瞬間、選手たちは疲労のあまり歓喜よりも先にピッチ上に倒れ込んだ。勝つことの大変さと嬉しさを噛み締める。指揮官は拳を1度握り、その後はすぐに切り替える姿勢を見せた。余韻に浸る時間もない過酷な仕事である。

雑感

 長かった。内容的にどうにもならない試合も中にはあったけど、チーム全体の頑張りに結果が呼応しないもどかしさをずっと感じていた。この試合でもあれだけファイトしたのだから、報いがあるのは真っ当。

 守備に関しては、できることをやろうという意図が見えた。ウチにはファン ダイクはいないし、ルベン ディアスもいない。全部の裏抜けに対応することも、全てのハイボールに競り勝つこともできない。だからこそ、今あるリソースでの最適解を見出すしか道はない。山形がSHに幅取り隊を命じていることもあり、そこに対してウチのSBが牽制しつつ、相手SBがインナーラップした際にはウチのSHがSBと連動してフリーにさせない。無闇に攻撃参加してスペースを相手に渡すこともやめ、兎に角自由を奪う。
 一見、4枚のラインが残ると重心低くなりそうだが、そこは中盤2枚の出番。狡猾(誉め言葉)にボールを刈り取り続けた。縦パスを受ける選手には必ずと言って良いほどCHがチェックし、芽を摘んだ。また、前で奪おうとする意識を前面に押し出すことで、ウチの陣形自体はコンパクトに保てていた。ズルズル下がらずにチャレンジしたので、事故もそうそう起きない。勇気を持ってチャレンジすれば、状況は良い方向に進んでいく。

 攻撃はワンチャンスをモノにした。ただ、得点に至らないまでも、シュートシーンに関しては大体がボール奪取から手数少なく持っていったもの。良い守備から攻撃へという流れはできている。それは、選手間の距離感が適性であり、正しい位置に立つことで、攻守においてバランス良く対処できる。
 前で引っ掛けることもできるので、最後の精度が伴えば勝点は今後も積めるようになる。焦らず日々磨くのみ。観る側はシュートが決まるように日々祈祷するしかない。
 あとは、中盤が刈り取って攻撃のスタートが従来よりも高いポイントになっているのと、サイドの風間でボールを落ち着けられるのも機能した。CHの時の風間は守備の負担が大きいことに加え、中央の選手だと360度からプレッシャーが来るため、いくら風間と言えどもパス精度が落ちてしまう。しかし、右サイドであればおそよ180度からしかプレッシャーが来ないため、視野の確保がしやすい。タメを作りながら、持ち前のパスセンスで斜めのパスもどんどん刺せるので、間違いなく起点となった。途中で売り切れるほどハードワークも厭わずこなし、勝利に貢献。

 あとは、山形っていう見てて好感を持てるサッカーをするチームに勝てたことも個人的には嬉しい。すぐリスタートする意識を持っていてリスペクト。同じ奥羽のチームでも天と地ほどの差がある(比べるものでもないが)。でもって、見る度にスケールが大きくなっている半田さんはさっさと世界に羽ばたきましょ。

 まだ1勝しただけだと気を引き締めることも大事だが、勝ったことは勝ったこととして喜ぶことも大切。この喜びをまた味わう度にもまた挑戦を続けなければならぬ。
 見えない敵ともまた戦わなければいけない状況になっている。スクランブル気味にはなるが、チーム全体で苦境を超えていけ。

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