成長過程 vs金沢 0-0

 狙い通りの綺麗な崩しで先制し、その後もプランを遂行しての2年連続の開幕戦勝利。今までにないウチの戦い方を披露した。ただし、昨シーズンは開幕戦の勢いを続けることができずに停滞したことを忘れてはならない。一喜一憂せず、まずは自分たちのベースとなる部分を固めて確実に勝点を積んでいくことが大切である。

 2016シーズン以来の開幕連勝を懸けて迎える相手は金沢。奇しくも、2016シーズンの第2節も金沢戦だった(バイタルのドーベルマンらしい舩津のミドルに度肝抜かれた時)。金沢との相性も大変よろしくなく、2勝3分け5敗と大きく負け越している。昨シーズンはホーム・アウェイ共にドローに終わったが、アウェイではシラの起死回生の同点ゴールで辛くも追いついた。ホームでの記憶がないと思ったら、昨シーズン唯一の無観客開催だった。ミッドウィークにダービーを戦った影響でかなり疲弊していて、終盤はパワーが不足していった印象が何となくある。
 今シーズンもヤンツー政権継続。毎年しぶとく残留させる手腕は流石だし、和製ホジソンと言っても差し支えない(その異名がポジティブなものかは置いておくけど、一応代表監督もやったぞホジソン…)。面倒なヤンツー式マンツーマンで毎年苦労しているのに、今シーズンからHCとしてウチの前監督である久藤氏が就任。両者は磐田時代からの師弟関係にあり、ウチの続投オファーを蹴って金沢に行くのも仕方ない。金沢サイドからすると、いざという時のセーフティネットとしても久藤氏を据えているのではないか。守備に特徴を持つチームにウチを昨シーズン残留に導いた虚無ディフェンスの要素が加わると、とても厄介。
 藤村と大橋のCHコンビはリーグ屈指だったが、大橋は栗鼠が強奪。それでも広島から東京五輪世代の松本大弥をレンタル。前線のターゲットである瀬沼が踏み台に移籍したが、地元の星である豊田が加入してパワーは保っている。前述の通り、このチームの特徴は強固な守備にあることは間違いないが、藤村・松本・嶋田など、違いを生み出せる選手が多くいる。

 開幕直後で完成度が高くないのは両チームに言えることだが、上位戦線に食い込むためには蹴落としたい相手。

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 ウチは前節からノーチェンジ。前節の出来を踏まえ、継続するという判断。ベンチには藤井が入った。

 対する金沢もスコアレスドローに終わった徳島戦から変更はなかった。勝てはしなかったものの、降格チーム相手に手ごたえを感じたようだ。前育選手権優勝メンバーの松田は今年も群馬に凱旋。

前半

 この時期特有の「空っ風」が吹き荒れる中、コイントスで勝ったウチはエンドチェンジを選択。前半は風下で耐え、後半勝負という魂胆。

 それでも、立ち上がりは思っていたよりも前進することができた。金沢がボール保持する時間は長かったが、縦パスが入った際には潰せていて、そこからのポジトラで一気にサイドに解放させた。山根のところでボールが落ち着くので、そこを経由して展開するシーンが何回かあった。

 15分手前くらいからは、金沢がボールを持つエリアが幾分高くなる。というのも、ウチのビルドアップの出口が塞がれていて局面打開の手がなく、厳しめのパスが通らなかったことに起因している。重心を押し上げられず、守勢にならざるを得なかった。

 それでも20分に決定機。岩上の低い弾道のパスはKJに渡らず金沢GKの白井に届く。白井はすぐに松本に付けるが、足取りがおぼつかずスリップ。いつも通り試合前に大量の水が撒かれていたたが、風に煽られていたので染み込まず表面に水が浮いており、滑りやすくなっていた。これをKJが拾ってGKとの1対1となる。狙いすましてニアに速いシュートを打つが、白井が右足で防ぐ。KJはファーに巻くシュートを打つような体勢から、素早い脚の振りでニアを抜こうとした。それに対する白井も、身体はファーをケアしてニアに誘い、ドンピシャのタイミングで右足を出すファインセーブ。芳しくない時間帯だっただけに決めきれたかったが、GKを褒めるしかない。

 その後は再び膠着状態。徐々に風にアジャストしてきた金沢が豊田に当てて仕掛けようと試みるが、豊田の触る位置がPA手前になってしまい、ウチとしてはさほど脅威にはならなかった。とはいえ、ウチもボール奪取のポイントが低く、ショートカウンター発動するほどのスペースもなかった。

 どちらもフィニッシュまで持って行けず、スコアレスのままハーフタイム。

後半

 後半開始から、ミツに替えて風間を投入し、岩上をRSB、小島をLSBで起用、中盤は風間と細貝の組み合わせに。風上に立つだけに、『発射台』を担う選手を3枚(岩上、風間、細貝)に増やして攻撃に出る。

 が、後半立ち上がりは金沢がボールを握る。ウチは風上に立ったことでロングボールを使いやすくなったが、セカンドボールをひたすら回収されて全然陣地回復できず押し込まれる。何とかボールを拾おうと球際をタイトに当たるが、ファウルになってしまい流れが来ない悪循環。

 53分、細貝がアフター気味のファウルで与えたFK。藤村はファーの深い位置にボールを供給すると、松本大輔が高さを活かして折り返し、最後は松田が合わせる。シュートは枠に飛んでいたが、櫛引がファインセーブ。1つピンチを乗り越える。

 61分、右サイドを深堀が持ち上がり、DFの裏のKJに通そうとするも松本大輔にカットされる。その流れから、藤村→嶋田→松田と右サイドに展開。松田はプレスが来ないと見るや、PAの深い位置にボールを送る。そこに林が反応するが、櫛引が勇気をもって飛び出して対応する。

 63分、金沢は平松に替えて大谷を入れる。平松は前半から推進力を持って仕掛けていたが、ここで特徴の違う大谷を使う。カードを1枚もらっている岩上のところを大谷のスピードで突いてくるのは嫌な一手。

 70分、細貝にパスが入った瞬間を林に掻っ攫われ、こぼれ球を藤村が回収。藤村→嶋田→松本大輔→松本大弥→藤村と回してプレスを回避し、高い位置を取った毛利に付ける。毛利は隣のレーンの大谷へ。大谷は豊田とのワンツーでバイタルに侵入するが、ここはウチのプレスに遭って撤退。しかし松本大弥が再度拾い、すぐに藤村に渡す。藤村は自身の前のスペースを担保に選択肢を見極め、横を走ってきた嶋田へ。嶋田はコントロールミスするも松本大弥に戻す。松本大弥は林とワンツーで右サイドに流れ、PA角から右足を振り抜く。厳しいコースに飛んだが、ここも櫛引が弾き返す。サイドに出すと見せかけて山根のプレスをいなしてシュートに持っていく松本大弥の技術の高さが現れたが、櫛引も落ち着いていた。

 明らかに動きが重くなってきたウチは66分、稔也→川上、深堀→平松の2枚替え。前節と同じく川上がRSBに入り、岩上を1列上げた。なかなかボールの落ち着くポイントがなかったので、平松に収められれば打開できるのではないかと期待を持つ。

 しかし、依然として金沢の時間帯は続く。ウチが前を向くシーンがなかったわけではないが、どうしても出しどころがなくて引っ掛けてしまい、被カウンターとなっていた。ロストの形があまりよろしくないし、中途半端に前がかりになりそうな局面で失ってしまい、自分たちで流れに乗り切れない。

 どうにも突破口のないウチは最後の交代として、KJ→シラ、岩上→中山。シラのドッカンターボでカオスを生み出そうと試みる。が、シラのジョーカー起用は金沢にとっても想定内だろうし、全然ボール触らせてもらえなかった。

 90分、敵陣浅い位置からのFK。風間のストレートのボールに畑尾が反応し、何とか平松に繋ぐ。平松はGKの頭を超すシュートを選択するが、白井の圧力を感じてかわずかに枠を捉え切れない。最初はオフサイドかと思ったが、リプレイを見るとファーにDFが1枚残っていたので問題なかった。それだけに、決めたかった。

 92分、今度は金沢にこの試合最大の決定機。ピッチ中央でセカンドボールを回収した松本大弥がシンプルに前線に放り込む。有象無象のボールだったが、強風に押し戻されて軌道がイレギュラーに。後ろ向きで対応せざるを得なかった畑尾がコントロールできなかったところを大谷が見逃さない。PAに侵入して落ち着いてシュートを打つ。失点を覚悟した刹那、櫛引がドンピシャのショットストップ。シュートが打たれるまで体勢を崩さず我慢した櫛引の対応は素晴らしい。
 その流れのCKも中央で松本大輔が合わせたが、バーの上に飛んでいく。

 最後は急いでリスクを冒すのではなく、セーフティに試合を締めてスコアレスドローで終了。

雑感

 開幕2戦目、強風という要素、金沢という相手を考えれば、決して悪い結果ではない。上位に絡むならこういうゲームを誤魔化しながらも取らなきゃなんだけど、小手先で対処すれば恐らくまた同じ轍を踏む。今は骨格を固めることが大切。

 前節切れ味抜群だったショートカウンターは影を潜めた。いくつかFW2人の個のスピードで勝負する場面はあったが、あまりスペースが空いてなくて仕留められず。そもそも、金沢が嫌らしくカウンターを芽を摘んできたのもある(お互い様だけど)。
 あとは、バックパスが多いことに痺れを切らす方がスタンド内にも散見されたが、あの陣形に無闇に縦パス打ち込んだら返り討ちに遭うのは明らか。現に、そうやって戦って勝点を積む試合を昨シーズン最終盤に目にしたはず。前節起点として機能したSBとSHにはかなり深追いして牽制してきた。53分のタッチバックなど、櫛引のキックで局面を動かそうともしたが、そう何度も蹴るわけにはいかず。
 なかなか機能しない中で、35分~37分頃までのビルドアップは可能性を感じた。CB+ミツで相手のスライドを揺さぶり、左の山根のところで1枚剥がして前進。そこが厳しいと判断して一度戻して作り直す。畑尾と城和のパス交換に岩上が絡んで松本大弥を喰いつかせて、再び左サイドへ。ミツから山根に1つ飛ばしたパスが入ったところでファウルを受けて繋がらなかった。CBの足元が安定していることは勿論だが、奥行きを作ってくれる山根の存在は大きい。
 山根の存在感は、ドリブル1つ見るだけでも十分感じられるが、パーソナリティも良い。後半立ち上がりにFKを立て続けに与えた場面。プレーがすぐに切れてしまって集中を保つのが難しい状況だったが、「こういう時間ある、こういう時間ある。耐えろ、耐えろ」という山根の声が響き、スタンドからも拍手が起こった。昨シーズンまでは翔大が同様の声を出していたが、こうやって常にチームの為に声を発する選手がいるのは貴重。試合直後のツイートも素晴らしかった。オフの和菓子店巡りと犬との戯れ含めてサポの心を掴んでいる。

 守備は難しい環境でも耐えた。SBの毛利と松田が高い位置を取るから稔也と山根はピン止めされちゃうし、SBのスペースを空けるためにSHの嶋田と平松が1つ中のレーンにズレてくるのはマークしにくい。それに、豊田が中央のレーンに顔を出すと思ったら、その後ろに林が走り込んだりと、結構デザインされていた。まだ出し手とのタイミングが合わずボールは出なかったが、DFラインの裏に落とすボールが有効的に使えるようになると、金沢の怖さは増す。
 それと、やっぱり藤村は簡単に消せない。山形の藤田&南も嫌だったが、藤村&松本大弥も正しいポジショニングをし続けていた。KJと深堀の勢いを削ぐためにどうすれば良いかとなった時に、藤村と松本大弥を横並びにされると辛い。さらに、後半途中からは嶋田がフリーマン化して2人と並んでビルドアップに絡んできて全く捕まえられなかった。全体的な重心も上げられなかったので、セカンドを拾われて何度も脅かされるのは仕方がなし。

 最後まで攻撃的なカードを切って勝とうとする姿勢は見せていたが、リスタート時の動きなどを見ると、リスクを背負って急ぐような意識はあまり感じられなかった。引き分けという選択肢も考えて、ある程度割り切ってプレーしていた。その判断に賛否はあるかもしれないが、場の雰囲気に呑まれずにチームとして意思統一されているのであれば、問題ないだろう。シーズンは長いし、無駄な勝点のロストは誰も望まない。

 ブロックを敷く相手にどう立ち向かうかという課題は一朝一夕に解決できるものではなく、選手起用含めて最適解を探していくしかない。
 次の仙台も対戦成績がすこぶる悪いが、ここで叩けば勢いがつく。一歩ずつ前進していきたい。

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