初志貫徹 vs岡山 0-1

 立ち上がりから押し込み続け、最後までインテンシティを落とさずにやり切った前節。手負いの相手に対し、一切手を緩めることなく果敢に仕掛けたことで、危なげなく勝利を収めた。全体をコンパクトに保ち、綿密なスライドによりスペースを埋め、守備にも安定感が出た。

 流れに乗って連勝したい8月ラスト、2戦連続ホーム、迎える相手は岡山。今シーズンは開幕ダッシュに成功し、現在まで停滞することなくトップハーフをキープ。ウチとの前回対戦以降はわずか2敗(熊本戦・フリエ戦)。チームとしての状態の良さが結果に現れる。前線の破壊力も勿論だが、田中雄大や木村、、宮崎幾笑、河野などのサイドで違いを生む選手が多い。最終ラインの柳とヨルディバイスが強靭なフィジカルで跳ね返す。
 一応ホームフォーメーションは4バックだが、ウチと似たような3バック可変。加えて、バイスが駆け上がってカオスを生み出すので守る側に歪みが生じる。ただ、基本的にはプレー選択をある程度限定させているっぽく、判断スピードが速まり、なかなか奪いどころがない。
 とはいえ、COVID-19アクシデントにより離脱者が複数。誰が出てくるかは蓋を開けないと分からない。

 ここ数年は謎の相性の良さを発揮しているが、相性が何の意味をなさないことを千葉戦で再認識。仕組みは違えど、仙台と局面での配置は似ているので、前から嵌めてペースを握りたい。

メンバー

 ウチは前節からノーチェンジ。変える必要性もなく、継続して前向きのプレーをしたい。契約上出場できない川本に代わり、国友がメンバー入り。怪我の状態が心配されたが、長期的なものにはならなかったようだ。

 対する岡山は敗れたフリエ戦から2枚変更、濱田→柳、河合→齊藤。柳は有給明け。

前半

 岡山のキックオフで始まったが、岡山が最終ラインまでボールを戻したところに北川とKJが猛然とプレス。この試合でも前から行くぞという気概を見せる。
 立ち上がりは岡山が押し込む時間が多かった。右上がりの可変でRSBの成瀬が高い位置を取りボールを運ぶ。ムークがハーフスペースに入り囮になることもあり、ややウチが捕まえにくかった。
 ウチとしても攻撃時のパワーを増すために友也までボールが入ったタイミングで小島がオーバーしていくので、ロストするとスペースがぽっかり空く。細貝が何とか埋めるてはいるものの、早い時間でカードをもらって難しくなった。

 12分、細貝の縦パスを岡山陣内で輪笠がカットし、左サイドに落ちてきていたデュークに預ける。デュークは前を向くと、城和の外側を通して齊藤を走らせる。齊藤はPA角まで運ぶとカットインし、デュークのダイアゴナルランを囮に中央の佐野へ渡す。佐野はファーストタッチで角度を作り、右足を振る。コントロールショットは櫛引が一歩も動けないほど際どいコースに飛んだが、わずかに逸れる。ただ、シュートに対してウチの選手が3人アクションしており、仮に枠に飛んでいてもブロックできていた可能性はある(ディフレクトのリスクもかなりあったけど)。
 肝を冷やす場面だが、岡山の連動した動きが見事。齊藤がウチのCB2枚を引き付け、さらにはデュークがPA内まで走り切ってスペースを空け、自陣から長い距離スプリントした佐野がシュートまで持ち込んだ。ウチとすると、やはりDF陣が後ろ向きの対応を迫られる回数を減らしたい。このシーンはどうやっても岡山が優勢の状況だし、動きに対応してもスペースまでは埋められない。CBのチャレンジ&カバーも大方できていたが、やはりカットインされた時にどうしてもボールに喰い付いてしまい、佐野の前に美味しいスペースを割譲した。

 14分も岡山の決定機。櫛引のロングキックを跳ね返し、セカンドを佐野が回収。ファーストタッチで上手く風間をいなして剥がすと、風間も行かせまいと足ごと刈り取る。佐野は転倒するも止まることなく前進してプレーオン。そのままアタッキングサード手前まで持ち込み、デュークが隣のレーンに流れて畑尾を釣ったことを確認して齊藤へ。齊藤はワンタッチでムークに落とす。このボールがややズレるも、球際の強さを見せてキープ。ムーク→柳→成瀬→ムーク→輪笠→佐野→輪笠と右サイドでトライアングルを形成してリズムを作る。一度最終ラインに戻すと、バイスが左サイドにフィード。幾笑が深い位置で受けると、左足でクロス。中央でデュークが左足で上手く合わせたが、櫛引がタイミング良く反応して防ぐ。
 ワンステップであのフィードが蹴れるバイスはスーパーとはいえ、クロス対応で後ろに下がった際に生じるポケットを使われた。これも仕方ないが、個々のクオリティと正しいプレー選択の連続で、ウチがディレイさせる時間を与えてくれない。

 ウチも決して内容が悪いわけではないが、なかなか前進できず。可変によって曖昧になるスペースにKJが浮遊してボールを引き出し、そこを起点に友也と小島が駆け上がる形は何度か作ったが、バイタルに至る頃には岡山の陣形も整っていてチャンスにならず。
 もう1つの形は長倉と岡本を並走させて裏を狙い、畑尾or櫛引が右サイドに長いボールを繋げるもの。これも宮崎智彦の脇を突く意図はあったが、佐野の素晴らしい守備意識によってカバーされる。

 26分に1つゴールに迫るシーン。柳の軽率なパスミスを見逃さず友也が拾ってボールを運び、アーリー気味でクロスを上げるが、柳に直撃してスローインとなる。友也からボールを受けたKJは鋭い切り返しだけで柳を外して低い弾道のクロス。ニアの北川は合わせられずも、その後ろの長倉がゴールに背を向けた状態でトラップし、そこから反転してシュートを放つ。惜しくも枠には飛ばなかったが、クロスから良い展開まで持っていった。

 徐々にウチもギアが上がってきたと思われた矢先の29分。櫛引までボールを下げて作り直そうとするも左足で蹴ったボールはデュークの足元に転がる。デュークは丁寧にコントロールし、冷静に浮かせて流し込んだ。
 個人に責任を追及すべきではない。エスケープするためのコースを誰かが作っていれば変わったかもしれないし、パスの強さや方向によっても異なる。

 先制して俄然勢いに乗った岡山は、32分にも決定機を作る。左サイドの幾笑のスローインをデュークが収めて幾笑にリターン。幾笑は中央のムークに渡すと、少ないタッチでムークは成瀬に落とす。成瀬は友也の外側を通して齊藤へ。齊藤は手数を掛けずにシンプルにクロスを上げると、ウチの守備陣の頭を越えたボールに中央でフリーのデュークで合わせたが、櫛引がファインセーブ。メンタル的に厳しい状況だが、それでも引き摺らずにやるべきことをこなす。

 続く36分も岡山。ウチの陣内で岡本が細貝に出したパスを輪笠がカット。そのこぼれがデュークの前に転がり、PA手前まで運ぶ。シュートフェイクを入れてDFに距離を詰めさせないようにし、右でフリーのムークに渡す。ムークは小島と城和の間を見事に通し、ラストは輪笠が合わせるも宇宙開発。

 ウチの反撃は40分。最終ラインからのビルドアップで畑尾が1つ飛ばして長倉に付ける。長倉は幾笑を背負いながら城和に落とすと、城和は高い位置を取った岡本へワンタッチで刺す。岡本がボールを持ちながらパスコースを探していると、長倉がハーフスペースを駆け上がってボールを受ける。スピードを殺さずPA角まで前進した長倉は、バイスの逆を取って剥がす。最後は右足のアウトサイドでシュートを撃つが、堀田に防がれる。

 45+1分もチャンス。岡本→長倉→KJ→細貝と右サイドで繋ぎ、相手がスライドしてきた頃を見計らって、細貝から左の風間へ。風間も大外の小島に渡し、更に友也が外に流れて縦パスを受ける。友也は身体の回転を利用してクロスを上げたが、北川の頭には少し合わず。

 失点こそしたものの、時間経過とともに内容も良くなっていた。0-1で折り返す。

後半

 後半立ち上がりはウチがスピード感を持って攻め込む。
 48分、右サイド深い位置からの岡本のクロスは弾道が高すぎたが、ラインを割らずに戻ってきた。友也が上手く身体を使って回収。鋭いターンで前を向き、一度小島に落とす。小島は友也とのワンツーで深くまで抉り、ムークの寄せに屈せず狭いエリアを絶妙なダブルタッチで躱し、相手を引き付けてから友也にリターン。友也も緩急を用いて成瀬を剥がしてクロスを上げたが、小島に当たってしまった。
 シュートまで持っていけなかったが、個々の動き出しにプレースピードが速くなり、相手の歪みが生じやすい状態。

 54分に最初のカードを切る。KJに代わり、故障明けの国友を投入。更に、62分には北川→深堀、小島→山中の2枚替え。コンディション面を考慮しての交替でもあるし、CB2枚にスピード勝負を挑む狙いもありそう。

 65分、ウチがゴールに近付く。櫛引のロングボールのセカンドを岡本が拾って長倉ヘ。長倉は風間に落とすと、風間が国友に速いボールを入れる。国友が前を向くと、それまで外に張っていた友也が中に入り、空いたスペースに山中が駆け上がる。国友は1回ボールを跨いでタイミングを外して山中に渡す。山中はニアに速いグラウンダーのクロスを供給すると、ニアで深堀がヒールで合わせる。しかしバイスのブロックに遭い仕留め切れず。

 73分、敵陣左サイド浅い位置からのFK。風間のストレートのボールを畑尾がファーで折り返す。城和のバックヘッドは未遂に終わるが、こぼれ球を国友が強引に振り抜く。しかし、バイスが至近距離でブロック。

 76分、一度はロストするも深堀が瞬時に身体を入れて奪回。細貝が回収して左の山中へ。山中は相手を抜き切る前にタイミングを外してクロスを上げたが、中には合わなかった。

 その後、シラをRSBで使うファイヤー戦法を敢行するもゴールには結びつかず(守備時に負うリスクが跳ね上がっているが、観ている分には面白いし期待も持てる)。

 最後まで牙城を崩せないまま0-1で終戦。

雑感

 内容としては五分五分だったが、わずかな差が結果に明暗を分けた。「継続性」という言葉で括るのは簡単だが、原則に基づいてそれぞれが無駄なく状況判断を行えば相手を上回れることを岡山から学ぶ。昨シーズン終盤のウチもプレー選択に制限を設けて徹底したが、ある程度方向付けができれば十分に戦える(東北の某チームは選択の幅を究極まで削ぎ落した例ではある)。

 守備に関してはこの試合でも強度を保ったはず。ただ、似たようなフォーメーションだったので、構造上の脆弱性が相手にもバレていた。SHのフォローでSBが前に出た後のスペースの扱いはとても難しい。だからこそ、無闇なロストをせず、フィニッシュまで至る機会を増やしたい。

 オフェンスは、5バックの相手を崩す難しさを再認識。後半はパススピードも上がり、相手を脅かすシーンもいくつか生まれたが、これがもっと長い時間できるようにしたい。
 また、後半途中からはスピードで岡山のCBと競走を仕掛けたが、国友の足が速い。深堀は前からスピードが武器だが、国友も走れる。スペースを見つけることも上手く、次節以降も試合に絡んでくるだろう。
 あとは、岡山がフォアチェックしてくることも分かった上で櫛引を使ってひっくり返そうとした。これはスカウティングの段階で決定していただろうし、現に櫛引が高い位置で展開するシーンはいつもよりも多かった。足元で繋ぐスタイルを採用する以上、今後もエラーがゼロにはならない。だからといってここまでの33試合と別のサッカーをすることなどあり得ない。貫き通すほかない。終わったことを嘆いても何も始まらない。

 分かっていることはただ1つ。次のダービーで蹴散らせば良い。

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