泰然自若 vs秋田 2-1

 新年明けましておめでとうございます。大八がウタカを完全に封じ込み、置き土産にゴールを決めてから早2か月。ついに2021シーズンが開幕を迎える。昨シーズンの開幕戦と言えば、監督交代、メンバーの入れ替え等で陣容が定まらず、看板撤収されるほどの強風の中新潟に殴られ、降格への恐怖に慄いていた。当時は、次の週からリーグそのものが止まること、降格が免除されることも知る由がなかった。結果的に降格圏であろう順位は免れ、クラブ史上最多タイの勝点を獲得したものの、それは降格なしのレギュレーションでロマンを追うクラブが増えた結果である。4チーム降格という厳しい状況、一寸先は闇のシーズンが始まる。

 そんなシーズン開幕戦で迎える相手は秋田。ウチが2シーズン滞在したJ3時代、2年連続でホーム開幕は秋田戦がセットされており、秋田が昇格した今シーズンもまた初っ端から相対することとなった。昨シーズンの秋田は、開幕から28試合無敗でぶっちぎってJ3を優勝。沼津で指揮を執っていた吉田謙氏を招聘したことで、一気にチームとして成長。天皇杯でも川崎相手に前プレで商機を窺っていた。
 基本的には、全員のハードワークで成り立つサッカーを志向。即時奪回でショートカウンターというのが十八番の形だ。前線が前から押し込みパスコースを限定する。相手DFが外に逃げる、もしくはパスミスが発生することでボールがタッチラインを割ると、ロングスローで一気に仕留めにいく。J3を席巻したハイプレスで、鼻息荒く群馬に乗り込んできた。

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 群馬は、新加入選手が4人。右SBに大宮からレンタルの吉永、CBで広大とコンビを組むのは藤井。右のSHには久保田、最前線には高木というメンバーで勝点3を目指す。

 対する秋田は、増田、飯尾、稲葉の3枚が新加入組。J3で自信を深めたメンバーを中心に、J2初勝利を目論む。

前半

 キックオフの流れで押し込み、敵陣で圧力を掛け、相手のパスミスを誘発。それによって得たCKで、大前の絶妙なボールをファーで広大が叩き込み、開始4分であっさり先制に成功する。ゴールエリアの中に選手が密集し、その選手たちがニアに流れて空いたポケットにGKの裏に潜んでいた広大が入った。デザインされたセットプレーだが、それを実行できるようなピンポイントのボールを蹴る大前も流石。

 ただ先制したものの、こちらのペースとは言い難い展開となる。「ハイプレス」という名のディレイタックルが横行し、プレーがすぐ切れて流れが出来ない。加えて、秋田が敵陣で得たCK、スローインには必ずCBが上がってくるため、それを待つ時間で時間がどんどん経過していく。ボールをシンプルに縦に入れると言えば聞こえはいいが、闇雲に蹴ってくる感は否めず、ウチもそれに受け身の形で対処せざるを得なかった。
 ロングスローを跳ね返す→相手に拾われる→何とか対応してサイドへ→ロングスローという展開がループ。

 そして24分、ビルドアップの局面。岩上から内田への横パスに対し、背後から秋田の齋藤がプレス。死角からの寄せに内田の対応が遅れボールロスト。沖野が一気に縦に運びカットイン。シュートのフェイクを入れてから、逆サイドの飯尾へ。飯尾がワンタッチで高い弾道のボールを入れると、ボールウォッチ気味になり、ウチの選手たちの脚が一瞬止まった。ファーサイドの深い位置から鈴木が折り返すと、このボールがKJに当たり稲葉の前に。稲葉のシュートは当たり損ねるが、こぼれたところを齋藤が蹴り込んで同点に。

 前述の通り、流れがぶった切られるため押し上げ出来なかった。そこで、大前が岩上の近くまで落ちてきてフリーマンとしての働きをするようになる。ミラーゲーム気味なこともあり、大前が落ちることでボールは落ち着かせられる。しかし、その分高木の孤立が顕著になってしまい、往年のウチのワントップ孤立化状態。それを回避するために、KJがレーンを跨いで高木の近くへ。それに伴い、平尾がかなり高い位置を取り、活路を見出そうとした。

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 また、内田が最終ライン近くまで引き、久保田が左サイドまで下りてくる場面も見られた。大前が裏抜けするタイミングを窺うとともに、久保田が2つ内側のレーンに入ることで、大外の吉永へのパスコースを空けることにも繋がる。現に、35分過ぎから岩上→吉永のパスは度々出ていた。

 可もなく不可もなくという前半だったが、アフターのファールがあまりにも多すぎてリズムに乗れないまま前半を終える。

後半

 後半に入っても相手の出足は衰えないが相変わらず飛び込みが遅いので、自陣でのFKばかり増えていく。が、そのせいで前進できないのも事実であり、徐々に相手のパスの起点が前になってくる。ゴールを脅かされるほどではないが、あまり好ましくない展開。

 64分に2枚替え。高木→翔大、内田→稔也で昨シーズンの要素を増やしていく。この交代が結果的に効くのだが、最も重要だったのは稔也が右に入ったことで久保田が中央の岩上の近くでプレーすることであった。

 岩上が担っていたゲームメイクの役割を久保田も同時に担うため、相手のプレスの矢印が定まらなくなった。今までであれば出口が岩上しかないため、そこ目掛けて削りに行っていたのが、近くに久保田が来たことで状況は一変。それに加え、岩上はどちらかというと長い距離のパスに長けているが、久保田は短いパスをテンポよく回しながら作るタイプ。パスの本数、速度が増したことで相手の最初のプレスを剥がすことができた。

 ファーストディフェンスが剥がせると、次は縦に付けたいわけだが、稔也・翔大という2枚のポイントが出来たことで、そこに当ててオーバーしていく選手が増える。大前が前を向けるシーンが増え、吉永が躊躇せず稔也を追い越していったのは相手にとって脅威となっていった。広大の負傷により、正確なフィードが武器の城和が入ったが、最終ラインからもボールが供給されるようになると最早プレスの嵌めようがないだろう。

 とはいうものの、スローインのミスから決定機を与えかけるが、相手の前線に走れるほどの脚は残っていなかった。
 ミスからの一連の流れのクリアを稔也が拾うと、そこから後ろで素早くパスを回す。松原がワンタッチで楔のパスを岩上に付けたことで、一気にスイッチが入る。岩上→大前へ渡り、大前が左サイドに持ち上がり、平尾へのパスを仄めかしながらも方向転換して、吉永へ。この展開により、相手のスライドが左サイドに偏った。吉永は稔也に繋ぐとスプリント。その吉永を囮にして中の翔大へと渡す。翔大がすぐに稔也に戻すと、ボールは再び大前に渡る。平尾も吉永もサイドを上がったことで、DFの間が少し空いた。その隙を突くべく、大前→KJ→大前→翔大→大前→翔大とものすごいスピードでボールが動く。昨シーズンも何度かこのような連動した動きは見られたが、フィニッシュまでは持って行けず、「惜しい」ってところで終わっていた。しかし、今日は違った。翔大に入ったボールに相手の脚が伸びスクランブル気味になったところを、KJが右足一閃。素早いスイングで振り抜いたシュートがネットに突き刺さり土壇場で勝ち越す。
 自陣から15本のパスが繋がっていて綺麗だが、松原の岩上へのパス、それと大前からKJに入れた縦パスにより、全員の動きが連動していた。特に大前のパスは、体の向きが完全に右サイドを向いており、あの体勢からKJの位置まであのスピードのボールを出せるのは末恐ろしい。

 残り時間は上手く使い、岩上の漫才みたいなクリアで危うくなる場面もあったが、無事に試合終了。2-1で昇格組の希望を打ち砕く。

雑感

 日程が発表されてから、開幕を取るかどうかはシーズンを占うと気が気でなかったが、3ポイントを拾えたことは極めてポジティブな結果。

 ディフェンス面は失点こそあったものの、あれだけセットプレーがありながらもやらせなかったのは大きい。昨シーズン序盤はセットプレーから失点することが多かったが、今年はかなり守り方が準備されていた。体制継続は大事。まだ細かい部分での受け渡しや、クロッサーへのチャレンジ等々修正点はあるが、最少失点で切り抜けたことは及第点以上。

 オフェンスは、前半の岩上潰された時の対処方法は持ち合わせないといけない。昨シーズン終盤と今日を見れば、どのチームも岩上の所は当然スカウティングするだろう。その際に誰がフォローするのかは前半途中まであやふやになっていた。大前フリーマン化も一手ではあるが、常時するわけにはいかない。
 そうなるとやはり久保田を中で使うのが得策か。今日の後半途中からは出色の出来であり、ゲームを作ったと言っても過言ではない。ボールを捌けると同時に、身振り手振りで周囲にポジションの修正を伝えていた。パスで違いを生み出せる素晴らしい選手であり、ウチのやりたいサッカーにフィットするタイプ。これからも楽しみ。

 昇格後初ゴールはプレゼントしたものの、勝点は与えなかった。昇格組シリーズ第2戦でも、しっかり力を示したいところ。いきなり怪我人が出て難しさもあるが、序盤10試合でできるだけポイントを積むためにも、相模原でひと暴れ。

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