万里一空 vs新潟 2-3

 開始早々にビューティフルゴールをぶち込み、厳しい時間もチーム全体で我慢して勝点3を得た千葉戦。選手間の距離感が適切に保たれていたことで、優位に立つことができており、この試合を1つのベースとしていきたいところ。

 アウェイ連戦となるが、今季初の連勝を懸けて乗り込むのは新潟。昨シーズンは、アウェイで格の違いをまざまざと見せつけられ、切羽詰まった状態で臨んだホーム戦は強固なブロックを維持してドローに持ち込んだ。アウェイの試合では何故か敵将に称えられた記憶があるが、社交辞令としか捉えられないくらいの完敗だった。
 2シーズン監督を務め、チームにポジショナルの礎を築いたアルベルト氏が昨シーズンを以って退任(その後FC東京監督に就任)。一部界隈の噂では、後任として現役時代新潟に在籍経験のある某北関東クラブの指揮官にオファーを出して蹴られたらしいが、真相は定かではない。アルベルト氏の下で昨シーズンコーチを務めていた松橋氏が新たに就任した。新潟の前は横浜FMに在籍しており、モンバエルツ体制はHC、ポステコグルー体制でもコーチとして携わっており、2019シーズンにはJ1優勝も経験している。両氏を支えたとなれば、攻撃面に重きを置くことは想像に難くない。
 今シーズンは、基本的にアルベルト時代を踏襲。本間至恩と高木善朗を2列目に並べられるだけで昨シーズン崩されていたのに、ここに伊藤涼太郎が加わるという鬼に金棒状態。3人とも単騎で崩せるし、コンビネーションを見せられれば対応のしようがない。要因はいくつかあったといえど、昨シーズン本間の怪我以降成績が一気に下降したのは、それだけ本間が異次元だと示す根拠に十分なる。CBのビルドアップ能力も勿論あるし、高から両サイドに展開されるのも厄介。高木や本間といったSHが外に張っておきながら、そこにSBの長谷川・堀米が容赦なく上がってくるので、どうやっても枚数が足りない。マーカーをはっきりさせないと大怪我する。

メンバー

画像1

 ウチは前節からノーチェンジ。山田が初のメンバー入り。平松はビッグスワン凱旋。

 対する新潟は勝利した甲府戦から3枚変更。藤原→長谷川、千葉→田上、松田→高木。高木は前節欠場だったが、この試合には復帰。長谷川は古巣対戦、ベンチの渡邊と秋山は前育出身者。

前半

 立ち上がりからお互いにやや強めのプレスをかけて奪いに行っていた。その中で、新潟が山中をプレスポイントに定めて限定してきた。それでも単純にロストせずボールを扱えるのは山中のストロングであるが、チーム全体で圧力を正面から受けてしまい、ラインを押し上げることができなくなった。出しどころがなくなり櫛引まで戻すが、スリッピーな難しいコンディションのため珍しくキックミス。このあたりで新潟が流れを掴んでいった。

 10分、早くも新潟が先制。平松に当てたボールを新潟に回収されたところからスタート。ボールが前で落ち着かせられないので、ウチの重心が思ったように上がらない。更に、高が落ちて3CB気味になったのでKJと平松は無暗にチャレンジできないし、2人の間に高木が顔を出してきたりしてて、抑える場所が定まらない。そうこうしているうちに田上が立ち位置を上げて平松の脇でボールを受け、RSBの長谷川へ対角線のフィード。そこには天笠が何とか寄せるが、長谷川はカットインして山中と畑尾の間を通すスルーパス。そこに畑尾の背後を取った谷口が走り込んでプッシュ。
 新潟の見事な崩しを褒めるしかない。「たら」「れば」の要素はいくつかあるが、正直どうにもならん。ボールサイドにスライドしているところから逆に振られると手薄になるのは割り切っている部分だし、高木のオフザボールのランニングによって上手くパスコースを開けられた。最後の谷口もストライカーらしい嗅覚を見せた。FWしたことある人間ならば誰しもやりたい抜け出しだった。

 出鼻をくじかれる形となったウチだが、この失点のダメージが尾を引く。ビルドアップで上手くいっていなくて重心が下がった上、失点したことでいつものアグレッシブさが影を潜める。ビルドアップが手詰まりとなり、何とかKJや平松に繋ごうとするも収まらずロストする場面が頻発。どんどん自陣深い位置に追いやられる。

 結局流れのまま再び失点。新潟右サイド深い位置のスローインから、一度ボールは最終ラインまで戻る。高を絡めてくるのでこの場面でも寄せには行けず。LSBの堀米が持ち上がり、大外の本間へ。そのタイミングで、稔也と岩上の間にいた谷口が裏に抜け出す。本間は谷口を使わず堀米へ戻す。すると今度は伊藤が岩上の背後から走り出し、岩上の視線を奪う。堀米は走り出しに合わせてパスを出そうとするフェイク。一瞬ウチの重心が数歩下がると、落ち着いて田上とパス交換してテンポを整える。またもフリーでボールを持った堀米は、晒すようにボールを持ちながら左足で切るようなキックで伊藤に楔を刺す。濡れたピッチの性質を上手く活かすようにバックスピンをかけた良く転がるボール。伊藤に入った段階で風間と岩上は高への落としを警戒したが、その動きを逆手にとって伊藤はハーフスペースの谷口へワンタッチで繋ぐ。PA内でフリーでボールを受けた谷口はニアを撃ち抜いてドッピエッタ。
 堀米のフェイクに対し、ウチの選手は全員バックステップで裏を警戒したこと。伊藤にパスが入った場面で一列後ろへの落としを警戒して押し上げようとしたこと。今回はどちらもマイナスに作用してしまったが、チーム全体が同じ狙いを持ってアクションしていたので、それだけトレーニングで取り組んでいることが改めて窺える。
 逆に言えば、こういう特徴を新潟側がスカウティングして狙ってきたと捉えることもできる。今は原則を落とし込んでいる段階なので、このようなエラーも想定されるが、今後はより状況判断の部分を精査していき、徐々に最適解を瞬時に導き出せるようになる(と、ピリオダイゼーション的には推測される)。

 ズルズルと2失点してしまい、全然やりたいことができず自陣に縮こまっていたが、30分過ぎから回復の兆候が見られた。パスコースを全て封鎖されて苦労していた山中がリスクを背負って風間に付けるようになったことがキッカケ。それまでは最終ラインとCHの距離感が遠くなっていたが、無理やりでもボールを入れることで相手のプレスの矢印が分散された。左利きの選手がLSB(可変3CBの左)にいる優位性はこういうところにあるし、ボールコントロールに長けている山中をそこで起用する強みでもある。
 不思議なもので、CHがボールを触るようになると全体的にリズムを取り戻す。2点差となって相手のプレスが少し弱まったこともあるが、岩上から山中or天笠への大きな展開も見え始め、ようやく落ち着いてボールを持つことができた。

 2点のビハインドこそ負ったものの、序盤の重苦しい状況から幾分か回復してハーフタイムを迎える。

後半

 平松→深堀の交替により、ウチは後半立ち上がりから攻勢に出る。KJと深堀の2枚体制による2度追い嫌がらせプレスを敢行し、強引にでも流れを持ってこようとする。

 50分、ついに1点を返す。右でボールを動かして相手にスライドさせ、城和から山中へ。山中→岩上→KJと少ないタッチで新潟の1stチャレンジ隊を掻い潜ると、KJの前にスペースが広がる。すかさずRSBの長谷川がマークを捨てて絞ってきたので、すかさず大外でフリーの天笠へ。天笠は相手を抜き切らずに早いタイミングでニアに鋭いグラウンダーのクロス。最終ラインとGKの間の嫌なコースに飛んだボールに対し舞行龍がスライディングでクリアを試みるも、無情にもボールはゴールへ。舞行龍が触らなかったとしても、ウチの選手が3枚飛び込んでおり、誰かが詰めていた可能性が高い。早いうちに点差を詰めたことで、チームにも活気が戻る。

 点を取った勢いのまま、積極的に仕掛ける。54分、城和から岩上に縦パスが通ると、岩上はワンタッチで1つ飛ばして小島へ。小島はビッグブリッジ(仮)で堀米を剥がしてボールを運ぶ。2枚を引き付けたところで、DFラインの後ろのスペースへ転がす。そこにスピードを生かして深堀が先に反応し入れ替わると、そのまま思い切ってシュート。意表を突くタイミングでのシュートだったがGKの小島が反応。ボールはこぼれたが、天笠の走るコースには転がらなかった。惜しくも同点までは持って行けず。

 その後やはり新潟がボールを持つ時間が長くなり、65分にチャンス。左からのCKをウチが跳ね返したセカンドを新潟が右サイドで拾う。そこから左サイドの本間にボールが渡ると、1人で中央にボールを運んでそのままシュート。タイミングを逸して櫛引も見送るしかなかったが、クロスバーを直撃。これに関してはどうにもならん。本間はJ2出禁。

 67分、決定的な3点目。左からのCK。キッカーの本間はショートを選択し高木へ。高木がタメを作って中に供給すると、後ろから走り込んだ田上がフリーで合わせた。
 ショートからの失点は昨シーズンも何回かあったが、ゾーンで守る弊害的要素も大きい。田上の前のポイントで跳ね返さなきゃならないんだろうが、後ろから走り込む選手を捕まえるのは難しい。

 再び2点差に広げられ、ウチの勢いは多少削がれた。それでも、途中から入った奥村が積極的にボールに触れてテンポアップを図り、押し込む場面を増やしていく。小島も高い位置を取り続けたので、右からの仕掛けが多くなった。

 90+2分、右サイドでのスローイン。『濡れないようにビニールに入れていた』タオルでボールを拭き、小島がロングスローを入れる。ニアで畑尾が潰れ、セカンドボールをクリアされそうになるも深堀が体を当ててバランスを崩させる。こぼれたボールに城和が反応して左足をコンパクトに振る。これがディフレクトしてゴールへ吸い込まれ、再び1点差に詰め寄る。

 最後は強引にゴールに近づきFKのチャンスまで持って行ったが、同点までは至らず(一応ゴールネットは揺れた)。

 最後までファイティングポーズを取り続けたが、惜しくも2-3で敗れた。

雑感

 昇格を目指すチームとはまだまだ差があることを実感するゲーム。とはいえ、すべてが機能しなかった訳ではない。

 守備については、2失点目の部分で言及した通り。トライ&エラーを繰り返すしか解決策はなく、今後も失点は当然ある。その際に、その失点をどう生かすかに懸かっているだろう。アグレッシブに圧力を掛ける分、誘き寄せられて引っくり返されることも当然想定される。
 CBとCHを捕まえられなかったことが直接の失点の原因だが、伊藤がボールサイドに絡んできてウチのボールサイドCHをピン止めするので、それによってウチのプレスに厚みが出なかった。それにしても、伊藤と本間と高木は本当にJ2軍縮条約に抵触しないのか。主力艦保有率を5 : 3 : 1.67 : 1.67に制限するように軍縮会議を開催すべきだろう。
 大槻さんの試合後コメントでもは、「前半にもっと選手を動かせれば良かった」と発言していたが、ピッチ上でも修正できるようになってくると、より強いチームに変貌していく。

 オフェンス面では、前節に引き続きこの試合でもニアへの速いクロスがゴールに結びついた。得点後も天笠・小島が最終ラインの後ろに速く際どいクロスを度々蹴っていたので、意図して狙っている形。これでニアを相手にケアされるようになれば、マイナスでボールを受けて「深み」を手にすることができる。
 後半は大分持ち直したように、臆することなく愚直に縦パスを打ち込んでいくことで、局面が変わる。横・横で時間を消費していくと、ライン際にボールが到達する頃には余裕がなく追い込まれてしまう。一度縦で相手の向きを変えることで、次に受ける選手の自由度が全く異なる。プレスに立ち向かってパスを出すことの怖さは重々承知しているが、それでもチャレンジしていきたいところ。今のウチのポテンシャルであれば、プレスを受けてもそこまで派手に刈り取られる心配はないと思う。そこも試合を重ねて高めていくのみ。

 上位陣との差は確かにあったが、この1敗で何もかも失うはずがない。こんなシーズン序盤でガタガタ言ってたら折角の楽しいものも楽しめなくなる。負けた事実を受け入れることは必要だが、悲観する必要はない。

 まだまだここから。まずはミッドウィークの長崎戦。中3日ということもあり、交代カードの切り方を見てもスタメンの入れ替えはありそう。長崎も序盤からかなり苦しんでいるようだが、相手の状態関係なくやるべきことをやる。1つ勝って、白星先行の状態をキープしよう。

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