時々刻々 vs横浜FC 0-1

 立ち上がりのミスからの失点で試合の入りに失敗し、そのダメージが最後まで響いて敗れた千葉戦。対応がハッキリしない部分で失点を重ねていたが、コンディション面に問題を抱えている様子も窺えた。90分フルパワーは難しいからこそ、チーム全体で共通認識を持ち、正しいエネルギーの使い方をしなければならない。

 今後の浮上のためにも1つ勝ちたいと挑む相手は横浜FC。本来であれば13日に行われるはずだったが、台風の影響でスキップ。仕切り直しの一番となる。元々8月は厳しい相手が続くとは覚悟していたが、ここで昇格候補との対戦。
 ここまではJ2超級ともいえる巨大戦力で殴り込みを行い、序盤は13戦無敗。ウチとの対戦であわや土を付けられそうになると、次の熊本戦で敗戦。それでもある程度は予定通り勝点を積み続けてきた。しかし、2試合は失態に次ぐ失態で取りこぼして急ブレーキ。降格争いに沈むチームに息吹をもたらすボランティア活動中(今節も恩恵に肖りたいとか思ってないです、ええ)。
 戦力的には問題ないのだが、夏のマーケットでブラジル人ガチャを回し、マルセロライアンとマテウスモラエスというすごくやりそうな名前の2選手を獲得。また、鳥栖から石井も獲得。あとは、群馬から山根永遠っていう選手もしれっと獲得。シーズン途中に同リーグから獲るんだから、それなりにお金はかかるだろうし、さぞ良い選手なんだろう、知らんけど。
 INの分OUTもあるわけで、手塚が鳥栖、中塩が北九州、高木が群馬、安永が水戸に旅立った。噂によると小川航基が海を越えるって話もある。本人のためにも、国内の2部にいないで一刻も早く海外出ることをお勧めしたい。
 チームの戦い方としては相変わらず攻撃にパワーを割く。本当に札幌で手堅いチームを作りJ1に押し上げて残留まで導いた四方田氏はどこに行ったのか。ミシャの影響を随所に感じる。ハイネル落としてゲームメイクさせたり、中村拓海が相手PA内にガンガン入っていったり、らしさはある。特に最近の中村拓海のオーバーラップのタイミングやプレー選択の幅は目を見張るものがある。とはいえ、”ガンガン行こうぜ”がモットーなので当然守備の脆弱性を伴う。ただでさえ構造上トランジションに難があるのに夏場で体力持たず機能不全に陥るってのも、ミシャっぽくもある。

 ホームでの対戦は最後の一刺しができなかった。敵地で上位相手に一泡吹かせたい。

メンバー

 ウチは前節から2枚変更。契約上出場できない高木に代えて久々に山中がスタートからの出場。また、KJではなく東京ユナイテッドより新加入の長倉が即スタメン。ベンチには諸々の事情で離脱していた川上と北川が戦線復帰。

 対するフリエは度重なるミスで取りこぼした前節大宮戦から4枚変更。岩武→武田、ハイネル→田部井、イサカ→山下、松浦→長谷川。ここまでフル稼働だったハイネル・岩武・イサカといったメンバーがスタメンを外れ、特に岩武はメンバーにすらいない。いずれにしても直近2試合の停滞を打破するためにテコ入れ。

前半

 コイントスで勝ったフリエがエンドチェンジし、前半の風上を選択。前半のうちに先制して勢いに乗ろうという考えだろう。

 そんなフリエの目論見通りに事は進む。9分、田部井を中心にフリエが中央でパスを回す。中村拓海にボールが入ったタイミングで和田が細貝の前を走って意識させると、ミネイロが同じ高さに落ちてきて内側で中村との角度を作りボールを引き出す。ミネイロ→小川→和田→山下とウチのディフェンスの矢印を折るように繋ぎ、深くまで抉る。山下はクロスを上げられる体勢にならなかったが、和田に落とす。和田はインナーラップした中村を囮に田部井へ。スペースを得た田部井はディフェンスラインとGKの間で小川に合わせる見事なボールを供給するも、櫛引が判断良く飛び出して対応。フリエ左サイドにこぼれ球が流れたところ、武田が回収。クロスを上げるようなモーションから身体を捻って予想しにくいコースに蹴り、PA角の長谷川の足元に付ける。右足でのシュートコースが空いていたため、風間が身体を投げ出そうとすると、その勢いを逆手に長谷川は縦に仕掛けて剥がし、そこからシュートではなく柔らかいラストパスを選択。最後は小島とミスマッチになっていたミネイロが押し込んでフリエが先制。
 一連の攻撃はいくつかのフェーズに分けられるが、どのフェーズも見事な崩しだった。まず田部井がボールを持っていた場面で長谷川と小川が連動して落ちてきたり、中村→ミネイロの楔での和田のポジショニングだったり、トライアングルの構築がとても上手い。加えて、深くまで抉った時には1人は近くで低い位置を取って深さを生もうという意識付けもなされている。山下→和田のエスケープも勿論だし、武田から長谷川に繋がる際の位置取りは最たるもの。
 ウチとすると、あれだけ右に左に振られるとどうしてもスライドにズレが生じてしまう。防げそうだったポイントを強いて挙げるのであれば、山下が深く抉った場面で山中と小島が2枚とも釣られて、その後の和田へのアプローチが遅れた点か。ただ、ドリブルに長けている山下であるため、山中が1枚で対応して剥がされた際にみすみすPAへの侵入を許すこととなる。CBとの距離もあったため、小島がその間を埋めるという配置も間違いではない。あとは、武田にボールが渡ったところからウォッチャー気味になり長谷川に自分の間合いを与えたり、CBが偏ったりということもある。当然GK含めてシュートコースを切るのが鉄則なので、あの場面でシュートではなく冷静に空間を使った長谷川を称えるべきとは思う。

 ここ数試合先制を許して雰囲気悪くなっていたホームチームとしては、先制点は何よりの良薬。早い時間帯の得点によって落ち着いてゲームを進める。通常であればハイネルが最終ラインに落ちて展開しているが(所謂宮澤ロール)、この試合では田部井が落ちることなく高めの位置でボールを動かす。ある程度押し上げる時も田部井ではなく和田を最終ラインまで落としていた。これによって中村と亀川を押し出すのだが、やっぱり3CBのサイド2枚が高い位置取らせるのはクレイジーに映る(誉め言葉)。

 ただ、ウチとしても何もできずに指咥えるわけではない。19分、フリエが和田を落としてビルドアップする局面。中村のトラップが大きくなったのを見逃さなかった長倉が掻っ攫って一気に前進。和田をビッグブリッジで剥がそうとしてボールが流れてしまったが、長倉の瞬間的なスピードの速さが現れたシーン。

 24分、フリエに決定機。長谷川が左サイドで和田と同じ高さに下りてゲームメイク。長谷川はミネイロに楔を刺して城和・風間・岩上の3枚を引き付け、再度フリーでリターンを受ける。岩上と細貝がフラットになったことを察知した長谷川は右PA手前にポジショニングした田部井に渡す。細貝のインターセプトの意思を掻い潜り田部井に繋がると、思い切ってハーフボレー。見事にミートしたシュートはホップして枠を外れたが、ポテンシャルの高さが現れた場面。

 34分、フリエにアクシデント。ミネイロがボールに関係ないセンターサークル付近で座り込む。左腿裏にテーピングが巻かれていたが、右のハムに違和感を覚えた様子。代わって渡邉が入る。

 36分、ウチの左サイドからのCK。風間からのインスイングの低いボールを岩上がニアでフリックし、城和が飛び込む。これは跳ね返される。
 その流れで一度作り直して櫛引からのロングボール。これもクリアされたが、セカンドを城和、さらには畑尾がヘディングで前に飛ばす。PA手前で平松も逸らし、そのボールにいち早く長倉が反応したが、ボールのスピン方向が合わずクリアされた。シュートまで持っていけずも、ここでも長倉のアグレッシブな姿勢が感じられた。

 38分、右サイドでロングスローを入れた流れから細貝がラフにPA内に蹴り込むと、落下地点に反応した長倉がボールを拾い、山中が振り向きざまにシュートを放つが、GK正面。

 少しずつ流れを掴むようになったが、バイタルに至る機会が少なく、ビハインドで折り返す。

後半

 後半開始から平松→北川。ここ最近労基に通報されるのではないかと心配になるくらい稼働していた平松をようやく休ませられる。復帰した北川にも期待がかかる。

 46分、小島が左サイド深くで粘ってボールを運び、最終的に岩上が景気づけにシュートを放つ。枠にこそ飛ばないが、やはり後半になってギアを上げていく。前半はCHがPA近くまで押し上がる場面も限られていたので、ここからは全体として積極的に前に出るという意気込みが伝わってきた。

 56分、岩上→KJ。これにより風間をCHにして、長倉がRSH。KJがいつものように浮遊するので、山中に兎に角高い位置を取らせ、KJのフォローは小島が担うイメージ。

 この辺りからウチの球際の寄せがかなり激しくなる。山中がアフター気味でカードもらいはしたものの、全体でスイッチ入れて一気に襲い掛かるのは相手に多少なりとも恐怖を与えた。当然最終ラインからの指示で動いてはいるが、最前線の北川がよく声を出してコース限定し、意思統一を図っていた。

 61分、カード抱えた山中に替えてシラを投入。縦への意識をより明確にする。

 徐々に高い位置でボールを奪うことが増えた中での67分、敵陣右サイドで得たFK。風間の鋭いボールは最終ラインの選手たちの頭上を越えて落ち、大外の北川がプッシュ。ニアで誰に当たってもゴールという絶妙なボールだったし、こぼれた先に反応していた北川のストライカーらしい嗅覚も流石だったが、角度がなく厳しかった。

 73分、中央でウチがロストしてフリエボールになったが、フリエが最終ラインに戻すと平松・KJ・シラが猛然とプレス。特にここではシラのパスコースの切り方が素晴らしく、和田へのエスケープコースを消しながら山下に押しかかる。それに呼応するように細貝が刈り取ってKJに渡る。PA内で深くまで抉ってからの左足のクロスは跳ね返されるも、こぼれ球に反応したシラが右足を強振。これも至近距離でブロックされたが、即時奪回からの素早い攻撃まで狙い通りだった。こういう形増やしたい。

 続く74分。上述のシラのシュートがブロックされ、クリアが櫛引に回収したところからスタート。櫛引→畑尾→小島→シラとシンプルに繋がる。それぞれの距離が適切だったので、変に時間を掛けずともボールを前に移動できた。シラはKJの縦のスプリントによって空いたスペースを切り裂く。ある程度移動したところで後方の細貝に落とすと、細貝はワンタッチでKJに刺す。KJもワンタッチで中央に流すもここは阻まれる。それでも風間が正しいポジショニングをしていたためセカンドを回収、再度細貝に預ける。細貝はパスコースを探しながらレーンを移動し、松浦と田部井が縦に並んだタイミングで右の風間へ。風間はKJの右足にピンポイントのボールを付ける。KJもダイレクトで北川に完璧なパス。北川も上手く入れ替わって前を向き、さあ仕留めようってところで倒される。決定機到来かと思いきや、北川のポジションがオフサイドの判定。改めて映像を見るとかなり微妙に見える(色眼鏡込み)。
 深さを使い、尚且つワンタッチのパスが複数回用いられた崩しは、今まであまり見られなかった形。ただ、この形は日々のトレーニングで落とし込んでいると思われる。細貝がボールを持った際に、北川が安易にスペースに入るのではなく細貝とアイコンタクト取った上で我慢して留まっている。反対に、長倉は自分のタイミングでボールが来ないと判断すると動き直すのではなく、そのまま北川とレーンが被らないように横切っていた。それによって空いたスペースを風間が活用できたし、PA内に3枚入る厚みも生まれた。これを継続して最後までやり切りたい。

 ゴールに近付くもネットを揺らせないまま時間が経過。90分、畑尾からのロングフィードに北川が抜け出す。北川はコントロールしてシラに落とす。シラは一瞬のスピードで正対する中村を剥がして左足でクロス。中央で長倉が上手く潰れ、ファーでフリーの深堀がボレー。しかし、最後に寄せてきた水色のユニフォームの30番にブロックされた。

 90+4分、フリエのカウンターを何とか防ぎ、櫛引がボールを収める。すぐに奥村に付け、そのまま奥村が中央まで運ぶ。KJに左に流れるように手で合図した後、奥村は左足で右サイドの長倉にドンピシャのパス。長倉は中の状況を確認して北川1枚だったため、右足でのクロスをキャンセル。PA角でボールキープし、風間に落とす。風間のファーへのクロスにシラが頭で合わせたが、ボールに勢いを伝えきれずブローダーセンの手中に収まる。

 後半は押し気味に試合を進め、有効な崩しも複数見られたが、スコアを動かすことはできず0-1で終了。

雑感

 アウェイ遠征の思い出補正が幾分かかっているとはいえ、悲観する内容がなかった。ここ数試合パッとしなかったフリエが相手ということを差し引いても、十分に見応えのある試合。それでも試合を落としている事実だけを捉えればグダグダ言われるのだろう、知らんが(知りたくもない)。表現として適切ではないが、正直同じ敗戦でも前節とは雲泥の差だと感じる。

 守備に関しては、立ち上がりに崩されて失点し、その後も捕まえられない時間が多少あったが、ウォーターブレイク前後から安定。ハイネルじゃなかったからこそ誰が誰を捕まえるかがあやふやになっていた。しかし、田部井に対しては群馬県出身者の威厳を示すべく、ウチのCHが前を向かせないように厳しくチェック。ここで簡単に田部井に振られないようにしたことで、最終ラインがバタつく場面が減った。
 加えて後半はより高い位置でボールを刈り取る意識が増す。また、北川が長倉に頻繁に声を掛け、ポジショニングをサポートしていた。完全にフィットするほどの時間がなかったが、チームメイトからの助けもあって長倉も連動したプレスができていた。90分ずっと強度を保つことは不可能とはいえ、ある程度の水準は維持しなければならない。立ち上がりは畑尾や細貝からチームを律する声が響いていた。今後勝点を積むためには、水からスイッチを入れ、スタートから正当なパワーを使う必要がある。

 オフェンス面でも改善の傾向は見られた。PA付近でのワンタッチの崩し然り、背後への抜け出し然り。
 試合後の監督コメントにもあったように、背後を狙ったボールを効果的に使った。今までも狙いたいという意図は感じられたが、躊躇する場面が多かった。やはり、背後への意識を相手DFに持たせることで、KJが落ちる動きの効果が増し、風間がサイドでボールを捌くスペースもできる。一辺倒にならずに使い分けができると、自分たちが使いたいようにスペースを活用することも可能に。
 ネットを揺らすためにも、めげずに挑み続けるしかない。

 順位を見れば厳しい状況だが、チーム状態は悪くない。失点直後のベンチメンバーの振る舞い、ピッチ上で飛び交う声、最後まで熱を帯びた指示を出す指揮官。専スタでピッチとスタンドの距離が近い分、よりチームからの意気込みを感じた。
 特に城和がシーズン当初よりも間違いなく頼もしくなっている。セットプレー時の声はかつての翔大を彷彿とさせるし、常に前を向き続けた。失点時も肩を落とすのではなく、すぐにリスタートできるようにボールを要求していた。その振る舞いが結果に直結するとは言えないが、現状を変えたいという思いがなければ何も始まらない。

 負けたはしたものの、試合を通して胸に響く内容だった。チームとしての熱量が失われない限り、破綻もしないし、上向く可能性は十二分にある。

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