福善禍淫 vs隣 1-1

 力のあるWGが幅を取り、ハーフスペースをIHがランニングしてくる相手に対して、重心を下げずにレーンを埋めて対処してポイントを積んだ前節。PKの決定機を活かせればと言うのは簡単だが、ゴールに近付く機会は限られていた。バイタルでの精度を磨いてゴールまで到達させたい。

 未勝利ながらも2試合負けなしの状態、久々の勝利を目指して乗り込む今節は北関東ダービー。ここを足掛かりにできるかどうか。
 今シーズンから田中誠新監督とヤンツーHCの体制がスタートしたものの、開幕から躓く。一時期は持ち直したらしいがやはり低迷。クラブは5月の時点で見切りをつけ、新指揮官として小林伸二氏を招聘。
 昨シーズンまでと同様に3バックを基本的に採用しており、ハイプレス・ハイラインを指針とはしている。前節はかなり飛ばして先制したもののガス欠を起こしての逆転負け。ボールを奪った後の精度が著しく欠けている。WBに複数の怪我人が発生しているほか、複数のポジションで試行錯誤が続く。ガンバからレンタル中の南野がここまで気を吐いており、ミドルで試合を動かす力がある。

 ウチもここまで苦しい状況が続いているが、ダービーはこれまでの過程は関係なくなる。目の前のボールにどれほどアタックできるか。WBの背中を取ることと、相手のラインの裏を狙ってひっくり返すことも手。決してボールを握ることに長けているわけではないので、敢えて泳がせつつ、奪ってからそのまま仕留め切りたいところ。


メンバー

 ウチは前節から2枚変更。田頭→中塩、勇利也→風間。中塩が7試合ぶり、風間が8試合ぶりのスタメン。ベンチには佐藤が帰ってきた。

 対する相手は逆転負けを喫した熊本戦から1枚変更。大森→石田。

前半

 ウチのキックオフで始まった試合は、立ち上がりはどちらもリスク回避で長いボールが多くなる想定通りの展開。
 隣は南野と大島のシャドーがどちらもウチのDHの脇でボールを引き出そうと模索。WBから斜めに刺せるように狙う。
 ウチはビルドアップを基本としつつ、相手のラインの背後への意識は常に持っている。

 16分、隣の決定機。右サイドから後ろで作り直し、ラファエルに入ったところを和田が掴みに行くと、ラファエルがワンタッチで石田へ。石田は1stタッチで内側に入りエドを剥がすと、右足で宮崎へと縦を刺す。宮崎のワンタッチでの落としを受けた南野がPA内に侵入してボールキープし、オーバーラップしてきた森へ。森のクロスを中央で大島がコントロールし、右足でシュート。これはエドと酒井が足を伸ばしてブロック。こぼれを宮崎が詰めるが、ここも櫛引が身体を張って死守。
 石田にボールが入ったタイミングで奥田と大島が動き出してウチのマーカーを引っ張ってスペースを空けた。宮崎の落としの部分は偶発的でもあるが、前を向いてのプレーが続いていった。ウチとすると引っ掛けるタイミングを逸していたが、最後の局面で粘ることはできている。最後の宮崎のチャレンジは不可抗力といえど警告があっても良いとは思うが…。

 ウチは相手の3CBに対して和田を1列上げてラファエル番をするような形で捕まえるのが基本となっている。ただ、ウチが1stプレスのスイッチを入れると相手はワンタッチでWBに叩き、WBがウチのIHが空けたスペースを使おうという意図が見える。
 一方でウチがリトリート気味でブロックを作ると、相手の両シャドーがWBとCBの距離を補完するとともにIHを誘き寄せてWBへのコースを作っている。この辺りミドルサードでの作り方は大分落とし込まれている印象。

 25分もウチの被決定機。縦パスを一度は酒井がインターセプトしたものの、そのまま縦に刺そうとしたところをラファエルにカットされる。ラファエル→宮崎→神戸と綺麗に繋がり、右サイドでフリーの森へ。森はグラウンダーでニアに走り込んだ南野を狙ったが、アマが何とか滑ってカット。

 ウチはなかなかビルドアップで出口が見つからない中で梨誉が何度か単騎で突破を目指すも、ファウルで上手く逃げられて勢いを削がれるシーンが続く。レフェリーもその辺りを察してケアはしてくれていたが、ハーフウェー超えないうちに倒されると重心上げきれなくてやりにくい。
 ただ、守備時に和田が単体でラファエルor石田を捕まえに行くのではなく、酒井がマンマーク気味で付くことで守備時に相手に簡単に前に展開されることは減っていった。

 このまま前半を終えるかと思われた45分、ウチにチャンスが舞い込む。敵陣での相手のスローイン時に髙澤と菊地がサンドしてボールを掻っ攫うと、髙澤がそのまま強引に左サイドを持ち運び、PA内にも関わらずあまりに安易なスライディングを喰らって上手くPKをゲット。
 倒された髙澤がそのままキッカーを務める。前節の失敗を引き摺ることなく、GKの逆を突いて右側に転がしてネットを揺らす。

 展開としてはあまり良いものではなかったが、リードを得て前半を終える。

後半

 前半終了間際にスコアを動かした分、後半の入りは落ち着かせたかったが、そう簡単には行かなかった。

 キックオフの流れから前線にボールが入り左サイドに展開。石田から斜めに走ってきた南野に繋がり、ワンタッチでクロス。ここは中塩が跳ね返すも、セカンドをラファエルが頭で中央へ。ここも城和が掻き出す。それでもPA内で混戦になり、酒井がクリアしようと滑ったところ石田を倒す形となりPKの判定。これを大島が沈めてタイスコアに。

 57分に大きな局面。そこに至るまでの7の行為は全く以て気に喰わんが、あそこで挑発に乗ると報復になるのは間違いない。エドの一発レッドで10人での戦いを余儀なくされる。

 60分、ウチは髙澤→佐藤、和田→大畑の2枚替え。大畑をWBに入れ、前線の枚数を1枚減らした5-3-1で対処。ただ、中盤3枚の配置を風間のアンカーではなくアマと風間を並べ、佐藤が中央で1つ高い位置を取る。

 71分にも、梨誉→佐川、風間→勇利也の2枚替え。どちらもかなりエネルギーを使っていたので、ここで強度を補充。
 相手も同じタイミングで福島→藤谷、森→川名の2枚替え。

 1人少なくなり難しさはあったものの、中盤2枚と最終ラインの間を締めて対処することで相手のシャドーの使いたいスペースを消していく。相手の中盤に持たれてただけでは怖さはないし、如何に大島と南野に良い形で受けさせないか。大島が中央で落ちた時に誰が捕まえるかがぼやけて前を向かれることはあったが、前を向いた状態で守備ができており大凡問題はなかった。

 75分、ウチに決定機。櫛引のフィードから右で勇利也が競り勝ち、大畑がボールを収める。大畑は素早く左に広がっていた佐川へ展開。佐川は間合いを探り、オーバーラップしてきた佐藤へ。佐藤はワンタッチで中に入れると、そこに菊地が飛び込む。しかし足に当てるのが精一杯でコントロールできず、ボールは左に逸れていった。
 仕留めきれればゴラッソだったが、敵陣に入ってから手数を多くかけずにフィニッシュまで持っていった。佐川に入ったところで佐藤と菊地が連動して動けていたし、良い形。

 ここからは相手がボールを持つ時間が長くなったが、その割にはシンプルに前に蹴ってくる回数も長いのでさほど数的優位を上手く使っている印象はない。また、酒井と中塩が相手のシャドーをマンマーク気味で深追いしていったので、ライン間で引き出される回数は減る。また、CBが前出た際にはWBがと中盤がスペースを埋める。

 84分、隣は宮崎→矢野。

 88分、ウチは菊地→平松で最後のカード。菊地は攻守ともに健闘していた。佐藤をLWBにするスクランブルの形だが、ポイントを得るためにまずは失点をしないことに重きを置く。

 最終盤は相手がパワーを掛けたような気もしたが、ゴールを脅かされることもなく時間が経過。最後は上手くタイムマネジメントしながら1-1で終了。

雑感

 ダービーは結果が全てであり勝利が必要であったが、それはそれとして、10人での40分を耐えたのは収穫。だからこそ11人で3ポイント積みたかったというのも本音。

 相手のクオリティ不足はさておき、PKの1失点で抑えた点はポジティブ。20分過ぎまで右サイドのプレスの掛け方が嵌らず簡単に前進させてしまったが、スイッチを入れるタイミングと掴み方を整理することで改善。あとはバイタルまで入られたところでシーズン序盤よりも粘れるようになっている。ボールホルダーに対して寄せに行けている分、ブロックもできるしシュートコースを消すこともできる。このディフェンスが維持できれば最低限の勝点を積むことはできる。

 ではそこから3ポイントにするためにはやはりファイナルサードでの精度。髙澤も梨誉も推進力を見せて突破していける分、もう1人か2人絡めると選択肢が広がる。後半に菊地がフィニッシュまでいった場面は理想。
 菊地はこの試合ではいつもよりも1列前でのスタートとなったが、オフェンスの面でも随所でボールに絡んでいた。走力でもフィジカルでも簡単には相手に引けを取らないし、堅実なプレーもできる。さらに深い位置まで侵入できるようになると、チームとしても効果的。

 前半戦を終えて1勝、勝点9。この現実は変わらない。残留するためには3倍くらいのペースで勝点を積む必要がある。だが不可能ではない。ようやく守備のベースは整ってきた分、ここから愚直に現実的に戦ってポイントをもぎ取っていく。

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