有終完美 vs岡山 1-0

 久藤新監督のリーグ戦初陣は、終盤に追い付かれたものの、対角線のパスによる2ゴールにより一定の成果を見せた。古の右サイド翔大戦法に活路を見出し、無理なプレー選択をしないことを前提にし、勝点を拾っていく姿勢が見えた。とはいえ、勝ち切れなかったことも事実。1ポイントが命取りになりかねないが、欲を言えば勝って勢いに乗りたかった。

 先週拾い損ねた分のポイントを積むべく乗り込む今節の相手は岡山。昨シーズンはダブルを達成し、今シーズンも数少ない勝利を献上して頂いた良心的な相手。これまでの対戦成績も23戦12勝と大きく勝ち越しており、20戦以上対戦した相手の中では最も勝率の高い52.1%。アウェイでも10戦5勝と相性が良い。これも、1番最初のアウェイ岡山戦でヤスが大事故ゴールをぶち込んだことから歴史が始まっているし、未だにそのイメージもあってか岡山は勝てるイメージ(妹尾とか西野とか押谷とかにポロっとやられた時期もあるが)。先日お犬様に裏切られた分、桃太郎さんに勝点3を恵んで頂きたい。前半戦も、内容は全く持って勝てる試合ではなかったが、風を上手く味方につけた展開から進のゴールで勝ち切った。
 岡山はウチとの対戦後、ウチよりは良いペースで勝点を積み上げ、現時点では降格の心配のなさそうな順位に付けている。とはいえウチとはまだ8ポイントしか離れておらず、油断はできないだろう。

 一刻も早く降格圏から抜け出し、精神衛生を保ちたいウチとすると、どこが相手だろうと勝点を取るしか現状打破の術はない。

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 ウチは前節から1枚変更。前節有給で休養十分な広大がスタメン復帰。

 対する岡山は、廣木→木村、喜山→パウリーニョ。前回対戦時は怪我でいなかった齊藤がCF。「パウリーニョのいない栃木に勝っても嬉しくない」で有名なパウリーニョとは長い付き合い。

前半

 今節もまた凪、やっぱり凪。先週はスタだったから何とかなったけど、DAZN越しで見ると、サザエさんシンドロームを誘発しかねない展開。これがデフォルトだって慣れるしかない。昨季京都戦みたいにウタカに太刀打ちできず立ち上がり15分で2失点して試合ぶっ壊れるよりは全然マシ(最近立ち上がりで4失点してた試合があるみたいだけど記憶にない)。
 冗談は置いといて、試合の入り方は結構気を遣ってるんじゃないだろうか。開始早々自分たちで主導権握ろうとした結果、慣れてきたころに相手に仕留められることが多かった。それを考慮し、先ずは試合が壊れないことを第一にセーフティに入っているのが、ここ2試合共通の印象。

 とはいえ、ピンチは迎えていた。11分、リトリートしてプレスに行けず、白井が簡単にロングフィード。受けた上門がフィニッシュまで持っていくも、慶記が落ち着いて反応。

 ウチのファーストチャンスは17分。セカンドボールに反応した勇利也が倒されてFKを獲得。大前が狙うも壁に阻まれてしまう。

 対する岡山は、RSBの河野が積極的に前に仕掛ける。HTのスタッツでは岡山は40%以上が右サイドからの攻撃になっていた。勇利也が上がった後ろのスペースを狙われたのが大きいが、大前と稔也のところの脆弱性を突いてくるのもある。まあ、実況が河野を必要以上に連呼してたから印象に残ってる可能性も否定できない。

 20分、中盤に顔を出した大前が狙われてロストするいつもの形から、徳元が躊躇わず左足を振ったが逸れる。木村の大前に対するアタックは過度に見えなくもないが、審判の心象が影響しているとも思える。

 30分、前半最も危なそうな形。齊藤の背後から畑尾がインターセプトを試みるも、こぼれが悪く木村に拾われる。木村は上門にパスを出すが、中山が足を伸ばしてコースを変える。しかし、岩上もボールにアクションを起こしており、運悪く上門にボールが繋がってしまう。勇利也と広大が残っていたものの2対2の数的同数の難しい対応を迫られる。齊藤がダイアゴナルでDF間を破り引き付けようとするが、DFの2人はそれに惑わされることなく対応し、結局上門は焦れてミドルを放つ。これは慶記の正面。アクシデントが2つ重なり失点を覚悟したが、守備陣の落ち着いた対応で難を逃れる。

 41分、ライン際でボールを受けた河野がノープレッシャーの局面でアーリークロス。徳元が走り込んでダイビングで合わせるも枠に飛ばず。これも結構危なかったが精度に救われる。

 危うい場面は多少はあったが要所は締め、6試合ぶりに前半を0で抑えて折り返す。

後半

 開始からのメンバー変更はなく、前半同様のリスク低減戦略でやり過ごす腹積もり。

 60分、この試合最大のピンチ。フィフティなボールを宮崎がヘッドで落として右サイドに流れた白井へ。白井は難しいバウンドを気にせずクロスを上げる。これは広大が弾き返すが、それがフリーの河野に渡ってしまう。岩上が何とかプレスをかけるも、河野は思い切りよくシュート。かなり良いコースに飛んでいたが、慶記が高さを上手く合わせてセーブ。リプレイを見ると畑尾が競り合いで押されて倒れていたようにも見えたが、その畑尾がシュートに反応して足を伸ばしており、ディフレクトしていたかもしれないと思うと怖かった。

 58分、翔大→久保田、ジャス→小島の2枚のカードを切る。SBの交代はいつも通りだったが、翔大を下げるとなるとボールを落ち着かせる場所がなくなってしまい、トランジションのより一層の速さを求められる。
 さらに66分には高木→内田のチェンジ。守勢だったため立ち位置は曖昧だったが、一時的に稔也を前線に持っていき、内田ではなく中山を右に押し出していたように見えた。

 69分、自陣で中山が背後から上門に掻っ攫われる。上門はそのまま推進力を見せる。齊藤が膨らむ動きから広大の背中を取って抜け出して上門のパスを受ける。しかしこの動きに畑尾が反応し、さらには慶記も間合いを詰めてコースを消す。齊藤のシュートは慶記の左手と畑尾の足に跳ね返って再度齊藤の足元に。それをワンタッチで蹴り込むが、畑尾が体を張ってブロック。この試合ずっと効いていた畑尾がここでも身を挺してチームを救う。

 数度のピンチを乗り切ったウチは77分、中山→進、勇利也→ミツで最後の仕留めにかかる。翔大交代以降縦へのスピードに重きを置かなかったが、残り10分強の時間で岡山をバタつかせる狙い。

 そして迎えた87分。相手のクロスを広大が跳ね返し、さらには内田がバックヘッドで前へ飛ばす。このボールを喜山が狙っていたが、前線からボールに反応した進が身体を投げ出し競り勝つ。それを回収した岩上は大前へ預けて前線にスプリント。大前は上手くターンして、稔也に見事なパス。稔也は右サイドを持ち上がり、岩上へのアーリーを試みるが相手に当たってしまう。が、このボールが見事に大前のもとに飛んできた。大前も稔也にパスを出したあと懸命に走っていた。大前は右アウトサイドで完璧なコントロールを見せると右足でハーフボレー。低く抑えられたシュートは、惜しくもGKに反応されてしまうが、こぼれ球に詰めていたのは岩上。オフサイドを気にして一瞬時が止まったが、無事にゴールが認められた。マウスピース効果抜群の岩上の2試合連続ゴールで終了間際に先制。87分という足が止まりそうな時間にPA内に5人も詰め、最後はセントラルが詰めるというのはかなりセンセーショナル。

 文字通りのワンチャンスを決め切り、実に6試合ぶりの勝利。

雑感

 VIVA相性。どう見ても劣勢の中で勝ったのはとてつもなく大きい。

 DAZNのハイライトにはゴールシーン以外ウチのシーンが全くないけど、全然不思議ではない。攻撃の形がなくはないが、シュートに持ってけない。ブロックを低く設定している影響をもろに受けているが、そこからの持ち出し方は中断期間に詰める。
 大前が中盤に落ちる場面が多いことを一概にネガティブと言い切ることは難しいが、相手がそこをトリガーにしているのは間違いない。前の人数が少なくなるのは勿論だが、レーン被りが横行し相手がコースを消しやすくなってしまう。得点時はチームの重心が低い分、落ちてきたことが効果的となった。
 そして、岩上様様。前節の得点も前への意識が見られたが、今節のゴールは、あの位置まで押し上げていたことが全て。岩上個人の前への意識に加えて、残り10分もしくは進とミツの投入のタイミング辺りからポジトラの速さが増した。気持ちは当然あるだろうが、仮にこれがゲームプラン通りだったとすると、まさにしてやったり。秋葉体制終盤は80分まで捨てて残り10分で何とかする劇場型フットボールで盛り上がりを見せたが、もしかすると今後も同様の展開が見られるかもしれない。

 守備陣の頑張りには今回も頭が上がらない。ピンチが多く、1つでもやられていればゲーム展開は全く変わっていたからこそ、瀬戸際で防ぎ続けていた価値は大きい。相手の木村が割とファジーなポジショニングで捕まえづらかったが、中山、勇利也、畑尾で上手く受け渡しができた。次に向けては、もっと外に追い込めるようになると楽だが、これも今後中断中に落とし込めるだろう。

 中断前ラストを勝利で飾れたことはメンタル的に大変ありがたい。3週間試合がないのは辛すぎるが、この勝利の余韻に浸れるのは悪くない。それと共に、晴れて降格圏を抜け出した。3週間も試合なく降格圏に幽閉されてると気が狂いそうだし、いくら2ポイント差とはいえ、18位と19位は雲泥の差である。

 中断開けもいきなり6ポインター、さらには隣とのダービーと続くが、中断期間中の戦術の落とし込みによりチームがより一層進化し、連勝できることを願いつつ、富安、大然などなど敷島で育った(言いすぎ)選手たちの活躍を楽しみたい。

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