改過自新 vs秋田 0-1

 前節は、立ち位置を変えてきた琉球に対し、空いているスペースを突いて攻め込み勝利した。途中シュートを打たれるシーンもあったが、終わってみれば危なげなかった。支配率は明らかに琉球の方が上だったといえ、今のウチの志向するサッカーであればむしろ好都合だった。

 アウェイ連戦を連勝で終え、3戦ぶりに敷島で迎える相手は秋田。秋田とのホーム戦は開幕で当たるイメージだし、この時期にやるのは違和感ある。昇格初年度の昨シーズンは、徹底した「秋田一体」サッカー(?)で無難に勝点を積んで比較的苦労せず残留した。アウェイでの対戦の際に秋田が後半ATに決勝点を奪って勝利したが、あの直接対決での勝利で秋田は大分楽になった。逆に1ポイントも拾えなかったことで、ウチとしてはそのあと苦しくなった。
 今シーズンも吉田謙氏が続投。それだけで何をしてくるか説明できる。ああいうスタイルのチームは少ないし、対戦相手の戦術に左右されることもない。選手たちの頑張りが直に結果に反映されるだろう。最前線には翔大もいるが、恩師の下で早くから当然フィット。彼のプレスは敵とすると厄介。

 ボールが空中とピッチ外にある時間が長いだろう。昨シーズン開幕戦のアクチュアルプレーイングタイムは驚異の37分1秒(参考:前節琉球戦は53分33秒)。「Actually…」のセンター活動期間に負けずとも劣らない短さである(比較対象については触れない)。ピッチ上にボールがある際もウチが握れる時間が長くなるだろう。分別なく突っ込んできて削られるのだけは勘弁して頂きたいが、上手く喰い付かせてから局面をひっくり返せればウチとしては優位に試合を進められる。

メンバー

 ウチは前節からノーチェンジ。ベンチには彰人が4試合ぶりに入る。安定した戦いをしており、大きく変更する箇所はない。

 対する秋田は敗れた長崎戦から4枚変更。田中→新井、才藤→藤山、中村→三上、茂→高瀬。小柳、優孝、翔大が敷島凱旋で3人ともスタメン。

前半

 当然のようにウチが立ち上がりからボールを持てるわけだが、秋田はプレスに来ない。自陣に4-4-2の3ラインを形成する籠城を決行。ボールを持てるのでCBがボールを運ぶことも簡単だが、却ってパスコースがなくて詰まってしまう状態に。

 6分、自陣左サイドでKJと天笠が三上をサンドしてマイボールのスローインにすると、クイックで天笠からKJへ。KJはボールに触らず反転してスピードに乗ると、小柳を釣り出して、その脇を突くスルーパス。ゴールに向かっていくスピンがかかっており、飛び出してきたGKに対応されてしまった。しかし、明らかにDFより後ろからスタートしたにも関わらず紙一重のタイミングまで抜け出した深堀のスピードと、深堀のスピードを考えてあのコースにインスイングのボールを入れたKJのセンスは見事。

 11分、藤山のトラップミスをKJが見逃さず掻っ攫う。タッチラインぎりぎりでボールを残すと、味方の状況を確認して減速。KJ→岩上→小島と右にボールが移る。小島は斜め前の稔也に付ける。PAの深い位置を取った稔也は小島にリターン。小島はワンタッチで中に送ると、ファーで天笠が折り返す。そこにフリーで岩上が走り込むも、左足のシュートは面を作ることができず明後日の方向へ。チャンスを活かせない。

 14分、右サイドのスローインで入ってから左に展開。細かいパスを繋いでいる中で、畑尾が1つ飛ばしたKJにパスを入れる。KJは華麗なヒールでのコントロールから前方のスペースに天笠を走らせる。藤山との競走に勝った天笠はワンタッチでクロス。ボールはゴールを横切ったものの逆サイドで小島が回収。そこからの小島のクロスは優孝のブロックに遭う。シュートまでは至らなかったが、縦に速い展開とファーにSB(WB)が絡んでいることが良く分かる。

 それぞれの立ち位置を確認し、どのタイミングでチェックに行くかを確認した秋田は、10分過ぎから十八番のプレスを強めていく。プレスのスイッチを齋藤が入れると、ボールサイドのSHを1列押し上げた前3枚に近いイメージでウチのサイドを塞ぎにかかる。特に三上を押し上げてウチの左サイドを分断されるのは怠かった。
 ただし、いくら矢印が大きいとはいえ、方向が明らかになっているプレスで揺らぐようなウチではない。冷静に近くに付けてプレスの勢いを下げてボールを落ち着ける。

 また、秋田は依然として籠る場面も多く、特にウチの左サイドは窒息気味。で、後ろに戻すと一気に圧縮に来る。それに対するウチの解決策は2つ。
 1つは、後ろの選手は1度CHにボールを当てること。特に城和・小島→岩上、山中→内田のように、サイドにかなり開いた位置から角度を付けてCHに入れる場面が目立った。ビルドアップ時に畑尾が山中に対し「1回うっちーに付けろ」と指示を出しているのも聞こえたし、意図的にボールの方向を変えることで相手の2度追い・3度追いへの絶望感を与えようとした。
 もう1つは深堀に裏を走らせること。これは琉球戦でも見られたが、相手がプレスに来た際にはラインの裏にスペースが空いており、そこに深堀を走らせて形を作ろうとした。何本か惜しいボールもあったが、跳ね返された時にセカンドボールを輪笠に回収されることが多かった。通ればチャンスっぽくなるけど、攻撃に厚みが少しほしい。

 32分、敵陣左サイドでのFK。ファーへの柔らかいボールに城和が身体を投げ出しながら折り返す。こぼれを稔也が拾い、KJへ落とす。稔也はサイドに開いて再びKJからボールを受けると、1つ切り返しを入れて相手のタイミングを外し、抜き切らないうちにクロス。そのボールに深堀が合わせたが、少しボールが足元に入ってしまってシュートに勢いがなく新井にキャッチされてしまう。

 あんまり流れが良いとは言えない状態で時計の針は進む。そして41分、一瞬の隙を突かれる。城和のパスが優孝に引っ掛かるも、岩上が回収。しかし、岩上から小島へのパスも飯尾にカットされ優孝へ。そこは城和がスライディングでカットしたが、こぼれ球を飯尾に拾われてしまう。ここでプレーを切れなかったのが響いた。飯尾は稔也のアタックを掻い潜ると、シンプルにクロス。そこに翔大が上手く頭で合わせてゴールに流し込んだ。
 山中の対応に不備があったとの声も耳にしたが、そもそも城和がボールアタックにいった時点で陣形が崩れ気味だし、山中と翔大でミスマッチが生じてしまうことが問題だった。どうにもならん。

 天候同様、どこかどんよりとした雰囲気で前半を終える。

後半

 後半開始から稔也→奥村。奥村が入ったことで、ボールの供給源が増え、パスのテンポにも変化が生まれた。

 54分、岩上→畑尾→城和とボールが渡ると、城和はハーフスペースにポジショニングしていた奥村に縦パスを刺す。上手く前を向いた奥村は、相手のプレッシャーをものともせず、逆サイドのPA角に浮き球を出すと、そこに天笠が走り込む。この場面では三上に対応されてしまうが、奥村の視野の広さとパスセンスは痺れる。

 57分、山中がプレッシャーの標的となり三上に突進されてロスト。三上→斎藤→三上と繋いでフリーとなり、大外の優孝にラストパス。失点を覚悟する崩され方だったが、櫛引が立ち塞がる。足元に飛んできたシュートだったが、しっかりと足を出して反応した。

 と、この辺までは何とか試合としての体をなしていたが、59分の秋田の3枚替えによって秋田のやり方が明確化する。「でぃす・いず・あきた」と形容すべき近未来的フットボールを展開し、他者の追随を許さない。

(中略)

 気づけば試合時間も残り10分を切っていた。FW登録の選手をガンガン投入して殴ろうとしたが、そもそも敵陣にスペースがない。そもそもピッチ上にボールがない(ピッチ上に2個ボールがあるシーンは結構あったけど)。

 85分、畑尾が気合のヘディングで競り勝ち、彰人がセカンドを拾う。彰人→城和→彰人→岩上→奥村と繋がり、奥村は左で高い位置を取った山根へ。山根は兎に角縦を意識させるボールの置き方と身体の使い方でタイミングを窺い、北川とワンツーで中央に侵入。すると、彰人が斜めの動き出しによって山根からボールを引き出し、空いたスペースに北川が入る。彰人は北川の動きを察知してヒールで落とす。北川は腰をしっかりと回転させながらシュートを放つも、DFのスライディングに当たって枠には飛ばず。

 93分、岩上のアーリークロスに平松が頭で合わせたがボールはクロスバーを直撃。こぼれ球を再度平松が狙うが、タイミングが合わず枠の上へ。

 0-1、完。

雑感

 負けるとしたらここだという勝手に思っていたし、その予想が当たっても嬉しくはない。

 守備時は大きなエラーなく相変わらず堅かったが、失点時は幾つものミスが重なっており、勿体なかった。

 あれだけ律儀に3列も自陣に敷かれると打てる手は少ない。ウチも去年最終盤は籠っていたからあんまり他人のこと言えないけど、4月からこれを徹底してくる相手をとってもリスペクトする。
 少し前半は裏への意識が強すぎた気はする。勿論狙っている部分もあるが、安易な手として蹴っておこうと捉えられる面もあった。その時点で相手の土俵に乗っていたのかもしれない。
 また、リトリートされるとボールを持てる局面は増えるが、狙いを持って持ち上がらないと却ってスペースを自分たちで潰していることにもなり、結果としてノッキングしてしまう。レーンの整理含め、もう一度構築し直したい。

 後半を見ると余計悔しくなるが、これもサッカーと割り切るしかない。理屈が通用しない相手なのは分かっていたし、そのチームに対して先制を許せば当然塩分要素が強くなるって言うのは教訓。

 一方で、ここで失敗したからと言って全部を否定し引っ繰り返すのは悪手。大槻氏も「嫌だからと言って放棄するのではなくて自分たちがやることをしっかりと続けていくことが大事になると思います。」とコメントしているように、1敗で折れることなく自分たちのやることを続けることが大事。最初っから万事うまくいくことはないし、出てきた課題を少しずつ解決していくほかない。

 GWも控えており、ここから連戦となる。次の相手は状態の芳しくない大宮。叩くなら今。今節の敗戦から切り替えて、また自分たちがすべきことをやり続けるしかない。

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