桃弧棘矢 vs東京V 0-0

 ハイプレスと幅を使っての攻撃に屈した前節。前半から再三ピンチに晒されながら何とか耐えたが、裏に走られての失点で勝負を決められた。ウチはほとんどPAに侵入する形を作ることができず、防戦一方といっても過言ではない。
 ミッドウィークは、延期分の金沢戦の59分1本勝負。中を締めようとしたところで外から攻略されて失点したが、エドのレボリューションで追いついて1ポイントを得る。形を変えて前進を試みるなど、試行錯誤。

 POを目指して突き進むべく臨む今節の相手は東京V。高い技術とインテンシティを持ち合わせる好チーム。
 JFK体制2年目の今シーズンは着々と勝利を重ねて昇格圏内に付けていたが、ホームで勝てない試合が続き、尚且つ主力の強奪に遭いやや停滞。それでも、染野が2年連続でレンタル加入したり、中原・長谷川といった実力者も加わり、悲願の昇格に向けてギアを上げてきている。ただ、直近の藤枝戦では美しい森田のゴールで先制し、追いつかれた後も染野が攻撃を完結。やはり攻撃の破壊力はある。その一方、2度追い付かれて勝点2を失う。勢いに乗れば手が付けられないが、集中力を欠く時間帯も見られる。

 前回対戦時はヴェルディキラーの梨誉が足を振って先制したものの、前半のうちに逆転。その後、岡本が高い位置まで走り込んで流し込むと、終盤は後ろを固めて着実に勝点1を得た。同一サイドでの縦の速さと、幅を使っての揺さぶりの共存が怖さではあるが、ウチはブロックを敷いて応戦した。ボールを持たせる時間が長くなるからこそ、ポジトラで刺し切りたい。


メンバー

 ウチはミッドウィークから1枚変更。竜士→彰人。契約上出場できない竜士に代わり、水曜日は途中出場となった彰人がスタメン。また、金沢戦終了間際に頭部を負傷した畑尾がメンバーを外れる。川上優樹と菊地が久しぶりにメンバーに入った。

 対するヴェルディは引き分けた前節藤枝戦から2枚変更。平→林、加藤→奈良輪。

前半

 ヴェルディのキックオフで始まった試合、ウチは立ち上がりからかなりエネルギーを持って試合に入った。彰人・平松の2枚がマテウスにまでプレス掛けてサイドを限定させ、SBに入ると佐藤と梨誉が一気にマーカー捨ててサックを狙いに行く。これによってCBから逆サイドSBへの1つ飛ばしたパスを通せずにマテウスで作り直すこととなり、ヴェルディの攻撃のビルドアップの邪魔はできた。ただ、ヴェルディも足元の技術はしっかりしており、身体の向きを工夫しながらアンカーの森田に斜めのパスを通して前進を図る。

 6分、FKの流れからウチにチャンス。敵陣右サイドでのFK。風間のアウトスイングのボールはマテウスにパンチングされるが、セカンドをエドがハーフボレーで狙う。GKが出ておりゴールは空いていたが、バウンド的に抑えることが難しかった。

 8分、ヴェルディにこの試合最初にして最大の決定機。ヴェルディが敵陣右サイドでのFK。キッカーの宮原は右に浮いた宮原にクイックで付ける。宮原と中原でパス交換を繰り返してテンポを作る。宮原がカットインする姿勢を見せながら中原に戻すと、中央まで運んでから右横にいた森田へ。森田は右外の宮原に出すように見せて佐藤を動かし、佐藤と風間の間のPA角に立つ齋藤に繋ぐ。齋藤→森田→染野とワンタッチで綺麗に繋がり、染野からワンタッチでパスを受けてどフリーの稲見が左足でフィニッシュ。しかし、肝心のシュートがコントロールミスで巻けずに大きく外れた。
 一瞬の隙を見逃さないリスタートもそうだし、そこからのパスすべてに意味があった。スペースを作るためにどのようにウチの選手を動かすかを考え、上手く餌を撒きながらPA内のニア深くを突いた。これはクオリティの高い攻撃。

 開始10分過ぎまではヴェルディはプレスに来ず、ウチの最終ラインでのパス回しを許容していた。時間が経つにつれてプレスのスタート位置をウチの両CMFに設定。また、ゴールキック時にウチの選手を掴むのが各チームのトレンドだったが、ヴェルディは染野1枚が牽制に来て、IHが追随。そこでの勝負を捨てる分、ロングボールを蹴った際のセカンドボールの回収に重きを置いてきた。平松周辺というウチのもう1つの狙いを消してきた。恐らく、ウチのビルドアップをそれほど警戒しておらず、サイドにボールが出たところで塞げば問題ないと考えていたのではないだろうか。それよりも平松で前に起点を作られることを嫌った。

 17分、ヴェルディのチャンス。ウチの陣内右寄りで森田がクリアボールを回収すると、森田→宮原→中原→宮原と右サイドの連動した動き出しでスペースを得ると、右足で柔らかいクロス。PA中央で染野が頭で合わせるも、枠の左。
 奪ってからの展開が早いのと、宮原のポジショニングとランニングが効果的で対処が難しい。最後のクロスも城和の上から叩かれていたので、怖さはあった。

 ヴェルディがボール保持する時間が長くなるのは想定内。その際、IHとWGの入れ替わりが頻繁に行われる。特にヴェルディ右サイドは中原と齋藤のどちらかが常に風間の脇で顔を出していた。梨誉が宮原番をしており、その内側のケアを風間がするのだが、1列前に配置されていたはずの中原が下りてきて、その分齋藤が裏に抜けてPAで深さを作ろうという意図がみられた。その齋藤の深さをポイントにしてクロスを入れる回数は多かったし、厄介ではあった。
 左サイドの方は稲見と長谷川が割と似たような高さで立ってビルドアップ。そちらのサイドではあまり深く抉るような狙いはなかったので、佐藤が奈良輪と長谷川を2度追いしてカバーすることが可能となった。向こうもアイソレーション気味になっていたが、良い具合にウチと噛み合う。

 37分、思わぬ形でウチはピンチに。ウチの最終ラインからのビルドアップ。城和からアマにゲートを通す見事な楔が入るも、アマは背中の圧力を察知して櫛引に戻す。櫛引は落ち着いてボールを転がし、右足でモーションに入るが、蹴ったボールは寄せてきた染野の出した右足を直撃。そのままゴール方向に飛んでいくが、僅かに外れた。観ている方は卒倒しかけたが、当人は落ち着きを失わないのは流石。

 両チームともに狙いは見せつつ、試合は均衡を保ったまま前半を終える。

後半

 後半開始からヴェルディは長谷川→加藤。長谷川はプレー時間に制限があるのではないかという見立てはある。

 50分、ウチのCK。風間からのインスイングのボールに酒井が反応し、さらにこぼれたところを左足でシュートするが、ミートせず。酒井は悔しさをにじませる。

 後半に入り、少しずつウチは重心を高めに置き始める。ヴェルディがCBから森田に斜めのボールが入ることがスイッチとなり前進するが、その次のIHのところにウチのCMFが捕まえて引っ掛ける場面が出てきた。

 56分、ゴールキックからのビルドアップ。ヴェルディは染野と中原の2枚が1stラインとなっていたが、酒井がミドルサードまで持ち運んでから大外の佐藤へ。佐藤はアタッキングサードまで運んで切り返したところで相手に引っ掛かるが、セカンドを風間が回収して左の梨誉に展開。梨誉は彰人のランニングによって空いたコースにクロスを入れる。これはDFがクリア、さらには森田も前に弾き出したが、こぼれ球をアマが左足で叩く。鋭いシュートは僅かに枠の上。
 ヴェルディのプレッシャーの部分の傾向を上手く使っての一連の攻撃。もう少しPA内で自分たちのアイデアが出せるシチュエーションに持っていきたい。

 59分、敵陣右サイド深い位置で佐藤が身体を張って得たFK。風間からの鋭いボールにニアで平松が触ってコースを変えるが当たりが薄く枠には飛ばない。

 このFKのタイミングで彰人→武。ヴェルディも直後に奈良輪→綱島。奈良輪のカード面のマネジメントも含めての交替か。
 そして、これを機にヴェルディは3バックに変更。稲見をLCBにして、綱島はセカンドボールの回収に精を出す。また、宮原も1列前でのプレー。今までは許されてきたビルドアップにも監視の目が入るようになった。ヴェルディはいつまでも後ろで構えるわけにはいかないだろうとは思っていたが、明確に前から捕まえに来たし、ラインも高くなった。

 ただ、前で狩る意識が強いので人数を割き過ぎてしまい、1つ剥がせばウチがどんどん前進できるようにもなる。また、最終ラインの方々がロングボールを蹴られた時に脆弱性があるのはウチがスカウティングしているので、意図的に裏目掛けてのボールを今まで以上に使うようになった。
 また、エドと佐藤のローテーションにも新たな形が。今までは外側の選手が高い位置を取ってボールを受け、もう1枚がハーフスペースを駆け上がるのが定石だった。ただ、この試合では顔を出すふりしてからそのまま内側のレーンでラインブレイクをしようとしていた。佐藤もエドもよりゴールに近い位置で抜け出せるように狙っていたし、相手の守備陣が対応に苦慮。

 70分、なかなか看過できないプレーが発生。元々はアマのプッシングなので何とも言えないが、だからといって何でもしてよい訳ではない。
「あんなの退場だろ。顔やってんじゃん。頭殴ってんじゃん、今の。(第四審に対し、)あれ言って言って『頭殴ってますよ』って。あんなの赤だろ。今のダメでしょ。レフェリー、殴ってんだよ?あんなのありなん、あんなのないだろ?」(以上)

 とはいえ、終盤になってもインテンシティは落ちるどころか上がっているようにも感じる展開。両チームともに交代カードを切りながら強度を維持しつつ、最後の一刺しを狙う。

 77分、ウチがゴールに近付く。ハーフウェー手前で酒井から相手DFラインの背後に落とすボールを供給。これにエドと谷口が競走すると、谷口がコントロールできずに体勢が入れ替わる。そのままPA内に侵入したエドはマイナスのクロス。これはニアの武には間に合わず、ファーで梨誉が足を振るが相手に寄せられて満足にシュートを打てず。
 エドが裏に抜け出して高い位置まで侵入するのは相手にとっても脅威。従来であればハーフスペースでボールを引き出すタスクが主だったが、違った形を見せた。谷口の背走の怪しさも相俟ってフィード1本で決定機を創出した。それでも最後やはりPA内・バイタルでのアイデアは必要。

 その後、ウチは風間→内田、平松→北川、梨誉→シラを投入。ヴェルディも森田→平、染野→佐川で半ばスクランブル体制。試合を決めに来る。

 90+5分、ウチのCK。佐藤のアウトスイングのボールをファーで武が叩く。これを内田が逸らし、最後は北川が左足で狙ったが角度がなかった。

 最後までゴールを狙う姿勢を見せた両チームだったが、ネットが揺れることはないまま試合終了。

雑感

 両チームともにインテンシティはあったし、狙っていた攻撃の形も見せていた。相手がきちんとフットボールをしてくれるので、ウチとしてもよりポテンシャルを引き出されているように思えた。だからこそ、3ポイントが取れれば大きな成功体験にはなっていただろう。

 ディフェンスに関しては、IHとWGが入れ替わってマーク自体も難しいしスペースの管理も大変だが、完全に崩されることはほぼなかった(セットプレー絡みの稲見の決定機のみの気がする)。でもって、前から捕まえに行ってマテウスに圧力掛けてミス誘発させるなどの強かさもあった。これはシーズン残り試合でもこの水準が維持できれば期待は膨らむ。

 オフェンスはまだ試行錯誤の道の途中だが、少しずつ浮上の兆しはある。上述のエド・佐藤の内側からの抜け出しや、梨誉がカットインしてきてのシュートなど、可能性のあるシーンはあった。梨誉はやはりプレッシャーが全方向からくると難しいが、サイドに配置して180度に限定されるのであれば推進力を発揮しやすいのではとは思う。あとはエドも中3日で疲労が抜けない状況でも90分走り切っており、かなり効果的だった。

 上との勝点差を詰めるためには、直接対決で勝つしかない。この試合では詰めることができなかった。しかし、この試合で手応えを確かなものにするため、次節は極めて重要。ここで上回って上昇気流に乗るのか、このままスパートができないままフェードアウトしていくか。イレギュラーな連戦によりコンディション面で難しさもあるが、また1つずつ積み上げて、乗り越えていきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?