意気自如 vs長崎 1-4

 残留争いの直接対決、ウノゼロの会心の勝利によって相手を奈落の底に蹴落としす。相手のクオリティの低さも相俟ってプランを確実に遂行していった。勿論、まだまだ安心できる位置では全くないが、あの戦い方を貫いていくしか生き残る術はないだろう。

 1つ天王山を乗り越えて次に挑むのは長崎。何でまたこのタイミングでアウェイ長崎、しかも中3日。
 ホームでの対戦時は吉田孝行氏がまだ監督だった。CK拾ってのスーパーカウンターでKJが先制点を奪うも、エジガルプロジェクトの餌食になって逆転負け。チャンスを仕留めないとやられる典型例だった。
 その後、吉田氏に見切りをつけて松田浩氏を連れてきた。神戸を率いていた際に植木さんに突っかかってきてピッチサイドで喧嘩騒ぎになったり、踏み台を率いていたりと良い印象は皆無。オーソドックスな4-4-2を用いて、堅い守備の構築には定評がある。そのブロックを崩せずに負ける試合も多いことからも、苦手なイメージが益々強くなっている。

 「鬼門長崎アウェイ+松田氏=ウチに勝ち目なし」っていうのは容易に導き出されるが、事故でも何でもいいから勝点を掠め取れば良いなと安易に希望を抱く。重要度は週末の相模原戦の方が高いのは明白だが。

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 ウチは前節から6枚変更する大胆なターンオーバー。慶記→松原、ミツ→ジャス、岩上→内田、稔也→和音、KJ→進、翔大→北川。日程面を考慮し、無理させず休ませたいという思惑が良く分かる。怪我明けのKJと休みが全然ない岩上はメンバーにすら入らず、恐らく群馬に残っての調整。とはいえ、このスタメンが期待できないというわけでは全くないし、ここから出番を増やしていくためのサバイバル的な要素もある。細貝が加入後初のベンチ入り。

 対する長崎は2-1で勝った前節水戸戦から1枚変更。エジガルが謎のメンバー外となり、加藤がスタメン入り。

前半

 立ち上がりはウチがボールを握る、というよりも握らされると言う方が適切か。ウチのボール保持に難があるというのは当然長崎もスカウティングしており、15分頃まではふんわりした内容でのパス回しが続く。ただ、縦パスを刺した刹那、長崎の選手に囲まれてしまい、それほど効果的なパスは通せてはいなかった。

 それでも敵陣で引っ掛けてのチャンスは作った。9分、長崎のゴールキックの流れから。江川から澤田へのロングボールをジャスがカット。こぼれたボールを和音が拾って持ち上がり、中央の中山へ。中山は振りかぶってフェイクを入れてから左前の大前へ。その外側に進が抜け出そうとしていたが、大前はワンタッチでのシュート。ボールはGKの正面に飛んでしまったが、手数を掛けずにフィニッシュまで持っていく良いシーン。因みに、これがスタッツ上では前半唯一のシュート。

 徐々に長崎がボールを奪うエリアを高く設定し始め、ウチはパスが数本繋がらないうちに長崎に回収されてしまう場面が目立った。ただ、ウチもこの時間からリスクを冒して攻撃するほどノープランではないので、ポジトラで上回るのではなく、ETU達海猛のモンテビア山形戦よろしく「前3枚で何とかして」の形を見せる。

 それでもチャンスに近い展開は見せた。大前が落ちてジャスのクリアを回収。見事な身のこなしから斜めに良いランニングをした北川に浮き球で渡す。北川は難しい高さのボールを胸でコントロールして右サイドへ。縦に行くと見せて切り返し、ちょうどハーフスペースをランニングしてきた和音へ。和音は大外のレーンに向けてコントロールし、北川はそれを見て和音が空けたスペースに走り出す。残念ながら和音から北川へのリターンは出せなかったが、ボールサイドが2on3の状態でも打開できそうだったのはポジティブな形。

 しかし、やはり長崎が同サイドに人数を掛けてから逆に振る型で攻勢を強め、38分に実る。ウチの陣内深くでの長崎のスローイン。大武が動きを読んでカットするも、ボールに足が当たらず、クリアが不十分に。フィフティのボールを中山が回収しようとするも、米田に拾われる。米田→澤田→植中と左でボールが回り、真ん中のカイオセザールへ。植中はボールを離して直ぐに動き直しており、それを見たカイオはワンタッチで植中にリターン。植中→加藤→カイオとPA左付近でボールが回り、最後はカイオから植中にボールが帰ってきた。抜け出した植中は難なく決め切って長崎が先制。
 ①リスタートの状態で陣形が壊れていた、②植中が低く顔を出した、③カイオがハットと同時に高い位置を取ってきた、以上3つの事象が発生したためウチは全員捕まえることができなかった。原則通りのレーンを意識したランニングと個の技術を発揮されれば、どのチームも手が付けられない。

 長い時間耐えることがプランだったウチとすると、前半のうちの失点は痛いが、最少得点差で前半を折り返す。

後半

 1ポイントでも持ち帰るためには何とかしてゴールを決めなきゃいけない状況。とはいえ、前半の内容を見ると難しいと思ってたら、脈略なく来た。

 49分、ウェリントンハットからボールを奪った小島がそのまま左サイドを駆け上がり、クロス気味のボールを中に入れる。北川がDFの死角から飛び出してコントロール。シュートまでは至らなかったがこれもシンプルで良い形。
 そのプレーで得たCK。大前のニアへのボールに内田が合わせる。良いコースに飛んだシュートは富澤が弾くが、そのボールが毎熊に直撃してゴールに吸い込まれた。ラッキーな形で試合を振り出しに戻す。ウチがいつもやられている形と同じ。ニアのストーン(この場合はハット)の前のスペースを使って飛び込むという狙い通り。今シーズンはセットプレーから脈略なく点取れるのが強み。

 とか浮かれたのも束の間、KOの流れからそのまま攻め込まれる。追いついたことでチームの雰囲気も個々のテンションも上がり、前から少し人数を掛けてプレッシャーに行ったが、これが仇となる。毎熊から澤田へのボールは内田が跳ね返すも、澤田が自陣まで落ちてきた動きに畑尾が反応し、結果的に釣り出された形に。こぼれ球を鍬先が回収し、鍬先から右に流れた植中に縦パスが通る。畑尾が釣り出されたことで大武がウチの左サイドにスライドして植中と対峙。しかし、ウチの重心が前にかかっていたことを把握したカイオセザールがハーフスペースに走り込み、フリーでボールを受ける。カイオに渡る前に大武と小島がサンドするor小島がボールではなくスペースを埋めることができれば結果は変わったが、それを追求するのは酷だろう。大武が懸命にカイオに食らいつくが、キックフェイントで寝かされる。体勢を崩した大武を尻目にカイオはPA内に侵入。畑尾がニアのコースを切るが、カイオはファーの澤田を選択。澤田はワンタッチで押し込み、長崎が失点直後に再び勝ち越す。
 3つミスが重なれば失点に直結するとはよく言われるが、これもミスと共に長崎の的確な攻撃が良く分かる攻撃。誰がどのスペースに走るかをオートマチックに決められるのは理想的だし、PA内に侵入する過程はカイオの個人技とはいえ、定石どおりにPA内の深い位置を取り、ニアで植中が走り込んでスペースを空け、ファーの澤田が一歩下がって合わせる、デザイン通り。シルバが深く抉り、ニアでスターリングが潰れ、美味しいところをクン・アグエロが持ってく、少し前のMan Cityでよく見たゴールシーンと被って見えた。

 リードして長崎は勢いに乗ってくるし、ウチとしては失点のタイミングが悪すぎてショックは大きい。

 58分、長崎が右サイドでリズムを作って、鍬先が左サイドの澤田に展開。澤田はオーバーラップした毎熊を使い、自らも毎熊を追い越す動き。毎熊は澤田を囮に、澤田が引っ張ってできたスペースを使って右足でクロス。これは畑尾がカットするも、ハットが回収。ハットは長くタメを作り、小島が右足をゴールライン方向に動かし、ハットから見て重心が右に傾いた瞬間にハットは左に小さく切り返してクロスを供給。ファーで植中が合わせるも、松原が何とか反応する。クロスが少し大きく、体勢がやや後ろにかかっていたが、それでも枠に飛ばす植中はエグイ。
 で、その流れからのCK。米田のボールをニアで江川が逸らし、GKの前で植中がヒールで流し込んで3点目。何をどうやって解釈すればあれが認められるのか理解不能だが、VARのないカテゴリーにいる以上仕方ない。内田が残ってる、もしくは植中がパスの後に走り込んだとでも思ったんだろう。そもそもニアで江川に合わせられてる時点でウチとしては対応に不備があったし、割り切る。

 3失点目のタイミングで、北川→翔大、中山→細貝で流れを手繰り寄せようと試みる。失点前から準備していただけに、できれば1点差の状態で投入したかったが、やむなし。

 翔大が入ってボールを引き出すことが増え、前線のパスの回りが良くなった。さらに、セーフティリードを持った長崎が低くブロックを敷いて固めてきたことも影響して、細貝がフリーになる場面が多く、ボールを前後左右に散らしてタイミングを窺った。ただ、楔を入れると、ここぞとばかりに長崎の選手が囲んでくるので、チャンスには至らない。

 89分、ウチのCK。シュートで終われず、カイオにボールを拾われると、ミツが剥がされて独走を許す。数的不利でカイオにもチャレンジできず、PA角まで持ってかれる。細貝が何とか動きを止めるも、名倉がニアに走り込まれ、それにジャスが付いていく。それによってパスコースが生まれ、ファーに送られたボールにどフリーの加藤が合わせて終戦。
 2点目と同じ原則によってフィニッシュまで持ち込まれたが、あんな動きのできるカイオをJ2に放流させた川崎の罪は重い。でもって、その川崎がJ1で優勝決めてるんだから、色々と恐ろしい。

 個の技術のあるチームに原則を落とし込む、まさに鬼に金棒。得失点で3つのマイナスを土産に、試合終了。

雑感

 勝てるとも思ってなかったし、皮算用すらしなかったが、失点が1つか2つ余計だった。

 カイオが超J2級なのは誰もが思ったが、もう1枚の鍬先も派手さはないものの効いていた。1点目も2点目も鍬先の正確なフィードから始まっている。地元出身で東福岡、大学は早稲田で山田・阿部と同期のルーキー。シーズンオフはステップアップも十分考えられる。去年もブレイクした毎熊も怪我から復帰後躍動してるし、植中も夏以降の活躍を見れば個人昇格の可能性高い。植中は足元もヘディングもできるし、今ヴィオラで売り出し中のヴラホヴィッチに通ずるものがある、同世代だし。
 そんなこんなで、あの攻撃に対処しろって言われても無理がある。松田浩にオフェンス面の構築に長けているイメージはなかったが、あれだけ洗練されると脱帽。当然、監督だけでなくヘッドコーチも構築に携わっているだろうと調べたら、佐藤一樹氏だった。恥ずかしながら現役時代を見ていないが、群馬県(前商)出身で指導者としても瓦斯ユースをプレミア昇格・クラセン優勝・プレミア優勝に導くなど実績十分。S級も保持してるし、来年故郷で夢を叶えてほしい。

 根拠なき妄想は置いといて、この試合のターニングポイントはカイオセザールと鍬先のポジションを入れ替えたことだった。それに伴ってウチも内田と中山を入れ替えたが、中山の左利きの良さが右サイドではでなくなってしまい、中にボールを晒す形になるので却って狙われやすくなった。それだけでなく、カイオの対応に明け暮れ、小島のオーバーラップも影を潜めた。長崎としては攻撃面での効果を期待したのだろうが、ウチにとっては攻守両面でネガティブな要素が増える一手だった。
 それでも、シンプルに手数掛けず作った上述のいくつかの形は数少ない収穫。守勢の中でも一瞬で刺す準備を怠らなければ、相手への脅威となる。翔大を入れて落ち着きはしたが、決して北川が悪かったわけでもない。トップのそれぞれの特徴を生かしたボールが供給されない、今日に限ってはそこまでパスを繋げなかった。進のファイトする姿勢と北川の一瞬を狙うFWとしての嗅覚は心打つものがあったし、今後間違いなく必要なタイミングがある。

 消化試合を終え、次戦が2つ目の天王山。ここを取るか取られるかで、来年のカテゴリーが決まると言っても過言ではない。アウェイでは最後決めきれなかったが、ホームでは何が何でもゴールを叩き込め。

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