死中求活 vs千葉 1-2

 相手のビューティフルゴールで先行され、一時は追いついてポイントを積もうとするも、最終盤に相手のスピード感ある攻撃で刺されて敗れた前節。根本的に山形に押し込まれたとは言わないが、どうしても陣形が整備しきれず、縦のスピードを押し出して攻め込まれた時に対応が難しい。それでも、無抵抗で殴られるのではなく、セットプレーからゴールまで結び付けた。決してネガティブな部分だけではない。一方で、他会場の結果により今シーズンのPO進出の可能性が消滅した。

 昇格という目標達成は潰えたが、己の力を示すべく戦う今節の相手は千葉。終盤にかけて怒涛の勢いで一気にPO圏内に喰い込んできた好調のチーム。
 就任初年度の小林氏の指揮の下でスタートした今シーズンは、世界三大カップと開幕戦こそ勝利したが、そこから8戦未勝利。追い込まれた状況で迎えたヴェルディ戦でインテンシティを高めた戦い方を見せて勝利。その後も一時ほど低迷することもなく中位を漂っていたが、7月末のアウェイ町田戦で勝利したあたりから上昇していく。元々田口を中心に足元で繋ぎたいという志向はあったが、徐々にインテンシティに重きを置く戦法にシフト。システムも4バック(4-4-2 or 4-2-3-1)を採用することが多くなり、特に左の日高がハイパフォーマンスを見せてサイドを活性化。また、夏のウィンドーでドゥドゥを補強することで前線にもより強度とスピードを持つ駒を手に入れた。8月末からは7連勝という驚異的な追い上げを見せて、PO進出ラインに入ってきた。ただ、水戸戦で相手が愚行により数的優位になりながらも勝ち越せず、続くヴェルディ戦では2-0から大逆転負け。やや勢いが削がれている。他会場の結果により試合開始時点では、PO圏外になっている。それでも、数年ぶりのPOに向けて負けるわけにはいかない。
 小森・呉屋・ドゥドゥとゴールに飢えている前線の方々が躍動するのは厄介だし、セットプレーやカウンターからも虎視眈々とゴールを狙う。田口のキックの質は折り紙付きだし、ウチもその辺は当然認識しているはず。

 前回対戦時は長倉と佐藤が開眼して2ゴールを奪ったが、即時奪回×2で追いつかれた。ボールを握ろうとすると相手は一気に圧力を掛けてくるのは間違いない。ただ、千葉はボール保持時にプレスを掛けられると脆弱性がある。水戸戦、ヴェルディ戦ともにプレスを正面から喰らってひっくり返せずに手詰まりになった。また、70分前後から運動量が落ちて千葉のプレス強度が低下する。
 両チームともに狙う試合展開は似ている。ウチとしては相手のボールの動きを制限させつつも、握らせるのではないだろうか。千葉の勢いに呑まれると藤枝戦と同様の展開も想定されるが、中央を締めた上で相手が空けたスペースにボールを流し込みたい。


メンバー

 ウチは前節からノーチェンジ。ベンチを含めても武が入ってきたのみ。

 対する千葉は終盤の得点で辛くも勝利したいわき戦から1枚変更。呉屋に代わり、前節決勝ゴールの小森が入る。

前半

 気温が20度を超え、北風も吹かないという11月らしからぬ絶好のコンディションでキックオフ。
 千葉はラインを高めに設定して陣形をコンパクトにするのに対し、ウチも一切動じることなく最終ラインでボールを持つ。

 8分、千葉がゴールを脅かす。日高が自陣深い位置からストレートなフィードをドゥドゥに通す。ドゥドゥはワンタッチで中央の小森に落とし、小森から右の田中へ。中塩の頭上を越えたボールをコントロールした田中はカットインして左足で狙う。インスイングのグラウンダーのシュートは誰にも触られることなく抜けていったが、左に逸れた。
 千葉のダイレクトな攻撃が早速発動。ドゥドゥがサイドでポイント作った際に小森がしっかりライン間に落ちて深さを保ち、そこから逆に展開。手数こそ多くないが、それで完結できるのが怖さ。

 13分も千葉のチャンス。佐々木のフィードを酒井が跳ね返したセカンドボールを田口が回収。ドゥドゥとのパス交換を経て一度最終ラインで作り直す。そのタイミングで田口が梨誉の脇に落ちてボールを引き出すと、大外のドゥドゥへ。ドゥドゥはワンタッチで隣のレーンの日高に流す。ここには岡本が反応するが混戦の中で日高がボールをキープして中央の小森に送る。小森は僅かなスペースで反転して右足でシュート。難しいタイミングでのシュートだったが、櫛引が見事な反応で防ぐ。
 田口が自由にボールを扱う時間が生まれると間違いなく局面を打開してくるのは間違いない。この場面でもスルスルっと左に流れ、それに呼応するようにドゥドゥと日高が動き出してスペースを有効活用。小森のシュートセンスも流石だったので、早くJ1の皆さんに買い取って頂きたい(チームごとJ1に行く可能性もあるが)。

 千葉は事前に聞いていた通り縦への速さは感じられるが、インテンシティはそれほどでもない。ウチのビルドアップに一定のリスペクトがあるのか、必要以上に喰い付いては来なかった。ただ、中塩と酒井にボールが入ったタイミングで風間orドゥドゥがスイッチを入れる傾向。で、CBから櫛引に戻した場合には当然ながらマーカー捨てて圧力強める。
 ただ、ウチもそこで臆することはない。城和が積極的にアマと風間に付けて、千葉1stラインを後ろ向きにする状況を作り出した。また、千葉ラインが高いので長いボール1本で局面を変えようとすることもしばしば。平松対鈴木大輔という迫力満載の競走もあった。

 33分、千葉に決定機。竜士のクロスを佐藤が折り返すも鈴木椋大に処理されると、すぐに鈴木がボールを離してウチの1stラインを突破。左でドゥドゥがボールを運び、アマのファウルを誘う。ドゥドゥはすぐにリスタートして見木へ。小森がスプリントしてアマと風間の間でボールを引き出そうとすると、風間がそこに少し視線を奪われる。そのタイミングで風間宏希の脇で風間宏矢がボールを受ける。フリーとなった風間は後ろから追ってくる竜士のコースに入って前進。外のレーンにいた高橋が斜めに動くことで中塩と城和を引っ張る。これによって誰も風間にチャレンジに行けず。自由となった風間は思い切って右足を振る。アウトスイング気味のドライブがかかった強烈なシュートは櫛引もウォッチするしかなかったが、クロスバーを直撃。
 マイボールになってからのポジトラもだが、リスタート時の切り替えは脅威だった。勿論ボールを握る方が能動的にアクションを起こせるが、小森の動き出しを筆頭にチームとして徹底できている。

 35分も千葉に決定機。自陣からボールを繋ぎ、ドゥドゥが駆け引きしながら緩急を使ったドリブルで佐藤を剥がして1つ内側に入り、小森の足元に付ける。小森は1stタッチで上手く角度を付けてドゥドゥにリターンとなるスルーパス。ドゥドゥは強い腰の回転から強引に左足でクロス。これはファーに流れるが、中塩が跳ね返したこぼれ球を髙橋がハーフボレー。ゴール方向に転がるボールに風間宏矢が反応してコースを変える。時が一瞬止まったようにボールが飛んでいったが、またもクロスバーに当たった。
 ドゥドゥのところで上手く前に運ばれてライン間を小森とドゥドゥに使われてしまった。城和は小森を深追いするわけにもいかず引いたが、無駄のない動きでドゥドゥに振った小森は流石。

 ウチは千葉のプレスを掻い潜り、前進しようとする。岡本が内側に入ってIH化して佐藤まで上手く届けていた。ただミドルサードで佐藤が持った際に兎に角左足のカットインを消されて作り直す以外の選択肢を与えてくれない。やや手詰まり感はあったが、梨誉が懐の深さを見せて自らターンして運ぶのは勇気づけられた。
 一方で、ウチが中盤2枚とRSBを含めて攻めに行く分、ロストした瞬間にドゥドゥ・小森・風間の3枚が前で構えてウチの最終ラインと同数の状況となる。そこにボールホルダーと田中が絡んでくるので即オープンな状況。ウチは撤退しながらの難しい守備を余儀なくされる場面が増えていたものの、それでもCMFが懸命にネガトラで相手を減速させたり、サイドに誘導させたりで難を逃れる。

 じりじりと千葉が押し込んでこそいたが、ウチも崩れることなく耐える。スコアレスを維持したまま折り返す。

後半

 後半に入っても千葉がボールは持つが、ウチも少しずつ前に押し込むように。

 49分、ウチが前からプレスを掛けて鈴木に長いボールを蹴らせてマイボールにする。中塩が相手の矢印を見て絶妙なタイミングで中央のアマに通す。アマはそこから最終ラインの背後にシンプルなボールを供給すると、平松が完璧な1stタッチで収めて前を向き、PA角近くを取る。タイミングを窺い、平松が前方のスペースにボールを流すと、そこに走り込んだ梨誉が左足で狙う。角度がなかったこともあり、ここは鈴木椋大に防がれる。
 やはり1stライン越して中央にボールが入ると局面が変わるし、そこからボールを受けた平松も見事だった。

 55分、ウチは杉本→北川、佐藤→山中の2枚替え。北川が右、惇希が左へと入る。惇希のところで縦に引っ張れるポイントを作る。

 59分、ウチが形を作る。右サイド深い位置のスローインで岡本が持ち、一度最終ラインに戻す。田中と風間のゲートを通して中塩からアマへ楔が入ると、アマは懐の深さを見せて北川へ。ハーフスペースに岡本が走って日高を釣ることでスペースを得た北川はアーリーっぽく上げる。これはDFに対応されるがボールはPA手前に転がる。そこに走り込んできた風間が右足で狙うが力が入り過ぎて枠を大きく超えた。
 ここもアマに縦を入れることでボールを動かしやすくなった。風間がボールにアプローチしてきた時は期待感が大きかったが、思い切り力んでいた。

 62分にもウチのチャンス。千葉のカウンターを櫛引の飛び出しで対応してセカンドも回収。中塩がオープンに持ってボールを晒し、惇希に出すと見せかけて身体の向きから鋭角のパスを梨誉に刺す。左には惇希が駆け上がるが、梨誉はハーフウェーからそのままPAまで運んで左足でシュート。これは鈴木大輔のブロックに遭うが、クリアを岡本が拾う。キックフェイントから内側に入ると、PA内で浮いていた梨誉に繋ぐ。進むコースは限られていたが梨誉は迷わず自ら持ち込んで右足を振る。これもブロックされたが、こぼれ球を北川が左足で狙う。枠に飛んでいたが、ここも頭に当てられた。

 それによって得たCK。風間はニアに速いボールを選択。これは梨誉の奥の小森に当たるが、こぼれたところを中塩が左足で振り抜く。強烈なシュートがネットを揺らして先制。
 CKに至るまでの過程も良かった。この1つ前のCKも意図的にニアにターゲットを作っていた印象だったが、ここでも使ってきた。それにしても中塩の所にはボールが転がってくる。

 負けるわけにはいかない千葉は66分、ドゥドゥ→椿、風間→福満の2枚替え。この交代が鍵となった。

 ドゥドゥも攻撃大好きなプレーヤーだがどちらかというと内側にも顔を出してボールを触りたがるタイプ。それに対して椿はタッチライン際を主戦場とするウイング。常に左に大きく張るので岡本をピン止め。
 また、前半からずっと日高が斜めにカットしてきてハーフスペースを取ってくるのが嫌らしかったが、椿の登場によって自分の担当するスペースが明確化してより日高が活きるようになった。岡本とアマ、北川がマークを受け渡しながら何とか対応するものの、半強制的にウチの右で深さ作られるので、結果的に田口や見木が自由にボールを触られてしまう。
 リードしている分、ウチもメンタル的に多少余裕があるから要所でプレス掛けていたが、それでも段々と千葉左サイドで形を作られていく。

 迎えた77分、遂にPO進出を目指すチームが同点に追い付く。ウチのビルドアップの過程でズレて千葉が最終ラインでボールを回収し、左に持っていく。見木→椿→日高とオートマチックに繋がって深くまでボールを送ると、日高から見木を経由して福満へ。福満は見木とのワンツーでPA角からPA内に侵入。抉って城和が出てきたのを確認してマイナスのボールを送る。ファーで走り込んだ田中が滑り込んで合わせた。一度は櫛引が身体に当てるがこぼれたボールが田中の前に転がり、押し込んだ。
 福満がバイタルで持ったところに誰もアプローチできなかったことで、結果として選手を押し出すのが遅れて後手後手で田中が浮いた。

 こうなると、どうやっても追いついたチームの方に勢いがあるし、そういった流れに抗うのは難しい。
 ウチは平松→武、中塩→畑尾、風間→内田のカードで勝ち越しを狙う。一方で千葉も田中→呉屋、小森→西堂で攻勢を強める。

 87分、千葉のゴールキックの流れから呉屋が落ちてきて何とかボールに触れ、セカンドも福満が回収。ここでアマと酒井が前に出てしまったのでスペースは広い。でもって岡本がボールホルダーにチャレンジしようと数歩前に出た。その分だけ椿に前に出られてしまい、PA角まで持っていかれる。椿は福満とのワンツーでPA内深くまで抉り、マイナスのクロス。これを田口がシュートすると、酒井の手に当たってPK。
 プレッシャーの掛かるPKだったが、呉屋が左隅に沈めて勝負あり。

 最後にPOに出場するチームの勝負強さを目の当たりにして試合終了。

雑感

 やることはやった、それでも上回れないチームがあるのが現実。

 最後押し切られてしまったのは悔しい。前半から酒井と中塩の脇を地上・空中とも狙われていたが、それでも無失点で凌いだ。後半は先制するまではほとんど相手に仕事をさせなかったが、椿と福満に完全に流れを変えられた。

 オフェンスに関しても、もうある程度安心してミドルサードまでは見られるし、そこから先に刺せるかどうかの部分。梨誉が完全に開眼して単騎で前向けるのは良い傾向(来年とっても心配だけど)。2点目を取るチャレンジとして重心上げたままを選択したのだが、やはりそこで押し切れずに引っ繰り返された。

 悔しさはありつつも、清々しさも伴う。POに行くにはこういう試合をモノにする力が必要だとまざまざと見せつけられた。ここから何を感じるか。ここまで積み上げてきたものをどう表現するか。最後、大分の地で見届けたい。

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