雲遊萍奇 vs長崎 1-2
2節連続で雨天に見舞われてスキップしたあとの首位町田を迎えての前節。立ち上がりは相手に決定機を作られたものの、相手の圧力に臆することなく中に付けて1stプレスの矢印を折って前進。終盤にはあわやという形をいくつか迎えるなど、上位にも互角に戦った。地力は確かにあるからこそ、上位に喰い付くためにはボックス内での最後の仕上げが重要。
好調を維持したまま挑む今節の相手は長崎。未だに公式戦で一度も勝ったことがない鬼門長崎の地。
カリーレ体制2年目の今シーズンは開幕直後こそ大きく転んだが、フアンマが復帰したあとは一気に上昇気流に乗った。前線に強力なポイントが出来ることで、安定感が増した。夏のマーケットでネルシーニョに干されていた中村慶太が復帰、ギリェルメやジェズスといったブラジル人も加入。さらに前線の火力を強化しつつ、カイオセザールを筆頭とした中盤が試合をコントロール。波に乗ると手は付けられないし、一方で打算的に時計の針を進めることもある。
パワーを掛けられるとウチも厳しいのは確か。ただ、トランジションでは上回れる可能性も高い。相手の1stプレスを素早く突破し、前向きにプレーする時間を増やして勝機を見出す。
メンバー
ウチは前節から1枚変更。梨誉→武。武は復帰後初、実に10試合ぶりのスタメン。
対する長崎はドローに終わった前節大分戦から1枚変更。秋野→澤田。ジェズスをアンカーに置き、中村がIHに。
前半
立ち上がりから長崎が結構強度を高めて前に来る。ウチも間を通して上手くプレス回避はできているが、前進は簡単にはさせてもらえない。
12分、長崎のチャンス。酒井から武への楔が合わず、今津が自陣浅いところで回収して櫛引に付けると、櫛引はコンドゥクシオンで敵陣まで持ってくる。1stプレス隊の脇を突いて運び、SHが牽制に来たところで外に開いた増山に繋ぐ。増山は縦へのスピードで竜士を振り切ってクロス。これにファーでセザールがエドの上から合わせたが城和がゴールライン手前でクリア。
ポジトラしかけてのロストだったので陣形整理が難しかったが、櫛引に出てこられるとウチは捕まえにくい。長崎とすると竜士のポジショニングも頭に入れての右からの仕掛けだった。
直後、ビルドアップの過程で中塩のクロスに中村が合わせるもゴール左に逸れる。中塩の浮かせたパスがやや低くなり、ドンピシャで頭に合った。
このシーンにもあるように、長崎はフアンマ・中村・セザール・澤田の4枚で3CB+アマを完全に掴みに来る。断固としてビルドアップでの前進を許さない姿勢。
特に中村とセザールの両IHはだいぶ厄介。モビリティがあるので、自陣でボールを受けて自分で運び、ワンツーなどを挟みながらテンポを作ることに長けている。しかもウチのCMFの外側をウロチョロするのでSHがプレスバックを要する。
16分も中村を起点に長崎のチャンス。中村が1stラインの脇でジェズスからボールを引き出し、そのまま敵陣まで侵入。竜士が寄せに来たタイミングで外の増山を使いつつ、自らは風間との距離を保ってリターンを受ける。左にオープンの状態でボールを持ちながら、右アウトで澤田に縦を刺してスプリント。澤田はターンしようとして上手くいかず城和がボールを外に弾こうとするが、そのこぼれを中村が再び右足アウトでシュート。綺麗な弾道だったが右に逸れていった。
ボールを動かされるポイントもタイミングも理にかなっていて、取りどころがない。何でこんな良い選手、ネル干してたんだよ…(スぺ体質だったこともあるけど)。
20分も長崎のシュートシーン。セザールが武の脇のスペースでボールを受けて前進して、外に張った米田へ。米田→セザール→中村とやや大き目なトライアングルでバイタルまでボールを持ってくると、中村はターンして右のギリェルメへ。ギリェルメはワンタッチで右サイドを駆け上がった増山に流し、増山もワンタッチでクロス。これは城和が跳ね返すが、セカンドをギリェルメがアバウトなシュート。これも城和に当たるがフアンマの足元に転がり、左足を強振。しかし、コースを切っており、櫛引が落ち着いて対応。
長崎は両SBを高い位置取らせてウチのSHをピン止めしておいて、1stプレス隊の脇にIHが降りてきて、そのスペースを自由に使おうとしてきた。かといってそのスペースを消そうとすると、ジェズスからSBに対角のパスが簡単に通ってしまうので悩ましい。
28分、長崎は低い位置でボールを回し、左外の米田が持ったところで1つ中に運んでフアンマ目掛けて長いボールを使う。フアンマは懐を上手く使って前を向き、城和を引き付けてからオーバーしてきた中村へラストパス。中村は柔らかいファーストタッチから左隅を狙いすましたが、僅かに逸れていく。
短いボールを警戒しようとすると、シンプルにフアンマをターゲットとした攻撃をしてくるので、ラインコントロールも一筋縄にはいかない。どちらかに選択肢を狭められれば楽だが、それができないからこそ、長崎がここまで勝点を積んでいるのだろう。
30分過ぎからウチも少しずつ高い位置でビルドアップができるようになってくると、38分にシュートシーンを作る。3CBがハーフウェー手前で回し、中塩がコンドゥクシオンでCMFと同じ高さまで運び、風間に送る。風間から酒井への横パスはカットされるが城和が拾って酒井に付ける。酒井から大外の佐藤に繋がると、エドのオーバーラップを囮にカットインしてインスイングのクロス。そのボールにニアで武が反応してコースを変えたが、GKに弾かれる。
この試合初めてビルドアップからシュートまで持っていった。やはり3CBの距離感が保たれていると相手のプレスに捕まらずに前進できるし、佐藤とエが関わることも効果的。
その後も長崎にボールを握られる時間が続いたが、最後の局面で跳ね返し、スコアレスを保って折り返す。
後半
後半も同じ展開になるかと思いきや、いきなりスコアを動かす。
48分、相手陣内で圧力を強めミスを誘って得たCK。風間のインスイングのボールに中央で城和が競ると、こぼれた先にいた佐藤が冷静に左足でコースを変えてゴールに流し込む。
風間のボールも見事だし、酒井と城和にフアンマとセザールのサイズ感のあるマーカーが付いたが、モノともせず競り勝った。GKが間合いを詰めてきても落ち着いて決め切った佐藤も流石。ジェズスが残っていたにもかかわらずオフサイドをアピールし続けるGKを尻目に、佐藤はアウェイゴール裏に向けてエンブレムをアピール。何度でも見たいパフォーマンスである。
やや劣勢に見られた中でワンチャンスを生かして先制に成功すると、その後もトランジションで深いポイントまでボールを進められる機会が増える。
また、前半の終盤からその傾向はあったが、ややIHの連動性がなくなっていた。特にセザールが捕まえられなくなっており、フアンマが単独で神風プレスを掛けることが増加。また、フアンマが自制していると今度は真ん中が空いて城和が持ち運ぶ。そんなこんなで、ボールを自分たちで動かせる時間を作れるようになった。
58分、ウチはいつもより早めに2枚替え。竜士→山中、武→梨誉。
長崎も62分、澤田→ジョップで最初のカードを切る。
ジョップが入ることで長崎はボールを収めるポイントが多くなり、セザールが幾分高い位置まで来るようになる。ジョップは上背もあるが、フアンマよりも機動力があるのでシャドーっぽくも振る舞っており、やや捕まえにくそうな雰囲気。
64分、長崎が力技でタイスコアに戻す。増山がロングスローの構えから岩上フェイクでジェズスに付けると、ノープレッシャーでクロス。最初のヤマを越えると、大外に流れていたフアンマが左足を強振。鋭いシュートは櫛引の股下をすり抜けてゴールへ。
パワーこそ正義と言わんばかりのゴール(物理的にも経済的にも)。半分事故のようなものだが、果たしてジェズスへのケアをする術があったかは難しい。まあ、フアンマの前の山の部分で思うところはあるけど、今のカテゴリではどうにもならんぜ。
失点直後はバタついていたホームチームだが、同点に追い付いて精神衛生上だいぶ回復した様子。明らかにチームが活性化した(やる気が上がった)。
66分、長崎が左サイドでジェズスがボールを持って敵陣に入る。米田が大外のレーンから1つ内側にダイアゴナルランでスペースを作る。そのスペースにギリェルメが入ってボールを受けてジェズスにリターン。ジェズスは今度は中央のセザールに付けると、フアンマへの斜めの楔が綺麗に入る。フアンマはボールコントロールしながら前を向くと、城和と中塩の間を通す。そこにジョップが斜めに走り込んで右足を振る。腰が回っており、しっかりボールにインパクトしていたが櫛引が対処。
69分、ウチはエド→北川、佐藤→内田の2枚替え。純粋な3CBと中盤をトレスにする。北川と山中がWBの役割を担う。中盤の枚数と相手と同数にして、IHが浮くのを防ぐことを考える。
73分、ウチの決定機。得意のスローワーチェンジからの素早いリスタートで中塩からPA内の平松に通ると、平松は相手を背負いながらキープして時間を作る。外側に走り込んだ山中に平松からパスが出ると、山中は左足でファーへクロス。そこに北川が走り込んでヘディングで合わせたが、GKの正面に飛ぶ。
スローインから手数こそ少なかったが、多くの選手が絡んでスペースを作ってフィニッシュまで持っていった。最後の北川の走り込みも迫力があったものの、飛んだコースが良くなかった。
76分、長崎は増山→奥井、中村→松澤の2枚替え。
推進力を持つ松澤の投入により、長崎はギアが一つ上がる。高い位置を取らせたい北川のところに当てられるので、どうしても守勢にならざるを得ない。徐々にセカンドが拾えなくなる→ラインが押し上げきれずに長崎が高い位置でボールを持つ回数が増える。
79分、山中から梨誉への縦パスが繋がらずカットされ、そのまま右の億位に渡る。奥井は前方のポケットにボールを持ち込み、左の米田へ平行のパス。米田は遠い位置から思い切って狙ってきた。シュートは枠を捉えたものの櫛引がパンチングして事なきを得る。
それに続くCK。ギリェルメのインスイングのボールにファーで今津が合わせたが僅かに枠の上。
81分、ついに長崎に逆転のゴールが生まれる。何度か押し込まれても何とか耐えてクリアするも繋がらず長崎のフェーズが続くといった展開が何度か繰り返される。今津がクリアを拾って梨誉を背負ってファウルを受ける。ウチが息を突く暇もなくクイックで始めると、ギリェルメ→フアンマ→今津と左で崩し、今津の柔らかいクロスにジョップがバイシクル。櫛引が反応するも弾き出せずゴールに吸い込まれた。
シュートはノーチャンスだったが、そこまでの過程で防げる部分があったのは悔やまれる。リスタートで明らかに後手を踏んでいたし、結局そのままスルスルとウチの右サイドを突破されてしまった。
ウチは最後にシラを入れて同点を目指し、ATにはシラや山中にシュートチャンスが巡ってくるがGKに抑えられた。
上位との差を詰めるべく臨んだ6ポインターだったが、1-2で終了。
雑感
久しぶりに敗戦の悔しさを味わったが、やはり良い気分ではない。この悔しさを糧にしなければならぬ。
ディフェンスをする時間が長かったが、押し込まれても要所を抑えて凌いでいた。フアンマのパワーにも上手く対処していたが、2つの失点のシーンはどちらも出足が遅れ、押し切られた。IHへの対応も後半はかなり修正できていたし、そういった部分の収穫は見られたから、次に繋げる。
オフェンスは、セットプレーで一刺し。その後もサイドを有効に使いながらゴールに迫る場面を作った。マンツーマンで付かれた時になかなか前進が難しいことは分かったが、その際の戦い方は再考が必要。必ず別のスペースが空いてくるはずだからこそ、そこに届けるための繋ぎ方を整理したい。
外国籍選手を多く抱え、いざとなったら札束で殴るような相手にも打ち勝たなければ上には行かない。1つまたスタンダードを示してもらったからこそ、より上を目指してまた日々取り組むのみ。