起死回生 vs大宮 1-1

 先週末に山形に思惑通りのゲーム展開でやられ、連休最終日は敵地でヴェルディに無惨な敗戦。先制してから30分過ぎまでは勝利に値する内容であったが、負け惜しみでしかない。長崎戦と同様、立て続けに迎えた決定機を仕留められず、逆にワンプレーでリードを失う悪癖。結果的に同点のプレーで試合を壊したように見えるが、その数分前から既に流れを手放している感は否めない。足元にパスを出すことに拘った1失点目、ロングスローにCB2枚上げて後ろが手薄になった2失点目。結果論だが、どちらもリスクマネジメントが欠落しているように見受けられた。ピッチ内での判断なのか、ピッチサイドでの判断なのか、どちらにしてもゲームコントロールができていないのは今シーズンここまで明白である。

 芳しくない状況が続く中での今節の相手は大宮。こちらもウチと同等、もしくはそれ以上に状態が悪化している。毎年昇格候補に挙げられながらも機を逸していると、ついに昨シーズンは全く昇格争いに絡めず低迷。怪我人が多発した不運な面はあったが、シーズン終了後に高木氏が退任。後任に大分でHCを務めていた岩瀬氏を招聘。ポジショナルプレーの理解が深く、ビルドアップに定評のある柏ユースでの指導で実績を残したほか、2018シーズン終盤は空中分解した柏のトップチームの暫定監督に就き、降格は免れなかったものの2連勝でネルシーニョにチームを引き渡した。一方で、シーズンを通して指揮を執る経験がなく、シーズン前はそこを不安視されていた。いざ開幕すると、下馬評以上に低迷しており、前節終了時では最下位に沈む。志向するサッカー自体は素晴らしいものの、プレイヤーに落とし込みが上手くいかず手こずっている。柏の下部組織に関わっていた指揮官は往々にして同様の問題に苦しむ印象を持つ。吉田氏、下平氏ともに柏ユースからトップの指揮官に就任したが、思うように結果を残せず退任となった。掲げる理念は素晴らしく、それに共感するように他チームからのオファーがあるものの、やはり短期政権に終わっている。吉田氏は新潟→甲府を経てシンガポール代表監督、下平氏は横浜FCをJ1昇格に導いたものの今シーズンはスタートから躓き、先日解任された。選手からは慕われており、やろうとするサッカーは共感を得ているが、目に見えた結果を短期的に求められるプロの舞台では、レイソル下部組織出身の指揮官が成功しているとは言い難い。(因みに、城和はユース時代に下平氏の指導を受けている。)
 ただ、J1時代からクラブ体質が危ういことを考慮すると、誰が監督をやっても大して変わらない気もしないでもない(小声)。中途半端に予算規模の大きいクラブの行く末は千葉県のチームが示しているが、同じような道を歩んでいる。

 規模は違えどチーム・クラブ双方で明日は我が身な部分もある。戦い方の根底は似通っている部分、どこまで現実的に試合を進められるかが結果を左右する。

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 ウチは前節から3枚変更。松原→慶記、広大→川上、昇偉→ジャス。古巣戦となる慶記が2試合ぶり。川上も肩が大事に至らず2試合ぶりに復帰。契約上昇偉が出場できないこともあり、ジャスが今シーズン初スタメン。

 対する大宮はショッキングな逆転負けを喫した新潟戦から2枚変更。石川→山越、頸椎捻挫により前節負傷退場した菊地に代わり中野が入る。

前半

 コイントスで大前が勝ってしっかりエンドチェンジ。ここが試合の1つのキーポイント。狙い通り風下を選択したことで、前半は攻撃を受けるのは想定内だという共通認識はチーム内にあっただろう。

 とはいえ、それで守れてたらこんな順位にいないわけで。立ち上がり間もない8分、黒川と馬渡のレーンを入れ替わる動きに対応できず、さらに中央の三門も経由しながら黒川が斜めにボールを運ぶ。ハスキッチを囮に、奥の中野にラストパス。デザインされたプレーで確実に1点ものだが、中野のシュートがミートせず、慶記が足先で対応。何とか切り抜ける。

 ボールを大宮が握るのは承知の通りだが、ウチも無抵抗ではない。サイドの深い位置まで持っていく場面をいくつか作る。また、左サイドで持った中山からジャスまでの長いボール、逆にジャスから1個飛ばすパスが何度か供給されていて、今までにあまり見られない展開だった。

 ウォーターブレイク明けから、大宮が少し立ち位置を変えてきて、ボールと逆サイドのSHが前線と同じ列に並ぶようになった。元々ボール保持時は三門を落とし、3-5-2の形だったが、3-4-3に近いイメージに。それに伴い、ウチのSHの撤退が必要なのだが、ここ最近のチーム全体のネガトラの遅さが垣間見え、黒川or小野に楽に抜け出され始める。
 また、SB(WB)がSHを追い越してハーフスペースに入ることも多く、それにウチのセントラルがサイドまで釣り出されることも。
 しかし、肝心の斜めの仕留めるボールがなかなか入らず、思ったほど脅威ではなかった。ヴェルディ戦、新潟戦ともCB間を通すパスで崩していたのでアラートしていた部分だと思うが、それ以前のパスの出所が大宮になかった。

 風下では及第点となる0-0で折り返す。

後半

 後半開始早々に大宮にアクシデント発生。クリャイッチが大きくクリアした際、右足の膝が内側に入り負傷。ボールをピッチ内に残そうと、軸足の向きを体の向きより極度に左側に向け、腰の回転で蹴ろうとしたが、蹴った段階で上半身と下半身のバランスが完全に崩れていた。プレー続行は不可能となり笠原と交代。昨年は野戦病院と化した大宮だが、2試合連続で負傷者によって最初のカードを切ることになる。ただ、代わりに出てきたGKが当たるのは往々にして起こりうる。チームとしても集中を高める要因となり、却って隙が生まれにくい。

 52分、左サイドのアーリークロスが流れたところを黒川に拾われると、カットインから左足でフィニッシュ。クロスへの準備で慶記が右に1歩動いた分、ニアが空いたが冷静に抑えた。

 攻勢を掛けたいウチは、65分に勝負に出る。ジャス、そしてカードをもらった平尾の両SBを下げ、光永と天笠を入れる。ミツは今シーズン初出場、アマはこれがJデビューとなった。平尾の次節有給が決定したため、退場のリスク回避と試運転の側面もあっただろう。サポーターが待望していたミツの起用、秘密兵器アマの出場でスタジアムは活気づく。

 70分、ミツに見せ場。中央の大前からミツに展開。ミツは隣のレーンのKJに渡すと中に急加速。再びボールを受けて、クライフターンで相手を剥がすと果敢にシュートを放つ。角度がなく、決めるのは難しかったが、積極的な姿勢は2019さながら。

 続く71分、大前のCKをニアで川上がそらすと、ドンピシャで内田が合わせる。しかし、笠原がビッグセーブ。さらに、こぼれ球を稔也→ミツと繋ぎ、再度クロスを上げアマが合わせるも再び笠原が立ちはだかる。

 GKの活躍で流れが変わる予感がしたが、長崎・ヴェルディと決めるところ逃してやられてるので覚悟はしていた。
 案の定、76分に失点。自陣中央で大前がロックオンされて小島に掻っ攫われる。マイボールにしたところで大宮に即時奪回されたため、ウチはトランジションが間に合わない。それでも畑尾-川上-アマの3枚が最終ラインに残っており、3on3で数的同数だったが、ボールホルダーへのチャレンジを誰がするかが曖昧になった。ハスキッチのダイアゴナルランにも惑わされ、誰も寄せ切れない隙に、小野に左足を振り切られた。撃つ前に2つモーションでフェイクを入れていたのも上手く、小野にあの間合いを空ければシュートを撃たれる。難しい対応だったが、チャレンジ-カバーの修正は必要。加えて、中盤に落ちた大前が狙われる事案は頻発しており、今回遂に失点に直結した。個人戦術の面もあるが、ロストの仕方が良くなく、球離れをもう少し良くしないとならぬ。

 また見慣れた展開での敗戦が現実味を帯び始める。79分、岩上のクロスを大前がダイビングヘッドで合わせるも、前節に続きポストにヒット。大前さんは東照宮でお祓いしてほしい。

 泥沼4連敗が濃厚となっていたが、俺達にはATの男がいることを忘れていた。90+2分、大前のインスイングのボールに合わせたのは稔也。シュートは笠原に触られ、三門に掻き出されたがゴールイン。本領発揮した稔也は、何だかんだで3試合連続ゴール。また、ちゃんとアシスタントがジャッジしてくれたが、もしものこともあるので、最後にちゃんと白石が押し込んだのも大事。

 同点にした勢いそのまま、逆転に結び付けたかったが時間が残っておらずドロー決着。

雑感

 相手のチーム状況や勝ち切れない点を考えると手放しで喜べないが、それでもここ数試合よりはポジティブな要素が多い試合だった。

 SBを代えた60分過ぎから様相が変わったが、どちらのセットも良さを見せていた。平尾のハードワークは今シーズンずっと効いてる分、次節はゆっくり休み。ジャスは中盤で観たい思いはあるものの、SBも器用にこなす。クロスのフィーリングを合わせるのは苦労しているようだが、囲まれても簡単にロストしないボールコントロールは見事。
 ミツは何で干されているのか改めて疑問に思うほどの出来。守備面の要求を満たしてないって評価だったらしいんだが、それを補って余りあるほどの攻撃性はウチに今必要な武器。貴重なレフティを左サイドに置くことで、クロスの精度が増すだけでなく、ビルドアップの出口にもなる。ミツは京介の下でファーストタッチのトレーニングを欠かさず行っていたことから、加入時に比べ劇的にボールコントロールが良くなった。あれだけこだわる意識は、必ず活きるし、活かすべき。
 アマもポテンシャルを示した。デビューでも物怖じする様子なくプレーしていたように見受けられた。プロの強度に順応できるまでに多少時間はかかるかもしれないが、パススピード等は十分。これから出場機会が増すだろう。

 そして、忘れてはならないのは選手兼サポーターの背番号19である。自分でボールを持って局面を打開できる稀有な存在の白石は、起爆剤には打ってつけだ。同点にした後の92分58秒過ぎ、相手を背負いながら中央でボールを受けて反転しながら前進したプレー、94分59秒過ぎのサイドから中央まで一気に切り裂いたプレーは胸が高鳴った。自らの推進力を用いてチームに縦の意識を持たせることができる。やっぱり長い時間見たい。

 守備時の課題は、失点シーンに大体集約されている。ロストの仕方は要検討。

 最後の稔也の1点を生きるも殺すも次節以降に懸かってくる。平尾は有給、あとは岩上の状態も少し気掛かりだが、今節のプラス面をどこまで継続できるのか。ヤマハを静まり返らせろ。

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