不昧不落 vs山口 0-1

 ショートカウンターとインテンシティで上回ろうとするいわきに対しボールを持たせつつ、セットプレーでゴールを奪い、最後は後ろ5枚にして構えて3ポイントを取った。チームとしても勝点3にこだわった一戦で勝利を手にし、クラブ目標に到達。試合後には指揮官から上に向かってチャレンジするとのコメント。さらには、クラブからも「プレーオフ」と明言した声明も発表。今までネガティブなお気持ち表明は何度かあったが(落ちます・金ないです等々)、まさかポジティブな内容のリリースが出るとは…。下を気にせず、上に向かって戦うことは明確となった。

 1つでも上に向かう決意を固めて乗り込む今節の相手は山口。長崎とか金沢とかとともに、未だに一度も勝利していない地、山口。
 名塚体制3年目でスタートした今シーズンは、序盤から低空飛行を続けながらしぶとく勝点を拾っていたものの、ウチとの試合の敗戦を機にGMとともにカット。暫定監督として中山元気氏が数試合指揮した後、まさかのフアンエスナイデル氏を招聘。玄米と味なしパスタを食べているかどうかはさておき(そもそも米すら食わせない監督が名古屋方面にいるとかいないとか…)、就任直後は手堅い試合で着実に勝点を積む。攻撃に全振りしてエンタメ要素しかなかった千葉時代とは打って変わったゲームコントロールにJ2フリークたちは困惑。リスク度外視の超ハイラインにスピードに難のあるCBを置いてぶっちぎられるのを見るのが第三者としては一番面白いのだが、数年間スペインに帰っているうちに中身が変わったのか。
 しかしながら、フクアリ凱旋となった千葉戦で数的不利になったとはいえ守備がぶっ壊れると、徐々に下降線。これまで4-1-2-3を採用していたが、3-1-4-2に変更し、WBで幅を取る意識を強める。が、水戸との下位直接対決に敗れると、翌節ヴェルディ戦ではオーソドックスな4-4-2を使ってきた。一方で、前節磐田戦では3-4-2-1にしているので、対戦相手との兼ね合いで変えてくるっぽく、今節の出方も読めない。
 結局のところハイライン・ハイプレスは(千葉時代ほど突飛ではないとはいえ)健在である。佐藤・成岡・神垣といった中盤の選手は誰が出てきても戦えるし足元の技術も確かで厄介。ただ、最も自由を与えてはいけない矢島がここ2試合メンバーにすら入っていない。怪我のリリースもないため、原因は不明。また、1列前の池上の対応も毎回手を焼いている。多彩なボールコントロールとハードワークはいつも脅威。加えて、前回対戦時もスピードに乗せると怖さがあった吉岡と、名前の聞いたことある田中稔也っていう方が両WB。WBでボールを持てるプレイヤーを配置し、ボールを落ち着かせるポイントを作りたいのだろう。

 苦手な相手なのは間違いないが、過去の戦績など関係ない。まずはハイプレスを越えられるかが鍵となる。そこで押されると間違いなく苦しい。それをクリアすると、サイドで時間とスペースを得る。対ヴェルディ戦の情報によれば、サイドの後方のスペースがやはりウィークとなり、そこからニアゾーンを付く形でヴェルディは繰り返しチャンスを作った。守備時はWBをケアしつつハーフスペースを締め、トランジションでWBの背後を使うのが大きな狙い。いわき戦もハーフスペースのランニングに連動して対応しており、この試合でも継続していきたい。あとはバイタルでの精度が求められる。

メンバー

 ウチは前節から1枚変更。田頭→エド。前節メンバーから外れたエドが1週間でスタメンに帰ってきた。

 対する山口は引き分けた磐田戦からノーチェンジ。上位相手に引き分けて手応えを得た3-4-2-1を継続。

前半

 立ち上がりから山口はやはり前がかりに掴みに来た。ウチはリスクを背負うことなく長めのボールを交えて観測気球を飛ばす。
 山口が縦に速くシンプルに攻めてくるならば対応が楽なのだが、そんな突飛なチームは限られているので、セカンドを回収した後にしっかりとボールを繋いでくる。ウチの重心が上がっていればヘナンのところに佐藤を当ててCB3枚を埋められるものの、山口のLWBの稔也がかなり高い位置を取るので佐藤がそこをケアせざるを得ず、ヘナンでボールを落ち着かせるポイントを作った。また、佐藤がアンカーのように落ちてきて、池上と成岡がIHっぽく振る舞うような場面も見られる。基本的にはアンカーを1stラインで挟み、成岡にはアマが牽制かける様子。ただし、上記のIHっぽい立ち位置に深追いするわけにいかず、宙に浮く場面も少々。

 ウチは佐藤とエドが内側を取るローテーションを使っていたが、山口はヘナンが兎に角大外の佐藤を潰すことをハッキリしており、深追いしてでも前を向かせなかった。ヘナンを引き出して空いたスペースをっていう意図は持ちつつ、稔也の守備での貢献度の高さを知る身とすると、そう簡単にはいかないのも理解している。

 19分、深い位置でのボール回しを余儀なくされ、櫛引からグラウンダーのフィード。が、これをハーフウェー手前でキムボムヨンにカットされると、GKのいないゴールを直接狙われる。シュートは枠に飛んでいたが、城和が頭で何とかクリア。
 直後のCK。池上からのボールをニアで梅木が逸らしてコースを変え、吉岡の裏からどフリーの稔也がヘディングで合わせたが、枠を超える。シュートミスに救われ、且つオフサイドだったが、完全に相手の思い通りの形となった。ヘナン・河野・梅木といったターゲットをニアに走らせてウチのゾーンをずらしつつ、そこを越してファーで勝負という理想的なプレーだっただけに、九死に一生を得た。

 32分、山口に決定機。陣形が整えるためにプレスに行かずブロックを敷こうとしたところ、キムボムヨンから吉岡にフィード。これは中塩が跳ね返すが、前が回収して池上へ。池上は中を確認すると、ファー目掛けて鋭い対角線のクロス。このボールにDFラインの裏に抜け出した稔也がダイビングで合わせたが枠に飛ばず。
 WBのケアで構えようとすると精度の高いフィードが降ってくるので対応に苦慮する。重心が上がらないのでセカンドを拾われる位置も低くなるし、限定できないままズルズルと。

 35分も山口のチャンス。ビルドアップ時にまた高い位置まで山口が捕まえに来ると、酒井から佐藤に縦が入ったところで成岡に潰される。河野がこぼれをPA左角で拾うと、その背後からオーバーしていった稔也にスルーパス。稔也が左足ワンタッチで鋭角のマイナスを入れると、池上が左足でフィニッシュ。崩していたが、シュートはミートしきれず。
 どんどんと圧力を正面から受けてしまってロスト位置が低くなっていく悪循環。何とか耐えてはいるが、情勢は結構厳しそう。

 43分にも山口。ゴールキックで櫛引から平松に繋がるが、竜士への落としが合わずに佐藤に回収される。竜士が戻れないため空いたスペースを吉岡が駆け上がると、そこに佐藤からボールが届く。風間がチェックに行くが、ライン間に立つ梅木に斜めのパスを通されると、梅木は反転して左の河野へ。フリーとなった河野は胸トラップしてから右足を振り抜く。しかし肝心のシュートは上空へ。
 山口のポジトラでそのまま押し切られた。ロストの仕方がよろしくなかったが、オレンジ色の選手の方が明らかに立ち位置が整備されており、ウチはどうしても後手に(ポジトラ→ネガトラだから仕方ないといえ仕方ないが)。

 自陣でプレーさせられる時間がかなり長くなったが、何とか0で我慢して前半を終える。

後半

 後半になっても戦況は大きく変わらず、いきなり左サイドを突かれて肝を冷やす。その後、一時的に山口のビルドアップを高い位置でカットできるシーンが続いたが、バイタル手前でのパス精度を欠いてシュートに持ち込めず。

 51分、前からのプレスによりビルドアップに綻びが生じ、櫛引のパスが河野に引っ掛かると、河野から成岡に渡り、左足でシュート。ボールは櫛引の脇を通り抜けていくが、再び城和がライン手前でクリアしてチームを救う。

 57分、ウチは佐藤→北川、エド→田頭の2枚替え。山口も60分、河野→五十嵐、稔也→野寄の2枚替え。

 選手交代を行っても大きくペースが変わらない中、69分に遂にホームチームが試合を動かす。山口最終ラインのビルドアップに平松と梨誉が捕まえに行くが剥がされると、キムボムヨンがロングフィード。河野と五十嵐の2枚が裏に抜け出すと、五十嵐がボレー。これは何とか櫛引が弾いたが、こぼれ球にいち早く反応した河野が反応してプッシュ。攻め続けた山口がようやく先制に成功。
 重心を上げたところで裏に1つ通されてDFライン全員が後ろ向きにプレーしなきゃいけない状況に陥った段階でかなり苦しい。何とか1発目は防いだが、やはり前向きにプレーするオフェンスの方がセカンドに反応しやすいのは間違いないし、櫛引と城和の距離感などを踏まえても、その最後の局面だかをクローズアップされるべきとは思わない。ただ、一連のフェーズにおいて明らかに山口が上回っていたのは事実だし、試合を通して取り組み続けたことがようやく結実してのゴール。

 70分、失点直前から準備していた風間→内田、竜士→シラの2枚替え。72分、山口は池上→神垣。
 まずは追いつくために前にパワーを使いたいわけだが、如何せん前線にポイントが作れず足掛かりがない。

 それでも78分、1つゴール前で形を作る。山口陣内で前のコントロールが大きくなったところを梨誉と平松の2枚で囲ってマイボールにすると、梨誉が身体を張ってシラに渡す。シラはライン際をスピードに乗ってボールを運び、前の背後のスペースに流し、そこに平松が斜めに走り込んで深さを作る。ライン際まで抉ってマイナスの速いボールは触ればゴールという状況だったが、中には合わず。
 直後のCKではシラのボールに酒井が合わせるもGKが余裕を持ってキャッチ。後ろに下がりながらだったため、シュートに勢いがなかった。

 82分、梨誉→武で最後のカード。無理やりでも前に圧力を掛けてボールを奪う位置が少しずつ高くなるが、そこから先の手立てがない。

 最後は兎に角ボールを前に付けて押し込もうとしていくが、やはりゴールが遠く。ビハインドを跳ね返せず0-1で終了。

雑感

 試合を通して山口に上回られた。WBの幅・ハイプレス・セカンドの回収等々の要素を山口が有効に使っての勝利。ウチとすると不完全燃焼のまま90分が過ぎていった。

 前半の戦いを見ると1失点で終えたのは良く耐えたと思うほど攻め込まれた。ヘナン→稔也、前or佐藤→吉岡の斜め外へのパスに対して打開策がなく押し込まれたのが辛かった。後半は前に掴みに行って蹴らせようという意図を持っていたようだが、今度は蹴らせたボールで被弾。上手くいかない試合はこんな展開になりがち。今までも悪いなりに誤魔化してまとめる試合があっただけに、こういう試合があるのも不思議ではない。
 いつも山口戦は池上が浮いて苦労するが、色々なところに顔を出すのでやっぱり誰が見るか難しくなった。中に入ってくるからケアしようとして、その外側を吉岡に使われての前進。山口の出来を認めしかない。

 オフェンスは沈黙。ほとんどPA内に侵入することすらままならなかった。押し込まれていたので仕方ないが、前でボールを落ち着かせるポイントがなくてロストしてまた守勢に回るというサイクル。ボール受けてもサポートいないしなってシーンが多い。
 属人的な要素があったシーズン序盤の仕組みを踏襲するのは難しいといった各所の指摘には頷く一方で、だからといって次の手があるのかというのは別の問題。90分通してのマネジメントを考えると、単純に選手を入れ替えれば良いという判断にはならない。その辺りは指揮官も当然織り込み済みだし、頭を悩ませることになりそうだ。

 全ての試合で上手くいくはずがない。常にチャレンジすること、我を失わず何かが崩れる時は原点に立ち返ること、自分たちの積み上げたものを信じること。プレーオフと掲げたからといってそこを目指すだけで簡単にたどり着けるわけがない。歩みを止めず、上を向いて取り組むことが必要。

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