格致日新 vs金沢 1-1

 ここ数試合苦められていた立ち上がりの時間帯を乗り切り、後半は攻勢に出たものの仕留め切れなかった前節。クリーンシート・連敗しなかったことに関してはポジティブに捉えられる。あくまで勝点50積むまでは地に足付けて臨む。ただし、ここからチームが上を目指していくのであれば、前節のような内容で3ポイントを積む必要がある。そういった細部を詰めていくために、また日々精進。

 前節後半の流れを活かそうと挑む今節の相手は金沢。鬼門石川西部。新スタジアム建設が進んでおり、来シーズンから使用される予定。
 金沢は今年もヤンツー氏継続。もはや説明は必要ない。ヤンツー式マンツーマンは不変。J2の中でもスタイルが確立しているクラブの1つであり、安定感は抜群。基本的には各々の1vs1の勝負で上回ってのポジトラで一気に仕上げる。今シーズンから加わった加藤もチームにフィットし、ゴールを重ねる。こんなに良い選手、どこにいたのだろうか。RSBには小島という高性能の選手もようやく定着してきた。クオリティの高いこの選手もどこでプレーしてたのか。

 未だに一度も勝っていない石川西部。昨シーズンの金沢戦は同一サイドに寄せられて窒息した。人に付いてくる特徴を逆手に取って、上手く相手を釣ってスペースを作りたい。また、今シーズンは狭いスペースでも打開できるからこそ、自信を持ってボール保持も可能。その際は、ロストにだけ細心の注意を。

メンバー

 ウチは前節から1枚変更。彰人→北川。彰人はボルトに当たって響いたとの試合後コメントがあったが、状態は不明。北川のスタメンは順当だし計算できる一方、試合途中でゲームの流れを変える役割を誰が担うか。ベンチには奥村が3節千葉戦以来の久々に入った。

 対する金沢は敗れた清水戦から2枚変更。孫→井上、奥田→石原。奥田で縦に仕掛けられるのも嫌だが、石原でボール引き出されるのも怖い。

前半

 今日も今日とて息つく間もなくピンチを迎える。

 3分、酒井からのフィードを跳ね返されると、金沢陣内にてKJが落ちてボールを確保。アマが捕まえに行くが、KJが細かなステップで前を向き、身体を開いた状態から足だけ向きを変えて縦を刺し、石原に付ける。石原がワンタッチでKJに戻すと、ウチのCMFを近付けるようにタメを作ってから石原のスペースに流す。石原はボールを持ちすぎることなく、畑尾と中塩の間を通すスルーパス。内側から杉浦が斜めに走りボールに追いつき、難しい体勢から上手く身体を捻って平行のパス。林に酒井が付いていったため、ファーのスペースがぽっかり空いた。そこに走り込んだKJが右足でプッシュ。完全に崩された形だったが、櫛引神が降臨。完全にシャットし、その後もボールを離さず防いだ。
 KJに始まりKJで仕上げる金沢にとっては狙い通りの攻撃。KJと石原が同じ高さに立つことでウチは牽制しにくかったし、杉浦が中塩の外側を回り込むことでハーフスペースが広がり、林もそれに連動するように左に流れた。2トップでウチのCB3枚を右サイド(金沢の左サイド)に寄せてゴール前の一番美味しいところにスペースを作った。そこに動きを止めずに走り続けたKJの良さが光ったシーンだが、最後仕留め切れなかったのもご愛嬌。何とかやらすまじと櫛引が抜群の距離感でコースを消したのは見事。

 そこからはウチがボールを保持し、金沢が奪ってから素早く引っ繰り返す展開が続く。左で構築して、右の岡本と佐藤で前進するのが基本だったが、北川が上手くボールを引き出してくれるので、そこでポイントを作って山中と風間が絡んで狭いスペースで崩すシーンもあった。山中の縦はバレてこそいるが、それでもクロスまでは行く。如何せんそのクロスが中と合わなかったり、GKにストライクだったりでチャンスに繋がらず。却って白井から一発で押し返されそうだった。

 そんな中の19分、セットプレーで均衡を破る。CMFを中心にアタッキングサード手前で揺さぶり、最後はワイドに張った山中を走らせて得たCK。風間のインスイングのボールにファーで畑尾が合わせて先制に成功。
 まず風間が蹴るタイミングで畑尾がマーカーの前を取り、時間差で中塩が走り出すと、畑尾が上手くスクリーンして中塩をフリーにさせる。酒井と武の2枚がニアに走り込んで相手DFを引き寄せ、その後ろに中塩が走り込む。中塩には合わなかったが、その外側で畑尾がフリーになっていた。畑尾がフリーになったのも、北川が体を当てて相手をブロックしていたことが大きい。チーム全体でもぎ取った1点。

 15分を乗り切り、先制点も得て、ここから落ち着いてゲームをコントロールしたいところだったが、そう簡単に上手くはいかない。

 21分、梶浦がアンカーの位置に落ちてCBからボールを受け、右に流れた藤村に繋ぐ。藤村は小島へのコースを消そうとした山中の体の向きを見て、背中側を通す。ゴールライン際でボールに追いついた小島はワンタッチで低く鋭いクロス。中央で受けた杉浦がワンタッチから右足を振り抜く。これを畑尾が身体を投げ出して防ぐ。
 セカンドを拾ったアマが左の山中に渡してボール保持しようとしたが、タッチが大きくなり再度金沢のターン。藤村が石原とのワンツー、さらに小島とのワンツーでPAに侵入して深くまで抉る。藤村の低いクロスに杉浦がヒールで合わせたがゴールには飛ばなかった。
 どちらも藤村が起点となってチャンスを作り出した。そこに小島がレーンを上手く意識しながらも深さを作った。山中が高い位置を取る中で小島が前に出ていくのはリスクの伴う部分だが、中塩が内側に絞りがちになることで生じるスペースを金沢に有効活用された。それでもウチも最後の局面では簡単にやらせていない。

 24分、金沢の狙っていたカウンターが炸裂。ウチが左サイド深くでスローインの流れからブレイク。北川のヒールから山中が抜け出して、マイナスのクロス。これを武がコントロールし、アマにラストパス。これをアマが右足で振ろうとしたが、ここまで戻っていた林が先に身体を入れてカット。シュートモーションに入っていたアマの足にもかかったのでウチの選手はファウルをアピールするも笛は鳴らず。そのまま林が前を向くと、岡本がアプローチに向かうが、林は慌てずに右の梶浦へ。梶浦はハーフウェーを超えるところまで運ぶ。すると、杉浦が畑尾側から酒井側へとCBの間を通っての斜めの動き出し。その動きに合わせて梶浦がスルーパスを供給し、受けた杉浦は1stタッチでスピードを殺さずにPAに入り、最後は櫛引の左わきを射抜いてサイドネットに流し込んだ。カウンターを完遂して金沢が5分で追いつく。
 梶浦のパスセンスと、杉浦のオフザボールの動きが噛み合った完璧なカウンター。特筆されるべきはその2人だが、梶浦がボールを出す局面では4対3の数的優位を作り出しており、金沢のポジトラの速さが良く分かる。ウチとするとロストせずにフィニッシュで終えたいところだったが、致し方ない。

 失点前後から金沢は石原がRSBの位置まで落ちて、その分小島に高い位置を取らせた。山中を小島が掴まなきゃだし、KJがCMF周辺を浮遊しているから、ウチとすると出過ぎるわけにもいかずで、石原にプレッシャーをかけにくくなった。先述のように山中の後ろ・中塩の脇のスペースを使われているのは大変厄介。思えば、昨シーズンも小島が高い位置を取った後ろのスペースを相手に活用されていたし、チームとして狙っている。
 ただし、ウチも攻め手を失ったわけではない。ボール保持時のCB3枚を金沢の前線+KJの同数で潰しに来たが、そこを越すと風間とアマでボールを持てるようになる。また、全体的に左の山中と北川、風間が絡んでボールを繋ぎ、相手がスライドしてきたタイミングで右に開放する狙いもあった。岡本が高い位置を取ってボールを受けられるし、佐藤も比較的プレッシャーの掛からない状況でプレーできた。とはいえスペースがある分、岡本が意図せずにIH化して佐藤が幅を取る場面が見られた。当然その形もウチは用いているし、悪い状態ではないが、大槻監督からはあくまで佐藤が内側が取るようにという声が飛ぶ。これは時間帯の面に加えて、佐藤が藤村の脇にポジショニングすることで、武やアマとの距離感を保つ狙いがあったか。マンツーマンだからこそ、佐藤が内側に入れば外のスペースを岡本が駆け上がれる。

 39分、金沢がカウンター発動。畑尾から北川に楔を刺したが、藤村が北川の左側から寄せてインターセプトし、そのまま左のスペースにボールを送る。そこに杉浦が走ってアタッキングサードまで運び、中野状況を確認してファーに柔らかいボールを上げる。林を超えたボールに走り込んだKJが合わせたが、酒井が距離を詰めて体に当ててシュートの勢いを削ぎ、櫛引が確保。一瞬でひっくり返されるので、ロストの仕方は気を付けなければならない。

 先制したが追いつかれ、その後もややオープンな展開が続いたが、イーブンで折り返す。

後半

 後半になっても基本的には構図は変わらず。ウチがボールを保持し、金沢が奪ってからの突きの鋭さで勝負。

 ただ、ウチはボールを持つ時間こそあれど、なかなか敵陣深くまでボールを運べていない。これは金沢の球際の激しさに段々と押され、前を向かせてもらえずに刈り取られることが一因。レフェリーが比較的コンタクトに寛容だったこともあり、相手を背負った際に後ろから突かれた。これはレフェリングに問題があるというわけでは断じてないが、最初のプレー基準の部分で吹かれなかったので、金沢が上手くアジャストして強めに来た。元々マンツーマンで掴みに来る以上、目の前の相手を離すことは許されず、球際で強く当たるのは絶対。ウチとすると当たられる前に少ないタッチで剥がしたかったが、ややテンポアップできず。
 もう1つの要因は、金沢のDFラインに裏を意識をさせられなかったこと。大抵は、畑尾から岡本に対角のボールを出して最終ラインを下げさせたり、実際にパスを出さなかったとしてもFWがラインブレイクの動きをしたりしてきた。ただ、金沢は当然前から選手を掴んでくるのでフィードの精度がやや落ちる。それと、1stプレスを剥がせるとCMFのところから前方にスペースが広がる。それが活用できる分、足元の意識が強くなった。すると相手はDFラインを高く保つので、いよいよウチは縦の深さがない中で攻めなければならない。武が何とかボールを引き出そうと顔を出してくれていたが、重心が上がり切らない中ではサポートも少ない&距離が遠いので、なかなかポイントを作れなかった。

 というわけで、金沢が流れを持っている展開が続いていく。前半は落ちてボールを捌いていた石原も幾分高い位置を取るようになって、よりゴールの近くでプレーする。KJと石原、梶浦でボールを動かし、前線の杉浦や林が走り出して仕掛けるのは徹底。ウチとしても後ろ向きに走らされての対応を余儀なくされた。ただ、バイタルで決定的な仕事はさせず。

 すると、強い日差しと高い気温で両チームともやや疲弊。ウチはアマ→内田、佐藤→シラの2枚替えで流れを変えようと試みる。この交代に伴い、北川が右に入り、シラが前線。

 69分、そのシラの突破から1つ形を作る。岡本が自陣深くでパスカットし、そのまま右の1番外側のレーンにボールを転がすと、武が上手く収める。そこから2枚に囲まれて失うが、すぐに武がインターセプトしてマイボールに。武は中央のシラに渡すと、シラは持ち前の推進力でアタッキングサードまで持ち込み、左外の山中へ。山中はスピードを抑えながらPAに入り、マイナスのボールを入れる。上がっていた中塩がPAに入っており左足を振ったが空砲に。相手にクリアされるが風間がすぐにカットすると、こぼれ球が中塩の足元に収まる。足元に入り過ぎたので1つ持ち出したが、その分だけ相手に寄せる時間を与えてしまい、シュートはブロックに遭った。

 そこからはなかなかの守勢。金沢が嶋田・奥田・豊田といった曲者を次々と投入してきて前に出ようとする。結構なパワーを掛けてきてはいたが、豊田の起用は諸刃の剣であり、やや戦い方がブレたような気もする。ポイントは作れるかもしれないが、ウチとすると縦の鋭さで勝負された方が脅威だった。まあ、重心が上がり切らなかったことで結果的に裏抜けられるスペースも減ったという副次的要素もあった。

 最後はシラの火力で手っ取り早くセットプレーもらって仕留めようとしたが、流石にセットプレー2発とはならず。

 難しい地、難しい相手の金沢との試合はタイスコアで終えた。

雑感

 この1ポイントは想像しているよりも大きな1ポイントではないだろうか。思い通りにいかない時間も長かったものの、決定的な局面を作らせずに耐えた。

 守備はウチのネガトラを相手のポジトラが上回ったというのが失点時。立ち上がりも相手の連動する動きでスペースを広げられたが、そこを上手く乗り切ることができた。後半もリアルタイムで見ていた時は大分押し込まれて厳しかかった印象だが、改めて思い返すと、確かに相手に高い位置でボールを握られていたが、バイタルではほとんど仕事をさせていない。要所で相手のパスミスに救われたこともあったが、ウチが中央の堅さを見せ、サイドに追い込むことができていたと言えるのではないか。

 攻撃に関しては、相手の強かさに手を焼いた。それでも、CMF2枚で深さを作って相手を剥がすことができていたのは収穫。今シーズンはゴールキック時にチーム全体で立ち位置の高さ工夫して深さを作り出しているが、この試合では特にアマと風間で剥がしてスペースを手に入れた。今後に向けては、大槻さんの言う通り、その先のブロックの崩し方が鍵。北川と山中の関係性で深くまで侵入できることもあったが、そこからクロスを上げるとして誰が関われるか。CMFがPAまで入り込むことで厚みを生み出そうとする局面も多かった。今節の場合はその状況で引っ繰り返されて苦戦したが、押し込んでフィニッシュで終えられるようになれば、よりゴールに近付く。

 ウノゼロで推移していけば理想だが、相手に上回られずにポイントを積み上げていることも重要。ここから1を3にしていく作業は継続して取り組むだろう。すぐに結果に直結しなかったとしても、必ず積み上げたものは結果に現れてくる。
 まずはミッドウィークの天皇杯。メンバーも読めないが、1つの集団としての強さを表現しよう。

 それはそうと、金沢の7番と25番はやはり良い選手だ。久しぶりの再会だったが、新天地でもチームの中心となっている。次は敷島で待っている。

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