当然至極 vs踏み台 1-0

 アクシデントで複数のメンバーを欠く中、今シーズン1番と言える内容で3得点クリーンシート完勝。大武のロングフィード、高木の抜け出し、進の献身性等々勝因は多い。200勝というメモリアルゲームにふさわしい内容だった。

 勝利の勢いに乗って乗り込む今節の相手は隣の県の田舎のチーム。聞くところによると試合前の時点で10戦勝ちなしだとか。そりゃ、あんな試合して勝てるほど簡単なリーグじゃない。
 志向するのはアンチフットボールというより脱フットボール。カンフーの如く目の前の相手を足ごと刈り取ることを是としている。一応ストーミングという表現を用いているらしいが、実態は単なる縦ポン。ハイプレスをかけると言いながら夏の市場で長身FWを補強し、2トップでOver30の電柱タイプを並べる矛盾。神風プレスで相手のミスを待つ作戦。

 相手の状態関係なく、サッカーをして倒すのみ。

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 ウチは中2日の前節から4人変更。ジャス→勇利也、中山→内田、久保田→昇偉、高木→翔大。小島が今節はRSBスタート。昇偉のRSH起用も初だが、元々は前めの選手だし可能性は十分。

 対するチームは2-2のヴェルディ戦からメンバーなし。ミッドウィークかつ前節勝ってないのにノーチェンジ。もう打つ手なし?

前半

 この試合に入るに辺っての客観的事実として、ウチは中2日のアウェイゲーム、相手は中3日のホームゲーム。回復に努める時間が1440分+α多く確保できるスケジュール。元々こちらのチーム事情で延期になったが、このタイミングにリスケジュール。

 で、いざ試合始まってみたら、体力面の差はほぼほぼ感じない、というより相手は目が覚めないままふわっと試合に入った。

 10分、岩上の十八番であるロングスローフェイクから勇利也へ一旦預け、すぐにリターンを受ける。労せずしてフリーになった岩上は上質なクロスを上げ、北川がドンピシャで合わせるもGKの正面に飛んでしまう。
 このスローインの際、よほど怖いのかホームチームはPA内に11人いる状態。当然勇利也にも岩上にもマークがいなかった。

 直後のシーン。大武のロングフィードで重心を押し上げたところから始まる。敵陣での相手のスローイン、散々時間を費やしたが小島があっさりカット。敵のこぼれ球の処理が微妙だったが、ウチも拾いきれずゴールライン付近まで流れてしまう。柳が回収しオビへ。そこに翔大が猛然とプレスを掛ける。昨年オビのキックは脚光を浴びたが、このシーンではオビのフィードを過信するあまり、DFラインの選手が誰一人としてポジションを取り直していない。このあたりに今の脆さが顕在化している。

 13分、待望の先制ゴール。自陣左サイド、勇利也のスローインから。勇利也→勇利也→畑尾でアリバイファーストディフェンスを簡単に掻い潜る。森が内田に食い付いて無意味な場所に立ってることから、畑尾はサイドの小島へ。小島は大外のレーンで持ち上がり、ハーフスペースに上手く流れた昇偉に付ける。このシーンでも、溝渕が何もしないのに大外で外側を向いていたことで昇偉へのパスコースが生まれている。昇偉の落としは繋がらず祥にクリアされる。
 そのボールを畑尾が拾うが、ここで4-2という圧倒的数的優位。畑尾→岩上→内田でいなす。2枚しかこないハイプレスは度肝を抜かれた。内田→小島→畑尾で作り直す。畑尾から岩上へ渡ると、簡単に前を向いてまたも小島へ。小島が受けたタイミングで昇偉が半円の動きで大外のレーンへ。それに連動するように北川が顔を出してボールを受ける。そこからバイタル付近まで何故か自由に前進させてもらい、いつの間にかマークが外れてる昇偉へ。昇偉のクロスは精度を欠いたが逆サイドの勇利也が回収。勇利也がニアに低いボールを入れてクリアされるが、内田の正面にボールが来た。足元に入ったためボールコントロールが難しく、シュートまでに時間を要したのでブロックされてしまった。
 普通ならここで流れが一度終わるはず。しかし貴章の落としたボールに森が反応しなかったので内田のもとに転がる。シュートはまたも相手に当たるがこぼれ球にいち早く翔大が反応。勇利也に優しく落とすと、勇利也はワンタッチで上げる。鋭いクロスは相手にディフレクトして処理を誤ると北川が右足一閃。棒立ちでオフサイドをアピールして手を上げる5番を尻目に、ストライカーの嗅覚を活かした北川の2試合連続ゴールで今節も早い時間帯に先制する。

 18分、相手のスローインを拾った流れから進がボールキープしようとしたところ、西谷が後ろから押し倒す。ユニを引っ張り、さらにプレーが止まったにも関わらず手を出し続けた。進が気持ちを前面に押し出してアピールするのは好きだが、あまりにも目に余るファール。

 27分のシーン、翔大が後ろから行ってしまいファール、黒崎が倒れる。しかし、その黒崎のもとに誰一人として味方が駆け寄らなかった。新加入選手とはいえ昨シーズンまで在籍していたプレイヤーである。倒れた選手を起こす、そういった基本的な部分、サッカーの内容以前の段階すらままならないのが今のチーム状況、というよりこのクラブの体質が見て取れる。

 振り返ると、得点以降特段大きな出来事はなかった。強いて言えば相手の反スポが横行したくらいか。
 35分過ぎからはウチの左サイドに圧力を掛けられるようになり、何本かクロスを上げさせたが中に合わせられる雰囲気は皆無。

 ほぼ危なげなくリードで折り返す。

後半

 後半開始から進に替えて久保田を投入。進のプレス強度がわずかに落ちていたこと、久保田で落ち着いてコントロールすること、次節の起用などを考えての交代。
 対するチームも前半醜いファール以外存在感がまるでなかった西谷に替えて松本を投入し、よりボールを捌けるタイプに託した。

 立ち上がり早々、小島のクリアが相手に当たり、こぼれた場所も悪く貴章が抜け出す。昨シーズンのグリスタ同様後半開始早々に失点するのかと覚悟したが、小島が完璧なシュートブロック。事なきを得る。

 61分、岩上のCKをニアで北川が逸らし、ファーで内田が反応するもシュートを打てず。

 71分、慣れないポジションで奮闘した昇偉に替えてここまで温存していた高木を入れ、翔大をRSHに。ゴールキックの際のターゲットを増やす。
 同じタイミングで、遂に豊田に見切りをつけて谷内田を入れる。タイプが180度違う選手であり脅威になるかもしれないが、今の内容のない無秩序な試合では谷内田の良さは出ない。

 76分、勇利也に替えてジャス。後半はずっと監督に名前を叫ばれていた(多分ポジショニングをもっと高くしろという指示)勇利也だったが、週末を見据えての交代。ジャスが右に入って小島が左に回る。ジャスの堅実なプレーで試合を締めに入る。

 80分、ゴールキックから畑尾が受ける。結局最後までウチのビルドアップに対する相手のプレスは定まらないままだった。畑尾はジャスの立ち位置を気にしながら大武へ。大武はジャスに渡すとマーカーを引き付けるランニング。その動きをフェイクにジャスは前線の翔大に当てる。翔大は競り勝ち、その次のボールも北川が先に触れる。ウチはこぼれ球は拾えなかったが、柳は切羽詰まって安易に前に蹴り出す。
 それを岩上が良い位置で回収して右サイドに流す。北川が右に流れ、さらにその外には翔大がスプリントして三國を釣り出す。北川は翔大を囮にカットイン。少し前のプレーで足を痛そうにしていた影響もあり、最後のシュートはミートしきれなかったが、一連の流れは見事だった。

 88分、最後の交代は北川に替えてミツ。前節も終盤試したが5-4-1で完全にクローズする。

 立て続けの相手のセットプレーを凌ぎ迎えたラストプレー。岩上が自陣中央から持ち上がり、追い越してきたジャスに絶妙な強さのパス。ジャスはサイドに流れ、コーナー付近に向かうと思いきやワンタッチで中に切り込んでDF2人を置き去りにする。堪らず松本がファールで止めてイエロー。最後まで仕掛ける姿勢を見せカードを誘発したジャスも、キツイ時間でも運んだ岩上も流石。ファールを受けたポイントがウチのベンチ前っていうのも最高だった。全員が飛び出してアピールする姿を見て、対戦相手にはない一体感が伝わった。

 もらったFKでたっぷりと時間を使ったところでホイッスル。
 終了直後、畑尾が「よっしゃー」と叫んだ後、1人1人を迎えるのを見て泣きそうになった。

雑感

 1-0。数字以上の完勝。グリスタ初勝利。めでたい。

 前節同様サイドに長いボールを入れて攻め込むのは打開策の1つだが、相手の強度を見て地上戦でも全然攻めれる印象を受けた。
 リスク承知の捨て身のポジショニングをするSBの裏のスペースを使い、モビリティに欠けるCBと勝負するのが対隣の常套手段であり、昨季のグリスタでも七聖の突破で兎に角抉り続けた。
 しかし、この試合ではSBの立ち位置が極めて中途半端だった分、後ろにスペースがさほどできなかった。とはいえSHとSBの間は通行自由だったので、存分に使わせていただいた。

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 それに加えて、ウチのビルドアップの局面では常に6-4、GKの松原も入れると7-4の数的優位だった。29、31の出足の鈍いプレス隊を横パスで走らせ、状況判断なしで喰い付くSHが来たら岩上経由で展開すれば全部解決。
 一応岩上にも2度追いっぽい寄せは来てたが、内田の立ち位置が完璧だったので、そこを起点に組み立てられた。大武と小島の間でポジショニングすることでマークが曖昧になるとともに、常に小島が昇偉を孤立させない高い位置取りができる。ひとたび小島にボールが渡ると、今度は内田がそこにフォローに行ってボールを引き出し、逆まで展開することもあった。先制点の場面では内田の数回のシュートが起点になっていたが、この試合の内田の働きぶりはMOM級だと個人的に思う。
 進がボールを引き出す位置取りをしていたのも大きかった。そこに2トップが絡んでくることでチームとして押し込むことができた。あそこで収めてくれるのは有り難い。

 守備の局面でも大きな問題はなし。相手の攻撃が単調なクロスっていうのは分かり切っていたが、そこにも屈せず。86分のシーン以外はほぼ決定機を与えていない。
 早い時間帯に先制した分の難しさもあったが、状況判断によって立ち位置を調整していた。高木を投入した時間帯は北川を1トップに置き、右から内田・翔大・高木・久保田の4枚を置いた4-1-4-1に近い立ち位置に見えた。4枚の並びは場面ごとに多少変化していたが、サイドのボールホルダーへのアタックを徹底。剥がされた場合は深追いせず中を固める意識も共有していたので、大事には至らない。よく考えられてる。
 北川を下げた後は前節同様の5-4-1。練習でも適性を見極めていたようだが、天皇杯でミツをCBで使ったことによる副産物があった。CB足してもバランスが崩れないのが今のチームの良さ。最後にジャスの一発のキレも見せたし、守りながら仕掛けに行けることも示す。

余談

 ダービーで煽り弾幕出して負けたら、そりゃ笑いものにされるのは当然。
 相手へのリスペクトが必要だってのは尤もだが(例え相手にリスペクトできる要素がなかったとしても)、ダービーの一連の煽りは様式美に近い。別に相手の弾幕にも特に怒りを覚えなかったし。ただ、威厳のいいこと言ってた割に実態が伴ってなくて拍子抜けしただけ。
 あの戦い方をしだしたのは2019年の残り10試合から。降格に向けて後がなくなり、お気持ち特攻をしたら嵌って残留。それを受けて昨シーズンからはその戦いを基本線にチーム構築していた。スタイルの確立と言えば聞こえがいいが中身は乏しく、個々の能力に依存。キープレイヤーの抜けた今年は綺麗に失速し現在11戦勝ちなし、降格圏。今から戦い方を変えようにもチーム編成が偏っていて無理。第2・第3の矢を放てない現状は厳しいのではないかと第三者には映る。

 踏み台使おうとする前に、先ずは自分達の足元を見つめ直すことをおすすめしたい。

終わりに

 これで5戦負けなしとなったが、ここで気を抜いてはならない。そろそろ久藤ザスパのスカウティングも進んできてるだろうし、現に次節ヤンツーと戦うのも面倒そう。
 今いるメンバーでの戦い方は見てて面白いが、必ずどこかで勢いは落ちる。そうした時に、今離脱しているメンバーが如何に融合するか。その先にウチの最終形態が見えてくるのではないか。
 先ずは週末の金沢戦。残念ながら無観客にはなるが、どこにいても思いは一つ。

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