常住坐臥 vs秋田 1-0

 負けたくないという思いによりリスク回避しながら戦った下位直接対決は、スコアレスドロー。勝たなきゃならないってことは当然承知しているが、アップセットを起こさせなかったことは決して悪い結果ではない。守備陣が集中力を切らさず0で抑えてくれたのが大きかった。恐らく下3チームでの熾烈な争い(足の引っ張り合いとか泥仕合とか言わないぞ)になるだろうし、1ポイントでも積むことが大切。

 3試合負けなしの状態で乗り込むのは秋田。チームスタイルについては最早説明いらないだろう。それほどまでに定着した「あきたいったい」でそれなりに結果を出しているので、その部分は認めなきゃだし、リスペクトする必要がある。
 前に蹴る→寄せる→セットプレー獲得→牛歩の如く時間使う→点取る→塩漬けして完成。極限までプレーの選択肢をなくせば、そりゃスピードも出るし連動性も増すだろう。素晴らしい落とし込みだ(棒読み)。

 個人的には対戦する21チームの中で最もつまらない相手だし、ハッキリ言って嫌い。ただ、そんなチームにすら勝てないのは受け入れ難い。APTが短いのは百も承知だし、集中を如何に保てるかが鍵。相手の土俵に乗ることなく、「フットボール」をして蹴散らそう。

メンバー

 ウチは前節から1枚変更、畑尾→藤井。ここまでチームを支え続けた畑尾が何らかのトラブルでベンチにすら入っておらずスキップ。藤井が今シーズン初のスタメン。ベンチには櫛引、城和、山中、風間、平松といった離脱組が帰ってきた。

 対する秋田はヴェルディに勝った前節から3枚変更。小暮→中村、井上→藤山、吉田→青木。

前半

 コイントスにて秋田がエンドチェンジし、前半の風下を選んだ。ウチのキックオフで始まったゲームは、想定通り秋田がガンガン蹴っ飛ばしてきた。
シンプルな戦法にどう対応するのかと思っていたら、「目には目を、歯には歯を、ロングボールにはロングボールを」を指標として(いるかは不明だけど)応酬。
 立ち上がり早々の2分、山田からのロングボールに対して川本が競らずに跳ね返された際に、細貝から「競れよ梨誉、しっかりやれよ」と声が飛んでいる。単に蹴り合いをするのではなく、1stもしくは2ndをウチが回収することによって初めて長いボールを使うメリットが出てくる。改めてその意識を共有・徹底し、それ以降は相手に自由にクリアさせる場面は作らせなかった。

 8分、ハーフウェー手前で岩上がルーズボールを回収し、斜め前方の国友の足元に付ける。相手のライン間で引き出した国友はポイントを作って友也へ。友也は持ち前の推進力を見せてアタッキングサードまで運ぶ。この際、ボールを離した国友が効果的なスプリントを見せており、才藤が友也にチャレンジする機会を失わせた(国友にボールが出ていても面白かった)。友也は減速して小島に落とし、リターンを受ける。すると友也がボールを持つタイミングでRSHの稔也がスルスルと顔を出してきて左サイドの深い位置でパスを受ける。
 そこからゴールには近づけず、タッチラインに逃げられたが面白い配置。試合後のコメントで大槻氏が同サイドでの攻防について言及していたが、逆サイドの稔也がハーフスペースを走るのも狙いの1つか。加えて、相手のCBを釣り出す+ウチのCF2枚はPA内での仕事をさせるって効果もある。恐らくは状況を見て稔也が流れてきたと思うが、あのスペースに誰かは走ろうという意図はチーム内で共有していた。

 14分は秋田がゴールを脅かす。秋田陣内浅い位置からのFK。田中のロングボールに池田が合わせる。これを国友が跳ね返すが、翔大の足元に転がり、右足でシュートを放つ。枠に飛んでいたシュートを藤井が頭でブロック。身体を張った守備でゴールを許さない。

 直後の16分、ウチが再度前に出る。小島がスローインで1つ飛ばして川上へ。川上は身体をオープンにしながら右足と腰の振りを利用してフィード。オフサイドを気にした国友と入れ替わるように友也が左サイド深くまで走る。ボールは才藤が回収したが、友也がプレッシャーをかけたことでクリアオールを小島が拾う。小島は岩上に渡すと、岩上はDFラインの裏に落とすピンポイントのフィード。CB2枚の間から抜け出した川本が粘り、国友にパス。これはカットされるも秋田はウチのプレスを嫌がってタッチラインに逃げる。
 川本がプルダウンの動きでマーカーを剥がして小島からのスローインを受ける。川本が前を向くアクションを見せたことで才藤と中村の2枚を釣る。川本は小島に戻すと、中村が川本に引き寄せられたことで小島の前方にスペースが広がる。小島は右足でインスイングのクロス。このクロスに国友が千田の前を横切るように飛び込む。ボールには合わなかったが、国友のランニングによって千田と池田が稚拙な対応。ボールは国友のところに転がる。角度のない所からの国友のシュートは田中に阻まれるが、こぼれ球を稔也が無人のゴールにプッシュ。
 闇雲にロングボールを放るのではなく、左サイドのスペースを使う意図を持っての"フィード"が威力を発揮した。スローイン時の川本の動き出しも見事だし、常にゴールを狙う姿勢は相手にとっても脅威。それによって小島が空いたが、小島にあれだけのスペースがあれば高精度のボールが入る。国友のクロスへの飛び込み方も迫力があった。そして、みんなで崩して最後にボールが稔也の元に転がってくるのも何かの因果か。ここまで苦しみに苦しんだ背番号10が、ようやく1つ結果を残した。稔也自身にとってもチームにとっても大きいゴール。

 先制してもウチはやることは変わらない。ベンチからも声が響く。
 「友也、はっきりプレーしろ。ファーストはっきりプレーしろって。ああいうのやめろって。徹底しろって。言え、言え、祐三に。」「コジ、徹底させろよ。ボールはコジだ、やれよ。」
 先制直後の浮足立つ時間帯に締め直したことで、相手のロングボールにも押し込まれることなく対応。

 33分、相手のスローインに対して藤井が起点を作らせずに競り勝ち、小島が回収。小島は低い弾道の速いボールを国友の前のスペースに供給。国友がライン際でコントロールし、そのままPA付近深い位置まで運ぶ。相手のタイミングを外しての右足アウトのクロスは川本の手前でクリアされるが、ここでも形を作った。

 秋田が右サイドの中村のところを起点にチャンスメイクしたい狙いを持っており、当然才藤もフォローに行く。それに対し、ウチは才藤が空けたスペースを効果的に使い続けた。ウチがボールを持った時の友也と才藤の立ち位置は友也の方が明らかに優位性を持っており前進できる。それと共に、国友の機動力はマーカーの千田を凌駕しているため、千田の脇(才藤の裏)のスペースは使いやすかった。そこに細貝と小島がフォローしてボールを動かし、場面によっては川本や稔也も絡んでくる。ただ、絡んでも密集するわけではなく、きちんとPA内には2枚が入っており、最後の局面で仕留める型もあった。

 36分、秋田の決定機。秋田陣内のFK。田中のキックはPA左角に飛んでいく。これに対して山田が果敢に飛び出したが、池田が合わせる。GKがいないゴールにボールが向かっていくが藤井と岩上が反応し、最後は岩上がライン上で頭に当てて防ぐ。チームを救うスーパーなプレー。

 秋田は時に翔大が左に流れ、齋藤も翔大との距離感を気にして連動するように左側に寄ってきたが、ウチもCB2枚がスライドして離さない。小島が絞り、大外に友也も落ちて対応。

 その後も引き続く相手のロングボールに対して恐れることなく対応し前半を終える。山形戦以来のリードでの折り返し。

後半

 後半開始早々、この試合のターニングポイントを迎える。
 48分、ロングボールを左で翔大が処理し、川上と正対。川上が上手くディレイさせるが、翔大は茂のオーバーラップを囮にして左足でクロス。これをファーで中村が合わせる。ふわりとしたボールはバーを直撃。そのこぼれを稲葉が振り抜くが、岩上が顔面でブロック。さらに才藤がシュートを放つも、藤井がゴールライン上で身体に当てて防ぐ。最後は才藤の無謀なバイシクルに対して川上が臆せず飛び込んだところでファウルとなって秋田の一連の攻撃が終わる。
 小島の所でミスマッチを作るのは相手のスカウティング通りだっただろうが、岩上・藤井・川上が身を挺してチームの危機を救った。また、その3人がブロックできたのも、全員が集中を切らすことなくボールにアプローチしていたからこそ。

 60分、山田のゴールキックを稔也が逸らして川本へ。川本はタメを作って逆サイドの友也へ展開。友也は細かいステップで相手が足を出すタイミングを失わせ、PAに侵入したところで左足でミドル。コースが限られていてGKの正面に飛んだが、シンプルながら相手をバタつかせる攻撃を仕掛けた。

 秋田は変わらずロングボールを多用してきたが、ウチは1stでほとんど負けることなく、2ndを岩上と細貝が回収する。秋田は2トップ+両SHの4枚を張らせて並べているが、跳ね返された後のスイープが上手くいかない。そこを拾われるとウチとすると面倒だが、しっかりマイボールにできるので怖さはさほどない。この辺りは夏場に1枚失った穴を感じる(こないだ岡山と対戦した時も効いてたもんな…)。

 82分、城和と風間を投入して5-3-2で試合をクローズする作業。「2」の部分では縦関係になる場面もあった。北川がボールホルダーにチェイスすると、国友がスライドしてきて相手のエスケープコースを封鎖。特に角を取ってプレスを掛けると、細貝が連動して蓋をしに来るので相手は何もできず。ただでさえ一辺倒なロングボールを多用するのだから、切羽詰まると蹴り捨てるしかない。
 また、ゴールキック時は思い切り重心を下げ、北川と国友が1stを競って跳ね返した。引き籠るのが早いとの声もあったらしいが、ラフに蹴るチームに対して前から立ち向かおうとすると仇になることもある。最終ラインでエラーがあればすべてが水の泡になるし、なるべく後ろに人がいる状態でボールにアクションする状況を作るのはリスクマネジメントにもなり得る(あのロングボールなら籠城しとけば事故すら起こらない感じはしたけど)。

 最後は球際の厳しさも見せる。藤井が武のターンを潰したスライディングは痺れた。そのまま逃げ切って負けなしを4に伸ばす。

雑感

 恐るるに足らず。強烈な日常の力で勝点3を持ち帰る。

 堅固な守備は素晴らしかったし、リーグ序盤に見せていた強度が戻ってきた。相手のやることのバリエーションがなく構えやすかったとはいえ、90分戦い抜いた。相手の強みである(でもってウチのウィークでもある)セットプレーでも集中を切らすことなく対応。
 相手が中村のところで起点を作ろうと試みていたが、小島が的確なアプローチをして、さらには藤井が連動して外に追い込んだことが試合を優位に進める要因。加えて、真ん中2人の運動量がモノを言う。激しくいく場面と、落ち着かせる場面の使い分けは見事。

 オフェンスは、ロングボールを多用したことは間違いないけど、意図は明確だった。再現性を持って繰り返したので、結果に結びついた。
 また、これまで全く効果的な形がなかったスローインだが、この試合では有効活用。基本的に自分たちが守るゴールからボールを遠ざける意識があり、ロングスローを使用。その際、CFが相手を背負ってオールを落ち着かせるポイントを作り、そこにSHが走り込んでボールを運ぶ型が何度もあった。
 そして何より、やっと稔也に初日。前10番の目の前でゴールを奪って見せた。ゴール以外でもプレーの強度やキレが大分戻ってきている。1つ取って肩の荷も少し軽くなっただろうし、これからの爆発にも期待。

 ここで3ポイント積むのは大きい。内容が薄い試合になるのは分かっていたので、ここで0で終わると大きな虚無感に襲われていただろう。
 自分たちがやるべきことを徹底している姿勢に関しては、相手チームも称賛に価すると思う(ただ、そもそもの方向性の部分で同じくらい軽蔑もしている)。やっぱりこの球蹴りには負けたくなかった。

 この1勝により、これまでの1ポイント×3試合が確かな意味を持った。残り試合は少なくなるが、1つ1つ積み上げる。

 俺たちの気持ちを伝えたいから
 だからお前たちの勇気を俺たちに見せつけろ

 この試合の選手たちの勇気を存分に感じた。最後まで選手を信じて後押ししよう。

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