喜色満面 vs仙台 1-0

 序盤に先制を許す展開になったが、最後までゴールに迫る姿勢を見せた前節。時間経過とともに守備の強度が増し、後半はバイタルにほぼ相手を近付けなかった。とはいえ、ウチも肝心のゴールを奪うことができず敗戦。鋭さと配置の両面で優位性を生む時間が増えている分、チャンスを仕留めたいところ。

 急遽の日程変更により中3日で迎えるは仙台。ご存じ、クラブ史上1度も勝利したことない相手(7分11敗)。現在昇格PO圏内に位置し、自動昇格圏とは4ポイント差。1年でのJ1復帰を目指している今シーズンはある程度順調に勝点を重ね、首位にも立った。しかし直近5試合は2勝1分2敗と、ややペース落ちる。前節は大宮に取りこぼし、手痛い黒星を喫した。
 前回対戦時は遠藤のモビリティに手を焼いた印象があるが、最近の仙台は名倉&氣田の手倉森コネクションコンビが両翼を担うとともに、フォギーニョと中島が中盤に鎮座。桜U-23時代のトップのイメージがある中島だが、いつの間にか中盤に。ま、いくら経営が厳しいとはいえ人件費2億未満っていうほどではないので、ベンチ含めた戦力は揃う。

 前節後半の流れを上手く継続させたい。そのためにも、選手・指揮官共に口にする「スイッチの入れ方」の部分を意識し、序盤から相手を嵌めて主導権を握りたい。

メンバー

 ウチは前節から3枚変更。岩上・山中・平松に代わり、友也・北川・KJがスタメン。風間が久々にCHで起用され、長倉が右に入る。前線2枚の起用含め、フリエ戦後半から継続路線の人選。友也は前節が契約上出場できなかった分、休養十分。また、新加入の川本が初のメンバー入り。

 対する仙台は敗れた大宮戦から5枚変更。杉本→小畑、蜂須賀→真瀬、佐藤→キムテヒョン、富樫→遠藤、フェリペカルドーソ→皆川。ショッキングな前節を経て、GKは9試合ぶりに小畑をチョイス。チーム内トップスコアラーの中山が前節欠場していたが、この試合では富樫も不在。どのチームもスクランブル状態。

前半

 雨が降りしきる中、立ち上がりから躊躇うことなく前に圧力を掛ける。仙台もさほどスイッチを入れずに構える。ビルドアップのスタート地点が決して高い位置ではないので、ウチは全体をコンパクトに保って嵌めようとしていた。

 11分、いきなり特大の決定機。仙台の最終ラインでの横パスが続くので、ウチはCF+SHの4枚で牽制。中央のフォギーニョに入ったタイミングで北川が完璧なコース限定。フォギーニョはキムに預けるも、そこに対して長倉が連動してプレス。キムはボールから目を切っていたため、長倉は難なくパスカット。そのままPA内に侵入するも、自ら仕上げることを躊躇い、最後の最後で北川にラストパス。これが弱く小畑に触られてしまう。そのこぼれ球にKJが走り込んで左足でプッシュするもハーフボレー気味で浮いてしまい、バー直撃。序盤の決定機を逃す。
 長倉がボールを奪った後、眼前にはスペースが広がっており何でもできる状況だったが、自由過ぎて却って色々考えてしまった。前にいる選手なので思い切って仕掛けてほしい思いはあるが、途中加入でまだ遠慮する部分があるのは仕方ない。仮に北川へのパスが通っていれば「良く見えていたな」と評価されるだろうし、難しいところ。いずれにしても、ゴールに向かっていく過程は良かった。

 15分にもチャンス。仙台の縦パスを城和がカットし、城和→細貝→風間と短く繋いで1stディフェンスを突破。ハーフウェー手前で受けた風間はそのままアタッキングサード手前まで運び、DFの頭を超すボールで左のKJに届ける。KJは右足ヒールを使ってワンタッチで落とすと、友也が左足でアーリークロス。中に走り込んでいた風間がフリーで反応するもボールに勢いを伝えられず、小畑の正面に飛んだ。
 ボール奪取から早い展開でフィニッシュまで至ったが幾つもの良い点が見られた。まず城和が細貝にパスした際、風間に出すように声と右手で細貝に伝えていて、実際に細貝もその指示通り相手に寄せられる前に風間に付けた。攻撃のスタートの時点でどのようにボールを前進させるかイメージを持っていて、それがチームとして共有できているのだろう(多少買い被り過ぎかもしれないけど)。
 で、風間に入ったところで長倉が右を駆け抜けたことで、中島が風間にアタックできず、どんどんボールを運べるようになった。フリーであれば風間のパス精度からしてズレることはなく、空間を有効に使うのは流石。一度深い位置を取っておいて、KJからすぐに落として友也がフリーになるのも狙い通り。そして、左に展開させた風間自身が止まらずにPA内にまで入って合わせるのは理想的だった。明らかに仙台守備陣は混乱し、後手後手の対応。ロジックに基づいて攻撃し、着実にゴールに近付く。

 20分もゴールに迫る。右サイドで仕掛けるも前進できず作り直し。畑尾→細貝→友也と繋いで左サイドにボールは推移。友也に入るタイミングで小島がインナーラップしてコースを空ける。友也は小島が走ったレーンに移動してKJに楔。KJは相手SBの背中を通すスルーパスで小島を走らせた。これは真瀬が先に身体を入れるも、ライン際で小島が突き、更には友也も囲んで奪い切る。小島は後ろのKJに預けると、KJはファーサイドへ。北川と長倉が交差するように走り込み、上手く長倉がポケットに入り込んで頭で合わせるも、氣田に身体を寄せられて枠に飛ばせず。
 細貝から大外に展開する際に小島が走り出したが、そのランニングが効いていた。相手の配置をズラすだけでなく、友也とレーンが被らないようにしており、友也が中に持ち出したことを確認して大外に流れた。それにより、その後KJが流れてきた時にも被ることなく外を走り出せた。

 ここまでほぼ一方的な展開。仙台が拍子抜けするくらい淡泊なことにも助けられているが、前からのプレッシングがハマる。
 仙台はビルドアップ時にフォギーニョが最終ラインに落ちて中島と縦関係になる。中島が何故中盤にいるのかという部分に関しては、真ん中でポストプレーをするイメージ。タッチ数少なくサイドに振る。要所では3列目から飛び出していくこともあった。
 フォギーニョがCB間に入ることで両SBを高い位置に押し出す。SBがWBのような配置になるため、ウチとするとマークの付き方が多少難しい。その中で、友也と長倉のプレスバックが生命線となる。仙台のSB(真瀬・内田)を基本的にはケアするようにしているが、プレスする際にはSH(名倉・氣田)のコースを消すように立ち、簡単に前進を許さない。当然、隣のレーンを使って角度を作り、SHにボールが渡ることもあるが、その際にウチのSBが出ていくのではなく、長倉と友也がそのまま2度追いし、最終ラインの距離感を崩さないようにした。これにより、ハーフスペースがほぼなくなり、仙台の選手がただサイドにダブつくだけになってしまった。
 サイドを最終人数で守る分、真ん中の中島のところにCHのどちらかが必ず捕まえて前を向かせない。中央に優位性を持つことで、中島の飛び出しやSBのインナーラップにも慌てることなく対応。スライドもさほど難しくないので、そう簡単には崩れない状態。1度だけ小島と友也が2枚並んで名倉に向き合い、真瀬に裏を取られることはあったものの、小島のその後の対応と細貝の流石の寄せで大事にはならず。

 バイタルに侵入させず高めで奪ってリズムを掴むと、41分にビッグプレーが生まれる。櫛引のロングフィードに対し北川が落下点の手前でジャンプして相手を錯乱させボールをバウンドさせる。平岡がクリアするも、長倉がボールの飛ぶ方向を完全に読み、友也も加勢して真瀬にプレス。真瀬が名倉に付けるところにも小島がピッタリとマークし、フォギーニョに出たところを細貝が見事に回収。畑尾がフォローし、KJに縦パス。KJは細かなステップで前を向き、北川へ。KJと北川の間に長倉が走り出すことを北川は見逃さず、ワンタッチでラストパス。長倉はコントロールしてシュートモーションに入ろうかという刹那、平岡の足が掛かり倒れる。これがPKの判定。KJのところでハンドではないかというアピールもあったが、当然聞き入れられず。ただ、仙台の執拗の抗議により、ファウルからキックまでに嫌な間合いが生まれてしまった。
 キッカーは風間。助走の際にステップでタイミングを外そうとしたが、向かって左側に蹴ったボールは小畑がドンピシャでセーブ。笛が鳴るまでにやや時間が掛かったことと、小刻みのステップによって相手の間合いになってしまったようにも感じる。ま、モーションに入る際に思い切りブーイングが聴こえたのは気のせいにしておく。

 前半から形を作り、幾度もチャンスを得るも決めきれない少し嫌な雰囲気で前半を終える。

後半

 前半何もできなかった仙台だが、何とか耐え凌いだことで後半開始からエネルギーを使ってくる。

 48分、仙台左サイドでの内田のスローインから。アバウトなボールを皆川が収める。氣田がすぐにフォローに行ってボールをもらい、PA内に侵入。ウチの選手4枚を釣ったところで中央の名倉へ。しかし、このボールが流れて名倉はシュートできず、後ろに落とすと、走ってきた真瀬が右足を振り抜く。強烈なボールだったが岡本が身体を張ってブロック。さらに遠藤が立て続けに狙うが、再び岡本が立ちはだかり防ぐ。
 試合を通してほぼ唯一仙台がPA内に複数人が入ってシュートまで持っていったシーンだが、崩されることなく落ち着いて対応した。スライドが遅れずにできており、そう簡単に突破されることはない。

 1つ相手の攻撃を抑えたことでリズムを作ると、54分に念願の先制点が生まれる。最終ラインのビルドアップに対して仙台がパワーを割いてプレスに来たが、小島が難なくワンタッチで友也に付けて相手の矢印をへし折る。最初のプレス隊を掻い潜ったので、当然友也はフリーに。中島が寄せに来るが、待ってましたとばかりに中島が空けたスペースに北川が下りてワンタッチで細貝に落とす。細貝は北川の斜め前のスペースにチャレンジのパスを出すもフォギーニョがカット。しかし、風間が拾って再度ウチのターン。風間→細貝→友也と繋いで縦へ差し込むタイミングを窺う。友也は無理に縦に出さず、細貝にリターン。細貝も局面を変えようと畑尾に付ける。ボールが後ろに戻ったことで仙台の意識が前になった。するとすかさず畑尾が長倉にフィード。長倉のコントロールが上手くいかずフォギーニョに拾われたが、KJが素晴らしいスプリントを見せて刈り取る。長倉がこぼれを回収して風間へ。即時奪回したものの仙台のブロックは崩れていないことを察知し、小島が風間と同じ高さにポジショニングしてボールを引き出し、仙台の陣形を動かす。小島は大外の友也に預けてスプリント。友也はPA角に刺そうとするもキャンセルして中央でフリーの風間へ。風間はワンタッチでPA内の深い位置に落とすボールを入れる。ちょうどKJがに風間に近付いていた動きに平岡が釣られてぽっかりとスペースが空いていた。そこにKJと入れ替わるように友也が走る。バックスピンの掛かったボールはスリッピーなピッチでも絶妙のポイントで止まり、友也の動きにドンピシャ。友也は走り込んだ勢いを殺すことなくライン際でワンタッチでクロス。GKの頭上を越え、ゴールを横切るように飛んでいったクロスにファーで合わせたのは長倉。あまり角度がないところから冷静に押し込んで値千金の先制点をゲット。
 これ以上ないような理想的なゴール。失ってもすぐに奪回し、サイドを揺さぶり、深さも使って相手を誘き寄せ、空いたスペースを的確に突いて仕留めた。ボールを離した後も誰1人として止まることはなかった。相手を引っ張った小島、一度ボールを離して動き直した友也、特にこの2人のオフザボールの動きは非常に効果を発揮した。また、ニアにKJ、中央に北川がいることでDFの意識がボールサイドに集中し、外から走り込んだ長倉までケアできず。あれだけクロスに対して反応できる選手がいればゴールの可能性はぐっと高くなる。前半あれだけ決定機をモノにできなかっただけに、後半立ち上がりの先制点はとても大きい。

 先制したことでウチは落ち着いてゲームを進める。逆に仙台がビハインドを負ったことでもっと前に来るかと思いきや、いまいちギアが上がらない。選手交代もして、皆川とカルドーソの2枚を並べてウチの両CBにくっつき、チャレンジ&カバーができない状況を作り出そうとするが、そもそも畑尾と城和が安定してボールを弾き返し、セカンドの鬼と化した細貝と風間が回収するので、仙台の攻撃は単調のまま。
 ウチも追加点を奪おうとし、友也のシュートや長倉がPA内で横パスしたりとゴールに迫る。また、兎に角下がらずに高い位置で圧力を掛け続ける意思を見せた。ベンチから声も飛ぶし、選手間でも意識が共有されていた。前半から身を粉にして走った北川とKJに替えて深堀と川本を投入したのも、前からプレス掛ける狙い。

 77分、櫛引のゴールキックを川本と中島が競り、セカンドを友也が回収。川本は斜めに動きながらボールを要求し、PA角でボールを受ける。前を向くと、右アウトサイドで深く切り返して1枚剥がし、スルスルとスペースを移動し、最後は左足でフィニッシュ。シュートはミートできなかったが、狭いスペースでも手こずることなく前進できた。

 続く78分、相手のクリアを小島が跳ね返す。深堀が収めると、川本がスイッチのようにしてドリブル開始。真瀬に身体をくっつけられても何のその、そのままPA内まで持っていく。アウトで1つ右寄りにボールを転がすと、迷うことなくコントロールショット。外側から巻くような軌道を描いたボールは惜しくもクロスバーに弾かれる。繊細なタッチのドリブルから豪快なシュートまでとても器用な印象の川本。これは良いアクセントになる。

 その後も変わらずラインを高めに設定。仙台も何とか追いつこうと仕掛けるが、バイタルにはほぼほぼ入れず。ボールを回す位置は低いし、ウチのプレスをまともに受けてロストの形がとても悪いので、なかなか自分たちの流れに持っていけず。
 友也が足を攣ったことに伴い最後の交代枠を使うと、完全に5-4-1にシフト。この試合通して4枚の距離感が適切に保たれていたので、それが5枚になれば鬼に金棒状態。最後のカードとして投入された山中と奥村もどんどんスプリントして相手を追い込む。

 90+5分、櫛引が蹴り捨てたボールの仙台の処理が怠慢になると、深堀が自慢の快足を飛ばしてマイボールにする。PA内に持ち込み、シザースで右にフェイクを入れ、左足を振る。DFの逆を突き、GKの立ち位置的にもニアが空いていた。これで試合を決定付ける追加点と思いきや、まさかのポスト直撃。一連の流れが深堀らしさ満載である。とはいえ、深堀がいち早く反応して走らなければそもそもチャンスにすらなっていないので、これからもストロングを活かしてチャンスを作り、ゴールの確率を高めて頂きたい。

 最後にひと笑いするポイントを作ったが、終始相手を寄せ付けず、1-0で勝利。4月3日の水戸戦以来のホーム戦勝利。仙台相手にはクラブ素性初の勝利となった。

雑感

 終わってみれば圧倒的大勝利である。あれだけチャンス作りながら1ゴールなのは物足りなさもあるといえばあるが、取り敢えず内容と結果が伴った成功体験が何よりも価値がある。中山と富樫がいないのは置いといて、今の状態の仙台であれば負けるわけにはいかなかった。

 守備は言うことないだろう。90分通して集中を保ち、相手に何もさせなかった。城和が常に声を張り上げラインを高く設定し、セカンドボールには細貝と風間が厳しくチェックした。先述の通り、両SHの貢献度も半端ないが、何よりもチームとして警戒すべきポイントが共有されていたことが全て。恐らく、仙台はハーフスペースももっと使ってウチのラインを突破しようとしていた。それに対し、ウチは後ろの選手を無闇にボールホルダーに近付けるのではなく、前の選手のプレスバックで対応した。これにより、長らく悩まされ続けた「スライド追いついてないやん」状態での失点リスクが減った。当然相手との噛み合わせの部分と相手のパワー不足が要因としてあるとはいえ、要所に人数割くことでエラーも起きない。SHがボールを持ったところで窒息させることを全体で目指し、そこで的確に蓋をした。

 攻撃に関しても、数多のチャンスを作った。横で目線をずらして縦を刺す場面が頻繁に見られ、相手を置き去りにしている。守る側からすると、走る向きや身体の向きを頻繁に変えなければならず、どうしても対応が遅れるし、疲労感も増す。テンポも上手く変えながらウチは攻めたので、とても効果的だ。
 そろそろ複数得点差で安心して試合を見たいとも思うが、まだ1つ勝っただけなので贅沢は言わない。長倉もこのゴールをきっかけにもっと思い切って仕掛けていただきたい。

 新加入選手→新加入選手でゴールを奪い、もう1人の新加入選手もゴールまで迫った。限られた財力の中で補強を行い、すぐさま結果まで結びつくんだから、強化部の働きも正当に評価されるべき。


 勝利するためにはこれだけのハードワークと集中力が必要だということを再認識した。残り試合も徐々に減ってきているが、この試合がターニングポイントになる可能性は十分。次もホーム、やってやろう。

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