目前心後 vs東京V 2-2

 強い雨が降りしきる中、大量のCKを浴びながらも何とか耐えていたが、相手の地力に押し込まれる結末となった前節。勝ち筋があったかと問われると総じてみれば厳しいかなと思うが、やれることはやった感。相手の頭の使い方が上手かったのは間違いない。その上で、如何にアジャストしていけるのかは勝点に直結していく。

 久しぶりの3ポイントを積むべく乗り込む今節の相手は東京V。足元の技術は間違いなく高いのはチームとしてのアイデンティティだが、今のチームには縦の速さとインテンシティがある。
 昨シーズン途中より監督に就任したJFK氏。1stチョイスは間違いなく縦であることを徹底してくる。現在は上位に位置しており、昇格争いに絡んでいる。中盤で森田がタクトを振るい、右にバスケスバイロン、左に北島という推進力を持つアタッカーを配置。稲見・河村・加藤蓮・谷口といった99年組がチームの根幹を担う。怪我人が続出しており、一時期は紅白戦を組むのもままならなかったが、徐々に戦線に戻ってきている模様。先日の天皇杯でも試運転している選手が何人かいた。精神的支柱でもある梶川の離脱の影響はあるだろうが、軸はブレない。前節もgdgdなレフェリングにやや振り回された印象だが、焦れずに後半ATに仕留めて逆転勝ちを収めるなど、強か。

 強度はあれど、基本的にはフットボールを志向してくるチームだけに、ウチも真っ向からやり合う。天皇杯は最終盤での強度で引っ繰り返されたことは否めず、その点については敵将も勝因として挙げていた。ただ、やられたまま終わるわけがない。自分たちが取り組んできたことを表現しつつ、デュエルの部分で後手に回らないこと。

メンバー

 ウチは前節から2枚変更。山中→川本、長倉→彰人。長倉はメンバーにも入らず。シラが2試合ぶりのベンチ入り。

 対するヴェルディは劇的な勝利を飾った岡山戦から1枚変更。加藤蓮→北島。右からも左からも殴れる厄介なメンバー。森田がキーなのは間違いない。

前半

 立ち上がりの危うさはもう相手にもバレている感があるが、この試合でもいきなりヴェルディがフルスロットルで入ってくる。

 2分、マテウスのゴールキックから北島がワンタッチで山田に付けてワンツーで左サイドを打開。岡本と酒井が追走して何とか突破を阻止しようとするが、北島は抜き切らずにアーリーでファーに上げる。河村が畑尾と中塩のギャップに入ってきて気になっていたが、その外側でフリーのバスケスがボレー。これは中塩の体に当たり、再びバスケスの足元に。バスケスは中央の河村に渡すと、河村はキープして後ろに落とす。そこに走り込んだ稲見が思い切りよく右足を振る。地を這うようなシュートは櫛引が上手くレシーブして防ぐ。
 簡単にサイドの突破を許したが、そもそもの北島のボールコントロールはどうにもならん。ヴェルディとすると、佐藤が前に掴みに行った時のその後ろのスペースを使いたい狙い。岡本も高い位置を取りたいし、そうなると3CBの脇は当然使いたいって考えるだろう。そこからも後ろ向きの守備になってしまい難しかったが、何とかゴールを割らせなかった。稲見は踏み台戦でも同様のシュートを撃ちこんでおり、フィーリングは良さそう。

 4分にもヴェルディが決定機を生み出す。ヴェルディ左サイド深くからのFK。北島のインスイングのニアへの速いボールは酒井が跳ね返したが、セカンドボールを森田が右足でボレー。コンパクトな振りから繰り出された鋭いシュートは僅かに左に逸れた。
 櫛引が見送ったのか、それとも反応できなかったのか。打たれた直後、ウチのDFラインの選手たちが一瞬フリーズしていたのが全てを物語っている。あの浮き球を造作なくミートさせられたら、それはもう対処法はない。

 開始15分でヴェルディの方がゴールに近付いているのは間違いないが、最初の方は仕留められなければ致命傷にはならないし、追及する必要はないというのが正直なところ。勿論、崩され方については検証を要するのだが、変にナイーブになって縮こまって良いことはないし、割り切っての対処も大事。

 ヴェルディが前からプレスに来るのは想定内。数年前までのウチであればリスク回避で蹴り捨てて陣地回復していた。しかし、今は違う。敢えてリスク負って足元に付けて真っ向勝負を選んだ。アマ・風間のところにはかなりタイトに寄せられていたのでターンするのは難しかったが、SB経由で角度作って斜めに刺す形でCMFが前を向いた。また、第二の手である岡本IHで佐藤をワイドで張らせる配置でも北島と稲見のところを上手くぼかした。

 チャンスが多くない試合展開で仕留めるならセットプレーというのがセオリーだが、ウチはやってのける。29分、久々のスタメンで気合十分の川本が左サイドで縦に仕掛けて得たFK。佐藤が低く速いボールを入れると、ニアで武と彰人が滑り込む。これには合わなかったがマテウスがファンブルしてこぼれる。バスケスがボールを確保しようと待ったが、その前で川本がボールにチャレンジし、歩幅を上手く合わせながら左足でゴールに突き刺した。
 セットプレーは明確な武器。戦前にJFKも述べていたが、警戒されていようとも決め切った。ニアでしっかり複数の選手が抜け出してフリーになっていたし、最後の川本はセンス。何度か踏み込んではキャンセルしてを繰り返し軸足とボールが離れた状況で、普通であればボールは上に飛んでいくはず。しかし、体幹の強さで体勢を崩さず、上手く上半身を被せて枠に飛ばした。川本は昨シーズンの味スタでも決めていたが、これが今シーズン初ゴール。

 先制したからといって浮足立つことはないが、元気にはなった。佐藤が例の如く相手ビルドアップ時に1stプレスに連動するように1列前まで出ていった。また、相手の最終ラインにはボールを扱う技術に問題を抱えている選手があり、明らかにウチはそちら側に誘導。そして、そこに渡ると当人を野ざらしにして、次のパスコースを埋めていった。その状況で何か展開されても怖さはないし、エラーも頻発した。

 37分、ウチのビルドアップからシュートまで持っていく。佐藤が右サイドで無理せず櫛引まで戻す。そこに山田がプレスに来たため、櫛引は酒井に送る。すると、稲見が酒井を掴みにきた。それを察知した酒井はボールを少し横に動かして相手の矢印を折り、IHの位置にいた岡本に楔を刺す。岡本はワンタッチでアマに落とすと、アマは相手にサンドされても構うことなく前進を続ける。武と岡本がプルアウェイで相手を引き付け、アマはバイタルに入ったところで左足を振り抜いた。
 相手のプレスの勢いを逆手に取って少ない手数でフィニッシュまでいった。中途半端に迷ってロストするよりも完結することが大事。

 前半をリードで折り返せればといった思いも芽生える中、ヴェルディも前半のうちに追い付こうとパワーを掛けてきた。39分、ヴェルディ最終ラインがハーフウェーを超えた辺りでボールを回す。ウチは無理にチャレンジに行かずブロックを敷く選択。谷口がミドルサードで高い位置を取ってきたので武が牽制。谷口から深澤に出たところで岡本と深澤の距離が遠く、スペースを与えてしまった。深澤は内側にコントロールし、インスイングのアーリーを入れるようなフォームから、足先でボールを弾くようにしてPA角を取った山田に楔を入れる。山田は1stタッチで前を向いてクロスを入れる。これは中塩が跳ね返したが、セカンドを川本が収めようとしたところで後ろから稲見に突かれる。こぼれを拾ったバスケスが高速シザースで川本を剥がしてクロス。ゴール前で畑尾が何とか弾き返したものの、北島が確保して横の深澤へ。そこにもアマがチャレンジしてボールを奪ったが、コントロールが大きくなって谷口に奪われる。PA内に侵入しようというところで岡本が止めたが、そのルーズボールを後方から走り込んだ稲見が左足でミドル。櫛引から離れていくような軌道を描いたシュートはネットを揺らした。
 何回か流れを切るタイミングはあった中で、結局複数回ヴェルディのフェーズを作らせてしまったのは、相手の狙いにハマったと言えなくもない。時間帯考えてもハッキリさせたかったし、反省材料。

 で、ホームチームのサポーターに向かって攻める状況で俄然勢いが出るとどうなるかは自明の理。44分、ウチがビルドアップで剥がそうとした場面で佐藤に3枚掛かりで囲んできてロスト。しかも、そのセカンドボールがフリーの山田の元に転がってしまった。山田は外側のレーンに移動しながら前に進むと、右足アウトで鋭いパスを出し、寄せに来たアマと佐藤の間を通した。そのパスを受けた北島がPA角を取り、タメを作る。ペナルティアーク付近で稲見が走り込んでおり、そこにパスを出すように身体を開いていた北島だが、足先だけで方向転換して縦の山田へ。フリーの山田は右足で巻くようにしてゴールに流し込んだ。僅か5分で試合をひっくり返す。
 ロストから後手後手の対応が続いていった。急転換するようなパスはどちらも対応が難しいのは確か。とはいえ、取りどころが定まらず、結果として相手に良いように動かされての無駄走りをさせられた印象。深い位置に侵入されたことを考慮すべきではあるが、それでもファウルを辞さないような対応も選択肢の必要だったかもしれない(そもそも、相手に全然コンタクトできるシチュエーションがないってことは置いておく)。

 先制するまでは良かったものの、残り10分で形勢が逆転して前半を折り返す。

後半

 ウチは後半のスタートから佐藤→山中。ビルドアップの出口になり、尚且つ1stプレスの一翼を担った佐藤だったが、ここでタイプの異なる山中を投入。

 前半は入りに苦しんだが、後半は最初から流れを掴む。49分、彰人が千田に圧力を掛けると、案の定エラーが発生。内側の森田に通そうとしたパスが大きくズレて、風間が高い位置で回収。風間から右の彰人に渡り、さらにはラインブレイクした武に繋がる。武は飛び出してきたマテウスの上を射抜こうとしたが、左足から放たれたシュートは浮かせすぎて枠を捉えきれず。
 狙い通りミスを誘い、そこから縦に速くシュートまで持っていった。最後の武のシュートはマテウスの足が視界に入ってやや意識しすぎたか。決まらなかったと言え、前半ラスト数分の雰囲気を打破するには十分。

 続く52分、今度は得たチャンスを逃さない。右サイドのスローインから一度ボールが最終ラインに戻る。畑尾は近くではなく、右サイドの山中に対角のフィード。山中がワンタッチで前方に流し、岡本がPA内で受ける。ゴールに背を向けた状態の岡本は無理せず武に落とす。そこにはプレッシャーが来たが武がワンタッチで岡本にリターンすると、岡本は冷静にマテウスの股を通してファーに流し込んだ。
 前半ほとんど使っていなかったロングフィードを用いての仕掛け。山中の最初のパスで勢いを作った。相手のラインがガタガタでオフサイドを2つ損しているが、少ない人数で狭いスペースを有効活用した。RSBがあの位置まで入っていけるのは大きい。

 55分にも決定機を作る。ゴールキックでビルドアップすると見せかけ、高い位置に張っていた武を目掛けて蹴る。武が簡単に競り勝つと、岡本が抜け出す。PA角からワンタッチで中に送ると、武が左足を伸ばす。ただ、少し届かずファーに流れていき、外側から彰人が左足で狙ったがDFのブロックに遭う。ここも手数掛けずにバイタルまで入り込む。最後は武より川本の方が大勢が良さそうに見えたが、ストライカーとしてはゴール前で自分の前をボールが通過するのを見送る選択肢はないだろう。そのエゴは尊重すべきだし、その上でどうチームの為に活かしていけるか。
 その流れで得たCK。風間の低い弾道のボールに中塩がハーフボレー。ジャストミートしていたが、マテウスがキャッチ。シュートの前にニアで潰れた武のところでファウルを取られていたようだが、デザイン通りだった。

 前半は地上戦で相手のプレスに立ち向かう姿勢を明確にしていたが、後半になって一気にロングボールを解禁した。プレスで重心が前がかりになり、ラインも上がった裏を狙うのは効果的。加えて、ヴェルディの最終ラインのロングボールへの対応がだいぶ怪しく、目に見えてバタついた。ウチも枚数掛けていける訳ではないので、回数は多くないが、ロングボールもしくはそのセカンドから攻撃を開始している。また、風間とアマの所に稲見と河村が捕まえに来るのだが、それに対してヴェルディ最終ラインの押し上げができていないので、広大なスペースができる。必然的に中盤の運動量は求められるし、あまりヴェルディにとって良い状況ではなさそう。森田もどちらかというと場所に留まらずにプレスに行きたいタイプなので、どうにもアンバランス。彰人と川本の距離感が良かったことで、左サイドからプレス剥がしていき、詰まる前に戻して逆の岡本や山中に振る展開。

 ヴェルディは61分、北島→加藤蓮、河村→齋藤の2枚替え。ボールを落ち着かせるポイントを作り、自分たちでイニシアチブを握りに来た。そして、69分に山田→阪野。ターゲットマンを作り、1列飛ばしてもまずは阪野に収めさせる狙い。そうすれば、例え阪野で収まらなくてもセカンドが拾えれば中盤が高い位置を取る意味が出てくる。

 この辺から、攻めるヴェルディ・構えるウチという構図が徐々に出来上がってきた。ただし、ウチも風間→内田、彰人→北川で手を打つ。阪野に当てたあとのセカンドの回収率を高めたいと考えてか、内田は定例のアマではなく風間との交替となった。内田はハイボールも落ち着いて処理できるので、その部分も加味。そして、この交替によって1ポイントも視野に入れた現実的な方向にシフトしていく。77分には疲弊した川本を下げて平松を投入。これも当初はシラに声が掛かっていたが、前でのポイントを作ること+セットプレーの高さといった要素を考慮し、平松に変更になったのではないかと推測される。

 ヴェルディは上との差を詰めるためには是が非でも勝利が欲しい。79分、稲見→宮原、バスケス→甲田の2枚替え。本来であればRCBを下げて山越をCBにし、宮原をRSBにする予定だったようだが、稲見のアクシデントにより宮原が中盤の底に入った。結果としてこの交代策は機能しており、ロングボール問題もさほど気にならず、加えて森田が前に出ていけるので一石二鳥。

 ラスト10分は兎に角ヴェルディの猛攻に遭う。ただ、途中出場の甲田は合流間もなかったため、なかなか噛み合わず。確かにドリブルのキレは目を見張るものがあったが、レフティなのでカットインしてのインスイングのボールを蹴ることが最終的な選択肢になっている。そのため、正対するウチの選手とすると、多少ドリブルで揺さぶられても、左足のシュートコースを切っておけば対応は可能。何本か鋭いクロスも入れられたが、いずれも守備陣が安定した対応を見せており、ゴールに繋がる気配はやや乏しかった。(それでも眼前で観るには心臓に悪かったけど)。
 最終盤はほぼハーフコートゲームになったが、最後まで集中を切らさず。90+1分には武→城和で試合をクローズする狙いをチーム全体で共有。
 90+3分の谷口のミドルは櫛引が片手で触って防いだ。90+5分、右サイドからのCK。森田のインスイングのボールは櫛引がパンチングするも、セカンドを齋藤がボレー。かなり危なかったが、直前に投入されていた城和が渾身のブロック。

 相手の攻撃を耐え抜き、2-2で試合を終えた。

雑感

 90分通してどちらのチームにもモメンタムが来る好ゲームだったが、ウチも一歩も引くことなく戦い続けた。

 2失点こそすれど、後半は安定して守れていた。失点はどちらも傑出した個があってのものだが、それでも組織的対応ができない状況ではなかったため、その部分は改善が求められる。ただし、単純なクロスに対するアラートな対応は90分間維持できており、強烈なサイドの突破からのクロスには屈しなかった。これを継続すれば今後も失点数はそこまで嵩まないだろう。

 オフェンスでも、水戸戦以来の複数得点。セットプレーで安定して取れているのは今シーズンの強み。加えて、2点目のバイタルでの崩しはシーズン当初から取り組んでいた成果が表現されていると推測される(ちゃんとTRを見ている訳ではないので、あくまで推測の域を出ないが)。PA内にSBが侵入するのは意図を持っていないとなかなか難しい。
 また、彰人と川本の関係性も良かった。川本はやや力みも見られる場面がこれまであったが、この試合では縦に仕掛ける場面と上手く彰人を使う場面のどちらもあった。また、バスケスへのパスコースを背中で消すシーンも多く、課題だった守備面も確実に向上している。1つゴールを決めたことで、ここから一気に爆発する可能性は十分ある(来週が契約上出られないのは知らん)。

 前半戦ラストで1ポイントを積み、勝点を30に乗せてのターン。尚且つ、ここまで連敗なし。これはシーズン目標と照らし合わせると及第点以上と言える。ここから2巡目に入り、ウチのスカウティングが進み益々難しいゲームが増えるのは間違いない。如何にして、相手の対策を上回るか。恐らく、より高みを見据える状況になれば、この試合の締め方も変わってくるだろう。一朝一夕でチームが勝てるようにはならない。だからこそ、ここから先も日々の積み重ねを以て、一戦一戦に挑んでいく。指揮官の言葉を借りるならば、「集団として成長すること」ができれば、このチームの可能性はどんどん広がっていく。

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