開雲見日 vs長崎 1-0

 結果がモノを言うダービーで相手をねじ伏せて勝点3を得た前節。相手のクオリティ不足は置いておいても、低くブロックを敷こうとする状況下、ラスト15分で逆転するのは並大抵のことではない。チームの積み上げてきたものが結実した1勝である。

 今シーズン初の連勝を果たし、この流れを継続させようと意気込む今節の相手は長崎。データはあくまでデータでしかないが、それでも無視できないほどの圧倒的対戦成績の分の悪さ。16戦1勝1分け14敗って数字を見ると清々しい。
 昨シーズン途中から指揮を執るカリーレ氏の2年目は、開幕から絶不調。今季はリーグ全体を通してブラジル人監督が率いるチームの戦績悪化が取り沙汰されているが、長崎も例外ではなかった。しかし、5節熊本戦で初勝利を挙げると、そこから現在3連勝中。再び猛威を振るう戦術フアンマ恐るべし。江川・植中を抜かれた穴はあるものの、兎に角帰ってきたフアンマで殴り、その周りを安部や宮城が駆け回る。
 基本的には、長崎のやり方は今までのイメージと大きな変化はない。契約更新で揉めていたっぽいカイオセザールが中盤の底でゲームメイクしつつ、要所では澤田が1列落ちてきてボールを引き出し、ビルドアップの出口になる。あとは、最終ラインのリトリート志向が強く、相手にボールを持たせる。そして後ろで刈り取って、前線の火力に任せるシンプルな策もある。

 個々のクオリティは依然として高いので、前節ほど戦いやすいってことはない。一方で、前線の守備意識は疑問符が付くので、やりようによっては間延びしたライン間を自由に使うことはできそう。リスク管理しつつ、ウチも前に人数を掛けたい。

メンバー

 ウチは前節からスタメン・ベンチ入り共にノーチェンジ。2連勝中の勢いを維持して挑む。

 対する長崎は勝利した仙台戦から1枚変更。大竹がメンバーからも外れ、安部がスタメンに入る。

前半

 コイントスに勝利した畑尾がエンドチェンジを選択し、ウチは前半を風下で戦うことになった。今シーズン初めて看板撤去となるほどの強風が吹き荒れる中、如何に前半をやり過ごすかが鍵となる。

 より一層のアラートな対応が求められていたが、案の定立ち上がりから苦戦を強いられる。ただし、序盤の苦戦の要因は長崎のロングボールが風に乗ることではなく、ウチが徹底的に地上戦を選択したことが大きい印象。狭いスペースでも蹴らずに足元に付けようとしたが、立ち上がりの相手の出足の鋭さに押されてサイドで引っ掛かっていた。

 8分、長崎左サイドのスローイン。宮城が安部にスローインを入れてリターンを受けると、宮城は低く速いボールを入れる。これはニアで酒井が落ち着いて跳ね返す、かと思いきやバウンドが合わずに後逸。澤田が背負いながらボールコントロールし、後方へラストパス。そこに走り込んだ鍬先が右足を振り抜く。シュートは枠に飛んでいたが、畑尾が見事なブロックでコースを変える。
 ミス絡みのピンチだったが、強風にウチがアジャストするまではどうしても難しい。スローイン時の安部の動き出しに対するウチの置き方が後手に回ってしまったことで、簡単にクロスまで上げられた。ただし、鍬先のところにはエドが足を出してコースを制限させていたし、スクランブルの状態でも必要な対応はできた。一歩間違えるとシュートブロックのディフレクトがゴールに飛ぶこともあるが、そうならなかったことからも適切な対処ができたと言える。

 さらに、その流れで与えたCKでもピンチが。増山のアウトスイングのボールをニアでカイオが合わせる。これも枠に飛んだが、櫛引が何とか掻き出す。
 ウチのゾーンの外側から走り込むってのは定石だが、フアンマとカイケに意識を逸らさせてニアでカイオに合わせてくるのは怖かった。ニアストーンの平松が弾けないポイントに蹴り込むボールの質による部分は大きいが、今一度セットプレーの対応の確認はしたい。

 立て続けの耐える時間帯を何とか乗り切ったが、それでもクリアしたボールが距離を稼げずに押し戻されることで重心を上げられない。何度かボールを奪取してからポジトラで殴る姿勢を見せるも、直後にロストするシーンが目立った。やはり風を意識するあまり、多少離れた距離のパスに抵抗があり、結果として相手のプレスの術中にハマっていた。とはいえ、長崎も局面打開する際のパスエラーが頻発し、自ら流れを手放してくれていたのは助かった。

 17分にウチも1つ形を作る。最終ラインでボールを回し、長倉が顔を出したタイミングで中塩から楔が入る。長倉はノーステップで風間に戻し、すぐにリターンを受ける。そのままスピードを保ってボールを運び、身体の向きが内側になっている増山の背中側にボールを転がしてエドに通す。エドもスピードを緩めずにゴールライン際まで運び、そのまま左足でクロス。惜しくも中には合わなかったが、クリアのこぼれを逆サイドの岡本が回収。岡本は無理に急がず、後ろのスペースに流れてきた酒井へ。酒井がワンタッチでクロスを供給すると、長倉が落下点にいち早く入って合わせる。柔らかいボールだった分、ヘディングでボールに勢いを伝えるのは難しく、GKの正面に飛ぶ。
 長倉でスイッチを入れて打開するのは最近の試合だとよく見られているが、これは長倉とエドが効果的なポジショニングをしている証左。スタートの段階でエドが高い位置を取ることで相手の1stプレスがコースを切りにくくなる。この場面では、長倉に対して鍬先が寄せに来たが、エドが高い位置を取っていたので鍬先はそこを切ろうと動いた。すると内側の風間が空く。CMFも含めてサポートしやすい距離感を取っており、前を向ける。

 20分を過ぎた辺りからは、ウチも落ち着いてボールを持てるようになった。長崎がフアンマの頭を目掛けてシンプルに入れて前進しようと試みていたが、逸らした先に誰もいないというシーンが多い。全体的に後ろに重いので、フアンマにまで届ける精度や衛星役が足りない。
 従来の長崎の傾向とすると、最終ラインのリトリート志向が強く、中盤とのライン間が空いていた。しかし、この試合では長倉と佐藤にCMFの脇を使われたくないとの意識が強く、いつもよりCMFの立ち位置も低かった。にも関わらず、最前線のフアンマは変わらずにプレスを続ける。自らは守備をしているつもりだろうが、ウチとするとスペースを与えてくれるので有難い限り。後ろは重たい+最前線は自分勝手にプレスに行く事象により、アマと風間のところでボールを動かせた。やや足元にこだわって詰まる場面もあったが、基本的には少ないタッチでボールを動かして狭いスペースでも前進していった。

 35分、ウチが均衡を破る。長崎が自陣からロングスローを投げてフアンマが逸らすが誰もおらず櫛引が回収。中塩が櫛引から受けると、ゆっくりとボールを持ち、顔を出すように要求。安部とフアンマのプレス基準がズレて、1stプレスのラインが崩れる。中塩からアマに通すと、アマが1stタッチで前を向いて加速、寄せらていながらも長倉に預けてワンツーで突破。この場面でも増山の身体の向きが悪くボールに背を向けている状態だったため、背中側に通してエドに渡す。エドはトップスピードから切り返して急停止。増山を剥がして中央のスペースにラストパス。右から中に走り込んできた佐藤が左足でシュート。一度はDFに当たるが、跳ね返ってきたボールを佐藤が右足でコントロールし、そのまま押し込む。
 マイボールにしてから緩急を使って押し切った。中塩が最初にゲートを通してアマに繋いだことでスイッチが入り、アマと長倉の美しいワンツー。増山の部分はスカウティングしていたように思えるし、スピードに乗っていてもブレないエドの下半身の強さ。そしてやはり、最後に仕事をするのは頼りになる10番。走ってくるタイミング・ポイントが完璧。

 風下では0で抑えられれば十分だと考えていたが、先制に成功。その後、アーリー気味のクロスからフアンマに合いそうな場面はあったが、リードを保ったまま折り返す。

後半

 風上に立つ後半は、必要以上にハイボールを自重せずに済むので戦いやすい。そしていきなりチャンスを作る。

 48分、ウチが長崎最終ラインにプレスを掛けてGKに下げさせると、そのまま平松が右サイドのコースを消して波多野に蹴らせる状況を作り出し、波多野は蹴り捨て、敵陣深めの位置でスローインを得る。中塩がすぐに風間に付けると、風間→中塩→畑尾→中塩→エド→風間と左サイドで繋ぐ。鍬先とカイオがウチの左サイド(長崎右サイド)に寄ってきたことでできたスペースに佐藤が入ってきて、風間からフリーでボールを受ける。鍬先とカイオの2枚が佐藤に寄せに来たが、細かいタッチで飛び込ませないようにさせ、2人の間を割ってPA内の長倉に縦パス。長倉は右アウトでコントロールし、カットインと見せかけてニアを撃ち抜く。やや引っ張る意識が強くて枠には飛ばせず。
 レフティの中塩を左サイドに置くことで、同一サイド内でもロスなく前進が可能。そして相手を偏重させ、空いたところに佐藤が入ってくるのも良い。今回は長倉がフリーだったのでそこを通したが、恐らく岡本にサイドを走らせる選択肢も持っていただろう。右からも左からもアイソレーションで前進できる。

 リードしており、後半の入り方も悪くなかったが、指揮官は手を緩めない。56分、先にウチが動く。エド→山中、平松→川本の2枚替え。ミッドウィークの次節も見据えているかもしれないが、パスの供給源への圧力を強める狙い。いくら守れていても、ラフなボール1つで事故を起こさせる可能性は十分あるので、少しでもリスクを低くさせるべく、機動力を強化。

 長崎も少し整理して入ってきた。フアンマの空転プレスをさせずに我慢させつつ、ウチのCMFに対して鍬先とカイオが捕まえる意識を強めた。また、ウイングが絞ってきて中のパスコースを消す傾向もあり。守り方は修正が見られる。一方で、今度はウチのSBが空いてくるので、いつもと同じように大外に張ってポイントとなり、IHに斜めで刺す攻撃が有効。

 61分、長崎にチャンス。長い時間にわたりボールを持ち、最終ラインがウチの陣内に入るほど全体で押し込む。右でCBの横に入った鍬先から1つ飛ばしてカイケへ。カイケは自身の前方のスペースを使うべく大きなタッチで前進。そのままシンプルに左足で上げてきた。このクロスは誰にも合わなかったが、右で増山が回収。ここでも切り込まずにシンプルにクロスを入れ、最後はフアンマが頭で合わせる。しかしシュートは枠の右に逸れる。
 結局フアンマに当てるのが一番手っ取り早い。ただ、長い時間ボールを持たれても、ボールが後ろに下がる度に畑尾や酒井が声を出してラインを少しでも押し上げようとしていた。ズルズルと下がるのではなくコントロールできている。

 69分、長崎の数回のクロスからの攻撃を切り抜けると、自陣PA付近でボールを拾ったアマから左サイドの長倉ヘ。長倉はハーフウェー手前から一気に加速。アタッキングサードまで単騎で運ぶと、右足に持ち替えてインスイングのクロス。ファーへのボールはカイケに跳ね返されるも、セカンドボールを岡本がボレー。枠に飛ばせなかったが、惜しいシュートを放つ。
 長崎の攻撃が数回のフェーズ立て続いていたが焦れることなく耐え、マイボールにしてからは切れ味鋭く攻め込んだ。長倉がクロスを上げる際には4枚が中に入っていたし、こぼれにSBの岡本が反応できるということからも、ポジトラがどれほど脅威になっているかが分かる。

 長崎が外回りのパスを続け、シンプルにクロスを入れるという形が多かったが、要所ではウチがミドルプレスで相手に圧力を掛ける。やはり長崎は風下となるため簡単に蹴るのも難しく、加えてGKの足元に難があるため、限定させることができれば水漏れせずにマイボールにした。
 長崎は鍬先が落ちての3CBの形を作り、ウチのプレスを回避しようとする。ただ、そうするとカイオ以外に中盤におらず、却ってウチとするとやりやすくなった。サイドをボールが動く分には致命傷にはならないし、ボールが奪えればカイオの脇を使って前に行ける。

 その後もフアンマに当てて事故を祈るヘイルフアンマクロスが横行したが、結局最後まで不発。ただただフラストレーションを溜め続けた。

 最終盤に北川の気合が溢れすぎたプレーでセットプレーを与えるも冷静に対処し、ウノゼロでの勝利を手にする。

雑感

 外部的要因によって難しい試合だったが、難敵を相手にしても止まらない3連勝。

 守備ではクリーンシート。立ち上がりこそ風に押されてピンチが連続したが、中盤以降は危なげなく守り切った。コンパクトな陣形を保てたことと、前からのプレスバックが機能したことが大きい。

 攻撃に関してもリトリートするDFラインを連動性で打ち破った。ビルドアップ時にフアンマが勝手に規律を崩してくれたことで回しやすくはなっていたが、CMFの2枚がトラップで前に向けるのはスピードアップする上で重要だった。無駄なタッチを省いて次に展開できるので主体的に動かせる。また、得点時の長倉とアマのワンツーは試合前のピッチアップで行っている動きとほぼ一緒だったし、日頃からの落とし込みの賜物だと思う。

 苦手意識の強かった長崎から7年・9試合ぶりの勝利。過去のデータがピッチ上に影響を及ぼすことはないが、それでも脳裏に過るものはある。今まで成し遂げられなかったことを少しずつ超えていく。次の敵地での大宮戦も未だに勝利したことがない。昨シーズンのあの悪夢のような試合はシーズン通してのターニングポイントの1つ。あの時味わった悔しさの借りを返す舞台は整った。中3日の連戦でコンディション等も難しいが、やるべきことをやって成功体験を積み上げたい。

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