粉然雑然 vs藤枝 1-2

 2試合連続の大敗の流れを止めようとしたものの開始早々から複数失点という悪癖が顔を出し、前半のうちに1つ返したもののビハインドを跳ね返せずに敗れた前節。北川の立ち位置によって前進ができるようにはなっている部分はあったが、勝点に結びつけるにはもう一押し必要だった。

 5月に入り、GW後半戦の中でシーズン2勝目を目指して乗り込む今節の相手は藤枝。テーブル上では近い位置にいる。
 須藤体制4年目も方向性は今までと同様。ボールを大事にしつつインテンシティを保つ。チームの根幹を担っていた横山が千葉に移籍していった影響もあってなかなか勝点を詰み切れてこそいないが、内容自体は悪くない。チャンスクリエイト数(1試合平均12.3回:リーグ3位)に対してゴール数(12試合7ゴール:19位)が明らかに少ないという決定力不足を示すデータがあるが、ケチャップの蓋が外れれば火力は強い。基本的に右片上がりの3バックを敷いていたが、前節水戸戦はLCBのウエンデルが上がって西矢がスペースを埋める左片上がりの形を見せた。どちらにしても片方で数的優位を作りつつシンプルに縦に付けてスピード感を持って前進してくる。守備時も即時奪回のためにかなりタイトに当たりに来る。

 昨シーズンはアウェイで撃沈した相手。ボールは回されるわハイプレスでロストするわで成す術がなかった。無闇に前から掛けても引っ繰り返されるのは想像に難くなく、ある程度構えるのが賢明か。間延びさせてライン間でボール引き出すのが藤枝の十八番であり、昨年10月はまさにその形で崩壊させられた。兎に角藤枝の3CBの脇のスペースにボールを如何に入れられるかが勝負。そのポケットに侵入できればウチが主体的に進められる可能性もある。あとは0で抑える時間を少しでも長くするのは言うまでもない。


メンバー

 ウチは前節から1枚変更。中塩→菊地。菊地は今シーズンリーグ戦初スタメン。ルヴァン柏戦の特に後半は安定感あるプレーを見せており、遂にリーグでも出場機会が巡ってきた。

 対する藤枝は逆転勝利を収めた水戸戦から1枚変更。ウエンデル→山原。前節LCBに入っていたウエンデルが外れて山原が中央に入り、中川がLCBに。

前半

 メインスタンドからバックスタンドに向けて横風が吹く中、ウチのキックオフで始まった試合は落ち着いた展開で推移。
 兎にも角にも開始20分までの複数失点でコントロールを失することは避けたいウチは、立ち上がりはリスク回避してのプレー選択が多い。藤枝も前節立ち上がりに失点していることもあってか、そこまで前から圧力は掛けず、後ろでボール握りながら縦に付ける機会を窺った。

 13分、藤枝にこの試合最初のチャンス。藤枝陣内右サイドでのスローインに矢村が落ちてフリーでボールを受けてワンタッチで縦に入れる。平尾もライン間でフリーになっており、ワンタッチで中央の梶川に落とす。梶川は首を振りながらボールを運んでハーフウェーを越え、左外の榎本へ。榎本は中川のオーバーラップを囮に1つ内側のレーンに入り、PA角付近から中央に斜めのパスを刺す。平尾が1stタッチで前を向こうとしたところで勇利也に当たってコースが変わったものの、内側から走り込んできた新井が左足を振る。新井に付いてきた菊地が身体に当ててブロックするが、フリーの平尾がこぼれ球を左足でボレー。このシュートはボールの下を叩いて浮いていったが、1つ形を作った。
 ウチとするとそもそもの矢村にも平尾にもチャレンジせずにズルズルと撤退していった。人を捕まえることもせずにラインを下げるだけならば、易々と藤枝の前進を許すことに。榎本に入った後の中川の動きのケアは必要だが、内側に入られた後に斜めのパスを簡単に刺されるのはよろしくない。枚数こそ揃っているが、撤退しているので間合い詰められず、尚且つ肝心なコースを消せていないのは厳しいものがある。

 藤枝は水戸戦で見せていたように西矢や新井が最終ラインまで落ちてLCBを押し上げる配置を取ることがやや多い。左側でボールを持つと梶川と平尾がダイアゴナルの動きを見せてウチの守備陣を引き付けて、右外の大曽根への対角を狙う展開を狙っていた。ただ、ウチはラインブレイクの動き出しのマークを捨てる判断がある程度できており、対角のボールに対しても菊地が身体を張って対処。押し込まれながらも要所は締めてはいた。
 ウチの前進は前節同様にエドと北川が中心。エドが大外レーンの狭いスペースでも素早いターンで前を向いてボールを運び、内側で北川がパスコースを補完。場面場面では勇利也もハーフスペースを走ったり、CBの脇に平松が流れて深くでポイントを作ったりということもあったが、チャンスには結びつかず。

 30分過ぎから藤枝は仕組みを変えてきた。3CBの両サイドをどちらもWBよろしく高く置いて幅を作り、保持時2-3-5のような配置になる。山原とCH1枚を残して梶川と平尾がIHの雰囲気。北村が最終ラインに入って数的優位を作り出す。ウチはWBをピン止めされての5バック化するのは仕方ないが、平松が1stプレス掛けたとしてもGK含めてのビルドアップに対しての限定は難しい。その1列後ろであれば枚数だけで見れば優位を作れる部分だが、IHのランニングのケアでDFラインのすぐ近くまで引いて構えており、藤枝はミドルサードまで完全に掌握。

 集中力を保って何とか0で凌いだものの、ボール奪う位置が低いorゴールキックでリスタートなので、敵陣に入る回数は少ない。それでも前半を0で終えるのも久々なので今までよりもまともな試合には見えた。

後半

 藤枝は後半開始から足裏タックルでカードを貰っていた新井を下げてアンデルソンを投入。アンデルソンを頂点に置き、矢村と平尾を1列ずつ後ろに下げる形。ただ、矢村は最前線に出ることも多く、アンデルソンの衛星的に動く。

 51分、ワンチャンスを活かしてウチが先に試合を動かす。菊地のロングフィードをきっかけに重心を押し上げ、エドの突破からスローインを得る。菊地のロングスローをニアで城和と平松が身体を張って競り合い、こぼれたボールを玉城が右足で叩く。これは小笠原のブロックに遭ったが、さらに拾った勇利也が落ち着いて右に流す。そこにいた佐藤は回り込むようにして左足でシュート。相手に当たって僅かにディフレクトしたボールは北村も見送るしかなく、ネットを揺らした。
 菊地のスローインは前半から可能性のあるボールが飛んでおり、弾道は高いがゴールライン近くまで飛距離が稼げるので事故も起こしやすい。そこのエリアに高身長の2枚を配置した上でファーから第2部隊が走り込んでくる。デザイン通りのゴールで、6試合ぶりの先制点を得る。

 先制したことでチームは好循環となるかに思えたが、そもそもの配置の部分での脆弱性は改善されていない訳で、あっさりとイコアライザーが生まれる。
 58分、一度ウチがクリアしたボールを北村が拾ったところから。北村→山原→中川→榎本と外回りでボールが繋がる。榎本はボールを受けるとスピードを緩めて仕掛けるタイミングを図り、右足アウトでの切り返し1つで正対する佐藤の間合いを外してインスイングのクロス。これを矢村が酒井の視野外から走り込んで頭で合わせる。このシュートが見事なコースに飛んでいき、サイドネットを揺らした。
 そもそも重心が上がり切っておらず後ろで構えざるを得ない状況になってしまったが、ボールホルダーに対してプレッシャーを掛けられないままファイナルサードまで前進されると防ぐことも難しい。榎本のクロスのクオリティも矢村の動き出しも見事であったが、あれだけ時間とスペースを与えてしまえば攻撃を完結できても不思議ではない。

 同点に追い付いた藤枝は62分、小笠原→ウエンデルのチェンジ。ウエンデルをLCBに置き、中川が右に回る。
 ウエンデルの投入後は明確に左上がりとなる。3バックのCBとは思えないほどのオーバーラップで左サイド高い位置まで走り、数的優位をもたらす。ウチはただでさえ右からの前進が限られていたが、一層気を遣って守備をせざるを得ない状況。
 ウチも先制点の直前に北川→髙澤、72分にエド→惇希、平松→佐川と前のメンバーを入れ替えて強度を維持しようとしてはいた。ウエンデルが空けたスペースに佐川が流れてきてポイントとなり前進を試みるシーンが何度かあったものの、如何せん押し上げるために長い距離走る必要があり、そこにエネルギーを割くが故にパスがズレて逆に藤枝に矢印引っ繰り返された。惇希の単騎の突破で前進できればという願望もあったが、そもそもボールがそこまで入らず。ようやく惇希に入ったと思ったらサイドのスペース消されて後ろに作り直すという作業。

 82分に藤枝は大曽根→シマブク、梶川→朝倉の2枚替え。ウチも同じタイミングで佐藤→永長、玉城→和田の2枚替え。中盤と右のインテンシティを保ちつつ、ボールを落ち着かせるポイントを作りたい意図は見えた。が、ウエンデルのところへのチェックはほぼ機能せず、一方的に耐える展開が続く。プレー選択も後ろ向きになり、前へのフィードはほぼ蹴り捨てに近い。

 それでも何とか誤魔化し続けていたが、最後の最後に藤枝がスコアをひっくり返す。90+8分、勇利也が自陣右サイドでボールを運んでいたところをシマブクに掻っ攫われると、シマブク→中川→西矢とテンポ良く繋がる。西矢はコンドォクシオンでウチの1stラインを突破し、ライン間で待つ朝倉へ。朝倉も少ないタッチで平尾に振る。フリーで受けた平尾はそのまま持ち上がり、ファイナルサードに入った辺りでPA内に斜めのグラウンダーのパスを送る。ウチのラインが下がった手前のスペースで矢村が浮き、右足を振ろうとする。ここは和田が何とか寄せてシュートを打たせず、混戦の中で酒井が苦し紛れで前に蹴る。ただそれも距離を稼げず、榎本が拾って再度藤枝のフェーズ。榎本が持ち上がるのに対してウチの右サイドはボールウォッチャーになり、背後の朝倉がフリーに。榎本と朝倉のワンツーに対応できずにPA内で深さを作られると、榎本のクロスを平尾が胸で落とし、最後は矢村が右足でボレー。土壇場でエースがチームを勝利に導く仕事をやってのけた。
 最低限の1ポイントという淡い期待を打ち砕かれ、現実を突き付けられた。失点に至るまでの全ての局面で相手に上回られる。

 先制しながらも痛恨の逆転を許し、連敗は止まらず。

雑感

 それぞれ抱える事象はあるんだが、トータルして『負け癖』が蔓延っているという表現で片付けれる。譬え先制したとて、矢印が後ろに向き続けていれば相手に付け込まれるのは時間の問題。守りたくなる気持ちは痛いほど分かるが、ゲームマネジメントでのエラーによる喪失が大きすぎる。

 難しい状況が続いている中で、個々のメンバーによってモチベーションの差が見えてきてはいるが、感情を前面に出す選手もいる。最初のプレーのスライディングに始まり、フィードも含めて安定感のあった菊地が見せた同点に追い付かれた際のリアクションは頼もしかった。そして誰よりも責任を感じ、背負っている城和。試合直後は憔悴しきっており、見る側も辛くなってしまうほどだった。

 浮上に向けての糸口は全く見つからない。それでも、選手を信じることしかできない。全てを懸けて、勝利を共に掴もう。

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