生々流転 vs琉球 0-2

 昇格組連戦となったアウェイ相模原戦は20本を超えるシュートを打ちながらも決めきれず、J2初勝点を献上。内容自体は悲観するものではなかったが、相手選手の暴力行為的タックルにより平尾が負傷し、早くも手負いの状態に陥った。とはいえ、一応開幕から負けなしを維持。

 で、今日迎える相手も開幕2戦負けなし、しかも2連勝中の琉球。2試合とも開始1分以内での得点など、開始直後からフルスロットルで攻め込んでくる。昨シーズンの対戦では、1勝1敗であった。8月のホーム戦は、低調な前半に阿部拓馬にワンチャンスを押し込まれたが、怪我から帰ってきた翔大を後半から入れたことで改善。負けはしたものの、その後のチーム原則の礎が出来た試合だった。アウェイは内田のゴールでウノゼロ勝利。相手監督が試合後インタビューで怒るほど何もさせず、しっかり勝ち切った。
 志向するサッカーは似ている部分も多い。上里が中盤で舵を取りつつ、阿部拓馬、さらには新加入の清水慎太郎が一瞬の隙を狙っている。真ん中でボールを握りたい+相手に展開させずサイドに追い込みたいという思惑も大凡一致しているため、どちらが仕留めきれるかの勝負となる。

画像1

 ウチは前節から1枚変更。平尾が怪我で離脱し、トラブルで開幕戦途中交代&前節をスキップした広大がスタメンに復帰。それに伴い、右SBに岩上を持ってきて昇偉を左で使う。広大と藤井のCBコンビは開幕戦と一緒。中盤2枚は久保田と内田が務める。昨年岩上がSBで出場した試合の内容はあえて触れないが、このディフェンス重視の手堅い人選が吉と出るのかどうか。

 対する絶好調琉球は2枚変更。2018シーズンに在籍していた風間宏希と清武がスタメンを外れ、富所と清水が入る。ウチのスタメンが読めない部分があっただろうが、恐らく昇偉の後ろのスペースを制圧したいという意図での清水の起用ではないかと思われる。

前半

 コイントスでエンドの選択権があったウチはエンドチェンジせず、前半は風上で試合を展開することになる。

 開始早々から前への圧力を掛けて攻め込み、2分には大前のパスを受けたKJがカットインから右足を振り抜くもDFに当たって防がれる。その後も立て続けにCKを獲得するも、合わせることができない。

 18分、最大のチャンスを迎える。スローインの流れから岩上がフリーでクロスを上げると、大前が体を抜け出しながら頭で合わせた。しかしクロスバーにクリーンヒット。前節もバー直撃のFKがあったが、またしても決まらなかった。

 琉球は風下の前半は割り切ってリトリート気味。阿部と池田が多少コースの限定こそするものの、ある程度ウチが自由にビルドアップできる状況だった。両SB+SHまでは自由に繋げられる一方、そこから大前or翔大に出すことが出来ず、停滞してしまう。

 30分過ぎからは琉球も風に慣れ始め、徐々にギアを上げてビルドアップへの牽制を強めた。特に、ウチの右サイドで嵌める傾向が見られ、必然的にウチの攻撃は左に偏るようになる。昇偉がKJを追い越すと一気にチャンスになるので、KJがハーフスペースで囮になり、大外で昇偉が駆け上がるシーンを多く作りたかった。
 その形が垣間見えたのが43分。元々は稔也と岩上が右で展開しながら、内田経由で昇偉へ。リターンを受けた内田が上げたクロスは跳ね返されるもKJが上手くセカンドを回収。一気に加速して中央の翔大へ渡す。KJが縦へスプリントして相手を引っ張る。そこで空いたパスコースを通して昇偉へとパス。残念ながら昇偉がオフサイドとなってしまったが、可能性を感じる展開だった。

 相手エンドでボールが行き交う時間が長かったものの、スコアを動かすことなく前半を終える。

後半

 前半あまり前に出ていけないのが織り込み済みであったであろう琉球は、後半頭から富所に代わり風間宏希が入り、中盤が開幕2戦と同じ組み合わせにする。ボールの供給源を2つにすることで、ウチのプレスの的を絞らせない狙い。

 風下で全然展開できないのは覚悟の上だったが、案の定押し込まれる。ウチもロングフィードを放棄し、キックオフも繋ぐ意思を持たずにサイドに切った。その代わりに前で引っ掛けてショートカウンターで仕留めたい考え。

 試合は琉球の思惑通りに段々となっていく。前半に比べ琉球のSBの位置取りが高くなり、ウチがそれを掴み切れなくなった。さらに、その横のレーンを風間宏矢がふらついており、面倒極まりなかった。それだけでも嫌なのに、阿部拓馬がCBを連れて一列降りて顔を出してくるので、トライアングルを作る+CBの後ろのスペースを空けるってことが同時にできる。空いたスペースを目掛けて一目散に蹴って競争させる通称ファビオ戦法は用いてこなかったが、逆にボールをある程度繋ぎながらスペースを狙っていくことこそ、今の琉球の勢いと今後の可能性なのかもしれない。樋口氏のチームとの対戦成績は良くないけど、毎回見て楽しい良いチーム作るし、縁があれば敷島のホーム側で指示する姿を見たいと個人的には思う。

 64分、遂に失点を喫する。琉球の左サイドの展開から田中がアウトスイングのアーリークロス。中には合わなかったものの風に少し乗り、微妙なポイントでバウンドしてしまう。松原が岩上と衝突しながらも何とか弾く。そのボールを稔也がコントロールしようとした瞬間、阿部が掻っ攫って流し込んだ。GKとDFのコミュニケーションも必要だったし、あの場面、あのエリアでコントロールすることへのアラートが果たしてあったのかは気がかり。

 1点ビハインドになって攻勢を掛けたかったが、如何せん風下で戦う術を持ち合わせていない我が軍は、ある意味「詰み」になった。ビルドアップ時のタイムロスが顕著になり、仕方なく蹴ったラフなボールが風に押し戻されて押し込まれる悪循環に。裏を狙うのはありだけど、タイミングを見て入れるフィードとただ闇雲に蹴るクリアは効果が全く違ってしまう。

 そうこうしているうちに、1点目とは逆のサイドながら似たようなクロスを上げられ、阿部が上手くコースを変えた。シュートはポストに弾かれるが、こぼれ球に誰よりも早く反応していた赤嶺が難なく押し込んで終戦。

 前半で仕留められなかった時点で勝ちはないと悟っていたが、結局0-2で今シーズン初黒星。

雑感

 堅実に行こうとしたが、やはり悪い方向に転んでしまった。

 攻撃面での得点力不足は通年の課題だけど、今日に関してはチャンス自体を作ることが出来ず、そもそも後半はシュートがほぼほぼなかった。
 ビルドアップの際に、今年は松原を絡める場面が去年よりも明らかに増えていて、松原が少ないタッチ数で縦に付けることによって、その後の局面での時間的優位性を作り出したい意図がある。しかしながら、GKを絡めて作った時間の貯金をCBで使い切ってしまい、SBに繋ぐころには寄せられてパスコースがなくなる。仕方なく蹴って逃げるが、後半に関しては風に押し戻され、結局後退するってよろしくない連鎖。ビルドアップが突っかかるのはどのチームも抱える課題で、だからこそ左利きのCBが重宝される世の中な訳なんだけど、今日に関しては右側が少し辛かった。広大は怪我明けで難しい面もあったし、そもそもビルドアップが上手くいかない原因が個人で完結することは断じてないけど、CBとCHでテンポアップすることでKJや稔也が前を向いて仕掛ける場面やSBが押し上げる時間が確保できるのは事実。岩上をSBで使うのもビルドアップをスムーズにしたい思惑だと思うし、サイドで出口を作りつつ、中の久保田とかと絡めればもっと改善された気もする。が、応急処置的な起用でもあり、稔也と岩上がレーン被りするシーンも散見されたので難しい。
 あとは、稔也を下げて北川が移籍後初出場を果たしたが、今後北川の出番は増えそう。スピードもあるし、競り合いでも当たり負けないので攻撃の際のポイントとして作用する。それにより翔大を右に持ってきたが、欲を言えば翔大の後ろには攻撃参加が売りのSBを置きたい。'19シーズンの将也との右サイドのイメージで昇偉が絡めれば面白くなる。

 ディフェンスは、持ち堪えてはいたけど、大外までケアしきれなかったのが大きく響いた。SBを押し出してマーク着くのか、SHを戻すのかの判断がまちまちだった。セットされた状況で守れることは昨シーズン終盤からできているし、今日も当然守れていたけど、早いタイミングでの大きい展開に課題を残す。去年ヴェルディにボコボコにされたのも、早い場面でフリーマン(あの試合では端戸)に繋がれてからの外展開で仕掛けられてお手上げだった。サイドのマークの受け渡し、どこまで寄せるのかは確認が必要。
 それと共に、人数を掛けて奪いにいこうとしたタイミングで剥がされると厳しくなる。せっかくサイドに追い込んだのにサンドしきれず、逆に中途半端なポジショニングでスペースをプレゼントしてしまっている。2失点目も、クロスを上げられる前のフェーズでSBを押し上げてCBがスライドしていながらボールを引っ掛けられず、結局CBが1枚余っている形になった。チャレンジに行くなら止めないと効果は薄れてしまうのではないだろうか。

 とはいいつつ、ここまでの2試合で4ポイントを積み上げていたことは大きく、この1敗で全てが失うことはない。危機感を持つことは必要だが、まだ悲観するほど酷い内容ではないため、次戦の修正に期待したい。次も無敗の新潟が相手だが、自らがボールを持つ戦いで、去年のビックスワンでの試合の再現をしよう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?