休心息念 vs東京V 0-1

 圧倒的対戦成績の悪さと人件費の差をモノともしない互角以上の戦いを演じた仙台戦。アクシデントがありながらも、後ろの堅さは90分通して崩れないのは今シーズンのウチの頼もしいところ。カウンターで一刺しできれば理想だったが、そこはここからの改善に期待。

 3戦ぶりの勝利(4試合負けなし)&クリーンシート継続を目指して迎えるは東京V。これまた厄介。今シーズンは3試合を終えて1勝2分けの勝点5。過去10年で開幕3戦負けなしは2度目らしい(2018年ロティ―ナ政権以来)。ユース年代から仕込まれた「ヴェルディらしさ」をトップで発揮しようと試みていたが、ここ2年はクラブ・チーム双方にただ事ではないゴタゴタが勃発。過去の栄光があるクラブは良くも悪くも面倒だなとつくづく感じる。
 火中の栗を拾うこととなった堀氏が今シーズンも続投。一瞬噂になったJFKはなんだったのか。開幕戦はCOVID-19アクシデントで大分スクランブルな布陣になったが長崎と引き分け。続く踏○台戦では相手のにわかに信じ難いミスから易々と先制すると、格の差を見せつける3-0の完勝。前節の徳島戦も先制されるが、LSBに定着した深澤の技ありのループで追いついて見せた。
 もともとポジショナル志向のチームであることは間違いないが、個々の水準も高い。山本・石浦といったユース上がりの若手がゲームメイクしつつ、梶川が要所を締めてくる。深澤と佐藤の98年組は充実の時を迎えているし、ルーキーの谷口、河村もインパクトを残している。今後、アクシデント明けの選手たちが戻ってくればトップハーフは堅いだろう。
 中盤の底に山本がいるのが兎に角面倒で、そこを経由して展開されていく。右の新井は、ここまで対戦した山田康太や遠藤康と同じく狭いスペースで違いを生み出し、左では杉本が相変わらずのスピードを見せる。ただし、両ワイドが大外に張って幅を作るので、山越と深澤がインナーラップでハーフスペースを突く。

 3戦5得点のチームと3戦連続クリーンシートのチームの対戦。負けなしの相手に土を付けるのはどちらか。

画像1

 ウチは前節から1枚変更。長期離脱となった細貝に代わり稔也。風間と岩上のCHで稔也を右に。ベンチには、高木と山中が今シーズン初めて入る。

 対する東京Vは引き分けた前節徳島戦から1枚変更。杉本ではなく小池を入れてきた。それに伴って新井が左のウイングに。小池とベンチの弘堅は敷島凱旋。

前半

 ボール保持されるのは百も承知。立ち上がりは長めのボールを入れてリスクを回避するが、何だかんだで前進される展開。

 7分、サクッとヴェルディにチャンス到来。左で新井がスローインを入れ、深澤→谷口と繋いで右サイドの小池に大きく展開。ここにミツが付いていくが、それを見た小池は一度山越に落とす。ミツが動いたことでできたスペースに石浦が侵入してきたので畑尾がケア。それを見た佐藤がウチのCB2枚の間に動き直して山越のパスを引き出すとワンタッチで中央へ。そこにIHの梶川が入ってきて右足でシュート。シュートは枠を大きく外れたが、狙いを持ったボールと人の動きによってフィニッシュまで持って行った綺麗な攻撃。

 11分、ウチもただ引くわけではなく、櫛引を含めながら勇気を持ってビルドアップ。ミツの積極的な飛び出しもあって左サイドでCKを獲得する。岩上はクイックで山根に渡すと、山根はシンプルにクロス。これは高木和が弾き返すが、こぼれを拾った風間がフリーの状態で柔らかいボールを供給。ターゲットの畑尾が競った裏で山根にボールが当たり、転がったところを深堀がシュート。これも高木和に当たるが山根が回収。ラインぎりぎりのところからGKの脇を抜けるクロスを上げると、そこにはフリーの稔也。が、何とも微妙な高さに飛んできてしまい、バレないように右手を伸ばしてコントロールしてから右足でプッシュ。遠くから見てもかなり怪しかったが、取り敢えずお咎めなし。
 しかし、ここからが大問題。中継では映っていないが、稔也が決めた後に主審は間違いなく一度センタースポットを指した=この時点でゴールは認められたと理解。しかし、その後副審との協議で取り消した。最初から副審と協議するならともかく、どうやっても運用がおかしい。リプレイ見て保身に走ったのではないかという穿った見方もできてしまう。ハンド自体に異論は全くないが、その後の対応が残念極まりない。正当なジャッジなら最初からゴールを認めるべきではないし、そもそもハンドって分かった時点で副審のシグナルがあって然るべき。岩上のアピールを見ると、やっぱりセンター方向を指した事実はあるだろうし、どうやっても危うい。審判は間違いなく映像を見ていないと言い張るだろうが、仮に見ていたとしたらそれはそれで大問題。大槻さんもクラブスタッフを通してマッチコミッショナーに異議を申し立てていた。とはいえ、ダメなものはダメなので、0-0の状態で仕切り直し(そもそもハンドすんなよってツッコミが真理)。

 山越が上がった後のスペースを活かすようにウチは山根とKJで殴りに行くが、ヴェルディも左の新井の所で剥がせるので、そこに梶川や深澤が援軍して崩す。

 24分、ヴェルディのビルドアップの局面で谷口がフリーになると、見事なフィードが大外の新井に届く。新井は梶川とのワンツーで小島を剥がし、右足に持ち替えてクロス。畑尾の手前で佐藤が点で合わせるが枠に飛ばない。それぞれがルールに則って動くので無駄なくチャンスを作れるのは尊敬の念。

 34分、またもやヴェルディの自陣のビルドアップ。谷口から山越への対角線のフィード。石浦の動きを警戒して小島と山根が数歩下がると、山越はカットインして左足でクロスを上げる。ここも佐藤が城和の前に上手く入って合わせる。谷口がフィードを蹴る前に一度深澤に付けたことによって、ウチのプレスラインが一瞬撤退せざるを得なくなり、谷口に時間的余裕を与えてしまった。これもヴェルディの良く考えられた連動。

 ビルドアップからヴェルディの狙い通りに進んでいっていたが、ウチのビルドアップも決して引けを取らない。38分、城和の切れ味抜群のボディフェイクで喰い付いた石浦を剥がして前を向く。セカンドアタックとして新井が来たところで城和は中の風間をチョイス。風間も山本が寄せてきたのを感じてワンタッチで離す。それを受けた岩上が持ち出し、左大外の山根へ。山本と石浦がいないので空いたスペース目掛けてKJがスプリントすると、山根からワンタッチでKJに入る。KJには小池が戻って対応すると、KJは山根へリターン。山根はそのままファーの小島を狙ってクロス。小島が折り返すと、そこには風間が飛び込んでいたが、ここは山本が身体を張って防ぐ。KJに渡ったところからは少し手詰まり感があったが、もう1人絡んでくるとゴールの確率が上がりそう。

 40分、三度ヴェルディのビルドアップから。この場面では、山本ではなく石浦が中盤の底でタクトを振るい、山本がIHに。谷口→深澤→石浦→梶川→谷口と小気味良くボールが回る。梶川が外で幅を取っているので、石浦がインナーラップでハーフスペースに入る役割を担う。谷口と石浦でパス交換する中で小池が裏を取る動きをするがそこは使わない。敵陣に入った石浦から深澤を経由して大外の梶川。斜め前のハーフスペースに新井が入ってきて小島と城和の視線がそちらに向いたが、梶川が選択したのは新井の1つ隣のレーンでフリーになった山本。深澤から梶川に繋がるシーンでハーフスペースを狙っていた山本はそこから動き過ぎることなく絶妙なポジショニングで梶川からボールを受けると、左足でコントロールしてPA内に侵入。最後は左足でシュートを放つが、城和が上手く間合いを詰めてブロック。山本と石浦がポジションチェンジしたところからそのままシュートまで持っていけるのも、やはりルール通りの動きではないだろうか。

 ややヴェルディのビルドアップからの崩しに圧力を掛けきれなかったが、それでもスコアレスで折り返す。

後半

 後半に入っても基本的にヴェルディ保持の時間が長くはなるが、ウチもラインを下げ過ぎることなく、ポイントを絞って局地戦でボールを奪う展開。

 57分、ここでも谷口の対角線のフィードが右サイドへ。この試合初めて小池が裏を狙う動きを活かす大きな展開だったが、ここは山根がカット。一度はウチがボールを落ち着かせるものの、岩上の縦パスを梶川がインターセプト。岩上が左に流れていたことで中央にポケットができ、そこに丁度小池のフォローに行っていた山本が残っていた。左足で丁寧にコントロールすると、自分の間合いで遠目から狙っていった。外から曲げて落とすイメージのシュートだったが、ミートせずに櫛引の正面。

 58分、ヴェルディは山越→加藤蓮の交代により、深澤がRSB、加藤蓮がLSBとなる。その直後にウチに決定機。深堀とKJの2枚でヴェルディのビルドアップに牽制を掛けると、加藤蓮がプレッシャーをもろに受けて馬場へのパスがズレる。これをKJが拾って深堀にラストパス。深堀はGKと1対1の場面だったが、KJのパスにやや勢いがなかったため待ってボールを受けてしまいファーストタッチが上手くいかず、GKに間合いを詰められて決められず。毎試合引っ掛けるところまでは行くけど、そこを仕留め切れるかが次の壁。深堀は色々と脳裏を過っているかもしれないが、愚直に仕掛けて打ち続けてほしい。

 60分、ヴェルディの最終ラインでのパス回しにKJが深追いして牽制。左への展開を止めたヴェルディは中央の馬場が右の深澤を走らせるパス(ミスでズレたように見えなくもない)。このパスが結果的に山根を釣り出す丁度良い感じのものになり、深澤はワンタッチで縦の石浦へ付ける。ハーフスペースにいた石浦は定石通りワンタッチで外の小池へ。ここにミツがギャンブルアタックを仕掛けて前進を許さない。しかし、小池は素早くスローインを入れると、深澤はすぐに山本へ。岩上が小池のケアでサイドに追いやられていたので、山本の前には広いスペースが空いており、しっかりルックアップした上でミツの背中を取っていた石浦を選択。これをミツが懸命に足を伸ばしてカット、レフティーだったことも功を奏した。が、このボールが中央のよろしくないところに転がってしまう。佐藤が反応してシュートモーションに入ったがスルー、その後ろから梶川が右足でシュート。崩しは見事だったが、最後は城和がコースに入ってブロック。

 63分、ヴェルディのショートカウンターになりかけたところを小島の懸命なプレスバックで防ぐ。すると、こぼれ球を拾った城和がそのまま持ち上がる。ハーフウェー付近まで運んでKJへ。KJは敵陣に侵入すると、縦方向を指さす。すると、それに呼応するように山根が一気にスプリント。マーカーの深澤が身体の向きを外にしたタイミングでKJが右足アウトサイドで深澤の内側を通すドンピシャのパス。山根は深い位置でタメを作ると、PA手前の風間へ。風間は左側にコントロールして深澤と新井の2人を引き付けると、空いたスペースに駆け上がった岩上へ渡す。岩上は柔らかいボールタッチから右足で厳しいコースを狙ったショット。枠に飛んでいたが、ここは高木和が見事な反応を見せる。

 直後のCKは相手に回収されるが、KJと深堀がスイッチを入れて奪い返すと、岩上がハーフウェー手前から思い切って狙う。枠には行かなかったが、岩上のコンディションはかなり良さそう。今週は少し心配なリリースもあったが、細貝が離脱した状況では岩上が担う役割も大きい。

 70分、平松に収まって一度小島に戻したところを2枚に寄せられてしまい、蹴り捨てるような形に。これをCBの馬場が上がってきて拾って前進。ミドルサード深くまで持ってきて梶川へ。梶川→加藤蓮→新井とスローテンポで回ったが、加藤蓮が一瞬でスピードを上げてPA内に侵入。稔也が辛うじてクロスを上げさせなかったが、シンプルながら造作なくPA内までボールを運んでくるヴェルディの良さが現れた。

 75分、両チームとも一気に動く。ウチはKJ→高木、山根→天笠の2枚替え。ヴェルディは佐藤→杉本、石浦→阿野、小池→バスケスの3枚替え。結果的にこの交代が命運を握ることとなった。

 78分、ウチがこの試合2度目のゴールネットを揺らす場面を作る。自陣でミツがボールを受け、縦の天笠へ。天笠はワンタッチで高木に落としてすぐに動き直す。高木はその動きに合わせて天笠にリターン。天笠は中央を見て抜け出していた平松にラストパス。これを平松が流し込むが、オフサイドの判定。これはどう見ても飛び出しが早く、止む無し。

 そして80分、ついに決壊の時を迎える。ハーフウェーで受けた深澤は、大外のバスケスへ繋ぐ。WGだったバスケスが1列後ろに引いてきたことで、ミツと天笠のどちらがアタックするのかが曖昧に。ミツがバスケスをケアする形でそのままスライドしてきたが、それによって裏にスペースが生まれ、山本に走り込まれる。バスケスは、右足でトラップしてテンポよく左足で前方へ。フリーとなった山本はそのままPA内に侵入。天笠が寄せる前に走路を塞ぎ無効化すると、最後は立ちはだかる畑尾と櫛引の股を通す完璧なシュートで決め切った。畑尾がコースを切ろうとしたことで、櫛引はややブラインド気味となって反応が遅れた。ただ、あのコースを撃ち抜いてくる山本の技術を称えるしかない。
 このシーンで何故山本があの位置でフリーになったのか。恐らく、直前の交代のタイミングから梶川がDHの位置に入り、RIHに山本、LIHが阿野へとなっていたのだろう。試合序盤から山本の立ち位置は流動的だったが、最終盤でを前に置いて阿野と並列にしてきたことでウチが捕まえきれなかった。元々オフェンスセンスの高い山本がよりゴールに近い位置でプレーすれば、それはゴールの可能性も上がるはずだ。ウチとしても交代直後だったため、サイドのマークの受け渡しができなかったことが悔やまれる。ここを乗り越えればミツのフル出場も見えてきていたし、首脳時からしても我慢の時間帯だと考えていただろうから、ダメージは多少ある。

 1点取ったことでヴェルディはもう時間を進めるのみ。元気いっぱいの杉本だったり阿野だったりバスケスだったりがプレス。
 今シーズン初めてビハインドとなったウチは稔也→山中、ミツ→川上の2枚替え。プレスに臆することなく最終ラインから繋ぎ、ワンチャンスに懸ける。

 86分、左サイドでの展開から一度畑尾に戻す。畑尾は右に開いた城和に繋ぐと、外の川上ではなくハーフスペースに落ちてきた山中へ付ける。山中は完璧なコントロールオリエンタードで前を向くと、マーカーの新井が我慢できず手を出して止めた。ワンタッチで相手の前に入れる一連の流れは素晴らしいし、もっと長い時間見たい。本人から笑顔がこぼれるのも無理はない見事なプレーだった。
 山中の積極的なプレーで得たFK。風間の柔らかいボールに合わせたのは川上。ドンピシャのヘッドで3度ゴールネットを揺らす。しかし、2度あることは3度ある。あらかじめストーンとしてラインより前に川上を置いておいたのだから、ラインが下がってくればオフにならないんじゃないかというのが試合中の憶測。ただ、よくよくリプレイを見たら結構がっつりオフサイドだった。勿体ない。

 その後も敵陣に押し込み続けてはいたが、最後で相手に脅威を感じさせるまでの攻撃とはならず。0-1で終了し、今シーズン初の敗戦。

雑感

 終わらない負けなしはないし、結果自体はまあ妥当だろう。そもそも80分まで五分の戦いができていたことで一定の評価はできそう。

 守備は、失点したとて今日も十分の強度を見せた。ボールの扱いが上手い相手に対してもミドルプレスで応戦した。SB-IH-WGがかなり流動的に入れ替わるので難しかったが、あまり釣り出されはしなかった。
 ヴェルディとしてはIHが最前線に入ってきて5トップに近い陣形を取った。かと思えばIHが1列後ろで山本と横の関係になり、SBが大外で幅を取る場面も。IHのポジショニングによって誰がどこのスペースに入るかを細かく設定しており、見ていて凄く楽しかった。小池が常に裏のスペースを狙った動きを見せてるし、今後そのタイミングに合うパスが出てくるようになれば、もっと得点数は増える気もする。
 そういった一筋縄ではない相手にも耐えきれれば自信になったが、仕方ない。複数の要素が全てマイナスに作用してしまったし、この分はどこかで取り返そう。

 一方で、攻撃面では今日もトンネルを抜け出すことができなかった。ゴールネットを3回揺らせば勝点1みたいな特別ルールがあれば話は別だが、得点力不足は一歩ずつ改善していくしかない。3回とも形としては良かったし、次はルールで認められている方法で決め切って頂きたい。シュートチャンスのバリエーションは試合を重ねるごとに増えているし、前節終了後の監督コメントにあったように、チャンスを増やすことがゴールに結びつくことになるだろう。

 残念ながら4試合目にして負けなしもクリーンシートも途切れてしまったが、まだシーズン序盤。ここで連敗すると嫌な流れにズルズルハマりそうだが、切り替えて次節に臨むしかない。このタイミングで次節が千葉だっていうのは、何の因果か。ここで1つ相性の良さを見せつけて、また上昇に転じたい。昨シーズン2勝もプレゼントしたし、今年はその分も取り戻す(3バックに勝てないジンクスには目を逸らすし、このサッカーなら3バックにもある程度やれそうという希望を持ちたい)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?