雲外蒼天 vs徳島 0-0
ポジトラから先制点を得て、こちらのミスから同点に追い付かれたが、その後は火力で勝負してくる相手にシュートこそ撃たれど集中力を切らさずに戦い抜き1ポイントを積んだ前節。劣勢で只管耐えに耐えていたわけではなく、自陣からボールを持ち、左右に振りながら前進してチャンスを作った。自分たちが自信を持って90分戦えれば、より結果は良いものになっていく。
大きく崩れてはいないものの未勝利に終わった6月から心機一転、再度3ポイントを得るべく乗り込む今節の相手は徳島。前回対戦時は5分け5敗の爆弾状態で対戦し、強風の吹き荒れる中終盤にチャンスを作ったもののスコアレスに終わった。
徳島はウチとの試合の翌節に磐田を撃破して初勝利を挙げると、目覚めて一気に白星を重ねる。5月下旬には首位町田も撃破。柿谷がバイタルで決定的な仕事をするのとともに、最前線の森海渡が覚醒。サイズとスピードで柏ユース時代からその名を轟かせており、筑波大学進学後も1年時から試合に絡む。靱帯の怪我などもあったが3年時に慣れ親しんだ古巣のオファーを受け、4年になる2022年に柏に加入。ルーキーイヤーからリーグ戦にも絡み、広島戦と札幌戦でドッピエッタ。今シーズンは徳島に武者修行に来ると、ここまで9ゴールを奪う。思い切りの良く足を振るのも特徴で、シュートレンジは広い。また、3バックの守備も安定感があり、複数失点を喫する試合は少ない。それもあって、昨年同様負けは少なくドローで乗り切ることも多々。
ここ2年間、ウチはスアレスの牙城を崩せていない。勿論、アンカーを消すことと背番号8に自由を与えないことは鉄則。その上で、多くはないであろうチャンスを仕留めたいところ。
メンバー
ウチは前節から4枚変更。アマ→勇利也、佐藤→エド、武→平松、北川→長倉。アマは有給だったが、前節途中から試運転していた勇利也を起用。また、再離脱していた長倉が再復帰。ベンチには特別指定の田頭が初めて入った。
対する徳島は2枚変更。安部→長谷川、玄→中野。安部も累積警告による出場停止。
前半
どちらも自陣からボールを握りたがるのは分かっているので、そこに対して前から牽制を掛けていく。徳島は3バックなので噛み合わせの関係で大外で数的優位を得られる。通常であれば、徳島CBがコンドォクシオンして1stライン突破していきたいのだろうが、ウチはボールサイドのSHがWBを捨ててFW2枚+SHで3CBを捕まえていく。その際にSHが背中でWBへのコースを消すことで、安易に展開されるのを防ぐ。また、真ん中の白井へのコースも平松と長倉が間を閉じるとともに、CMFの片方が前を向かせまいと連動して牽制。
時間が経過していっても膠着状態は続く。徳島はやはり西谷と西野の所を上手く使って前進させようとするが、なかなかバイタルまで侵入できず。ウチも長倉が白井の脇でボールを引き出してポイント作るので押し上げやすくなるものの、こちらもアタッキングサードで枚数が不足しがち。
また、ビルドアップ時には岡本がIH化して中盤がドイスになる。加えて徳島のライン設定が高めなので、特に山中を目掛けての対角線のフィードで裏を狙う形も度々見せる。
36分、徳島がこの試合最初のチャンスを作る。敵陣左サイド深くでのスローイン。西谷はきちんと頭上を通っていないような投げ方で杉本に入れる。杉本→森海渡→西谷→杉本と左サイドで細かく繋ぐと、杉本がフェイクで勇利也の逆を取るとPA角からグラウンダーの斜めのパス。これを受けた中野が縦に持ち込んで角度のないところから左足でシュートを打ったが、櫛引が左足を伸ばして防いだ。
リスタートでそのままシュートまで行かれてしまった。人数自体は足りていたので、中に入ってこさせる前にタイトに寄せたかった。とはいえ、中央は固めていたので、シュートは角度のないところから打たせた。
ウチのチャンスは45分。櫛引がゆっくりボールキープして森海渡を引き付けると、キャッチしてすぐに中塩に投げて1stラインを突破。中塩から長倉に楔が入り、長倉がワンタッチで風間に落とす。風間が寄せてきた杉本を上手く剥がしてハーフウェーを超えるところまで運び、長倉に絶妙なスルーパス。長倉はPA内まで入るとカットインして右足を振る。しかし至近距離で石尾のブロックに遭う。こぼれ球を山中が拾って左足でシュートを放ったがミートせずに枠を逸れる。
自陣からスピードアップして一気に攻め切った。長倉のところで上手く引き出せるのはやはり武器。相手のスライドもネガトラも後手になっており、狙い通りだったからこそ、最後の仕上げは磨きたいところ。
どちらも決定機は少ないまま、スコアレスで折り返す。
後半
後半開始からウチは畑尾→城和。ここまでフル出場を続けていた畑尾の交替はどういった理由なのか心配。ただ、城和も天皇杯やその後のヴェルディ戦でも安定したパフォーマンスを見せており、頼りになる。
55分、セットプレーからウチが決定機を迎える。敵陣浅い位置でのFK。山中が少しボールを動かして左サイドを縦に走る。風間は大外のエドを使ってワンツーを受けると、フリーでクロス。ファーでフリーの城和が頭で合わせたが、ボールに勢いが伝わり切らずにGKの正面に飛んだ。
シンプルに上げるのではなく、揺さぶってより優位な状況を作り出した。山中のランニングで相手を釣ってスペースを作り出すのは上手。最後の城和は主審のシグナル見るとオフサイドだったようだが、惜しかった。
58分、ウチがまた形を作る。自陣左サイドのスローインからビルドアップ。酒井・勇利也・岡本でトライアングルを作り、岡本が長谷川を背負いながらも反転して前を向いて平松へ。平松はワンタッチで山中に叩くと、山中はスピードに乗ってボールを確保し、正対する長谷川と駆け引きしながらPA内に侵入するとカットインして左足でフィニッシュ。腰が回転しきらず、シュートはファーに流れていった。
この場面では徳島が前から厳しめに掴みに来たが、岡本の所で相手の矢印を折って前進できたのが鍵となった。そのあとの平松ワンタッチ落としからの山中の加速も同様だが、それぞれの局面で相手を上回ることができれば、ゴールに近付ける。
62分、ウチはエド→川本、平松→北川の2枚替え。同じタイミングで徳島も中野→児玉。
徳島は児玉が入って自由に動いてボールを引き出す。また、児玉は前を向いて細かなタッチでボールを持つので、守りにくさはある。ただ、徳島は局面打開のパスが悉くズレており、なかなかアタッキングサードに入らない。それだけウチのスライドが早くブロックが崩れていないという見方もできる。
76分、ウチは風間→内田。83分、徳島は森海渡→棚橋、西野→髙田の2枚替え。どちらも選手交代で膠着状態を打破しようとしたが、大きな変化は起きず。
85分、CKからウチにビッグチャンス。右サイドのCK。川本のアウトスイングのボールに中央でフリーの城和がドンピシャで合わせたが、スアレスが体に当てて防いだ。これはもうスアレスを褒めるしかない。
90+3分、右サイド深くのスローイン。スローワーの中塩はロングスローを投げるべく長めの助走を取ったが、PA深くに走った北川に付ける。北川はややコントロールが乱れたが、中塩にリターン。中塩から岡本に渡ると、ステップで相手を剥がしてクロス。ファーで城和が競り勝ち折り返すと、最後は川本が身体を伸ばしてシュートを打つも、バーを越えていく。
最後まで両チームとも均衡を破ることなく、スコアレスのまま終了。
雑感
締まった内容の90分。今までであれば最終盤に押し切られそうな展開だったが、最後まで安定していた。
守備はクリーンシートという結果が全てを表している。WB置いてIHがハーフスペースを走ってくる3バックとの対戦はどうしてもかみ合わせが悪くなって打開されることが多いが、この試合ではほぼなかった。IHがランニングせずに内側でボールを受けることを好み、WBの推進力で勝負してきたこともウチとすると守りやすかった。とはいえ、WBを封殺し自由を与えなかった部分は大きい。また、普段と異なるメンバーでも不安定にはならず、固さを保った。後半ATには相手のビルドアップで前に掴みに行ってチャンスを作りかけたように、ボール奪取のポイントで着実に奪えている。
攻撃はそもそものチャンスが少ない中で、やはりセットプレーから仕留めたかった。ポジトラやビルドアップで勝負できる部分はあったが、要所要所ではプレーを切られてしまう。相手を上回るためにも、リスタートで奪う機会を増やしたい。
これで3戦連続引き分け。内容は悪くないものの、未勝利が続いているのでどうしても徒労感がある。何かを変える必要はない。自分たちを信じて戦って行くしか状況は打破できない。