日々精進 vs長崎 2-3
相手のプレスの勢いに気圧されて立ち上がりに喫した2失点が響いたものの、リバウンドメンタリティを見せた新潟戦。本間・伊藤・高木の2列目を捕まえるのはどうやっても難しいし、あのクオリティの方々が即興ではなく原則に基づいて動かれると脱帽。それでも、構えるのではなく1列前の選手を捕まえに行った後半は大分立て直していた。2列目に注目してしまいがちだが、SBを誰が見るかを明確にすることが攻略の糸口だということを見返して感じた。これから新潟と戦う皆さんには、その辺のケアを心掛けて頂きたい。と思いつつ、今年こそ新潟さんも失速せず最後まであのクオリティを保って上がって欲しい。ちゃんとサッカーするチームに正当な結果が伴っていくことを祈る(そんな他所のこと心配してる余裕はまだ全くない)。
悪い流れを断ち切るために迎える相手は長崎。開幕直後は低迷したものの、監督交代後は松田式4-4-2のブロックで昨シーズンは終盤まで昇格の可能性を残した。
昨シーズンの戦いぶりを考えれば上位にはいるだろうと思いきや、まさかの苦戦。37節のアウェイ長崎戦で猛威を振るったウェリントンハットが移籍期間満了でいななっているが、何よりここ2シーズンのキーマンだった毎熊が引き抜かれたダメージが想像以上に大きい。刈り取る位置が明らかに低く、取った後のボールのつながりもよろしくない。柏から加入したクリスティアーノがボールに触る時間が限られていて、チーム全体的に重苦しい雰囲気が漂っている(らしい)。
ジャパネットマネーを駆使して選手層はJ2トップクラスを誇っているが、それを生かせていない。ただ、1つ噛み合いだせば爆発力は確か。
今節も眠っていてほしいが、如何せん対戦成績は最悪。14戦1勝1分12敗、驚異の勝率7.1%。苦手なものをいつまでも引き摺るわけにはいかない。
メンバー
ウチは前節から1枚変更、平松→深堀。内田が開幕戦以来のメンバー入り。
対する長崎は敗れた前節金沢戦から3枚変更。笠原→富澤、村松→エジガルジュニオ、山崎→都倉。前節はCFだったクリスティアーノがRSH、澤田が左に回り、米田が1列下がりLSB。前線の組み合わせが変わったので、後ろの選手の配置も結構変わっている。加藤聖と笠柳がドバイカップに帯同しており不在(サウジに勝って優勝)。
前半
前節は相手のプレスを受けて詰まった立ち上がりだったが、この試合もデジャヴ感満載。
4分、左サイドでのビルドアップの局面。枚数で嵌められたため、城和は櫛引に戻し、櫛引は逆サイドではなく敢えて縦の岩上へ。岩上→城和→風間→山中とワンタッチで繋げる。風間に通った段階でカイオセザールと加藤大が喰い付いてきており、ここを掻い潜れればウチのチャンスになったことは間違いない。しかし、風間のパスが浮いた難しいボールになり、山中は何とか追いついて前に付けたものの、奥井がカット。ポジトラしようとしたタイミングでロストしたので、そのまま奥井に前進を許すと、山中の内側にいたクリスへ。クリスは最終ラインの後ろにグラウンダーの速いボールを供給。DFにとってはとても対応の難しいクロスであり、ボールがファーに転がっていたところを都倉が押し込む。あっさり長崎が先制。
ロストの仕方は確かによろしくないが、チャレンジしにいった場面だっただけに評価が難しい。櫛引が岩上を選択したのは、同サイドで攻撃を繰り返していこうというプランに則ってのこと。あのプレスを剥がせるかが今後の改善点。「クリスにアタックに行け」、「クロスを上げさせるな」と言うのは簡単だが、エジガルを捨てて寄せるのもリスクあるし、クリスにボールが渡った時点で分が悪い。
前節に続いて開始15分以内に失点。新潟戦では、先制点によって積極性が影を潜めて閉じこもり、ズルズル失点した。今節は違いを見せたいと意気込んだが、またも追加点を許す。
19分、ウチが深い位置まで侵入するもシュートには至らず、こぼれを米田に拾われてクリア。これを岩上が下がりながら対応するが、下がり切らずボールは後ろへ。城和がボールにアプローチするも、エジガルに上手く身体を使われて入れ替わられる。推進力を見せて、自陣浅い位置から敵陣中央まで運ぶ。十分にタメを作ったところで、右のクリスへ。クリスは自身の前にスペースがあると見るや、右足を強振。強烈なシュートは櫛引の手をかすめてネットに突き刺さる。圧倒的な個で殴って追加点。
エジガルとクリスに前を向いてプレーさせたら最大火力になるのは間違いないし、それに対してウチの選手が後ろ向きにプレーせざるを得なくなったら詰み。山中が中央をケアして絞ろうとした瞬間にパスを出され、身体のターンの向きが合わなかった。こういう細部を見逃してくれないのが、J1で得点を量産していた選手である。
2点を取って長崎がプレスを掛けてくる回数が少なくなったこともあったが、徐々にウチも落ち着きを取り戻す。KJがCHと並ぶくらいのかなり低い位置まで落ちてきてボールを引き出し、奥行きを作り出す。長崎は都倉とクリスの神風プレスで圧力を掛けるが、後ろの選手たちとの連動が今一つだったので、プレスによって空いたクリスの脇のスペースを使いだした。24分のビルドアップや、29分のクロスまで至った一連の流れは回復の兆し。山中からCHを通してKJに渡るトライアングルが機能しだすと、やはりボールの回りは格段に良くなる。
大槻監督からも、「もっと押し出せるぞ。縦入れてけ。」という声が飛んでおり、臆することなく縦を増やしていく。
45+2分、小島のランニングによって得たFK。岩上がラインの裏に落とす絶妙なボールを上げると、ニアで天笠が頭で逸らす。難しいシュートだったが完璧なコースに飛んでいき、前半終了間際に1点を返す。天笠はこれがJ初ゴール、めでたい。
2点差で折り返すのと、1点差で折り返すのでは全然印象が違う。1点差に詰め寄って前半を折り返す。
後半
後半開始から稔也→奥村。前節は岩上に替わってCHに入りリズムを作っていた奥村だが、1つ前のポジションでどのような働きをするかは楽しみだった。
49分、GKからのフィードを畑尾が跳ね返し、深堀へ渡す。深堀→奥村→KJとワンタッチで繋がり、一気に加速するところでカイオセザールがボールのみを刈り取る。
その流れで得た左サイドのスローイン。1度はクリスにカットされたが、再度山中がスローインを入れる。受けた天笠は何とかキープしようとするも長崎が回収。それに対してKJが猛然とプレスを掛け、奥井はクリアして逃げるが、山中が拾う。山中はそのままボディフェイクを駆使して数人を剥がす。深い位置まで侵入したところで止められるが、DFが手を出さなきゃ止められないくらいのキレキレの動き。
64分、岩上のロングスロー。ニアで城和が競ってこぼれたボールを天笠がシュート。可能性は十分感じたが、惜しくもサイドネット。
67分、遂にウチが追い付く。CB+風間の3枚でボールを動かして都倉を走らせる。城和から風間に1つ飛ばしたパスが通ると、風間は都倉とクリスの2枚を引き付けてから急加速して剥がし、外でフリーの山中へ。山中→天笠→KJ→天笠とボールが渡り、天笠は二見と奥井の捨て身タックルにも負けることなくクロスを上げる。これは味方のいない場所に飛んでいくが、奥村が球際でしっかり寄せてマイボールにする。こぼれを拾った岩上は、山中に渡して外側のレーンを走る。山中は岩上を使うと思いきや、そのまま自ら前進して天笠へ。天笠から岩上にボールが戻ると、岩上は右への展開を意識させながらボールを運んでバイタルに侵入。深堀とのワンツーは惜しくも通らなかったが、相手にクリアさせないために深堀が懸命に追い、ボールは天笠の元へ。天笠はファーに走り込んだ小島を目掛けて見事なクロス。小島がダイビングヘッドで流し込むと誰もが予想したが、小島はより可能性の高い奥村への折り返しを選んだ。プレゼントをもらった奥村は冷静に押し込む。
何度かボールを失いそうな瞬間はあったが、常に身体を寄せて蹴らせなかったことがゴールという結果をもたらした。地上戦での崩しも、クロスでの攻略の形も見える素晴らしいゴール。奥村も嬉しいJ初ゴール。
追いついた勢いのまま引っ繰り返したいと攻勢を強めた77分、痛恨の失点。山中がKJに状況打開のパスを入れるも二見がカットしクリスへ。クリスは踵で上手く方向転換して山中を置き去りにしてPA内に侵入。利き足ではない左足でのシュートだったが、思い切って打ったことで強烈なスピンがかかっており、櫛引がファンブル。ラインを割っていたとは映像では確認できないが、VARのないリーグならどうにもならん。
最後は畑尾を上げるパワープレーを敢行し、最終ラインが岩上・川上・城和・風間の4人となる特攻。しかし追いつくことはできず、2戦連続の2-3での敗戦となる。
雑感
試行錯誤の段階であり、生みの苦しみを味わっている。
クリスとエジガルと都倉に殴られると厳しい。とはいえ、失点のシチュエーションは新潟戦と似ている。プレスを受けてロストし、重心が上がらずズドン。
開始直後ということもあり、リスク回避は考えなければならなかった。ただし、今後も繋ぐ場面でロストして失点まで至ることは想定されるので、ある程度の割り切りも必要となる。ゴールに近い位置でパスを回すリスクを背負っても、それによるメリットの方が大きい。
一方で即時奪回の意識は強く感じ取れ、得点にまで結びつけた。敵陣まで押し込んだ際には、そのまま圧縮させる場面が多い。この試合では奥井をターゲットに設定しており、余裕がない状態で奥井にボールが渡るような限定がなされていた。奥井のサイドにはクリスとエジガルというパワー系の選手がいるので、苦し紛れのパスが2人に通ると面倒だったが、パスコースをCHと天笠がケアしていたので、長崎に局面を引っ繰り返されることはなかった(順当に殴られてやられたことは知らん)。トランジションの速さは確かだからこそ、ボール保持時の立ち位置の部分を精査すれば大崩れの心配はないように思う。
オフェンスについては、2試合連続の複数得点。2人とも初ゴールであり、今後益々期待。
山中からの縦パスが起点となって前半途中からは押し戻せていたが、後半は風間・岩上・奥村という「発射台」を担える選手たちが展開した。選手が密集した狭いエリアでも不自由なくボールを受けられることが奥村の大きな強みだが、SHで起用された意図を汲み取りライン間に立つことが多かった。また、大外に張るのではなく1つ内側に位置するので、小島が外を回ってボールを触れる回数も増えていた。左での攻撃が多いのは周知の事実だが、右でも組み立てられると相手の対応も変わってくる。
これで連敗となり、負けが先行した。例年通りと一刀両断することも簡単だが、明らかに劣勢だったところからニュートラルな状態まで押し戻したのはワクワクした。そのまま逆転できるかが上位陣との差(ヴェルディは琉球相手に0-2から5点を奪う大逆転勝利)。48試合のうち7試合を終えた段階で試合中の修正から流れを変えられたのは、プラスに捉えたい。
結果が出ない試合が続く中で次節は今季最初のダービーを迎える。連敗中だろうが失点が続こうが、試合前のチーム状況は一切関係ない。ダービーは勝たなければならない。次節を勝つことで、すべてが上向きになっていくはず。勝とう。