行雲流水 vs山形 0-1

 謎の噛み合わせの良さを発揮し、計算外の勝点1を得た京都戦。一瞬の隙を見逃さない大前は流石だった。試合を通して攻められるのは想定内だったが、90分通して集中を切らさず最少失点に食い止めたのは収穫。ウタカは早くJ1に行ってください。

 上位相手にしぶとく勝点を拾って次に挑むのは山形。クラモフスキー体制がハマって一気に躍進。夏場に7連勝を含む13試合負けなしと勢いを見せていたが、最近は一時期に比べて少し下降気味。
 ポステコ現セルティック監督の右腕としてマリノス優勝に導いた経験が示す通り、選手の立ち位置の管理に特徴を持つクラモフスキー氏。清水では苦戦したが、山形では自らの戦術を落とし込んでいる。監督交代時にヘッドコーチとして川合氏も加わった。愛媛を上位に押し上げながら後味悪くクラブを去った川合氏だったが、山形では似た哲学を持つクラモフスキーと組んで躍動。先日の琉球の監督交代も同様だが、内容とクラブ規模を鑑みないで結果を求めた判断は首を傾げる(人の事何にも言えないけど)。

 京都とは多少特徴は異なるが、原理原則に基づいて戦う相手というのは共通している。ボールを相手に持たせ、ポジトラで上回れるかが鍵となる。

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 ウチは前節から2枚変更。広大→大武、和音→KJ。大武の怪我が癒えてスタメン復帰、KJも戦線復帰後初スタメン。岩上と内田は前節終盤それぞれ足を気にしていたが、問題なかった。中山が久々のメンバー入り。

 対する山形はウノゼロで勝った相模原戦からノーチェンジ。樺山、山田康太のマリノス産若手は脅威だし、特に山田は来シーズンこそマリノスでプレーできるのではと思う出来。去年も水戸でクオリティの違いを見せていたが、今年はさらに磨きがかかっている。

前半

 立ち上がりは比較的ウチがボールを持った。フィニッシュには至らないが、深い位置まで侵入する場面も見られる。

 しかし5分、最初の決定機を山形が作る。自陣でのビルドアップで陣形を整えると、山﨑から中原へのロングフィードが通る。そのまま深く抉り、左足で持ち込むフェイクを挟む。藤田が中原の背後を駆け上がり内田を引き付けると、それによってできたスペースを中原が活用して中に入る。するとハーフスペースに南が走り込みボールを受け、すぐに中央の山田康太に付ける。山田は右足でコントロールした後、ピボットで身体の向きを上手く変えると、左足のチップキックでアラウージョに通す。アラウージョは足裏で上からボールを叩きつけるようにプッシュ。反応しにくい足元にボールが飛んだが、慶記が足に当てて防ぐ。何とか先制点を阻止。

 が、一難去ってまた一難。相手のラフなボールに対応するために足を伸ばした藤井が負傷。恐らくは右太腿の再発。ようやく復帰して右サイドで安定感を見せていただけに、あまりにも痛い。本人がフラストレーションを溜めるのも無理はない。藤井に替えてミツを入れて、小島を右SBで起用。早い時間で交代枠を使うのは誤算の1つ。

 10分過ぎからは、下馬評通りの山形支配の時間が続く。ボールを持ちたくないウチからすれば好都合だが、どこまで非保持で耐えるか。

 16分、中央でボールを南に回収され、そのままハーフスペースの山田に刺されたところを岩上が倒し、FKを与える。中原がタイミングを外して蹴ると、中で野田が合わせる。確実に枠に飛んでいたが、岩上がライン上でクリア。前節のラストプレー同様ポストに直撃したが、窮地を救った。

 ウチのチャンスは23分。慶記からのボールをKJが何とか収めて時間を作る。上がりを待って岩上に戻すと、岩上はシンプルにDFラインの裏を目掛けてボールを供給。このボールに野田が被ってしまい、裏に抜け出した北川に届く。ファーストタッチもボールの勢いを上手く殺したが、シュートが効き足でない左足になってしまったために勢いがなく、藤嶋に反応されてしまった。

 26分、今度はPA手前の正面で大武が中原を倒してしまう。このFK、中原が左足で直接狙うが、コースに置きに行った分だけボールスピードがなく、慶記がドンピシャの反応。こぼれ球を藤田に詰められるが、慶記が素早く体勢を立て直して体に当てる。やられてもおかしくない場面が続くが、のらりくらりとやり過ごす。

 ウチが次に敵陣深くまで持って行ったのは39分。北川が南のところまでプレスバックしてパスカット。大前に渡して一気に加速し、リターンを受ける。4対4の数的同数の状況だったが、北川は自らPA内に侵入。稔也、大前、KJが中に入っていたが、それを囮に北川はシュートを選択。しかし、シュート前のコントロールが上手くいかず、相手のブロックに遭ってしまう。

 スタッツで山形が支配率7割弱を記録するほどボールを持たれたが、集中を切らさずにスコアレスで折り返す。

後半

 後半開始早々、稔也がアフター気味だったがラッキーな形で倒されてFKを得る。距離は申し分ないが、壁の外側に長身の選手を並べられたため、大前のキックも壁に当たる。

 58分、内田から右サイドで高い位置を取った小島へのパスが繋がらずにロストしてからの被カウンター。南→藤田と渡ったところで山形の右サイドにはスペースがあったが、藤田は敢えて縦の山田康太に楔を入れる。横のパスによってウチの選手の体の向きが変わったタイミングであのパスが入ってくると対応は極めて難しい。上手く内田とKJの間のスペースにポジショニングした山田康太も見事。一気に前方にスペースが開けた山田は斜めにドリブルし角度をつけ、アラウージョへのパスをDFに意識させながら、サイドの中原へ。中原はキープして半田のオーバーラップを待ち、完璧なタイミングでパス。半田は走ってきた勢いそのままにワンタッチでクロス。中で山田拓巳、アラウージョ、樺山が合わせようとしたが、誰も触れず。ただ、この場面で山田拓巳がPAに入り、しかもニアで合わせようとするのは敵ながら天晴れ。ポジトラの速さも勿論だが、アタッキングサードでの個々の動き出し+役割分担が明確になっているのだろう。その原則が、後々結果に繋がるのは必然。

 67分、中途半端なパスミスから山形のチャンス。山田拓巳がパスカットして藤田へ。そのタイミングでアラウージョが裏に抜け出そうと走ってDFを釣る。山形の左に大きく空いたスペースを活用しようとCBの野田が1列前に来て藤田と中原の中継をする。中原はカットインのタイミングを窺い、半田のインナーラップを利用してPA角まで持ち込みインスイングのクロス。これは小島が跳ね返すも山田康太が回収。頭でのパスは引っかかるが、左サイドの樺山が回収。樺山→南→藤田と繋がり、藤田はPA外から積極的に狙う。低く抑えられた強烈なシュートは慶記の正面に飛ぶ。一瞬ボールがこぼれ、アラウージョが詰めてくるが、慶記が勇気をもって飛び込んでボールを確保。山形としてはチャンスを活かせなかったが、一連の流れは見事。

 74分、またもや山形の決定機。ビルドアップしながら出口を窺って左右に振る。何度かスライドを繰り返すうちに、ウチの重心が下がって山﨑と野田のCBはフリーでボールを蹴れるスペースを得る。すると野田がノープレッシャーで右サイドに大きく展開して中原へ。中原は山田康太に渡して縦に走り、もう1度ボールを受けようとするも、中原を警戒して戻ったKJがカット。しかし、山田康太が鋭い出足で即時奪回。山田→半田→アラウージョとパスが繋がり、アラウージョは前を向いたが無理をせず中原に落とす。中原は左足でコントロールショットを放つが、ボール1個分コースが逸れる。

 さらにウチのピンチは続く。82分、ウチが敵陣深くまで嵌めに行くも剥がされて局面をひっくり返される。半田にボールが渡り、更にその前方には守備をサボってサイドに張るマルティノスが待ち構えており、半田はそこを使う。半田が頑張って走ってスペースを空け、そこを使ってマルティノスがカットイン。左足のクロスは微妙なところに飛んでいったが、岩上がヘディングでカット。危うくOGになりかけたが、難しい対応をこなした。

 これだけ防げば1ポイントの芽があるかとも思われたが、90分に決壊。相手のビルドアップに積極的にプレスを掛ける。体力的にも厳しい時間帯だが内田まで押し上げて蓋をしようとした。しかし、ウチの右サイドで剥がされて良くない展開に。アラウージョが前を向き、左サイドで1人張っていたマルティノスに渡す。ここぞとばかりにマルティノスは前進し、強引に自分で仕掛けるのではなく半田にパス。先述の58分の場面ではプラスの速いボールで合わなかった半田は、今度はマイナスのクロスを選択。ウチのDF陣は下がるのに精いっぱいでマイナスに対応できず、最後は加藤が押し込んで土壇場で山形が先制。
 前から人数掛けたなら、縦に出される前にプロフェッショナルファウルしてでも止めなきゃだったし、そこを打開されれば当然人数足りないのは目に見えてる。加えて、終盤にマルティノスが右サイドにいたのが結果的に効いた。中原であればある程度中に絞って半田の駆け上がるスペースを空けただろう。しかし、マルティノスは自分のドリブルのコースを確保するためにサイドに張り付いていた。孤立していたことで、逆にウチの守備が難しくなる側面があった。

 残り数分を耐えきれず、0-1で終了。勝点を詰めなかった。

雑感

 今の戦い方で負けるならこうだよねっていうテンプレみたいな敗戦。

 89分押し込まれるなりに誤魔化していたが、失点時の判断だけが勿体ない。リスク冒して前から狩りに行くのであれば、最悪でもファウルで止めなきゃならない場面、時間。やられ方に既視感があったのは、NLDでのスパーズの2失点目。ホイビュアとソンフンミンで嵌めようとしたのに前進を許して最終ラインがグロテスクな決壊をした。
 重心が低くなって間延びするのも嫌ったり、大武のコメントであるように3ポイントを狙ったりという中での押し上げは否定しない。が、今の状況でのプライオリティはどこに設定するのか。もう1度意識の共有が求められる。

 あれだけ守勢に回ればチャンスは少ないが、それでもポジトラで上回る場面は何度か作った。最後の仕上げは変わらず課題になるだろう。だが、基本的には速く仕掛ける。KJでボールを落ち着かせるポイントが出来たからこそ、攻撃時は縦に速くしたい。

 最後にやられたダメージが大きいので、当然ネガティブに捉えたくはなるが、内容自体は決して悪いわけではなかった。最後に耐えられないのが大問題な訳だが、プランニング自体は間違っていない。そもそもそれ以外に選択できるほどのプランがない。これを継続するしか生き残る道がない。それは監督交代時から分かり切っていた。
 耐えた京都戦は評価し、耐えられなかった今節は掌を返す。結果が必要なのは百も承知だが、そこの過程を無視した一貫性のない評価はモヤモヤする。特定の選手を吊るし上げて叩いて何が生まれるのか。お気に入りの選手を起用しないのはおかしいって何の根拠があるのか。そんなんなら、ウイイレでもサカつくでもして自分の思い通り選手動かせばいい。

 今のチームを全肯定することはできないが、少なくともチームとしてのタスクはある程度果たしていると思う。そこに残り7試合でどれだけ+αできるか。こうなった以上腹括るだけ。

 次が天王山なのは誰でも分かる。プレッシャーが重くなるが、自分たちで道を開く。

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