凡事徹底 vs町田 0-2

 ボールがピッチにある時間が極めて少なく、確実にエンタメ性を欠く試合展開だったが、着実に1ポイントを積んだ前節。自分たちの狙いを表現しにくい状況下であった中でも、屈せずに試合を進めたのはポジティブ。

 やっとフットボールが繰り広げられるであろう今節の相手は町田。ウマ娘マネーで大型補強を敢行。数年前の千葉を彷彿とさせる選手の入れ替わり。また、クラブとの軋轢が表面化していたポポヴィッチ体制が終焉。ポポ時代の象徴的存在だった平戸や佐野、太田修介もJ1へ巣立った。とはいえ、各ポジションに新たな選手を招き入れ、大規模なスカッドでJ1昇格を目論む。そして、新指揮官として高校サッカーで長きに渡り青森山田を率いて結果を残し続けていた黒田氏を招聘。コーチには鳥栖で色々あった金氏、売り出し中の細谷を筆頭に柏U-18で筆頭に数々の選手をトップに輩出した山中氏が入閣。指揮官が戦い方の大枠を定め、ボールを握る部分は両コーチが担うのは想像に難くない。青森山田時代も戦術的な部分はコーチが落とし込んでいたという話は耳にしたことがあるが、それにしても戦う集団に仕上げることには長けているだろう。
 開幕戦はこちらも昇格に向けて補強を行った仙台と対戦しスコアレス。前線の火力で殴る効率的な攻撃でゴールに迫るも、最後の部分で決めきれず。平河とエリキでガンガン前進しつつ、詰まったらデュークにシンプルに当てる形を見せる。後ろは池田とチャンミンギュが鎮座。勝てる試合だったと発言する選手も複数あり、手応えはありそう。鼻息荒く今節に臨む。

 正しくお金を使えばクラブとして成長していくのが通常。しかし、クラブの予算と成績が比例しないのが魔境J2である。今までいくつかのクラブが多大なお金をつぎ込んだ上でJ2に定着する姿を見てきた。果たしてどうなるのか。
 そしてまた、ウチも予算規模を徐々に拡大し、将来的なJ1昇格を目指すことを明言している。ゆくゆくはこうなるべきと思いつつ、予算規模の差を埋める戦いを見たい。

メンバー

 ウチは前節から2枚変更。中田→天笠、平松→武。青森山田出身のアマと、前節契約上出場できなかった武が今季初スタメン。アマが真ん中でプレーするのも久々。佐藤は北九州時代の主戦場であるRSH、それに伴って長倉が中央に置き、川本をLSHにした。ベンチには奥村が入った。

 対する町田は仙台戦から。J2で名を馳せた方々が軒並み揃う。開幕戦で途中出場した高澤は不在(試合後にアキレス腱断裂のリリース)。

前半

 メインから見て右から左に結構な風が吹いていて、前半は風下となる。町田は想定通りデューク目掛けたロングボールが多かったので、ウチは一先ずリスクを避けるためにシンプルに跳ね返すことが多い。その中で、酒井がデュークと競り合った際にレイト気味にアタックしていきなりのカード。危険なプレーでイエローは致し方ないが、ここでレフェリーの基準が示された。

 12分、平河の突破によって得た右のCK。下田のインスイングの高い弾道のボールをファーでチャンミンギュが頭でマイナスに折り返し。そこに高橋が飛び込むが、アマが寄せて打たせない。しかし、ボールはエリキの前に転がる。エリキは右足を振ったがミートせず、櫛引が処理。
 この場面ではエリキがGK前に位置取りし、ボールが入ったタイミングで後ろに戻ってスクリーンし、上手くチャンミンギュをフリーにさせている。また、ニアにデュークを置くことでウチのCB陣を前に誘き寄せ、ファーでのミスマッチを誘発させる狙い。髙橋もサイズのある選手ではないが、前を向いてプレーできる方に分があるのは当然。試合2日前からセットプレー練習をしているらしいが、確かに作り込まれている。

 ウチもウチでCKからチャンスを迎える。17分、右からのCK。佐藤の蹴ったボールを中央で川本が逸らし、ファーで天笠が胸コントロールから右足でシュート。しかし、至近距離でブロックされて得点には至らず。
 武&畑尾、酒井&川本の2ブロックに分かれ、それぞれが交差して動くことでマーカーを剥がしにいった。その隙にアマがファーにスーッと移動していく部分までデザインしていたとすれば、とても面白い。

 ウチは開幕戦同様、酒井・畑尾・中塩の3枚で最終ラインを形成し、1列前にアマと細貝を置いてのビルドアップ。町田がボールサイドのCB2枚+CMF2枚を掴みに来るので、各々が落ち着いてボールを持つことは容易ではない。上手く空いている逆のCBに振ることでプレス回避はできるが、町田がパワー掛けて狙ってきたタイミングではやはりロストが目立った。それ以外にも、CBからCMFに付ける際の縦パスがズレて、相手が前を向いた状態で掻っ攫うというシーンも多い。ただし、繋ぐのであればロストもある程度織り込み済み。現に失点までは持っていかれていない。選手間の距離やポジショニングは間違っていないからこそ、ロストしても大崩れしていない。

 22分、櫛引がスローで1stラインをブレイクしたところから始まった攻撃。長倉と佐藤が顔を出しながらボールを動かす。中塩が少し持ち運び、エリキが喰い付いた瞬間に左脇のスペースにボールを流す。長倉がそこで細かなタッチを見せ、川本に当ててパス&ゴー。川本は上手く身体を使って入れ替わり前を向く。長倉が内側からオーバーするタイミングで川本からボールが渡ると、一気に加速して1stタッチでチャンミンギュを置き去りに。チャンが必死に追いかけてきたと見るや、切れ味抜群のキックフェイクで寝かせる。最後は右足を振り抜いたが、ボールが足元に入った分だけボールの下を蹴ってしまい、僅かに上に外れる。長倉に入るまでの作り方も理想的だった上に、長倉が持ってからは独壇場。あんなシュート決まっていたらお金持ちのクラブが夏場にちょっかい出してくるに違いない。

 26分、町田のロングスローを一度跳ね返すが、右サイドで高橋が回収し、2人を経由して左サイドの翁長へ。翁長は池田に縦パスを付けてスプリント。サイドのスペースがない状況だったためウチも引っ掛けることもできそうだったが、池田が反転して出したパスが結果的に岡本の足を出すタイミングに合わず、翁長に通る。翁長は無理にクロスを上げずにフェイクを入れてから池田にリターン。池田はワンタッチでクロスを入れると、畑尾の奥でチャンが合わせる。身体を捻ってゴールに飛ばしたが、櫛引の正面。

 32分、最終ラインでのパス回しの中で池田がシンプルにデュークにフィード。デュークが左に流れてキープし、オーバーラップした翁長へ。翁長はグラウンダーでGKとDFラインの間の嫌なコースにボールを送るがエリキは間に合わず中塩がクリア。セカンドを池田が拾い、再びデュークへ。デュークは手数掛けずにクロスを選択。これが佐藤にディフレクトして右サイドの平河へと渡る。平河→高江→エリキ→下田→高江と狭いスペースでトライアングルの形成と瓦解を繰り返しての打開。高江のところでアマが何とか足を伸ばしてカットしたが、こぼれ球をエリキがフリーでシュート。右に逸れたものの、肝を冷やした。

 33分にも町田にチャンス。センターサークルでデュークが顔を出して右に展開。そこからエリキが縦に仕掛けたそうにしていたが、ウチのブロック形成ができていたため高江へ。高江は左へのサイドチェンジ。左で受けた翁長は細かなフェイクを繰り返してカットインのタイミングを窺い、ライン際からPA角まで加速して右足でのクロス。デュークの手前で酒井が流石の強さを見せて弾くが、セカンドをエリキが残す。正対する川本を右足の横スライドで簡単に剥がして左足を強振。長倉が戻ってきてプレッシャーをかけたこと、遠心力により腰が回り切らなかったことで枠を大きく外れたが、ゴールに近付いている。

 そして38分、町田が均衡を破る。プレスバックした川本が平河を手で倒してしまい、深い位置でFKを与える。ウチはゾーンでの対応。ニアでチャンミンギュとデュークが走り込み、その2人から1つ遅れてファーで池田が飛び込みピンポイントで合わせた。そもそも池田を誰も捕まえられなかった。加えて、先述のCKでもエリキが前にいたが、このシーンでも先に飛び出して上手くGKを牽制。大外にもフリーがいたし、してやられた。

 何とか応戦していたがセットプレーで違いを見せられ、ビハインドでの折り返し。

後半

 後半開始時でのメンバーチェンジはなく、まずはスタートのメンバーで流れを取り戻そうとする。

 52分、後半最初のチャンスも町田が作る。細貝がエリキを削って中央でFKを与える。高江の入れたボールはニアで酒井が跳ね返す。セカンドを平河が持つと、そのままガンガン加速してアタッキングサードに侵入。細貝のプレスに長倉が加勢して寄せると、平河はクロスを選択。ボールが飛んだ先には町田の選手が誰もいなかったが、クリアが小さくなって再び町田がボールをコントロール。また平河へとボールが渡ると、先ほどの縦突破のイメージを利用してカットインし、左足でクロス。デュークにはわずかに合わず畑尾が頭でクリアするが、翁長が落ち際をボレーで叩く。鋭いシュートは枠に飛んでいったが、櫛引が冷静にパンチングして難を逃れる。

 リードしていることもあり、町田がプレスではなくリトリートを選択する場面も増える。そのため、ウチは後ろではある程度自由を与えられてパスを回す。しかし、そこから1stラインを超えるのには手間取った。アマがピボットターンでテンポを上げようとする場面が何回かあったが、その先の連動性はまだここから。長倉が落ちてくると打開できるのは分かったが、中の枚数削って外を前進していくのは本末転倒にも感じてしまうので、運用が難しい。

 63分、ウチにこの試合最大の決定機。最終ラインが敵陣に入ってボールを回す。酒井から岡本に入ったところで翁長が付いてきたので、佐藤がそのスペースを狙って走り込む。そこに出すコースは切られたが、佐藤が相手を連れ出したことで、細貝が元々の佐藤のレーンに入ってボールを受ける。少しプレッシャーが弱まったため、細貝はバイタルの武に楔を刺す。武は佐藤に落とすと、佐藤は無理せず境に戻して作り直す。酒井はアマとのワンツーでタイミングを整え、佐藤に完璧な縦パス。佐藤の強引なクロスはDFに当たるが、こぼれを岡本が間髪入れずにクロス。上手くCBを越したボールにファーで長倉が飛び込むが、シュートはポストを直撃。惜しくも決まらず。
 試合後に大槻氏も言及していたが、この攻撃は狙い通りだった。右側の3つのレーンで距離感を保ちつつ、相手選手を複数引き付けてフリーの味方にボールを送ることが繰り返された。縦パスでスイッチが入ったことがチーム内で共有されており、すぐに佐藤や岡本が走り出す。こういう場面を増やしたい。

 チャンスをゴールに結びつけられなかったウチは、川本→山中で最初のカードを切る。山中の推進力で多少強引にもブロックを崩す意図。さらに、細貝→風間、武→平松。中盤でボールを供給できる風間と、前線でボールを収めて時間を確保できる平松を入れ、まずは1点を返そうとする。

 が、町田はなかなか隙がなく球際の強度も落ちないので、ウチとしても前進できないまま時間が経過する。エリキ→荒木なんて選手交代ができちゃうくらいにサブも充実しているので、糸口が掴めない。

 そうして時間が経過した場合、焦れるのはどちらかは推して知るべし。83分、岡本がPA付近で奪いかけたところで沼田が上手く身体を入れてファウルを誘発。そのFKを翁長が直接沈めて勝負あり。あのFKはどうにもならん。

 2点のリードを得た町田がそのままゲームをクローズし、2-0で終了。

雑感

 前後半に1発ずつセットプレー喰らっての敗戦。流れの中ではないからって割り切れる部分もありつつ、細部では個々のクオリティに屈した感は拭えない(客観的事実なんだけど、言い訳にもなる)。

 ディフェンスは開幕戦から継続して強度を保っている。危ないシーンは複数回あったが、シュートが櫛引の正面に飛ぶことが多い。きちんとシュートコースを限定できているので、ノープレッシャーでコースを狙われるということはない。
 だからこそ、自分たちで優位な状況を作り出せるセットプレーは重要な訳で、町田はそこを活かして試合を決めた。そもそものセットプレー与えるまでの流れが2失点ともに勿体なかった。その部分の徹底は間違いなく相手に上回られている(そして、その部分を全面に押し出すのが相手の指揮官だろう)。精神論で片付けるのではなく、危機管理面でのアラートの要素が増すと次第に失点は減っていくし、無闇に流れを失うこともない。

 攻撃時もアイソレーションする以上、左右で組み立て方に違いは出る。右は間違いなく岡本が鍵になるが、この試合では1つ前に佐藤を置いた。佐藤はレフティなのでカットインからシュートの形を持っており、北九州時代もその形で得点を量産した。中に入る意識のある佐藤がいることで、岡本が駆け上がる大外のスペースが空く。また、佐藤はオフザボールの動きも良いので、チームの為にスペースを作り出せる。まだフィットするまでには多少時間を有するが、周りとの関係性が完成すれば、爆発すること間違いなし。
 左は長倉が顔を出すことでビルドアップの出口は見つかるものの、そもそも右片上げなので、川本はタスクが難しい。WBのような振る舞いを見せつつバイタルでは積極性を見せなければならない。元々ゴール前で脅威になるプレーヤーであるため、ゴールから離れたポジションに慣れないことも多いだろう。ここを乗り越えると、左からも殴れるようになる。
 また、途中から山中が入り、左は中塩・山中・長倉とレッズ要素が多い構成に。山中・長倉・アマが絡んで狭いスペースをヒール用いながら前進していった場面はワクワクした。数人でイメージ共有できているなと感じる場面も見受けられるので、如何にそれを増やすかは日々の落とし込み。
 そして、恩師との対戦となったアマは出色の出来だった。中盤でゲームを落ち着かせながら、局面を変えるパスを出す。大槻氏が言うように、もう少し自ら運んでフィニッシュまで持っていければベストだが、期待値は高い。

 今シーズン初黒星とはなったが、試合内容は開幕戦と雲泥の差。ようやく開幕を実感し、サッカーはやっぱり面白いということを認識した。3月に入っても厳しい相手が続くが、疑心暗鬼にならないためにも1つ勝利が欲しい。次が千葉戦っていうのは期待したくもなるが、今シーズンのお犬様は一味違う(らしい)。小林新監督の下、ハイプレスで刈り取ってゴールまで持っていく(ちばぎん見たけど、そもそも立田さんと佐々木さんが漫才してて千葉がどうなのか評価に困ったし、分かったのは某GKが相変わらず嫌いってことだけ)。
 ハイプレスをいなして局面をひっくり返せれば間違いなくチャンスはあるし、ここで浮上のきっかけを作ろう。

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