凡事徹底 vs甲府 1-1

 長かったトンネルを抜け、12試合ぶりの勝利を手にした前節。コンパクトに陣形を保つことで、相手のパワーに屈することなく対応。CKからのチャンスを小島が落ち着いて沈め、その後も高い位置で奪ってからスピード感ある攻撃を繰り出した。1つの成功体験を得たことで、ここからまた積み上げていくモチベーションも高まる。

 勢いに乗り、4月3日以来のホームでの勝点3を目指して迎える相手は甲府。アウェイでの戦いはGWの連戦真っ只中。中2日でコンディション的に厳しかったことに加え、茹だるような暑さで消耗した。90分通してチャンスらしいチャンスを作ることができず、ミドルサードでのロストが多かった印象。甲府サイドも決定打に欠く展開だったが、最後に三平に仕留められて終戦。重心下がる、クロスで前入られる等々の課題を突き付けられた。ミラーゲームっぽかったが、鳥海と長谷川のシャドー2枚がボールを引き出す動きに対して効果的な対応ができなかった。それと、小林の縦突破にも手を焼いた。
 基本的に3-4-2-1を採用し、WBが幅を作りながらシャドーがハーフスペースを突く。ただ、甲府は先週の試合がアクシデントによってスキップ。今週に入って活動再開したものの、全体練習に参加していないメンバーもまだ複数いるという。スクランブル状態の中、どういった策で向かってくるかは読めないし、不気味。

 ウチも複数選手をトラブルで欠いており、両チームとも手負い。こういう時こそ、組織としてのまとまりが如実に表れる。やるべきことを遂行し、相手を上回りたいところ。

メンバー


 ウチは前節から2枚変更。山根→アマ、彰人→国友。今週加入リリースが出た国友がいきなりのスタメン。今週も感染者が出ているが、ベンチにはFW登録の選手がいない厳しい台所事情。

 対する甲府は水戸と引き分けた2週前の試合から7枚変更。河田→岡西、須貝→山本、野澤陸→レナトヴィスキ、関口→小林、松本→鳥海、内藤→長谷川、ウィリアンリラ→ブルーノパライバ。直近の試合は天皇杯から中2日だったことでメンバーを入れ替えており、加えてチーム活動が一時ストップ。何とか今節は試合開催となるが、メンバー構成からも難しい現状が浮き彫りに。

前半

 立ち上がりはウチがボールを持つ時間帯が長くなる。細貝と岩上が相手の間でCBからボールを受けて1stプレスを難なく突破することで、前進。また、岩上から両SBへの大きな展開も度々見られ、高い位置までボールを運ぶことが多かった。

 9分、最初のチャンス。作り直そうと櫛引に一度ボールを下げたところから。櫛引が風間に素晴らしい楔を刺す。風間はボールを運びながら全体が押し上がる時間を作る。風間→細貝→アマと左サイドにボールが推移。細貝・アマ・岩上・国友の4枚が短いパスを繋いでテンポを作り、細貝からタッチライン際でボールを受けたアマが見事なピボットの動きでマーカーを剥がしてクロス。ファーに流れたボールを岡本がワンタッチで落とし、風間が身体を捻りながら右足でシュート。さらに平松が詰めてコースを変えたがポストにヒット。フラッグが上がってオフサイドになったが、映像を見るとオンサイドのような気もする。いずれにしても、中盤2枚が絡み、SB→SBの形まで作り出せたのは良い。

 良い入りから、そのまま先制点に繋げる。14分、FKの流れから右サイドで岡本が仕掛けてCKを得る。風間はショートを選択。風間→アマ→細貝→畑尾と横にテンポ良くボールを流していき、畑尾はワンタッチで縦へ。低く速いボールを岩上が頭に当ててコースを変えると、最後は平松がフリーで押し込む。
 完璧にデザインされた形。今季なかなかCKからゴールがなかったが、ここにきて2試合連続。PA内に走り込むふりして畑尾が上手くフリーになったし、岩上のヘッドも流石。最後の平松と、その外側にいた国友はどちらもストライカーらしい動きだし、国友がいたことでDFをスクリーン出来て平松がフリーになった。そして、パススピードが速いからこそ、相手のスライドを掻い潜ってパスを回せた。
 (ふんわりしたボールだとクリアされますよー、解説っぽいことされていた方、聞いてますか?そもそも見てました?)

 自分たちでゲームをコントロールしている時間帯に先制でき、理想的な展開。しかし、すべてが上手くいくことなどない。7分の浦上との交錯時に左足を踏まれた国友が、ずっと気にしていたがピッチに座り込んでしまう。明らかに走り方のバランスが悪く、左足に力が入っていない状態だったが、28分に無念の交替。奥村が入る。移籍して最初の試合だっただけに本人も期するものがあっただろう。ピッチを退く姿は、痛みよりも交代することの悔しさが滲み出ていた。細貝や大槻監督も国友の元に駆け寄り声を掛ける。まだザスパでの日々は始まったばかり。焦らず治して、また敷島のピッチを踏む時を待っている。

 アクシデントでメンバーチェンジを行い、少し流れが変わる。平松と国友がフラット気味でCBにアプローチしていたが、奥村投入後は平松が前で限定しつつ、奥村は相手CHへのパスコースを埋める意識が強かった。陣形はコンパクトに保たれていたが、1stアタックが少し低くなった分、甲府のWBが高い位置でフリーでボールを受ける機会が増える。外回りのパスならば然程怖くはないが、小林のオフザボールの鋭さは目を見張るものがあり、適切なケアを要した。小林が前を向く時、あとは長谷川が高い位置を取った時はゴールの雰囲気を感じる。

 とはいえ、中はちゃんと閉めているので決定機は作らせない。ストレスを感じ始めた甲府の前線の選手はアフターのファウルが横行。挙句、PA内で飛び込み大会を開催するなど機能せず。この辺で適正なジャッジができず、こちらの遅延行為のみ厳罰に処するのは馬鹿げている。

 国友のアクシデント及び畑尾への安いカード以外はほぼパーフェクトな内容で折り返す。

後半

 後半も入りは良かった。前半終了間際に「もう少し高い位置取れるか」という注文を岩上から受けていた奥村の立ち位置が前目になり、そこで引っ掛けてCK獲得まで持っていったりもした。

 が、甲府も黙ってはいない。56分、左で小林が幅を取り山田に落とすと、山田から完璧な縦パスが長谷川に入る。長谷川は中央から右サイドの宮崎に展開。宮崎がサイドで時間を作ると、荒木がオーバーラップしてボールを受ける。荒木はマイナスのボールを供給すると、鳥海がスルー。山田→長谷川→レナト→小林と左サイドに繋げる。小林が縦に仕掛けて強引にクロスを上げると、ファーサイドの角度のないところから宮崎がヘッド。これは櫛引が右手で防ぐ。

 更に攻勢を強めたい甲府は62分に2枚替え。レナト→飯島、ブルーノ→三平。4バックにするかと思いきや、小林をLCBっぽく起用するスクランブル。
 ウチも65分にアマ→山中で2回目の交替。

 ウチも徐々に押し上げができない。アタッキングサードに辿り着く回数は減り、そもそも敵陣に入る機会も数えるほど。風間の所でポイントを作って岡本がオーバーラップするのと、山中が単騎で剥がして前に運ぶことはできたが、全体が上がり切らず。ピッチ上の選手全員に疲労の色が見え、フレッシュな選手を入れたいのは山々だが、前半にアクシデントで交代枠を使っているという現実が重く圧し掛かる。

 体力的に厳しく、守り切りたいという気持ちになってしまうが、それで守れるほど楽なリーグではない。83分、ついに失点。最終ラインに対してのプレスも流石にできず、中山に振られた時もスライドが遅れた。中山がすぐに浦上に戻すが、一度ラインを下げようとしたウチが再度ボールホルダーに行けるほどの体力は残っていない。浦上→山田→浦上と横にボールを動かし、小林へ。平松と風間の中間点で受けた小林は、自らに対するプレッシャーが緩いことを察知してアーリークロス。このボールに三平が見事なヘディングで合わせる。土壇場で試合は振り出しに。
 畑尾と小島の間を突く三平のポジショニングは流石だし、前回対戦時に引き続きの被弾。途中出場でしっかり結果を残すあたり、役者である。

 その後、両チームともに死力を尽くして勝ち越しを狙うが、どちらもあと1歩が出ず。1-1で終了。

雑感

 両チームに当てはまるが、難しい状況でもやれることをやった。ここで3ポイント積めれば大きかったが、妥当な結果だとも思う。

 守備は前節同様コンパクトに保って中盤で刈り取るイメージはあった。ただ、アクシデントや体力面の影響が大きく、90分の継続は少々難しかった。リードしているとどうしても守り切りたいという心理になってしまうが、前へのチャレンジを止めると相手の流れになることは避けられない。苦しい時間帯だったことは十分承知の上だが、ここから先も上を目指していくには、あくまでアグレッシブな姿勢を貫かなければならない。

 攻撃時も同様である。中途半端なプレーでロストして攻撃を終えてしまうのは勿体ない。人数掛けて攻める際にはフィニッシュで終え、戻る時間を確保したい。
 とはいえ、相手WBの後方スペースをウチのSHが上手く使えたし、国友も間のスペースで受けるKJムーブが早くも落とし込まれていた。それだけに軽傷であることを祈る。
 セットプレーでまたゴールを奪えたことも収穫。スペシャルプレーが機能すると相手も警戒するし、そうなれば裏をかくシンプルなパターンでもゴールの可能性は高まる。ここから益々鋭さを増す(はず)。

 追いつかれる悔しい展開にはなったが、一時期チームに蔓延った閉塞感はない。1人ひとりがタスクを全うし、アクシデントにも屈せず戦い抜いた。これは正当に評価されるべき。この戦い方が継続できれば、やはり自ずと勝点は積み上がっていく。

 苦しくても、やれることをやる。その繰り返し。

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