枉尺直尋 vs岡山 1-2

 開始数分でセットプレーから先制され、その後70分余り数的有利になるもブロックを崩すことができずに敗れた前節。4-4のブロックの内側を刺すような場面がほぼなく、外回りでボールを動かしているうちに試合が終わってしまった。せめて1ポイントを積めればという試合ではあったものの、なかなか事態は好転しない。

 かなり閉塞感がある状況だが、中3日で迎える今節の相手は岡山。昨シーズンは1分1敗と勝てなかった。
 木山体制も円熟期に入っている印象で、少ない手数で前に進んでいくスタイルはお手の物。チアゴアウベスや坂本、櫻川といった前線の面々や乱数としてアクセントになっていたバイスなどが退団。一方で、田上や藤田息吹が加入したことでボール保持においても安定感が増す。でもって前線にはグレイソンという兵器が加わった。単騎で誤魔化しがきくだけでなく、しっかりボールを収めてくれるので重心を上げやすい。守備時においても1stディフェンスをサボらずにしてくれるので、シャドーに入る岩渕や田中が連動してプレーを制限。
 ここまでは4勝1分で首位を走る。基本的には3-4-2-1がホームフォーメーションだが、相手の攻撃時の出方を見て5-2-3 or 5-4-1でミドルプレス気味に構えることもできる。3+2でボール保持する時間を長くすることも目指しつつ、グレイソンをポイントにしてボールを前に付け、それに呼応するように両シャドーがラインブレイクするアクションを見せる。WBは幅を取っているし、シャドーはハーフスペース走るしで捕まえにくいこと間違いなし。田部井、藤田、仙波、木村といった中盤の方々も好みだし、誰が出てきてもゲームをコントロールできるのはズルい。藤田のボール回収は相変わらずだし、そこから1つ前まで出ていけるのも良さ。

 首位を走るチームは5試合終えての順位は気にしないと謙虚な姿勢を崩さないが、下から1番のチームにとっても今の順位は直視したくない。ただ、現実を受け入れた上で戦わなければならない状況。藤枝は岡山のCHの脇で前を向いて縦に仕掛けて活路を見出そうとしていた。ウチもどこで縦に付けるのかはポイントとなる。これまでの感じだとボールを持たせてくれそうな気もするが、例年よりも前から捕まえにくる傾向の強いため、ウチのCB3枚に前3枚を当ててきて、CMFの2枚のところで真っ向勝負になるだろう。今シーズンはどのチームもウチ相手に同様の嵌め方してきているし、現に前進はあまりできていない。如何にして相手の1stプレスを掻い潜れるかが鍵。簡単な試合でないことは間違いないが、少ないチャンスを仕留めたい。


メンバー

 ウチは前節から5枚変更。櫛引→石井、酒井→田頭、玉城→アマ、惇希→エド、佐川→平松。アマは有給から復帰したが、櫛引と酒井がメンバー外となり、石井と田頭がそれぞれ今シーズン初のスタメン。田頭がRSBとなるので、大畑は本職のCBでの起用。エドも今シーズン初スタメン。

 対する岡山はしぶとく勝ち切った水戸戦から中3日で6枚変更。本山→阿部、柳育嵩→田上、河野→柳貴博、田部井→仙波、岩渕→太田、グレイソン→ルカオ。ここぞとばかりにターンオーバーだが、代わりに出てくるのも大体昨シーズンやられた方々である。層は明らかに厚くなっているが、田部井がメンバーにも入っていないので、その辺りがどう影響するか。

前半

 ウチのキックオフで試合が始まると、まずはリスクを冒さずにシンプルなボールで様子見。後ろの面々がいつもと違うこともあり、より慎重に試合に入った。ゴールキックのビルドアップも無理はせず、15分過ぎまではラインアップを優先している。

 岡山は基本的にハイプレスに来るっていう事前情報はあったが、あくまでそれはグレイソンが1stプレスで方向付けすることが前提。この試合では最前線にルカオでスタートしたが、掴みに来る姿勢は見せつつもさほど追い込まれることはない。どちらかというとシャドー2枚でスイッチを入れて外から中に絞らせに来た。ただ、ウチはボールがゴール前を横切るようなパスも躊躇なく用いていなす。石井も足元の技術が安定しており、危なげなくパスを付けていた。
 ビルドアップの際には田頭がIH化しつつ、アマと風間のラインと同じ高さに立った。これによって田中のプレスのスタート位置を遅らせている。大畑→佐藤や中塩→エドのサイドへの配給もできており、特にエドは相変わらずのターンの上手さで前を向いて時間を作れる。また、髙澤が1つ落ちてポイントを作るので、後ろが詰まった時のエスケープもできるようになった。城和が深さを作る場面もあるなど、これまでよりも飛躍的に機能している。加えて、最前線の平松がボールを収めて時間を確保してくれるのも大きい。でもって1stプレスも厭わず頑張ってくれるから、後ろの選手にとってもかなり有難い。

 岡山は長いボールを使ってルカオに当て、そこを足掛かりに前進しようとする狙いは見えた。しかし、ルカオに対しては城和がかなりタイトに付いて自由にさせなかったので、徐々にストレスを溜めていく。そのため、20分過ぎからルカオと太田の立ち位置を入れ替える。これによってフィジカルに長けている訳ではない中塩や風間とルカオがマッチアップするようになった。が、外にルカオがボールを収めたとしてもその次の展開が限られており、柳が幅を取ろうにもエドがケア。アタッキングサードではボールを動かさせない。
 ウチは構える時に髙澤を1つ下げての5-4-1を敷く。レーンを全部人を配置して幅を取らせず、藤田や田中のランニングも監視。ただ、岡山もその辺りは整備されており、阿部が気を利かせて髙澤を引っ張るように1列前に走る動きも見せる。とはいえ、メンバーが入れ替わっていることもあり、縦に刺すことができない。

 かくいうウチも、ビルドアップで前進できるとはいえ髙澤のところと田頭のところを厳しく寄せられてプレーを止められるので、なかなか勢いが出ずにゴールに近付ける。何度かアーリー気味のクロスからPA内にボールが入るも、ブローダーセンに仕事させることはできず。

 前半は内容は悪くなかったが、決定打に欠きスコアレスで折り返す。

後半

 後半開始から岡山はルカオ→グレイソン。これは織り込み済みであり、頂点でポイントを作れるようになって岡山がどのように出てくるかを探る必要がある。

 48分、ウチが意外な形でゴールネットを揺らす。石井からのロングボールを阿部が頭で跳ね返そうとするも中途半端になり、ミドルサードでウチのスローイン。中塩はロングスローではなく近場のエドを選択すると、エドは前を向いてカットインしてそのまま右足を振り抜いた。シュートはアウトに回転がかかってゴールから右に逸れていったが、クリアをしようとした柳の手前でバウンドしたことで不規則に変化し、柳が蹴ったボールはブローダーセンの手の先を通ってゴールに転がる。
 リスタートからの形だが、やはり思い切りよく足を振ることで何かを起こすことができる。これまでも足を振れるようにって言葉は頻繁に聞かれていたが、今シーズンはなかなか振る機会すら限られていた。ゴールに向かっていく姿勢を持つことで少なからず相手にプレッシャーを与えられる。

 後半立ち上がりに待望の先制点を得て、そのまま優位に試合を進めていきたいところだったが、そう簡単に上手くいかぬ。53分、自陣でマイボールにしたところから。城和からアマに落とし、アマが前に繋ごうとしたところパスがズレてグレイソンが引っ掛ける。ここに誰もアタックに行けず、グレイソンは落ち着いてルックアップして中央の仙波に丁寧に渡す。仙波はボールに回り込むようにアプローチして左足で打つように見せてフェイクで右足に持ち替え、風間を寝かす。目の前が広がった仙波は右足で鋭いシュートを突き刺した。
 セーフティに蹴ればって言うのは簡単だが、恐らく滑りやすいピッチでアマの軸足が若干滑ったのと、少し歩幅が合わなかった。それを含めて技術的なエラーだと言うならそれまでだが、繋ぎに行く判断自体が完全な悪だとは思わない。あそこで1つ剥がせば展開は変わっただろうし、チャレンジ自体は意義がある。グレイソンに渡った後に寄せ切れなかったところから後手後手に進み、結局仙波もほぼフリーでシュートを許した部分が悔いが残るものの、急なロストになった以上は精一杯の対応だった。あのコースは石井もウォッチするしかない。

 岡山は58分、太田→木村で2枚目のカードを切る。ウチも61分、髙澤→佐川で攻勢に出る。

 僅か5分でリードを吐き出してしまったが、平松と佐川でボールを落ち着かせるポイントを複数作り、全体として押し上げを図る。平松は武骨に運ぶし、佐川はサイズに反して軽やかにターンできるので、ちょっとずつではあるが前進して圧力を掛ける。

 67分、岡山のチャンス。ウチの陣内に岡山が押し込み何度か縦に仕掛けるもウチは焦れずに対応。佐川が2度追い・3度追いを見せて仙波を牽制。仙波は左から中に持っていったがプレッシャーを受けてターンし、右の阿部へ。ウチはそこで嵌めるようにアマとエドがお前に捕まえに行くが、阿部→田上→仙波→阿部と逃げられ、阿部は木村の前のスペースにパスを通す。木村はクロスを上げるような大きなモーションを見せながら、内側を取っていた柳にグラウンダーのパス。柳のノーステップのクロスは精度を欠いたが、グレイソンが下がりながらボールを落とし、そのボールを藤田がボレー。鋭いシュートがゴールを襲ったが、ここは石井が正面に入ってキャッチし事なきを得る。

 69分、岡山は田中→シャビエル、ウチもエド→惇希、風間→玉城。どちらも前進するための手段を生み出したいという思惑がある。

 なかなかゴールに近付くことこそできないが、守備時の強度は落ちない。要所要所で佐川と平松がプレスバックしてくれるのと、アマと玉城というデュエルも問題ないCMFが構えるので仙波がボールを持ったところを掻っ攫ってカウンターを狙う。奪った後は佐川に収めさせるか、惇希にある程度単騎で運んでもらう。

 80分、岡山は田上→柳育嵩、柳→吉尾の2枚替えで最後のカード。CB替えるのはあまりないケースのように思うが、佐川と平松の高さのケアとカードトラブルを避けるためかと。あと柳は前所属時代、ATに何度かゴールを決めており、いざという時の火力を上げる狙いもありそう。そして右からも殴っていけるようにという吉尾。

 柳を中央に置いたが、場面によっては吉尾を下げての4バックのようにも見えた。岡山としてはシャビエルがある程度自由に動いて的確な位置で顔を出し、少しずつテンポアップしていく。ウチは捕まえる場所がほぼなく、嫌な雰囲気。

 89分、ウチはアマ→和田、平松→北川で最後のカードを切る。

 90+2分、ウチのシュートチャンス。中塩がロングスローの構えから近くの玉城に付ける。玉城のフィードは少しショートしたが佐藤が確保し、そのまま左足で上げる。これは一度跳ね返されるも佐藤が回収してバイタルを横断するように左に流れ、再度クロス。これはシャビエルと吉尾にピンボール状態となり、中塩の元にこぼれる。中塩のクロスにファーで田頭が身体を捻るようにして合わせたが、ブローダーセンが左手でセーブ。

 90+3分、最後に受け入れたくない現実を突きつけられる。佐藤のクロスをブローダーセンがキャッチすると、末吉を経由してボールはシャビエルへ。シャビエルの的確なフィードがグレイソンの届くと、1stタッチで前を向いて藤田とワンツー。グレイソンは間合いを窺い、藤田に再び渡して自らは縦にスプリント。藤田はグレイソンが走ったハーフスペースの1つ奥の末吉に付ける、末吉はシャビエルに落とす。シャビエルは左足のキックフェイントで佐藤を飛ばさせ、カットイン。身体を中央に開かせながら、グレイソンに鋭い縦パスを刺す。グレイソンはワンタッチでシャビエルにリターンすると、シャビエルはもう一度グレイソンとワンツーをしようと動く。グレイソンにボールが届くところで和田が何とかカットするが、こぼれを末吉が拾い縦に仕掛ける。田頭が寄せに行ったタイミングで末吉が左足でクロスを上げ、グレイソンが胸で落とし、最後はシャビエルが右足一閃。
 終了間際であり、寄せに行くのがキツイのは百も承知だが、50:50になりそうな局面で先に触られていくと、それが積み重なって大きな違いを生み出してしまう。一方で、チャレンジすることでスペース空けて相手に使われているのも確かなので、どこで撤退してどこでチャレンジするかは難しい。
 これもシャビエルの傑出したクリエイティビティがあってこそだが、あと1歩ボールにチャレンジできればっていうがもどかしい。

 首位を走るチームの地力を最後の最後にまざまざと見せつけられ、1-2で終了。

雑感

 終わり方が終わり方だけにショッキングな負けに映るが、明らかに今までの数試合に比べればポジティブではある。

 相手との噛み合わせはあれど、5-4-1で構えて綻びが生じなかった点は大きい。終盤はラインがどうしても重くなって失点したが、ラインコントロールの部分を微調整すれば、相応に戦えるはず。これまでのような脆弱性はなくなった。まずは目の前の相手に上回られないようにという心持ちでマンツー気味で対処していく。

 オフェンス面では髙澤と田頭の立ち位置で上手く出口を確保した印象。それと平松が前で背負ってくれるのも良い。そこからファイナルサードでどうするのよって話ではあるが、エドのように思い切りよく足を振ろうねってことに帰結するのかなと。確かにサイドで捏ねてノッキングして苦し紛れのアーリークロスが横行するよりも、積極的に振り抜いてほしいという気持ちはある。ともすれば当然相手はミドルを警戒しての守備をせざるを得ず、ウチが後出しじゃんけんのように優位に立つ。
 そして、90分フルで走り切った佐藤が誰よりも責任を感じているのは試合後の姿を見れば分かる。顔を上げて、次の試合で暴れてくれ。

 岡山は大幅にメンバーを入れ替えていたこともあり前半だけを見れば正直大きな差は感じなかったが、上手くターンオーバーしながら逆転で勝ち切る姿を見せられると、ここまで負けなしなのも頷けるし、流石首位に立つチームだと。グレイソンという分かりやすい武器を持ちつつも、彼自身が献身的なプレー選択ができるのも魅力。前節までの岡山サポのレビューでグレイソンを「利他的なプレーができる」という表現を目にしたが、実際にプレーを見て納得した。これまた木山氏のチームに上手くハマりそうなピース。
 これで田部井やら岩渕やらがいるとなると怖い。この試合で多少苦労しながらも結果を出したことでチームとしての成功体験を重ね、よりチーム全体の底上げが進むのではないか。選択肢を削いで縦に仕掛けることを志向しつつ、CMFでコントロールしたいという部分も垣間見えた。恐らく、田部井がいるともっと嫌らしいボールの動かし方をするのだろうと思いつつ、代わりに出ていた仙波にしっかりやられる辺りからしても、何も言えない…。
 ちゃんと取り組んでいるチームがちゃんと上位にいるのは好感が持てるので、このまま走って欲しいというのが個人的な願い。

 が、他人のこと心配している余裕はない。この試合で方向性は示したが、まだ状況を打破できていない。次は徳島との6ポインター。向こうも向こうでボール持とうとして崩れて失点が嵩んでいるらしいが、なりふり構わず殴りたいところ。今回得た微かな手応えを確かなものにするために、日々積み上げを。

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