座薪懸胆 vs新潟 0-0

 前半サンドバック状態になりながらも、最後までファイティングポーズを取り続けて天空の城野津田から勝点1を持ち帰った前節。立ち上がり早々のピンチの数々をひとつでもモノにされていたら間違いなく大量失点コースだったが、上手く耐えきった。何度も言うが、こういう勝点の積み重ねが大事。

 泥臭い試合の進め方が板についてきた中で迎える相手は隣県の新潟。どうしてまたこのタイミングでやらねばならないのか。
 アウェイでの対戦では、フルスロットルで入ってきた相手の勢いに完全に呑みこまれ、成す術なくやられた。原則に基づいた動き出しのイメージの共有があった上で、本間や高木といった個のポテンシャルを上手く生かしてどんどん前進していく。1-3という結果以上に圧倒的な差を見せつけられた。
 6月頃までは絶好調で首位をひた走り、今年こそ昇格かと思われたが、何だかんだで徐々に失速。さらに本間の怪我という大ダメージを負って益々苦しくなった。結局、昇格の可能性が途絶えた。
 で、試合当日の朝になってアルベルト監督の今季限りでの退任&瓦斯の監督就任内定報道が出る。新潟日報での報道=大本営発表なわけで、記事を出すにしてもあまりにもタイミングが悪い。プロである以上どんな状況でも変わらずプレーしなければならないものの、何らかの影響が出るのではと邪推してしまう。

 状況的には何かと苦境に立たされているようだが、崖っぷち具合ではウチの方が数段上。来年のカテゴリーも決まってないし、そもそもウチの場合はクラブの社長がシーズン佳境のこの時期に代わったんだぞ(そこは誇るところでも張り合うところでもない)。相手の混乱に乗じて、勝点の1やら3やらを頂きたい。

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 ウチは前節から2枚を変更。殊勲の同点ゴールを決めた畑尾がベンチ入りすらせず、内田が久しぶりのCBでのスタメン。そして、中山ではなく細貝を加入後初のスタメンとして送り出す。畑尾がスキップするのは珍しいが、CBの怪我人が多発しているだけに大きなトラブルではないことを祈る。そんな状況もあり、ベンチにはCBがいない。一応昇偉はCBできることになっているし、いざとなったらユーティリティなジャスを入れるのだろう。川上も城和もチームには合流しているようだが、まだ試合に出せるほどの強度はないということが窺える。

 対する新潟は、愛媛を順当に下した前節から4枚変更。藤原→長谷川、堀米→田上、島田→福田、谷口→鈴木。前回対戦時に苦労した両SBと島田がスタメンじゃないのはウチからすると意外だが、あちらにも何かしらの事情があるのだろう。

前半

 立ち上がりからボールを握られるのは百も承知だったが、最初の数分はプレスを掛ける姿勢を見せた。当然、すぐにプレスは止めてブロックを作る。新潟に保持させるにしても、ウチとしてはある程度相手の動きをコントロールした上でのリトリートだったので、バタつく場面は少ない。

 3分、いきなり岩上の二―キックが炸裂してカード。時間を考えると厳重注意でも良いのではと言いたくもなるが、行為自体はカード対象であり、止むなし。
 8分、右サイドで平尾が田上のプレーを限定し、サポートに岩上が入ったところで田上の足が岩上に入る。これもカード。
 この辺でのゲームマネジメントが拙かったが故に、両チームともに最後までジャッジへの不満が溜まることになった。

 ミドルサードまでは相手への侵入はほぼ制限せずにポイントを敢えて低く設定してウチはブロックを敷く。特に両SBのポジショニングがいつもよりもディフェンシブになっていて、ロメロと三戸のシャドーを捕まえていた。その2人がハーフスペースに絞って、大外のレーンをSBが利用するデザイン通りの攻撃を多く用いてきたが、それに対してもKJと稔也が我慢に我慢を重ねて対処。時より鈴木がサイドに流れてくると枚数が足りなくなるが、鈴木が寄ってくるとレーン被りを起こしてしまい、却って手詰まりになっていた。

 29分、新潟に決定機。ウチが押し込んで岩上がシュート。そのこぼれを新潟が保持し、LSBの田上からRSBの長谷川へのフィードでウチのプレスを回避して前進していく。アタッキングサードの手前で長谷川は中央へ。ロメロフランクがフェイクとなりファーサイドにボールが流れるが、鈴木に渡る前に平尾が体勢を崩しながらも何とか反応する。しかし、そのボールが不運にもロメロの頭上に飛んでいき、競り勝つ。すると、その裏から高木が抜け出して右足アウトサイドでボレー。これを慶記が完璧な反応で弾くも、こぼれ球が鈴木の足元に。小島がファーのコースを消すが、鈴木はニアに強いショット。どう考えても失点するシーンだったが、慶記がタイミングを完全に合わせて身体を伸ばしたスーパーセーブ。今日も今日とて神に救われた。

 39分、再び新潟にチャンス。スペースがなくパスの出しどころを探していた千葉が、上手くウチの間を刺して速い縦パスを付けてテンポアップ。このパス自体は高木の足元に収まらないものの、セカンドボールを回収して再度攻撃へ。福田→高木→長谷川→ロメロ→長谷川→高木→長谷川→福田と繋いで小島+CH2枚を引き出すと、ここで福田からロメロへの楔のパス。ロメロは身体の軸を活かしたターンでKJを弾いて前を向くと、中央に向かってドリブル。内田が釣り出された瞬間を見計らって裏に抜け出した鈴木にラストパス。鈴木は右足を振り抜くが、きちんとスライドして動きに対応した広大がブロック。SBの平尾を含めてコンパクトに保てていたので、抜け出されても自由を与えなかった。

 44分、またもや新潟の決定機。細貝の深いタックルが鈴木に入って与えた新潟のFK(これも直前の大前に足が掛かっているのがレフェリーの目の前だったことには触れない)。高木からのボールをウチもクリアしきれずバタついたところを、ロメロがダイナミックなボレー。枠を捉えていたが慶記がこの場面でもビックセーブ。さらに鈴木がこぼれ球を頭で押し込もうとするが、ライン上で岩上がクリア。窮地を救う。

 前節同様、被決定機が尋常じゃない数あったが、この試合に関しては失点すら許さずに対スコアで折り返す。

後半

 後半になっても、攻める新潟・固めるウチの構図は勿論変わらない。

 47分、平尾の気合十分のスライディングで与えた新潟のFK(リプレイで見ると平尾の畳んだ方の足が三戸の足にヒットしているからアウトだけで、ボールに向かう姿勢は最高だった)。高木のインスイングのボールをニアでフリーのロメロが逸らし、最後は田上が押し込む。これも完全に失点に至る場面だが、慶記がバウンドを合わせて弾き出し、ゴールを割らせない。

 耐えに耐えた後、ようやくウチにもチャンスが回ってくる。50分、内田からKJへの素晴らしい斜めのパス。KJはすぐに小島に預ける。小島はクロスを上げるタイミングを窺いながらもKJへリターン。KJはわざと斜め後ろに運び出し対峙するロメロとの距離を取ると、右足で切るようなキックでクロス。上手く背後を取った大前がダイビングヘッドで合わせるが、パススピードに対して大前が前に入りすぎてしまい、ボールを待った分だけシュートの向きがズレた。数少ないシュートシーンを生かし切れない。

 53分、新潟にこの試合最大のチャンス。アタッキングサードでボールの出し入れを繰り返しながらウチの隙を探り、新潟の左サイドで高がボールを受ける。ウチの重心が上がるのを待つのと同時に、ボールと同じ高さまで立ち位置を落としてきたロメロに渡す。ロメロ→高木→ロメロ→高木→三戸と短いパスを織りなし、三戸は深い位置から左足でクロス。このボールを鈴木が折り返すと、長谷川がPA内まで侵入。細貝の寄せを冷静に外し、ノープレッシャーの状態で左足を振り切る。が、腰の回転が足りず、シュートはクロスバーにクリーンヒット。窮地だったが、岩上も慶記も冷静にウォッチできていた。単に反応できなかっただけっていう可能性も十分考えられるけど。

 60分、飽きずに新潟のシュートシーン。舞行龍から三戸にボールが渡り、そのまま三戸が前進。稔也が我慢しながらディレイするも、三戸はカットインしてアーリーで上げる。内田が果敢にボールにアタックするもクリアできずに、ファーでフリーのロメロに流れる。ロメロはトラップするもバウンドが上手く合わず、左打者のセカンドゴロのような引っ掛けたボールを放ち、慶記が正面で反応。

 62分、ウチも反撃する気概を見せる。新潟のクロスを内田が大きくクリア。すると、そのボールをハーフウェー付近で翔大が拾って、ドリブル開始。ボールに触る瞬間に一気にスピードを上げる緩急を付けたドリブルで2枚を剥がし、PA内まで持ち込む。最後のシュートは角度がなくて難しかったが、それでもGKの足元を狙った惜しいシュートだった。シュートに持ち込むまでの単騎でのドリブルも数的不利の状況で推進力を見せた。タッチのリズムと緩急は、まさにケインのドリブルに近い。

 その後はやっぱり新潟に保持され続け、ハーフコートゲームに近い内容だったが、ウチの選手たちの集中力は途切れなかった。86分の田上のミドルも慶記が落ち着いて弾く。今日の慶記の神降臨の度合いを見ると、このくらいのシュートストップならば造作ない。

 試合後のスタッツ、支配率29%が物語るように極めてマネジメントが難しい展開だったが、最後まで耐え抜いてスコアレスで終了。

雑感

 心臓にはなかなか悪かったが、それでも勝点を拾い、着実に残留へのカウントダウンをしている。

 プラン通りに試合は動いていたと思うので、守備時に特段エラーがあるわけでもない。岩上と細貝が球際にタイトに行ける似た感じのタイプであり、共鳴したようにどんどんアタックしていくのは面白い発見。ただ、結局はガテン系の選手が中盤でチームの屋台骨を支えるのはこのチームのアイデンティティだし、戦う選手大事。クールな顔してえげつないタックルかます細貝最高よ。彼に期待するのはそういう部分だし、ああいう戦い方もあるというのはチームの可能性を広げる。あとは、日本のジャッジに上手く折り合いつけて頂ければ、スタンドで見る立場からすると安心できるので、お願いします。

 やりようによっては攻めに行けたと思うけど、チームとしてのプライオリティを考えると、攻撃の放棄は十分考えられる。この試合の展開でSB上げてカウンターなんか喰らった日には目も当てられない。
 ①最少人数で何とかする。
 ②重心が押し上がるまでは仕掛けない。
 ③基本的に中は捨ててサイドでボールを前進させる。
 この辺の部分を徹底していたので、ロストしても即ピンチになる場面はあまりなかった。上手くサイドチェンジで逃げられてシュートまでいかれた29分の場面くらいではないか。

 均衡した試合での選手交代は往々にして悪手になる。そもそも、代えるべき選手がいなかった。個々がタスクを着実に遂行してくれたので、そのバランスを崩すことへのリスクは計り知れない。二兎を追わず、一歩ずつ進むしかない。

 この試合を3月からしていたら、それは当然文句も言いたくなるけど、今のチームの置かれる状況を見れば唯一最善の戦い方。残留という目標のためには背に腹は代えられない。
 何だかんだ、これで3試合負けなし(3分け)、直近5試合で1敗しかしていない。確実に負けないゲームプランを完遂している。他会場の結果を見ると、下との差が狭まっているが、それでも俺たちは間違いなく前進している。

 次の磐田にもどの程度通用するかは未知数だが、やることは変わらない。ブロックを敷いてポイントを失わない。
 あと2試合、焦れることなく最後までやり切ろう。

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