隔靴掻痒 vs岡山 0-1

 前節は90分通して攻め手に欠き、前半に許した1点が最後まで重く伸し掛かり敗れた。極端にチームが崩壊したか問われれば首を横に振るが、勝点を拾える可能性がどれほどあったかと考えると、頭を抱えるほかない。勝利した山口が上回っていたのは当然ながら、両チームの間に点差以上の差がある。

 状況は一向に好転しないながらも戦いを止める選択肢はなく、3か月ぶりの勝利を目指して乗り込む今節の相手は岡山。これまたソリッドな好チームとの対戦。
 今シーズン開幕直後はグレイソンが猛威を振るい、木山氏の選択肢を制限してシンプルながら効率的に仕留める形を持ちながら、ボールを持てる中盤でコントロール。グレイソン・田中・岩渕といった前の面々がサボらずに圧力を掛けるのでチームの重心も下がらない。開幕10戦ほどを見れば押しも押されぬ昇格候補だったが、まさかまさかの野戦病院化。グレイソンの長期離脱とボールを蹴れるCBで重要なピースだった鈴木喜丈が大打撃となったが、WBもCMFも軒並み離脱者が相次いだ。それでも苦しみながら勝点を積んでいる。開幕時に比べればペースは落ちたものの、前節終了時点で5位に付ける。また、育成型期限付き移籍で浦和から早川くんが加入。ユース時代から2種登録でルヴァンに出場するなど、将来有望。シャドーでボールを引き出せるし左足で蹴れるし視野広いしで違いを生み出せる。シャビエルも怪我で離脱してゲームメイカーが欲しいところで、同様の役割を担える早川くんは良い。

 前回対戦時は終了間際にGX8に違いを見せつけられ、1ポイントすら拾えなかった。開幕直後のあの試合で引っ繰り返されたのもウチにとっては大きなダメージで尾を引いていると個人的には思う。
 我慢して後ろでボール握って岡山の勢いに付き合わないことが必要。相手の中盤を喰い付かせてスペース作ってライン間でボール引き出せれば一気にひっくり返る。が、そもそもプレスにどこまで耐性があるか。開幕直後に比べるとハーフスペースの使い方は少しずつ整理されているが、相手を背負ったところで喰われる可能性は十分ある。あとは、リードを許して岡山がミドルプレスで構えると崩すのは困難。スコアレスの時間を兎に角長くして、少ないチャンスを仕留めて勝機を見出したい。


メンバー

 ウチは前節から2枚変更。田頭→エド、和田→佐藤。RWBに有給明けのエドが復帰。中盤と前の配置に変化があり、髙澤が頂点となり、佐藤と梨誉がシャドー。

 対する岡山は末吉の劇的決勝点で勝利した熊本戦とノーチェンジ。最後の最後で勝利をもぎ取った勢いをそのまま持ち込む。

前半

 やや強めの雨が地面を打ちつける中、ウチのキックオフで試合が始まる。

 4分、ウチが最初のシュートを放つ。ロングスローなどの流れから得た左サイドのCK。キッカーの風間はショートを選択してアマへ繋ぐ。アマはワンタッチでファーに上げると、ブローダーゼンがパンチング。こぼれたボールをPA手前で佐藤が左足を振ったが、ニアに飛んだボールはブローダーゼンがセーブ。
 続く右からのCK。蹴るまでにグダグダしていたが、ニアにサイズのある選手を寄せ、ファーに空いたスペースに菊地が走り込んだものの身体を伸ばしてシュートを打たなければならず、枠に飛ばすようにコントロールするのは難しかった。

 3バック+2CHの相手に対してウチも同数で掴みに行くので、ここ数試合悩まされていたサイドの3枚目どうするの問題が生じない。ミラーになっているため、どこかで人が余ることもなく、前からタイミング合わせて正しく圧力を掛けられていた。
 また、WBのところでボールを奪うと一度中盤を経由した上で、両シャドーがCBとWBの間で構えて前を向いて仕掛ける。特に梨誉は相手を背負いながらのプレーが昨シーズン後半から着々と伸びているので、中途半端に失う心配をしないで良いのも大きい。

 20分、岡山もCKからチャンスを作る。早川のインスイングのボールにファーで柳育崇が合わせたが、菊地と中塩が2枚で身体を寄せてブロック。ディフレクトしてゴール方向に飛んだボールを櫛引がパンチングしようとするも髙澤と交錯して距離を稼げない。こぼれ球に反応した左足でボレーするも、至近距離で櫛引が立ちはだかる。

 28分、ウチがゴールに近付く。右からビルドアップをしていき、中央でアマが受けたところで梨誉がアマのほぼ横の位置まで下りてきてボールを受ける。梨誉はそのままボールを運び、左の菊地へ。菊地は少し運び、ファイナルサード手前で平行のパス。これを梨誉がスルーしてアマへ渡すと、アマも右の大畑へ繋ぐ。大畑は鋭いアーリークロスを入れたが、菊地は頭に当てるのが精一杯だった。しかし、左右を使いながら前進し、クロスでシュートまで持っていったのは良い。

 岡山もボールを前進するために立ち位置に変化を付ける。RWBの柳が下りてきて菊地を釣り出してその背後にボールを落とす形や、柳が高い位置を取って入れ替わるように早川が顔を出すこともあった。そうしてボールが動く中でルカオがボールサイドに少し寄りながらボールを触りたがる。ウチとするとルカオが真ん中で構えている方が嫌なので、外に出ていくのは悪い話ではない。が、当然ルカオを見ながら柳貴博や岩渕が虎視眈々とPA内で待ち構えているので怖いことに変わりはない。一発の殺傷能力がどれほどのものかの違い。

 29分、岡山の決定機。岡山右サイドでのビルドアップからシンプルにルカオを走らせてボールキープ。並走した城和が慎重に対応したためカットインはさせなかったが、ルカオは早川に落とす。早川の低く鋭いクロスは中塩が何とかクリアするも、セカンドボールを末吉が回収して鈴木とワンツー。ハーフスペースに竹内がスプリントしてきてエドが後ろ髪を引かれたタイミングを見計らって末吉はPA角の岩渕に斜めのパスを刺す。岩渕はターンしてボディフェイクを見せながらもシュートは打てないと判断して右の藤田に預けてスプリント。動き出しを察知した藤田は狭いパスコースを通して岩渕に付ける。完璧に抜け出した岩渕は左足でトラップして右足でゴールを狙うが、ここも櫛引が身体に当てて防いだ。

 岡山がある程度セットして帰陣した状態だとウチはやはり前進に苦労する。それでも、ターンが上手いエドと梨誉のところで優位性は得るので、何とかそこに出口を見出す。岡山が圧力を掛けてくる場合には割り切って撤退して作り直すものの、その過程でもやはりCHのところで自由にはさせてくれない。
 岡山も岡山でやや停滞気味。ウチが前に掴みに行くことによってエラーがあるわけではないものの、なかなか縦でそのまま勝負できるような状況には至らない。ウチのCB陣がマンマーク気味に深追いすることのストレスは多少あるか。ただ、どちらかといえば岡山の方がバイタルまで運ぶ機会は多いか。

 45+1分、岡山が自陣からショートカウンター。岡山陣内右サイドのスローインでウチが前で嵌めようとして梨誉がカットしたものの、セカンドボールを岡山が確保して左に展開。鈴木がハーフウェー手前まで一気に持ち上がり、左大外に開いた末吉へ。末吉は正対するエドと駆け引きし、緩急で縦に抜け出して左足でクロス。中央でルカオがヘッドで合わせるも、シュートは右に逸れていく。ルカオの脅威は分かっているが、CB間に入られて仕事をされそうになる。

 お互いにまずは0で抑える最低限の部分はクリアして前半を終える。

後半

 後半は立ち上がりから岡山がCKでゴールを繰り返し脅かす。

 49分、左サイドのCK。岩渕のインスイングのボールをファーで柳育崇が折り返し、最後は中央で阿部が頭で合わせるも櫛引が見事な反応を見せて防ぐ。ゾーンながら柳の所に2枚当てに行ったものの、完全に上から触られているのは嫌な傾向。

 50分過ぎまでの立て続けのCKを切り抜けたことで、ウチは少し落ち着く。風間とアマが相手の前3枚の背中で消されないような位置に立ち、パスコースが狭くても1度当ててテンポを作ろうとする。極端に岡山の中盤も掴みには来ないので、ルカオを上手く動かして中盤経由でサイドに展開していく。

 56分、ウチが形を作る。自陣から梨誉が相手をなぎ倒しながら前進していき、敵陣左サイドをある程度侵略していったところで一度最終ラインで作り直す。城和が右に振らずに再度左を使うことを選択すると、中塩を経てタッチライン際でアマがボールを受ける。アマは一度中塩に戻すと今度は内側にスーッと入っていきハーフスペースで中塩からの縦パスを受ける。アマ→梨誉→佐藤と流れるようにボールが繋がってPA内に入り、鈴木と柳の間を強引に割っていったが、体勢を崩されてシュートを打ち切ることはできず。
 ただ、一連の流れはかなり良かった。ハーフスペースを使う意思は常に持っているが、中塩・アマ・菊地でトライアングル作って上手くハーフスペースを活用できた事例。そこから先も個々の距離感が適切に保たれていたことで、PAまで入れた。

 59分、早川→田中で岡山が先に動くと、64分にウチも髙澤→佐川で最初のカードを切る。

 岡山はルカオを目掛けたボールがなかなか繋がらず、ボールを握る時間が増えない。セカンドボールの回収もあまりできていないため、重心を押し上げて前からプレスを掛けようともしにくそう。単発でのロングボールでは状況は大きく変わらず。鈴木が高い位置を取りたがっており、映像を見る限りだと試合展開にフラストレーションを相当溜めているように映る。押し込む局面で関わる枚数は増えたが、PA内ではウチが絞ってスペース消している分、外回りでボールが動く。
 ウチもルカオに対してかなり身体を近付けて自由に飛ばせないようにし、競る前のコンタクトで上手くファウルをもらって対処。

 68分、ルカオに入ったハイボールに対して背後から城和が競り勝って弾き返す。これをミドルサード深くで佐藤が回収し、左のアマへ。前が開けたアマは左足を強振したが枠は捉えられず。
 その直後、鈴木からルカオへのパスを城和が完璧にインターセプトし、ルカオにプッシュされながらも倒れず、藤田が寄せてきたタイミングで斜め左前のアマへ渡す。アマは浮いていたボールをコントロールして前を向き、バイタルで再び左足を振り抜く。しかしこのシュートも右に逸れた。
 ルカオのところをケアし、そのまま手数掛けずにフィニッシュまで持っていった。シンプルながら効率よく攻められる。

 72分、ウチは風間→勇利也。同じタイミングで岡山も竹内→輪笠、ルカオ→木村の2枚替え。岩渕を中央に置き、右に木村、左に田中の形。

 73分、ウチがシュートまで持っていく。右サイドのスローイン、佐藤が大畑に下げると、大畑は中塩へ。このタイミングで菊地がポジションを下げてボールを受ける素振りを見せると、中塩はハーフスペースにボールを転がしてアマへ付ける。アマは大外のレーンに持ち出して前方のスペースに佐川を走らせる。佐川のクロスは相手に当たるがセカンドを拾ったアマがそのままクロスを入れる。ブローダーゼンが弾き出した先にいた梨誉が右足で強引に狙ったが枠を大きく超えた。
 一度ボールを下げて作り直して相手を誘き寄せ、重心が上がったところで縦を刺すという綺麗な形。ここも菊地とアマの動きが連動していたからこそ、相手が喰い付いてくれた。

 82分、セットプレーの流れで決定機を作る。左からのCK。佐藤のアウトスイングのボールにニアで梨誉が合わせてコースを変えたが枠の右に流れていく。そのボールを佐川が追うと、木村が厳しい体勢からクリアを試みる。そのクリアボールをエドがPA角でカットし、右足で柔らかいボールを供給。ニアで中塩が鋭いヘディングシュートを打ったが、僅かに枠の右。

 83分、ウチは梨誉→和田、佐藤→竜士の2枚替え。右に和田、左に竜士が入る。
 同じタイミングで岡山は鈴木→田上、岩渕→齋藤の2枚替え。

 84分、岡山の決定機。代わって入った齋藤が早速ハイボールに競り勝ち、右サイドの木村へ。木村は菊地を剥がして縦を抉り、マイナスのグラウンダーのクロス。最後は田中が右足で打つ。ふかさず抑えた良いシュートだったが、櫛引が驚異の反応を見せてビッグセーブ。
 続くCK。田中からのボールに田上が飛び込むがボールはファーに流れる。左サイドで輪笠が拾って右足で上げると、ニアで阿部が身体を捻じるようにしてヘディングするが、ここも櫛引が既のところで防ぐ。

 山場を乗り越えたかに思えた86分、3本目のCKで均衡が破られる。田中のアウトスイングのボールに1番外側から柳に合わせられて万事休す。柳の手前で阿部と齋藤に走られて勇利也と中塩がスクリーンされており、それでも菊地が身体を当てたが、先に飛ばれた時点でどうにもならなかった。

 前半戦での試合同様、終盤に試合を動かされ、0-1で終了。

雑感

 この内容で1ポイントを積み上げられないのは悔しい。

 タイトに寄せて相手の自由を奪いストレスを与えることはした。チーム全体で掴みに行く部分、蹴らせる部分も判断してセカンド拾った。ギリギリの局面でも何度か耐えた。それでも試合を動かされるのだから、仕方ない。
 今の順位やチーム状況がこの結末に結びついたという言説もできるかもしれない。ただ、内容を見る限りでは拮抗していた部分も多い。ここをモノにできるのが今季の岡山の強さだという点は間違いなく認めるが、ウチが何も得なかった訳ではないし、機能もしていた。残された試合数も段々と減っていくが、この試合をスタンダードにして戦い続けるしかない。ビルドアップの部分ではかなりポジティブな面もあり、収穫はある。勝点こそ得られなかったが…。

 厳しい状況は続くし、誰もが分かっている。めげずに、前進を。

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