追根究底 vs磐田 1-1

 早い時間帯に先制し、その後のピンチを全員で耐え、相手の脚が止まり始めた60分過ぎから一気に畳みかけて勝利した前節。ゴールを奪った形、試合展開ともに今シーズンでもベストに近い。コンディション面は置いといたとしても、コンセプトを持ってフットボールを展開する甲府に対しての3-0は価値が大きい。この成功体験をもとに、さらに積み上げたいところ。

 5月以来の連勝に満足することなく、より上を目指して迎える今節の相手は磐田。何だかんだで順位を上げてきているチーム。
 クラブのやらかしで補強禁止でのJ2復帰シーズンとなったが、J1にいたチームだけあって個のクオリティはある程度確保されていたことに加え、後藤に筆頭されるように、下部組織出身選手の躍動が目立つ。遠藤・上原・山田と足元で繋げる構成でボールが動くテンポは速い。最近の数試合では沿道ではなく山本が1stチョイスになっているようだが、それでも鋭さはある。

 前回対戦時は開始早々から勢いを正面で受けての4発被弾。リズム作っておいて、縦の一刺しで全てを解決してくる。WBの捕まえ方がはっきりしなかったため、そこからズレていって山田に自由を与えてしまった。今回は同じ轍は踏まないようにしたいところ。また、プレスにも縦の速さを伴ってくるので、上手くいなして強度が落ちたところで殴り返したい。アウェイでのゲームも、点差が開いたことも影響していたが、60分過ぎから相手の鋭さが薄れ、自分たちでコントロールできるようになった。如何に耐えて、時間経過とともに形勢を逆転できるかが鍵になる。


メンバー

 ウチは前節から1枚変更。ここ数試合大車輪の活躍を見せた勇利也に代わり、有給明けの酒井が入る。勇利也は18人にも入らず。菊地とルナの大卒ルーキーコンビが久しぶりにベンチ入り。

 対する磐田も勝利した藤枝戦から1枚変更。山田→松本。藤枝相手に4ゴールを沈めており、現在目下3連勝中。

前半

 前回対戦時は磐田がフルスロットルで入ってきて勢いに呑まれてしまったが、この試合では流石にギアは抑えめ。磐田は最終ラインでボールを落ち着かせているが、パスやトラップにズレや緩さが見られる。ウチはそこに対してプレッシャーをかけて奪いに行くので、磐田がアバウトに回避。

 12分、ウチがボールを持つ展開で先制に成功。酒井がボールを持つと、1つ内側のレーンにいたエドを飛ばして大外の佐藤へ。エドがアンダーラップでハーフスペースを駆け上がってドゥドゥを連れていくと、空いたスペースを佐藤がカットイン。前方で梨誉が縦にアクションを起こして伊藤とグラッサを動かし、それによって長倉が一瞬浮いた。すかさず佐藤から完璧なフィードが繋がると、長倉は胸でコントロールして右足で叩く。これがネットに突き刺さった。
 それぞれの立ち位置と動き出しで相手を翻弄し、自分たちが思うようにボールを動かしてゴールまで結びつけた。直前のプレーではエドが外側に張っていて突っかかったが、次のフェーズでは内側でドゥドゥをパスコースから消した。そこから佐藤にスペースと時間を与える仕組みも良かったし、前線で時間差で走り込んで行く形もハマった。左の外には山中も構えており、選択肢は複数あった。長倉の最後のボレーはスーパーだが、そこに至るまでの過程もチームとしての積み上げがあってこそ。

 先制後もウチは守備時はコンパクトに構えつつ、ボール保持時は横幅を使って相手の外側でボールを動かす。ただ、磐田のプレスが金子の単独スタートになるので、それによって空いたコースに風間とアマが立って簡単に1stラインを越えられる。要所では長倉が山本の脇で受けて突破するが、梨誉が裏に抜ける動きを繰り返してラインを下げるための駆け引き。大槻氏からも梨誉に裏抜けの声が掛かっており、明確に狙っている。

 28分、磐田がCKの流れでチャンスを作る。左サイドのCK、松原のアウトスイングのボールはファーに流れていき、山中がクリアするも距離を稼げず、バイタル手前で上原が回収してワンタッチで右サイドに供給。山中が先に落下点に入ったが、そのままラインを割ると判断してウォッチの選択。しかし、弾道が高かったのでボールが流れずドゥドゥが追い付いて右足でクロス。これは山中に当たるが、セカンドを鈴木が拾って右足のフェイクで長倉を剥がし、左足で柔らかいクロス。これにファーで松原が回り込んでフリーでシュートを放ったが枠を逸れていく。
 山中のところはアクシデンタルだったが、ボールが鈴木に渡ったところでややラインアップが遅れてしまった。長倉が剥がされたところで誰もプレッシャーに行けず、全体的に止まった印象。

 ウチはボールを繋ぐ意識を強く持ち、磐田が狙い通りに喰い付いてくれるので、1stラインの間を通すパスを出し入れしていく。そこで前を向けると、相手CMFの脇で長倉が浮いてくれるから前進は簡単。
 ただ、いつもよりも少しラインの設定が深い感じはする。前回対戦時を踏まえて、ラインの裏のスペースを消したい意図もあるかもだが、ブロックが低めなのでボールホルダーへの寄せがやや遅れ、サイドチェンジで局面を変えられるシーンが目立つ。

 44分、磐田がまたもCKから決定機を作る。上原のアウトスイングのボールは城和が先に触ったもののファーに流れ、ドゥドゥが回収。ドゥドゥのクロスを鈴木が折り返すと、伊藤が頭で叩きつける。決まったかに思えたが、櫛引が左足に当てて防ぐ。

 45+1分、磐田がさらに決定機を迎える。山中のクロスがストレートで三浦に飛んでいったところからの磐田のフェーズ。テンポアップせずにボールを前に進めウチの陣内に入ると、右サイドに展開。ウチのブロックが形成されると、磐田は突っ込まずにサイドチェンジを選ぶ。スペースを得た松原は、ゆっくりしたテンポから左で外跨ぎし、一気にカットインからのクロス。このボールにファーで松本が身体を投げ出すように反応して折り返す。後ろから走り込んだ金子が右足ボレーでゴールを脅かすが、ここも櫛引が足に当てて咆哮。
 やはりここでもブロックを位置が低かった。それと、対角へのクロス&折り返しはパターンとして相手が用意してきたもの。横振りへの対応はウチに限らず難しい。櫛引神様様。

 内容は悪くないが、何となく雲行きが怪しい。それでもリードを保ち、前半を終える。

後半

 後半開始早々、ウチが相手のビルドアップを引っ掛ける。1stプレス隊の2人が牽制を続け、三浦に下げたところで長倉が中央のコースを消しながら寄せる。三浦が縦に付けようとするが、そこを梨誉が遮断。ワンタッチでゴールを狙ったが、足が滑ってしまい枠には飛ばず。

 後半のスタートから磐田は立ち位置を変えてきた。それに対して、ウチは最初のビルドアップこそうまく嵌めたが、簡単に斜めのパスを通されてしまう。

 捕まえ方が定まらないまま、CKの流れで磐田に同点ゴールが生まれる。右サイドのCK。上原からのボールにジャーメインが合わせるが近くの中塩に当たり、風間がクリア。しかし大きくは返せずジャーメインが足に当ててグロッサへ。ここに長倉がプレスを掛けたが奪え切れず、松本が拾って上原へ。上原はワンタッチでアーリークロスを入れると、酒井がPA手前で競り勝つ。が、ここでもセカンドを磐田が拾ってターンが続く。ドゥドゥから金子にカンタンに楔が入ると、金子は細かいタッチで正対する酒井を剥がすと、タイミングを外して右足でコントロールショット。これは櫛引も見送るしかなく、ゴールに吸い込まれていった。
 相手の流れを切れずにボールを持たれてしまい、ズルズルと押し込まれた。セカンドが相手に渡ってしまうことが続くのも、流れの悪いなりに対処したかったが、ウチがセカンドを確保できるような陣形にはなっていなかった。ドゥドゥから金子にあまりにも単純に縦が入った時点で嫌な予感がしたが、金子がフェイントで酒井を外した後にウチの選手のアプローチが遅れたのが心残り。たらればの結果論だが…。

 磐田は上原が明らかにサリーダしてくるようになり、上原をアンカーにして山本とドゥドゥがIHのような振る舞い。でもって1つ前に金子と松本を並べ、大外ではSBがWBの如く幅を取ってウチのSBをピン止め。
 これによって、ウチはプレスが空転を続ける。そもそも最終ラインでウチの1stプレス隊に対する数的優位を作られるし、その先でIHがボールを持つと、松本が浮きがち。斜めを刺されまくってアタッキングサードまで侵入される機会が増える。このまま押し込まれると引っ繰り返される流れだったが、敢えて一度撤退。無理に追って傷口を広げるのではなく、割り切っての応急処置。これによってやはり磐田の外回りのボールが増えて、一気に仕留められそうな危機的状況は脱する。

 59分、ウチがネットを揺らす。左サイド深くで山中がスローイン。山中→長倉→山中→風間と左サイドでボールが繋がると、風間はエドにボールを預けてテンポを作りつつ、すぐにリターンを受ける。風間はアーリーを窺いつつ、内側のレーンで同じ高さを取ったアマに渡す。アマは1stタッチで外側にボールを転がし、身体の向きからは想像できないようなコースでクロスを入れる。これをファーでフリーになった梨誉が頭でプッシュして勝ち越し。が、僅かに出てたとのことでオフサイドの判定。
 ここでは左サイドでリズムを刻み、アマに入ったところで勝負を掛けた。一度長倉が縦に抜け出してラインを下げさせることはできていたが、梨誉の飛び出しが少し早かった。スタンドで横から観ている時はオフサイドも納得だったが、映像を見るとかなり際どい。

 63分、ウチは佐藤→北川、梨誉→平松の2枚替え。この辺りから相手の配置変更に対応すべく、長倉を頂点とした5-4-1に変えてきた。さらに70分にはエド→内田。これによって5-3-2にシフト。風間を底に置いたトレスの形にして右に内田、左にアマ。攻撃時は北川と山中が高い位置を取って、3-5-2になる。真ん中3枚は天皇杯東京V戦でも後半途中から採用していたが、オプションとしての策は最低限落とし込んでいるようだ。相手IHの捕まえ方を明確にして、楔を通されることを減らす。

 しかしながら、暑さの影響もあり両チームともに段々と疲労の色が濃くなる、ウチは長倉が相変わらず動き回りチャンスを生み出したが、フィニッシュワークの局面で馬力が残っていなかった。

 83分、ピッチ中央で平松が最終ラインの裏にボールを送ると、長倉が快足を飛ばしてPAに侵入。切り返し1つで伊藤を剥がしたが、足の踏ん張りが効かずにやや重心が流れてバランスを崩す。ボールが足に付かなかったが、それでも何とか前に持ち出して左足を振り抜くが、トップ気味になってボールは右に逸れていった。

 最後はシラを入れて勝ち越しを狙う一方、勝点を失うことがないよう、ある程度のリスクヘッジもしていた。前節終了時点で2位に付けていたチームとの対戦は1-1で終了。

雑感

 どちらに転んでもおかしくないゲームだった。大槻さんがコメントしているように、2点目を取れれば申し分なかったが、5月のヤマハから約2か月でこういう試合ができる部分はプラスに捉えたい。一方で、やや相手に動かされてアジャストに時間とパワーを要したので、終盤にもう一度攻め込むエネルギーが不足していた感は否めない。主体的にゲームコントロールできれば良いが、相手もあることなのでそう簡単に上手くはいかない。

 守備は後半15分の対応を除けば、十分戦えていた。相手の立ち位置の変化への対応は難しかったが、今後は悪いなりにまとめていかなけばならない。それでも、60分以降は再び堅さも見せたし、次節以降も維持していきたい。

 攻撃時は、横幅の使い方が上手くハマって先制点を奪った。山中の縦突破の左とエドと佐藤のローテーションでマーカーを惑わす右の双方から崩しに行けるのは強み。本音を言えば、終盤に自分たちで試合を決めに行きたかった。ただし、守備を捨てるほどのリスクは取れなかったし、上手くバランス見ながら仕掛けた。この辺りは、まだまだこれから。

 これで40ポイントに乗ってきた。ここ数シーズン、40までにどれだけ足踏みしたか。チームは間違いなく上を見据えている。先ずは50を達成し、そこからは自分たちで自分たちの可能性を切り開いていく。
 次節は、ピッチ上にボールが動いていない時間が長い。そんな相手に屈せず、自分たちのすべきことを集中して勝点を積み上げたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?