謹厳実直 vs徳島 0-1

 長崎ご自慢の攻撃陣に開始直後から殴られ、そのまま主導権を握ることなく終わった前節。後半途中からは数的優位にもなったが、却って相手の守りの意識が強まってしまって打開できず。
 そんな消化不良感が拭えない中、ミッドウィークに天皇杯で浦和と対戦。大半の予想を覆すウノゼロの勝利。これまで思うように試合に絡めなかった選手たちが前向きにエネルギーを使っており、チームとしての迫力を感じた。1人ひとりがやるべきことを直向きに取り組めており好印象。ああいう戦い方ができる限り、このチームは死なない。

 天皇杯での浦和撃破の勢いを持って乗り込むのは徳島。腐っても同期昇格組。ポカリマネーを駆使してJ1に2度昇格するなど、クラブとしての規模はやや開いてしまった。
 今シーズンから慣れ親しんだJ2の舞台に戻ってきたわけだが、苦戦。負け数は少ないが、勝ちも少ない。まさかまさかのドロー沼。鉄壁と化したスアレスが安い失点を防いでいるものの、なかなか前にパワーが割けない。
 敷島での対戦時は塩分濃度の高いスコアレス。お互いにバイタルでのクオリティに大きな課題を残した。

 どちらもチーム状態は芳しくない。ウチは6試合勝利がなく、徳島も8試合勝利から遠ざかっている。ウチは天皇杯で勝利したのに対し、徳島は柏相手に先制したものの引っ繰り返され、ダメージの残る敗戦となった。
 現状を好転させるためには、勝利が何よりも良薬。

メンバー

 ウチは前節から5枚変更。藤井→広大、山中→勇利也、岩上→久保田、山根→天笠、KJ→彰人。KJと岩上がベンチにも入らずスキップ。天皇杯で躍動した勇利也と久保田が今シーズン初スタメン。広大も久々。ベンチにはシラと川上が帰ってきた。

 対する徳島はウノゼロで敗れた岩手戦から1枚変更。長谷川→玄。

前半

 立ち上がりはどちらもリスク回避。徳島がボールを持つが、特段チャレンジのパスを出すわけでもなく各駅停車に終止。なかなかボールの回る位置が高くならないので、ウチとしては捕まえやすく、コンパクトな陣形を保てた。

 9分、一美に縦パスが入ったところを城和が潰してボールを奪う。彰人がセカンドを回収して前を向く。浜下と白井に囲まれながらも、久保田に渡す。久保田は彰人が空けたスペースに向かってボールを運び、大外の勇利也へ。勇利也は1つ前の天笠に付ける。久保田がサイドにランニングして相手を引き付けていたので、天笠はノープレッシャーでボールを蹴れる状況。左足で上げたアーリークロスは風に多少流されてファーサイドの深い位置へ。そのボールに平松が反応して折り返したものの、中にいた彰人には合わず。
 城和のボール奪取が起点になり、中盤が押し上げてゴール前までボールを供給できた良い攻撃。

 23分にもチャンス。彰人がプレスのスイッチを入れ、連動するように久保田と小島が相手にピッタリと寄せて自由を与えず。圧力を感じた杉森がパスミスすると彰人が拾ってドリブル開始。実況では強引なドリブルと表現されていたが、前方にはスペースが広がっており、あそこを仕掛けるのはオフェンスの選手として当然の判断だろう。右サイド深くまで抉り、相手を剥がし切る前にタイミングを外してクロス。ニアで平松がわずかに触ってコースを変えると、ファーに走り込んだ天笠が左足を振り抜く。しかし、DFのブロックに遭い先制点とはならず。
 ここでも良い守備から良い攻撃という流れができており、奪ってからの鋭さも見せられた。クロスにもう少し勢いがあればともいえるが、あと一歩という形は作れている。

 徳島がボールを握る時間が相変わらず長いものの、クリエイティビティに欠けるパスが横行。握っていればカウンターのリスクもなく安全なのだろうが、ポゼッションが自己目的化している典型例。ゴールへと向かう姿勢があまり見られなかった。

 それでも、30分頃から徳島が徐々にテンポアップする。31分、内田から浜下に楔が打ち込まれると、浜下がワンタッチでサイドのスペースに流す。浜下の落ちる動きに城和が喰い付いたため、サイドはガラ空き状態となる。タイミング良くオーバーラップしたエウシーニョがPA近くまで運び、マイナスのパス。杉森がシュートに持ち込もうとするも、広大が身体を張って守る。

 42分にも徳島。サリーダっぽく落ちた白井が、フリーの状態で対角線のフィード。徳島右サイド深くでエウシーニョが受けると、ノーステップでクロスを供給。一美を囮に後ろから杉森が飛び込むものの、シュートはポスト直撃。危険なシーンだったが、小島と久保田の2人がしっかり寄せて杉森にフリーで打たせなかったことが大きい。

 まったりしたテンポながら、両チームともにバイタルまで到達するシーンを何回か作った。ただし、スコアは動かないまま折り返す。

後半

 後半も前半同様徳島がボールを保持する時間帯が続いているが、それほどバタついてはいない。

 54分、新井を押し出して白井が最終ライン手前でボールを持ったところから。白井は正確な縦パスを渡井が見事なトラップで収める。渡井で2枚引き付けて、外の杉森へ。杉森は右足に持ち変えると、インスイングのクロスを入れる。中央で一美が合わせるも、櫛引が正面でキャッチ。あの距離からヘディングで決められるのは皇帝ズラタンくらいだろう。

 60分、ウチが最初に動く。天笠→山根、彰人→シラ。67分にも平松→深堀。縦へのスピードや推進力に特徴を持つ選手たちを立て続けに投入し、ゲームスピードを速くさせたい。

 70分、そのスピードでゴールに近づく。自陣右サイド浅い位置で小島が浜下との間合いを詰めてドリブルの選択肢を消すと、連動するように久保田がサンドしてボールを奪う。久保田はそのままハーフウェー超える辺りまで運ぶと、PA角目掛けて斜めのパス。快足を飛ばして深堀が裏に抜け出すと、上手くカカに身体を当てて入れ替わる。ここまでは狙い通りだったが、肝心のシュートは巻き切れずにそのまま左へと逸れてしまった。スピードに乗っている分、身体全体が右側に流れてしまい腰が回らなかった。

 良い流れを持ってこれると思っていたが、徳島も選手交代でサイドに張って幅を取ろうという意識が強まる。
 すると、77分に痛恨の被弾。深堀が単騎でバイタルまで侵入するもカカに対応されてしまう。ここでスアレスがすかさず渡井にボールをスロー。前にパワーを使った深堀と稔也の戻りが間に合わず、易々と1stディフェンスを突破された。渡井は大外のレーンの西野に渡す。ミッドウィークの天皇杯で先制点を決めた西野は臆せずボールを持ち、カットインする。西野は小島の寄せを確認して児玉へ預ける。児玉は一度後ろに戻すような動作をしてウチの寄せを掻い潜ると、今度は前を向く。フリーとなった児玉はウチの選手の間を通して左サイドの渡井に付ける。渡井はファーストタッチこそズレるも立て直す。小島と正対すると、ボールをわずかに右に動かして間合いを外し、そのままクロス。スピードの伴ったライナー性のクロスはニアの広大を通り過ぎてバゲンガにドンピシャ。お手本のようなクロスからのヘディングで徳島が先制に成功。
 ウチとすると、児玉のところを離しすぎたことが勿体なかったのと、西野に付けた後にスプリントした渡井を少し深追いしてしまったか。結果的に西野のカットインも児玉へのパスコースも空いてしまったようにも思う。
 とはいえ、終盤にあの距離は走れる時点で凄いのに、上質なクロスでゴールを演出した渡井には脱帽。最後のヘディングに関しても、どうにもならん。マーカーとボールを視野に入れながらの対応はいつでも難しいし、城和個人の過失では断じてない。

 反撃に出たいウチのチャンスは87分。敵陣でシラがタイトに寄せてボールを奪って久保田へ。久保田はパスコースを探し、門を通してシラへ楔を入れる。シラは前を向き、左の山根へ流す。山根もシンプルに大外の勇利也へパス。勇利也はワンタッチで低い弾道のクロスを入れたが、深堀に到達する前にスアレスが抑える。綺麗な崩しだっただけに、仕留めたかった。

 最後までゴールに迫る姿勢は見せたが、現実はそう上手くいかず、0-1で終了。

雑感

 負ける試合の内容じゃない。だからこそ悔しさもより一層増す。

 守備は締めるところを締めていたし、前で潰そうとする意識が見られた。出場機会こそ減っているが、出場時は常に安定したプレーを見せる広大はプロフェッショナルだと再認識。
 失点シーンは、相手の幅を取ってきたところでやや後手に回ったか。スアレスが早い切り替えでウチに息つく間を与えなかった部分で結構厳しくなっていた。これまで守れていても、やはり細部までこだわらないと押し切られてしまう。

 オフェンスも狙いは見えた。バイタルまで至ったシーンはいずれも、厳しい寄せでボールを奪取してそのままチームとして前を向いて運んだもの。ポゼッション至上主義の相手にはハマる形だということを差し引いても、やはりウチの武器であったトランジションの部分で上回らないとゴールには近づかない。途中出場の選手たちもメリハリを付けながら攻撃に絡んでいただけに、テコ入れした後の数分で仕留めたかったのが本音だろう。ゴールが遠く疑心暗鬼にもなるが、愚直に続けるしか道はない。

 試合後の大槻氏のインタビューで、「なかなかこびり付いているものもあると思う」と述べていた。自分たちの志向するサッカーをできるかどうかが指標となるが、勝敗の決するスポーツである以上、負けるとどうしても雰囲気は重たくなる。これだけ選手たちはやっているのだから、何故報われないのかと我々は思ってもしまうが、どうすることもできない。

 如何にスタイルを貫けるのか。観てる側もどこまでチームを信じられるか。我慢のしどころ。

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