円木警枕 vs清水 1-1

 立ち上がりのピンチの連続を乗り越えて得意のセットプレーから先制し、一時は逆転されるも、そこで下を向くことなく取り返して1ポイントを得た前節。前半の締め方を見るとズルズルいきそうな雰囲気もあったが、HTを経て対角線のフィードを上手く使って前進してゴールまで至ったのは見事だった。最後の割り切る判断も現時点では適切だったはず。選手間では上に行くかどうかの試金石だと位置づけており、危機感を持つという発信もあった。現状に満足せず、常に上を目指して戦う選手に対し、我々傍観者にできることは信じることのみ。

 リーグも折り返しとなり、2巡目となる今節の相手は清水。3月のミッドウィークに対戦した際は3-1で一蹴。チグハグな相手の攻撃を尻目にポジトラで殴り続けた。試合後のブーイングが当時のチーム状況を物語っていた。
 で、降格したシーズンに下位から取りこぼすような状況を誇り高き王国は受け入れ難く、リカルド氏を更迭。入閣当時からセーフティネットと目されていたAKB氏を指揮官に据える。元々クオリティの高い選手たちに対し、モチベーターである秋葉氏がスイッチを入れてハードワークを促す。球際の強さは前体制とは全く別物。また、トップ下に乾を置いて自由にプレーさせていることも大きな特徴。CMFの位置まで下りてビルドアップに参加したかと思えば、バイタルでチャンスメイクもこなす。また、オセフンをターゲットマンにして1本で引っ繰り返す形も持ち合わせる。ただ、直近のリーグ戦ではサンタナとオセフンの2トップでスタートしているし、先週のルヴァンでは北川1トップで乾をトップ下に置くなど、豊富なタレントを様々な形で起用。神谷、カルリーニョス、中山、コロリなども含めダブつき気味ではあるが、誰が出てきても脅威であることに変わりはない。

 前回対戦時のような試合にはならないし、簡単にはいかないだろう。一方で、清水は後半の運動量が明らかに落ちることがある。リードして手を緩めている場合もあるが、90分通してインテンシティを保つことは少ない。また、前に人数を掛けようとする分、ボールを回収されると枚数が足りなくなる。やはりインテンシティで勝負を仕掛けるのは有効。自分たちが上に昇るためにも、J1から降格してきたチームが相手だろうが、自らの力を示そう。

メンバー

 ウチは前節から2枚変更。川本→山中、彰人→北川。川本は契約上出場できない。ベンチには勇利也とエドが久しぶりに入った。

 対する清水は2週前の前節からは6枚変更。高木→井林、吉田→西澤、神谷→中山、ホナウド→白崎、オセフン→乾、サンタナ→北川。

前半

 清水はかなりの勢いを持って入ってきたのに対し、ウチはバタつかずに対処する。また、清水の最終ラインがボールを持った際にウチがフォアチェックをすると、思った以上に過剰反応する気があった。

 8分、ウチのCKを相手GKがキャッチし、前に立つ山中に対してパンチを入てからパント。これをハーフウェー付近でアマがコントロールして中塩へ。中塩はフリーな状態だと察知して前を向き、サイドのポケットにボールを流し込む。そこに北川が抜け出すと、何故かGKがPA角まで出てきていた。北川は右アウトでコントロールし、右足で巻くようにシュートを放つが、至近距離でセーブされた。
 トランジションで勝負できるとは思っていたが、縦パス1本でシュートチャンスを作れた。中に武も入っていたが、北川の決め切りたいという気持ちは理解できる。

 その直後、GKから宮本に渡り、ウチの1stラインを越えられる。最終ライン+CMFで回して右から左に推移。西澤が内側に立ち、大外にカルリーニョスが張る。そこにボールが入り、西澤とワンツー。さらにカルリーニョスから中央の北側に斜めの楔が入ったところでアマがカット。しかし宮本が回収し、身体を開いてボールを晒すように動かし、ウチの最終ラインがアップしようとしたところでその裏を落とすようなボールを供給。抜け出した北川が左足でシュートを放ったが、櫛引が左足に当てて防いだ。
 西澤と宮本が近付いてくるので、ウチは1stプレスに少し行きにくい。宮本のパスが出るところでも寄せにくくなった。

 ただ、櫛引が防いだ跳ね返りを風間が回収。球際2つに勝ち、さらに北川も前で潰れてボールキープして再び風間が確保。風間→岡本→山中と右サイドに展開すると、岡本がハーフスペースを猛烈なスピードでアンダーラップ。相手の意識が確実に縦に引っ張られたので、山中は中に持ち込み、逆サイドに大きく振る。武に渡る手前で北爪がタッチラインに逃げた。武がすぐにスローインを入れようとするもキャンセルし、佐藤がスローワーに。ただ、中塩がボールによってスローワーを代わると、ボールを手で中塩に渡した佐藤が急発進してボールを受ける。北爪と中山にサンドされそうになりながらも強引に前を向いた佐藤はニアに入れる。難しい体勢からのクロス(+ディフレクト?)だったため、一瞬PA内にいる選手の反応が遅れる。鈴木がクリアしようとしたが、その背後から北川が忍び寄り、右足アウトサイドでコントロールショット。これがGKの頭上を射抜いてネットを揺らす。10分、早い時間帯に先制点を得た。
 トランジションの部分は勿論のこと、スローインの対応、クロスへの反応といったところの細部での差で上回ったことでゴールに結びついた。常日頃から研ぎ澄まされていないと、こういった場面では表現できない。

 先制点を奪ったことでウチは落ち着いてボールを回せるし、清水はこれまで以上にバタついた。攻め込もうという姿勢は一応あったが、一向にテンポアップしないのでウチは2ライン敷いて対応可能。結局最後は中山やカルリーニョスのカットイン、若しくは北川に裏を取らせる形なので、そこまでの怖さを感じない。
 また、スコアレスの状態のときはウチのビルドアップに対しても前から前から捕まえに来ていたが、それも緩む。圧力掛けて先に仕留めたい狙いだったのだろうが、ヴェルディほどの縦の矢印の強さもないので、そこまで最終ラインにストレスも掛からず。

 が、26分に同点にされた。北爪へのパスをアマがカットし、左サイドのタッチライン際へ。アマは相手に当ててマイボールにしようとしたが、北爪がそれに気づいて避けると、見事にボールが清水のバイタルに飛んでいった。回収した北川がワンフェイク入れて左足で突き刺した。
 繋ぐことを志向する以上、こういったアクシデンタルな失点はある。縦に蹴れば良かったと指摘するのは簡単だし真っ当だが、こういった部分は織り込み済みのはず。割り切るしかない。

 同点となったことでウチは一度リズムを落ち着かせる。清水が横砂相撲でも取るつもりなのかチェイスしないで引き込んで捕まえようとしてきたが、ウチは相手に合わせることはなくボールを動かして少しずつ前進する。
 清水はサイドの推進力を用いて前進するが、アタッキングサードでのスピード感が無に等しい。深くまで持っていってCKというのが関の山。CKからシュートまで至っているので、当然シュート本数は増えるし押し込んでいるように向こうは考えていただろうが、前節のヴェルディに比べれば怖さはない。強いチームであればセットプレー1つで仕留めていくのだろうが、最近のウチのセットプレー対応の水準だと、そう簡単にはやられない。

 先制後追いつかれたが、大きく崩されることなく、1-1で折り返す。

後半

 後半の入りはどちらも落ち着いていた。清水は変わらず乾を経由する形が多いが、北川の衛星というよりはCMFと同様の高さでトレスっぽく振る舞う。ただ、3枚だからといってハーフスペースに位置してウチのCMFの脇を突くとかはない。どちらかというと右に流れてダイアゴナルランで、北爪が張ったところからの斜めのパスを引き出す。ただ、サイドの角を取られたとしても、その先すぐに被決定機に陥る可能性は少ない。中山がPA内で中の枚数を増やすように作用してはいるが、そもそも有効なクロスがさほど入ってこない。白崎も左で同様の位置を取るきらいはあるが、上手く風間・佐藤・中塩が連動し、特に佐藤が背中でコースを消していた。

 61分、ウチのゴールキックが収まらず清水が回収。乾がウチのCMF2枚の間に下りてきてピッチ中央でボールを引き出すと、右サイドのスペースに展開して北爪に繋ぐ。中塩がボールにチャレンジに行こうとしたところで北爪は佐藤と中塩の間をグラウンダーで通す。PA内で北川が右足で合わせたが、畑尾が足に当ててブロック。
 だいぶ手数掛けずに北爪の所を起点にチャンスメイクする形が増える。同様の攻撃を仕掛けてきた水戸よりかは可能性を感じる攻撃ではあったものの、やはり事故が起きない限りはウチも簡単に崩れない。

 66分、中山→サンタナで清水が先に動く。サンタナを最前線に置いて、北川が右に。するとウチも67分、アマ→勇利也、佐藤→エドの2枚替え。試合開始直後に佐藤と山中のサイドを通常と入れ替えていたが、この交代を見ると、中山の推進力を抑止する意味もあっての佐藤左サイド起用だと勘繰りたくなる。

 71分、勇利也が起点となる。清水右サイドからのクロスが流れ、山中が回収。西澤が寄せてきたが、山中は動じず、中央の北川に付ける。北川→岡本→勇利也と繋がり、スピード感を持って勇利也は敵陣に侵入し、左のエドを選択。エドはアタッキングサードで受けると、中塩のオーバーラップを囮にカットインしてアーク付近の勇利也にリターン。勇利也はトラップしてから2つほど切り込んで左足を振ったが、宮本がブロック。
 ここもマイボールにしてから少ない本数で敵陣に侵入してフィニッシュまで至った。北川のTheマルチストライカーぶりは見事だったし、勇利也がボールを持ち出してからバイタルで最後の仕事にまで関わるのは良い。

 72分、清水は北川→ディサロ、カルリーニョス→高橋の2枚替え。これによって高橋を3CBの右に据える形に変えてきた。北爪の推進力で殴るべく、最初からサイドに張って高い位置取りましょうっていう狙い。それとともに、ディサロは後ろに下がり過ぎずにサンタナと近い位置で前線にパワーを掛けようとする。

 75分、清水のチャンス。GKからのボールに右サイドでディサロがワンタッチで叩いて中央でサンタナが収める。サンタナはターンするとそのまま左の西澤に展開。西澤→宮本→サンタナ→北爪→乾とミドルサードの高い位置でボールを動かして右にボールは流れていく。乾のクロスは誰もいないところに飛んでいき山中がクリア。セカンドを西澤がPA角で回収すると右足をフェイクに切り込み左足で低めのクロス。ニアで白崎が合わせたが櫛引が正面で抑える。

 76分、ウチは北川→シラ、風間→内田の2枚替え。シラとエドという縦の意識の強い選手を同サイドに配置することで、面白いように左に勢いが出る(多少の危うさもあるが、そのスリリングさも含めてエンタメ性は抜群)。
 対する清水は80分、乾→オセフン、宮本→ホナウドの2枚替え。オセフンをターゲットに据えるのは想定内だが、サンタナとの両立できているとはいえず。また、ディサロの扱いも不明確であり、サイドに置いて何のタスクを背負わせるのかが見えてこなかった。守る側とすれば、取り敢えずオセフンのところでポイントを作らせないこと、その上でサンタナに偶発的にも転がっていく局面を減らすことが大事。

 82分、山中→平松で最後のカードをウチは切る。平松をそのまま右で使って1つターゲットを増やしつつ、時間帯考えて守備時のタスクがやや多めの印象。スライドは当然として、安易に喰い付いて裏のスペースを相手に割譲しないように上手く牽制していく。

 その後はどちらも深くまで攻め込んでのCKでチャンスを作ろうとしたが、共に決定打に欠く。

 90分、清水に試合を左右するビッグチャンスが到来。清水が左サイドでのスローインの流れからボールを持ち、最終ラインで作り直す。井林からのアバウトなボールをオセフンが逸らすがウチがクリア。ただ、セカンドを高橋が拾うと、上手くオセフンに繋がる。オセフンは左の西澤に渡すと、グラウンダーのクロス。ニアで白崎と酒井が潰れてボールが中央に転がるとサンタナがフリーに。あとはプッシュするだけという局面だったが、サンタナのシュートは櫛引が左足を伸ばして防いだ。

 さらに90+5分、清水のラストチャンス。岡本のトラブルにより試合が中断し、清水が左サイド深い位置のドロップボールから再開。西澤のクロスを畑尾が跳ね返したが、ホナウドが回収して白崎へ。白崎も時間かけずに西澤に付け、西澤がインスイングのクロスを供給。ファーサイドで高橋が身体を投げ出すようにして頭で合わせたが櫛引がセーブ。さらにこぼれ球をオセフンが左足で振り抜いたが、ここも櫛引が身を挺して防ぐ。最後のシュートは遥か彼方に飛んでいったところでタイムアップ。

 最終盤こそ押し込まれたが、1-1で試合を終えた。

雑感

 3ポイントを掴んでもおかしくない試合だったが、最後の櫛引の活躍を考えると、引き分けは妥当な結果。ただ、前節に引き続き手応えを得る結果だったことは確か。その先、手応えをどのようにして結果に結び付けていけるかは引き続き取り組むべき命題となる。

 守備は自分たちで招いた形で失点した部分の勿体なさはある。ただ、中を刺されるようなボールは特に前半はほぼなく、ただただ外側で作られてのクロス一辺倒だった。素材の揃っているチームはシンプルな調理を好むようだが、正直それで押し込まれても脅威はさほどない。素材の味が活きずにそれぞれが相殺している状態。そりゃ火力だけで殴ってきた75分以降は押し込まれはしたけど、その戦法にも限界はある。そうしたチームの行く末はどこぞのオレンジ色のチームとか黄色のチームを見て頂ければ良く分かる。
 他所のことは置いといて、バイタルでの集中力の高さは前節から継続して見られる。畑尾・酒井を中心に声を出して盛り立てているし、球際でも躊躇せずに体を当てているのが良い方向に作用している。

 攻撃に関しても、前回対戦時に続いてポジトラで一刺し。指揮官のコメントを読むと、もっとトランジションで殴れれば3ポイントを得られたとの感触だったようだ。その部分は、大槻氏が指摘しているように自分たちの積み上げにどれだけ自信を持てるかが重要。ここまでの31ポイントは裏切らない。ここから更にポイントを積み上げていくためにも、如何に疑心暗鬼にならずに自分たちのチャレンジを遂行できるかにかかっている。

 悪くない試合が続いている一方、しばらく3ポイントを得ておらず、どうしても焦って逸る気持ちも出てきてしまう。その状況下でも、変わらずに突き進むことができれば、間違いなく道は開ける。難しい局面だが、チーム・クラブ全体で乗り越えたい。

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