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スターバックスで働き始めた話〜志望動機編〜

10月下旬の夜、いつものランニングコースを走っていた。コースといっても公園にトラックが用意されていて、一周するたびに同じ景色を繰り返す。
まだ走り慣れていないせいか、少しずつ痛みだすふくらはぎ。

わたしは10月いっぱいでそれまで続けていた派遣の仕事を辞めることになっていた。とにかく辞めることしか考えておらず、次の道は何も示されていなかった。
ただ、仕事を辞める直前にランニングをしたのには意味があった。走っている間は、スマホも使えないし周りが静かで何にも邪魔されない。自分の考えや気持ちを整理するのにはもってこいだ。

わたしがしたいことは何?

わたしは何が好きだっけ?

どう生きていきたい?

次々と自分に問いかけていく。

こんなにシンプルな質問でも、案外ズバリと答えることは難しいものだ。

そのときには思考のドツボにハマり、徐々に足の痛みが気にならなくなっていた。

唐突に、そこに、「カフェで働きたい」という純粋な思いが込み上げてきたのだ。
少し前に「人生でやりたいことリスト」に書いていたことだ。
カフェもカフェで色々あるが、特にスターバックスがいいなと思った。出迎えてくれるあの笑顔が真っ先に思い浮かんだ。


あのグリーンのエプロンを着た自分の姿。

コーヒーの知識を蓄えて接客をする自分の姿。

今まで自分がお客さんとして訪れたときに見たスターバックス店員の姿に、自然と自分を重ねていた。
その光景がキラキラしていて鮮明で、すでに自分は店員だったのかと錯覚するほどだった。

かがやく自分を想像して、どのくらい時間が経っただろうか。現実世界に引き戻された瞬間、じんわりと脚の痛みを感じ始めた。

はやる気持ちをおさえ、志望動機を考えながら家路に着く。

志望動機なんて数年ぶりに書いた。形式ばらずに自分のありのままの気持ちを書いた。スターバックスにはこんな気持ちを受け止めてくれる寛容さがあると思った。

調べていて初めて知ったのだが、バイトルやLINEバイトにスターバックスのアルバイト募集ページはない。
自社ホームページに、募集中の店舗が一覧になって載っている。

家から徒歩で通勤できる店舗が奇跡的に募集しており、すぐにでも志望動機を送りたかった。しかし興奮冷めやらないまま書いた文だったので考え直したい気持ちもあり、一晩寝かせることにした。

翌日、わたしは後悔することとなる。

募集中の店舗一覧に、わたしが希望していた店舗が載っていないのだ。体から血の気が引く。
店舗に直接電話をしたが、やはり募集は締め切ったとのこと。昨日の夜に出しておけばと、なんど自分を責めたことか。というのも、志望動機を練り直してみたがそれほど内容が変わらなかったのだ。

だが、わたしのスターバックス熱は「場所なんて選んでいる暇はない」と思わせるほどに燃えていた。
電車で5駅行ったところにアルバイト募集中の店舗があった。

そこに志望動機を送信した。

当時のわたしには、「スターバックスで働くこと」に意味があったのだ。「徒歩圏内」という条件は二の次だ。

その日のうちか、翌日だったか忘れたが、面接の日程を決めるメールが届いた。

釘は熱いうちに打て。
面接日程はいくつか選択肢があったが、1番直近のものを選びわたしは返信をした。

スターバックスで働くと決め、志望動機を書き、面接の日程を決めるまでの数日間は、久しぶりに自分の中の熱を感じた。
働く店舗は初めて訪れるところである。
いざ。

面接編は次回に。


以下は、当時書いた志望動機である。
今読み返すと稚拙な部分もありツッコミをいれたいところも多々あるが、面接の方が読んでくださったことに感謝したい。

コーヒーを扱うカフェで働くことが人生の中で挑戦したいことのひとつでした。その中でも御社を希望する理由は働く環境にあります。
先日ランニングをしているときにこれからの自分を想像しました。そのとき、やりたいことのひとつであるカフェで働く自分がふと思い浮かびました。その中の自分は緑のエプロンを身に付け、生き生きと接客をしていました。そのことを考えているときは脚の痛みを忘れて夢中で走っていました。私をそう駆り立てたものはなんだったのか、冷静になって振り返るとある光景を思い出しました。それは御社のとある店舗に訪れたとき、かなり混んでいて座席を探していたときにちょうど1組が席を離れたところでした。それを見かけたとあるパートナーさんが「こちらのテーブル拭きますね!」と声をかけてくださり「いいんですか?」と聞くと「もちろんです!」という気前の良い返事とマスク越しでもわかる溌剌とした笑顔で答えてくれました。
もうひとつ、別店舗に早朝に訪れたときも、日中に比べゆとりがあるとは言え、朝早い時間にもかかわらずこちらも穏やかな笑顔とハキハキとした挨拶で迎えてくれたのがとても印象的でした。
パートナーさんたちが時間帯や忙しさにかかわらずどのような心構えで接客をしているのか、そしてパートナーさんたちがそのようにいられる御社の教育の在り方にも興味が湧き、実際に働いて、今度は自分が提供する側になりたいと強く思いました。
過去に、旅館の客室係やホテルのレストランのホールスタッフとして働いていた経験も活かせると考えています。
もともとコーヒーが好きというのもあり、好きなものに囲まれながら知識も蓄えつつこれまで培った自分の強みをさらに伸ばしながら成長し、お客様の日常に触れながらいかに心穏やかな時間を提供できるか、自分自身が今後どう社会と向き合っていきたいのかをパートナーさんとともに考えられる最善の場だと思い、御社での就業を志望しました。

#noteの書き初め

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